守れ自然を ゴールドマグロ輸送作戦   作:ガチタン雷電

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第一章 守れ自然を ゴールドマグロ輸送作戦

第一章 ゴールドマグロを守れ

 キヴォトス郊外。

 海へと続く道路を、一台の大型トレーラーがゆっくりと走っていた。

 荷台に積まれているのは、ただの魚ではない。

 厳重に冷却されたコンテナの中に眠っているのは――

ゴールドマグロ。

 天然物としては極めて希少。

 しかも今回は、環境保護団体と各学園の共同事業として、養殖・研究施設へ輸送される貴重な個体だった。

 その護衛を任されたのが、三両の装甲車両である。

 先頭を走るのは、一見すると古めかしい戦車。

 しかし、その姿はオリジナルのクルセイダーとは大きく異なっていた。

「どうだ? この改造」

 車内から満足そうな声が響く。

 操縦席にいるのは、リチャード。

「自分で言うのもなんだが、かなり手を入れたぞ」

 隣では正義実現委員会の生徒が、砲塔内の装備を確認している。

モブちゃん

「リチャードさん、これ本当にクルセイダーなんですか?」

「クルセイダーだよ。……たぶん」

「たぶん?」

「細かいことは気にするな」

 その後ろを走るのは、堂々たるセンチュリオン戦車。

 操縦席にはジェレミーが座っていた。

「リチャード、速度を合わせてくれ。護衛車列が伸びすぎている」

「了解」

「それと、左側の丘には注意したほうがいい」

 ジェレミーは双眼鏡を覗く。

「こういう輸送作戦では、必ず何か起きる」

「縁起でもないことを言うなよ」

 その時だった。

 無線に、スタッフ側から通信が入った。

『こちらウィルマン。そちらに一台、ゲストの車両が合流予定です。』

 リチャードが後ろを見る。

「ゲスト?」

 そこには――

 小さな戦車がいた。

 いや。

 あまりにも小さい。

 まるで大きな戦車たちの後ろを、必死についてくる子犬のようだった。

 そして車体には、堂々とイタリア語の名前が刻まれている。

CV33。

 さらに、その砲塔には通常仕様とは異なる大型の20mm砲が搭載されていた。

「……あれは何だ?」

 ジェレミーが呟く。

「俺に聞くな」

 リチャードも困惑する。

 そのCV33の操縦席には、一人の男が座っていた。

「ライアン、これ本当に大丈夫なのか?」

 隣から声がする。

「大丈夫だ、ヒュー」

 運転しているのは――

ライアン・レイノルズ。

 そして20mm砲の横には――

ヒュー・ジャックマン。

 ヒューは砲を確認しながらため息をついた。

「そもそも、なんで俺が射手なんだ?」

「昔レースの練習でコースアウトしたからだろ」

「一回だけだぞ」

「かなり派手な一回だったけどな」

「……あれは攻めすぎただけだ」

 ヒューは不満そうに前を見る。

「俺は『トップ・ギア』で5位だったんだぞ」

「知ってる」

「なら運転させてくれてもいいだろう」

「だから練習でコースアウトした奴を、今回は運転席に座らせられないんだよ」

「……なるほど」

 ヒューは渋々20mm砲の照準器を覗いた。

「じゃあ俺はこれを撃つ」

「頼む」

 

 

 実は、このゲストが作戦に参加することになった経緯は、とんでもなく単純だった。

 数日前。

 ライアンとヒューは、映画『デッドプール&ウルヴァリン』の宣伝のため、ミレニアム学園を訪れていた。

 そこで二人を待っていたのは、大勢のファン。

 そして――

ミレニアムモブちゃん

「これ、プレゼントです!」

「……何?」

 二人の前に現れたのが、このCV33だった。

 しかも、

「どうぞ!」

「いや、どうぞって……」

 ライアンは絶句した。

 ヒューも絶句した。

 しかし、気がつけば車両は二人のもとに届いていた。

 そして現在。

 なぜかそのCV33は、ゴールドマグロ輸送作戦に参加している。

「人生って何が起きるか分からないな」

 ライアンが呟く。

「映画の宣伝に来ただけなのに、戦車をプレゼントされて、そのまま魚の護衛だ」

「ゴールドマグロだぞ」

「余計に分からない」

 その時。

 車列の前方から、けたたましいエンジン音が響いた。

 無線が入る。

『こちら前方偵察! 接近する車両を確認!』

 ジェレミーが身を起こす。

「来たか」

 リチャードも砲塔を旋回させた。

「敵か?」

 丘の向こうから、複数の車両が姿を現す。

 先頭に立つ車両から、一人の男が身を乗り出した。

 その男は、異様なほど落ち着いた表情でこちらを見ている。

「……あれは?」

 ジェレミーが呟く。

 無線から、正義実現委員会の生徒の声が響いた。

『確認しました! ゲヘナ学園、美食研究会です!』

 リチャードが叫ぶ。

「よりによって、あいつらか!」

 

 敵車列の先頭に立つ男――

ジェームズ・メイ。

 そして、その後ろには美食研究会の面々。

 彼らの目的はただ一つ。

「ゴールドマグロをいただく」

 メイが静かに宣言した。

「食材を粗末にするつもりはない」

 彼は帽子を直す。

「だからこそ――」

 アクセルを踏み込む。

「最高の料理にするのだ」

 ジェレミーが砲塔を旋回させた。

「……リチャード」

「ああ」

「輸送作戦が始まったな」

 リチャードは操縦桿を握り直す。

「違うぞ、ジェレミー」

「?」

「これはゴールドマグロ防衛戦だ」

 その横で、CV33の20mm砲がゆっくりと旋回する。

 ヒューが照準器を覗いた。

「ライアン」

「何だ?」

「俺、射手で正解だったかもしれない」

「どうして?」

「……あいつら、料理のためなら戦車まで持ち出してくるぞ」

 ライアンは前方を見る。

「それは確かに、運転より面白そうだ」

 CV33のエンジンが唸りを上げた。

 こうして――

ゴールドマグロ輸送作戦が始まった。

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