もしもグランドツアーの3人がキヴォトスに来たら3 ゲスト登場 作:ガチタン雷電
ライアン合流
合流
――「さらに厄介なのが来た」
ゲヘナ港。
潮の匂いと、金属と、なぜか火薬の気配が混ざる場所。
岸壁には一台の装甲化トラックが停まっていた。
側面には無骨な追加装甲、天井にはセンサー類。
その内部――
冷却コンテナに収められているのは、
ゴールドマグロ。
トリニティ水族館の至宝。
一度、美食研究会に奪われ、
奪い返した直後から「次はいつ来るか分からない」と言われ続けている、
呪われた魚である。
護送部隊は三両。
先導:パンターG(ジェレミー)
中央:装甲トラック(ゴールドマグロ)
後衛:チャーチル Mk VII(ハモンド)
完璧に“狙われる配置”だった。
そこへ――
「おーい!!」
聞き覚えのありすぎる声。
振り向くと、
港のコンテナの陰から、赤と黒のスーツが現れる。
デッドプール。
だがマスクを取っておりその俳優の素顔が露わになっていた。
正確には――
ライアン・レイノルズ本人が、
ノリノリで歩いてきていた。
「聞いたよ! 戦車で魚を運ぶんだって? これ、もう映画じゃん!」
ジェレミーが砲塔から身を乗り出す。
「やあライアン! 君はなぜここに?」
「呼ばれたから?」
即答だった。
ハモンドは嫌な予感しかしない顔で呟く。
「……誰が呼んだの?」
ライアンは親指で自分の後ろを指す。
そこには、ウィルマンが親指を立てていた。
「ミレニアムでイベントの打ち上げしてたらさ、 “魚の護送に戦車が出る”って聞いてしかもジェレミー達もいるって聞いてね」
にっこり。
「来ない理由、ある?」
ジェレミー 「ないな」
ハモンド 「あるよ!!」
だが、
すでに決定事項だった。
ジェレミー
「それで君の“車”は?」
港湾地区、コンクリートの広場。
潮風と重油の匂いの中、三人は向かい合っていた。
ジェレミーが腕を組み、顎を上げる。
ジェレミー
「それでライアン。
君の“車”はどれなんだい?」
ライアンは一瞬考え、
目の前に停まっているトラックを指差した。
リチャード
「え?
……あれなの?」
ジェレミーは眉をひそめる。
ジェレミー
「魚を運ぶ箱付きトラックが“君の車”?
随分と……地味だね」
ライアンは肩をすくめ首を横に振る。
リチャード
「いや、だって他にそれっぽいもの――」
その時だった。
トラックの荷台から、
重低音の油圧音が鳴り響く。
――ガコン
――ギギギギ……
荷台の装甲パネルが左右に展開し、
内部から“何か”が立ち上がる。
赤と黒の装甲。
四脚が地面に降り、
全高4メートル超のシルエットが、ゆっくりと姿を現した。
それは日本の企業が作ったロボット
アーカックス
だが何処か細部が変わっていた。
その名も……
D.A(デッド・アーカックス)。
一瞬、風の音だけが残る。
ジェレミーの口が半開きになる。
ジェレミー
「……あ」
リチャードは一歩後ずさる。
リチャード
「……ジェレミー
あれ、車じゃないよね?」
ジェレミー
「ああ…
完全に“問題”だ」
D.Aは静止したまま、
センサーが低く唸る。
その横で、
何事もなかったかのようにライアンが拍手した。
ライアン
「はい出ました!」
二人が同時に振り向く。
ジェレミー
「ライアン、
あれは何だ?」
リチャード
「いや、
“何”というより
“なぜここにある”のか聞きたい」
ライアンは得意げに語り出す。
グランドツアー・ナレーション調
語りライアン・レイノルズ
これは――
アーカックス。
日本で作られた四脚型ロボットで、
本来は平和利用を前提とした実験機だ。
重量は数トン。
バッテリー駆動。
歩行もできるし、車輪でも走れる。
そして当然のことながら――
まったく車ではない。
ブラックアウト
ライアンはD.Aを指差す。
ライアン
「で、あれはね」
一拍置いて。
ライアン
「それを見た
ミレニアム・サイエンススクールのエンジニア部が
“もっと面白くできる”って言って」
ジェレミーが嫌な予感の表情になる。
ジェレミー
「やめてくれ」
ライアン
「作った」
リチャード
「作った!?」
ライアン
「正確には――」
少し考えて。
ライアン
「盗んで、分解して、
“海賊版”を作った」
ジェレミーは空を仰ぐ。
ジェレミー
「キヴォトスの技術者は、
なぜいつも理性を置いてくるんだ」
D.Aが低く駆動音を鳴らす。
右腕には巨大なP90風サブマシンガン。
左腕にはブレード。
両肩にはジャベリン
完全に戦闘用だ。
リチャード
「……で、
これで何をするんだい?」
ライアンは即答した。
ライアン
「魚を運ぶ護衛をする」
沈黙。
ジェレミー
「これでか?」
ライアン
「だって
盗まれたら困るだろ?」
ジェレミーはパンターGの砲塔を軽く叩く。
ジェレミー
「この時点で、
誰も近づかないと思うが」
D.Aはゆっくりと一歩前に出る。
地面がわずかに揺れた。
リチャードは苦笑する。
リチャード
「……つまり君の“車”は」
ライアン、満面の笑み。
ライアン
「そう
あれ」
ジェレミーは結論を出した。
ジェレミー
「素晴らしい。
完全に番組史上最悪の護送任務だ」
D.Aのセンサーが光る。
物語は、
ここからさらに
おかしな方向へ進み始める。
その後
アーカックスは戦列の外側、
少し距離を取って随伴することになった。
“威圧”としては完璧だが、
余計に目立つ。
護送開始
――「最も遅く、最も目立つ行進」
ホーン一つ鳴らされ、
装甲トラックがゆっくりと動き出す。
速度:時速30km未満。
理由は色々あるが
魚に優しい道に優しい
戦車と同じスピードだ
しかし敵からは攻撃しやすい
先頭のパンターが軽やかに走る。
ジェレミー(無線)
「素晴らしい。 やはり戦車は速くあるべきだ」
後方のチャーチルは、
地面を“削りながら”進んでいる。
ハモンド(無線)
「僕は“守る役”だからね! それに、追いつけないことはない!」
実際、
追いつく必要はなかった。
後衛としては理想的だった。
そのさらに横を、
アーカックスが四脚で歩く。
ライアンはコックピットを開け、
風を受けながら無線に割り込む。
「ねえジェレミー! これ、完全に『護送ミッション』だよね?」
ジェレミー 「失敗したら?」
ライアン 「爆発するやつ」
ハモンド 「やめて!」
不穏な静けさ
しばらくは、
異様なほど平和だった。
ゲヘナのモブ生徒たちは遠巻きに見送り、
誰も近づかない。
ジェレミーが言う。
「奇妙だな。 美食研究会が来ない」
ハモンド
「それ、フラグだから言わないで!」
その瞬間、
ライアンが港の倉庫群を見て呟いた。
「……あれさ」
全員の視線が向く。
倉庫の屋根の上。
一瞬、影が動いた。
魚は、
静かに冷却コンテナの中で眠っている。
だがこの護送は――
あまりにも目立ちすぎていた。
ジェレミーが楽しそうに言う。
「さて諸君。 ここからが“本編”だ」
ハモンドは深く息を吸う。
「……お願いだから、 今日は平和で終わって」
アーカックスの中で、
ライアンは笑っていた。
「大丈夫。 カメラは回ってる」
――誰も回していないのに。
行進は、
ゆっくりとトリニティへ向かって続いていく。