洗脳少女ノ魔女裁判   作:大正エビフライ

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歯医者行っててものすごく遅れましたが、なんとか毎日投稿継続出来ました……。


#1-1 自己紹介

 ラウンジをきょろきょろと見渡す。わがはい、ノア、エマ、ヒロの他に、あと九人の少女が集められていた。

 腰にレイピアを提げた、金髪長身の王子様風の少女。なんというか、色々とすごい白ギャル風の少女。紫色が基調の和風の衣装を纏った、これまた色々とすごい少女。なぜか銃を背負っている、ツインテールの少女。なんかメンチ切ってるし、キレ散らかしている喧嘩上等って感じの少女。何故かものすごく笑顔の、探偵風の衣装の少女。西洋人形を思わせる、ステレオタイプのお嬢様のような少女。嫌悪感を露わにして鼻を摘まんでる、猫耳ヘッドホンの少女。聖女を思わせるような衣装の、おどおどした少女。

 

(……本当に、一人残さず全員キャラが濃いな)

 

 わがはいたちだってそうだ。自分はスケッチブックを介して話す筆談者だし、そしてノアは今何故か室内の配置を好き勝手に変えているし、ヒロは妖怪正しくない……じゃなくて、口癖のようにすぐ正しい正しくないと言うし、エマは……エマは少し抜けているところが多いだけで普通か。

 とりあえず一周見てみた感じ、ユキは居ない。

 ユキが巻き込まれなかっただけ良かったと言うべきか、わがはいたちが傍に居られないことを悔やむべきか……。

 そう考えているとふと、エマと目が合う。エマの瞳がぱぁっと輝いた。

 

「アンアンちゃん!」

 

 エマが、かつてのような笑顔で駆け寄ってくる。

 良かった、エマはおかしくなっていない。そう思ってわがはいも笑顔を浮かべ、一歩踏み出そうとする。

 ……だが、その再会は唐突に遮断される。

 

「彼女に近寄るな」

 

 ヒロが、エマの前に立ちはだかったのだ。かつてユキを守ってくれていた、ヒロの頼もしい背中。だが、今ではそれはエマへの通り道を塞ぐ邪魔な障壁に過ぎない。

 

「アンアンは君のせいで学校へ来れなくなったんだ。忘れたとは言わせない」

「そんなっ! ボクはそんなことっ……」

 

 ……何を、言っている? わがはいが学校へ来れなくなった? わがはいは昨日一日学校を休んだだけで、不登校になったような事実はない。というか、もしそうだったとして何故まだ留学中だったヒロがそんなことを断言できる?

 ぐるぐると思考を巡らせるが、何もわからない。というか、わかるわけがない。なんなんだこれは。

 まるで、自分だけ別世界に落とされたみたいな、おかしな状況。どうすればいい? わがはいはどうすれば……。

 

「いやあ、すごいですね! いきなり修羅場ですか? 監禁に化け物にドロドロの人間関係! これは中々高まっちゃいますね~!」

 

 空気を読まず、場違いに明るい声が響いた。

 探偵風の衣装の少女だ。空気が読めないのか敢えて空気を読まなかったのか……だが、その声に助けられた。全く状況が把握できないのは変わらないが、少なくとも少し落ち着くことが出来た。

 

「あ、あなた、よくこの状況で声を上げられましたわね!? 誘拐された挙句、誘拐先で修羅場が起きてるんですのよ! もっと空気を読んだ方がいいんじゃないかしら!」

 

 少し間を空け、西洋人形お嬢様が声を上げて鋭いツッコミをする。二人とも話題を逸らす為わざと大声で話してるのか、ただの空気の読めない阿呆かは分からない。

 ……だが、少し緊張が解けたのは間違いない。思わずふふっ、と笑みがこぼれてしまった。

 

「全く、何を笑っておりますのあなた。修羅場のど真ん中なんですわよ! あなたはあなたで、もっと危機感持った方がいいんじゃないかしら?」

『すまない。貴様とそこの探偵の漫才が見事だったものでつい、な』

 

 わがはいは素早くペンを走らせ、スケッチブックを掲げた。

 

「あら? あなた、喋れないんですの……?」

 

 彼女は不思議そうに首をかしげる。まぁ、それは当然の疑問だろう。ならばいつもの手で強引に納得させよう。そう考えペンを走らせた瞬間、横から鋭い声が飛んだ。

 

「彼女にそれ以上踏み入るのはやめてもらおう。人には人の事情があるんだ」

 

 またヒロだ。流石に他人とのコミュニケーションを遮られては困る。わがはいのことを守り、好いてくれているのはありがたいが、さすがにこのままでは会話すらままならない。

 ……それに、いまのヒロの態度はまるでわがはいを「壊れたお人形」か何かのように扱っていて、気に食わない。貴様は言ってくれただろう、わがはいに強いと。

 

(……わがはいは、守られるだけの存在ではない)

 

 わがはいは、ヒロにすっと手を突き出し、その言葉を強引に制した。

 

「……アンアン?」

 

 驚いているヒロを尻目に、わがはいはペンを走らせて西洋人形お嬢様にスケッチブックを突き出す。

 

『気にするな、海よりも深い事情があるのだ』

「海よりも深い事情、ですの? な、なら仕方ありませんわね!」

 

 チョロい。ヒロたちもそうだが、人間というものは「深い事情」と言われると、それ以上踏み込んでこなくなるものらしい。便利な言葉だ。

 わがはいが安堵していると、それを見計らったかのように凛とした声が響いた。

 

「そろそろ、話は終わったかな?」

 

 ヒロ……ではない。王子様風の少女だ。こういう時、ヒロが真っ先に声を上げないというのも新鮮だな。

 

『ああ、すまない。何か話したいことでも?』

「うん。みんな初対面だと思うから、自己紹介をしていこうと思ってね」

 

 自己紹介……そういえば、わがはいは全員の名前を把握していなかったな。

 

「まずは私から名乗らせてもらうよ。私の名前は、蓮見レイア」

 

 王子様風の少女……もとい、レイアが口火を切ると。順に他の少女たちも口を開き自己紹介始めた。

 お嬢様の名は遠野ハンナ、探偵……改め自称名探偵の名は橘シェリー……次々と自己紹介が進んでいく。

 

 自分の記憶の中の中学のクラスと、現在のメンバーを照らし合わせる。

 ……全く共通点が分からん。少なくとも、エマとヒロ以外は見たことがない……いや、レイアの名だけはどこかで聞いたような……中学か……? だが、ハンナのような喋り方の奴は居なかったような……。

 

「私の名前は氷上メルルです。それで、エマさん……あの、あの……怪我、しちゃってます……」

「大したことないよ、大丈夫」

「大したことあります! 見せてください!」

 

 聖女のような少女……メルルと言ったか。彼女はエマの制止も聞かず、強引にその傷ついた膝に手をかざした。

 何をする気だ? 手当てをするにしても、消毒液も絆創膏もないではないか。そう考えていたその時。

 

 ――メルルの手のひらが暖かな光を帯び、エマの傷を癒した。

 

(なっ……!?)

 

 あれは、まさかわがはいのような魔法か……? 擦りむいていたはずのエマの膝が、見る見るうちに塞がっていく。まるで、時間を巻き戻しているかのように。

 ……ということは、他の少女も魔法を……?

 

 そう考えていた時だ。

 

「あ、人がいっぱい……」

 

 間の抜けた声と共に、通気口から化け物フクロウが飛んできた。

 

「えっと、改めまして……この屋敷で管理を任されている可愛いフクロウ、ゴクチョーと申します」

(来た……)

 

 おそらく、わがはいたちを誘拐した元凶。……一体、どんな説明をされるのやら……。

 

「あっと……すごく申し上げにくいんですが……」

 

 ゴクチョーは翼で頭をかくような仕草を見せ、軽薄な口調でとんでもない言葉を吐き出した。

 

「皆さんは、『魔女』になる因子を持っています」

 

 ――魔女。

 

 その単語を聞いた瞬間、心臓が凍り付いた。

 魔女の因子……間違いない、魔法を使えるからわがはいは収容されたのだ。

 この国にとってあまりに危険であるとか世界に害をなす悪者とか色々聞こえるが、動揺で続く言葉が頭に入ってこない。

 

「多くの魔女になったものは処刑されますが、与しやすい者をマインドコントロールして――」

 

 周囲の少女たちが騒然とする中、わがはいは震える手でスケッチブックを抱きしめた。

 何もわからない中で、この仕打ち。これは、魔法を使ったわがはいへの罰なのか……?

 バレたら、死ぬ。自分が両親を壊した魔女だと知れれば、きっと処刑される。

 

 ……だが。

 

(まだ、終われない)

 

 そう、まだ終われない。エマとヒロに問いただすのだ。何があったのか、どうしてそうなってしまったのか。それまで、死ぬわけにはいかないのだ。

 わがはいは震える手でペンを握り締める。ならば、わがはいは自らを偽ってでも、生き残って見せる。

 生き残ってここを脱出し、エマ、ヒロ、ユキとまた四人で幸せな時間を過ごすのだ。

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