カルドセプト『可能性の1つに』   作:ハガサネ

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第12話 活路

?日前の出来事

「それで?サルバトールの墓参りに行くついでにゼネス坊やを諭しに行くと?」

風呂上り、爪の手入れをしながらグルベルはホロビッツと魔術で出来た電話で会話をしていた。ボージェスアカデミーが開発した試作品である。間も無くエンダネスのダゴンや島のみんなとも話せることだろう。

 

「うむ、それが終わり次第、別プラン『カルドラダイス作戦』の準備をせぬばな」後ろで弟子のナジャランが慌ただしく大声でゴリガンとせめぎ合っている

「サブプランなのに随分な力の入れようね、そんなに心配?あのルーフたちが先発を務めるのよ、ぶっちゃけ強いわ、彼ら」

 

「ふむ、儂もそう思っておるがな…敵は耳が良すぎる、どこからか情報が漏れてるやもしれぬ。ゴリガンの報告にあるネペンテスという黒のセプターはデラネシア草を使って人間を使役していたとのことじゃ、他にも色々な手を使って情報を入手しているやもしれん。仮定の話故口外は出来ん」

 

「まぁ誰かがチクってもあの二人と精鋭セプターならなんとかなるでしょ?」

楽天的に魔女は笑った。

「なんにせよ、もう2つ計画を変更する、まず儂が転送円を作る事じゃ」

「サラっというわね…家一件作るようなものよ?」「儂の技量ならば楽勝じゃよ」

賢者は自身満々に笑みを浮かべた

 

「転送円の研究に使われた孤島がある。汚職が原因で廃棄されたがいくつか無事な転送円が存在する。それを使う」

「そして秘蔵の『エルダードラゴン』で飛翔してバルティス山に到着ってワケね?」

 

「もう一つある。総大将のナジャランを偽装して別動隊にする。高速の飛行クリーチャーを扱うセプターが脱走兵のフリをしてナジャランを回収、迂回しながらバルティス山に向かう。という手筈じゃ」

 

その発言に驚いて深爪をしてしまう。

「あだだだだ!ちょっと!変な事言わないでよ!?」

「そうか?まぁ新技術で作られたからこの電話とやらは傍受は難しかろう」「そんな話じゃない!そこまでするメリットがあるの!?グライダーが爆発した時の保険!?」

グルベルは憤慨した。

 

「そう驚くでない、確かに保険としてのメリットはある。しかし重要なのは無傷のナジャランが敵の中枢に殴りこめることにあるのだ、恐らくグライダー班は最終防衛の勢力と戦うハズじゃからな」

 

「アンタが先陣きって大立ち回り、ナジャランが後詰めって事か…超回りくどいしグライダー班に恨まれるわよ」

 

「その班は2名になるが陣地に入った敵を野放しにするほど無能ではないはずだ。必ず二手に分かれようぞ。もしかしたら撃破して駆け付けてくれるやもしれんな。」

 

「つまり作戦中にアンタが転送円を作れないとグライダー班の二人は速攻で死んでナジャランも孤立するって寸法ね。プレッシャ~…私は手伝わないわよ?ケツカッチンは嫌いよ」

 

「茶化すな、サブプランというのは土台無茶から捻出するものじゃよ」

スペルで深爪を癒しながら魔女は質問した

 

「それで、敵陣中央に入ったら賢者サマは何をするの?エルダードラゴンで大暴れ?」

「散々煮え湯を飲まされたからな、●●を使って暴れる」

グルベルはそれを聞いた途端和やか空気が変わった

──

「なるほど、竜眼か」「ほう、見ないでも解るか、いかにも」

ベルカイルは長方形のケースを持ったホロビッツと対峙している

 

霊水で満たされたケースを握った瞬間ケースが溶け、水が勢いよくあふれ出して老賢者の手元には水浸しになった巨大な眼球だけがあった

(我が師ギルマンよ、これからを生きるもののために…この力をお借りします。)

 

「確かにそれを使えば重傷のその体にも無茶は出来るだろう、だがそれは無傷の状態で使う事が前提のはず、体力のない状態でストームコーザを使うがごとし」

 

キエエッッッ

ホロビッツは叫ぶと左手で自分の右目を貫いた。目から溢れる血が顔面と床を赤に染め、歯を喰いしばる

 

移植は成功した。ゼネスと違って適正もないし、サルバトールの施術に比べればお粗末であろう。だが確かに手術は「がぁぁぁあッ」縫合された目を貫いた以上の絶叫が響き渡る

 

膨大な記憶と感覚、神経が吹き飛ぶ魔力の本流がホロビッツに襲いかかる

感覚的にもって5分か、割に合わぬが…キセルで一服くらいは出来るかと内心笑った

 

「いくぞベルカイル!」右目に取り付けた竜眼が血の涙を流し、目の前の敵を見据えていた

「エルダードラゴンよッ今こそ」

賢者が召喚したそれは数少ない四属の王を苦しめ戦い抜いた誇り高き竜族の始祖だった

 

ベルカイルは突然の強敵に怖気ずカードを冷静に構えた

「フォマルハウトの情報通りだったな」そして目の前の巨龍を見て初めて身構える姿勢を取った

瞬間、彼の目の前が光で覆われる、エルダードラゴンのブレスだ

風の王を跡形も無く消し去る威力を誇る威光とも言える一撃

 

「あと2,3匹いれば危険だった事は認めよう。だがアンサモン級の逆転の一手ではないようだな」暗黒の司教は四属の王である『ダークマスター』を瞬時に召喚し、彼を守っていた

それがどうしたと言わんばかりになおもブレスを撃ち続けるドラゴン

 

ギルド本部に残ったセプター達は誰も加勢をする姿勢は取らなかった、あらゆる意味で邪魔にしかならない事を本能的に理解しているからだ

 

この時ベルカイルは己の有利を確信した。セプターがガラ空きだからだ。瞬時に飛びドラゴンのブレスを最小限に受け止めカードを展開させた

 

「黄昏の時は来た、目の前の敵を穿て!オーディンランス!」

城塞都市ロカの国宝ともいえる矛を手に取りそう叫ぶ

それに合いの手を打つように賢者も叫ぶ

「ギルマン直伝の活龍拳でお相手致す!パワーリスト!」金色の腕輪が賢者の両手首に収まった

 

「死ね!」バルテアスに賜った怪力でベルカイルがオーディンランスを軽々と持ち上げ突き刺す

しかしその動作より早く動き、ホロビッツはベルカイルの腹を砕いた。神速の拳が増強された一撃は鬼人の如く腹をえぐった

 

「グルベルの情報通りだな、『エコー』を使って神の魔力と繋がる発想は見事、しかし一度使えばその魔力も結果として減退を起こし回復に時間を有す。今がその状態だ、違うか?」

 

血を吐いたベルカイルは体勢を立て直し槍を構え、静かに告げた

「デュラハン」

ホロビッツの後ろから黒色の首無し騎士が襲いかかる

 

「一手遅いわ」

決殺の一撃を地面から出た生きた仁王像が受け止めた

「アスラか…」

 

再度突きの構えを取りながらベルカイルとホロビッツは相対す

もう残された時間は僅か、ホロビッツは先に動きベルカイルを殴る。防御態勢を取っていて致命を免れている。もう一打蹴りを入れるが膝を合わせられる

続けざまの肘鉄を打つ瞬間『エコー』と彼が呟く瞬間を見た

 

「ぬかった」一瞬にして魔力障壁がベリカイルを守る。瞬時に後退しようと跳躍したが同じ速度で彼が迫る暗黒の司祭

 

「これで終わりだ!賢者よ!」

深々と胴体にオーディンランスが突き刺さった

瞬間口から血が溢れるがホロビッツは勝利の笑みを浮かべた

 

「相撲とろうか?」

ホロビッツは槍が突き刺さった状態でベルカイルを掴み、身体をひねって立ち位置を変える

 

「なに!?」後ろには転送円の壁が見えた。嫌な予感がする「今じゃ!転送円にマジックボルトを!」「…御意!!」突如円の下部分の一文字が爆発した。転送円が故障し、中から異次元の空間が覗く

 

信じられない。この賢者は自分を道ずれに異空間に幽閉する気だ

 

もう少しでダークマスターがエルダードラゴンの炎を耐えきり反撃に成功する。そうなれば目の前の賢者なぞ瞬殺だ。しかしもうそんな時間はない

 

先ほどからデュラハンとアスラが激戦を繰り広げている。一か八か勝負を決めなければならない

「間に合え…!!」辛うじてアイテムカード『クレイモア』をデュラハンに使う事に成功する。

 

これ以上気を抜けば自分は故障した転送円の中に引きずりこまれるだろう

それにしてもなんという力だ、ギガンテリウムすら持ち上げたこの怪力が通用しないとは…

ベルカイルはほかでもない人間の底力に恐怖した

 

デュラハンは名剣を力のままに振り下ろした。「我々を忘れては困る!」医療班もまた歴戦のセプター。土地改造スペル『アップヒーバル』を使い周囲は熱を帯びた

「ぐぬ!?」仁王は両腕でクロスさせ大剣をかろうじて防いだ

 

「ようやったわアスラ!そして医療班よ!このジジイに最後まで付き合って感謝する!さらば」

アスラの能力バックワードがさらにベルカイルに追い打ちをかける、身体が自然と後ろに下り、転送円に吸い込まれる。すなわち時空の狭間で永遠に彷徨う事になるということだ

「正気か!?」「貴様に言われたらお終いじゃな」

 

ホロビッツは血を吐きながら笑みを浮かべた

 

なおも後ろに歩を進み続ける。ダークマスターの巨腕がエルダードラゴンを貫いたがそれどころではない!何をすれば打開されるか一瞬に思案を促す

 

何故転送円が普及しなかったか調べたことがある

扱いが難しいからだ。

人体に反応し、ほんのわずかな重量ミスでも誤作動を起こす欠陥品だからだ

 

もう考えている余裕はない、ベルカイルは転送円に左腕を突っ込み、内臓している『エコー』のカードを暴走させた

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