カルドセプト『可能性の1つに』   作:ハガサネ

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第14話 罪との再会

「オラァ!!」

バルテアス山の麓、照り付ける砂の上でゼネスの義手がデプテラの顔面を再度殴りつける。

打撃に成功したのはこれで3度目。デプテラの魔剣『ストームコーザー』の衝撃を喰らったのは今ので5度目だ。直撃ではないといえデプテラに分があるのは確かだ

 

激戦の末、ゼネスとオーエンを分断させたのは成功した

戦闘不能になったミゴール族は2人、デプテラは多数のクリーチャーを失ったがこの状況で戦況は有利に傾くだろう。クリーチャーであるバーサーカーも激戦の末に打倒した

 

しかしデプテラに強い疑念が生じた(これほどまでに負傷をして何故これほどまでに接近戦で勝負を…?)

考えられる理由は本人の気性が第一、次に自分が近距離に弱いと踏んでいるのか?クレイモアを超えた破壊力を持つストームコーザーの前で…?

 

まぁいい、どうせくだらんプライドが敗因なのは間違いない!後ろまで跳躍したあと指を鳴らした

「ひとつ教えてやる!味方に気を使って『テンペスト』を発動しなかったのが貴様の敗因よ!」

 

いつの間にかゼネスの周りには蟻人間クリーチャー『ハイブ』が包囲。キチン質を思わせる装甲をしたライフルを使った一斉射撃が襲い掛かる

 

「…!!」

遠巻きにオーエンがその光景を見たが声すらかける暇がない。『デコイ』を使った攻防一体のコンビネーションを用いても精鋭のミゴールの包囲網を突破できない

ふと見れば年端もいかない少年のミゴールの戦士が一人いた。彼も他のミゴール族と連携した相応の強さを誇るが何より眼からその執念が伝わってくる

(これほどまでに鍛え上げた肉体と意思…何もかも惜しい巡りあわせだ)オーエンは歯噛みした

 

そのようなオーエンの葛藤なぞ露知らず、デプテラの無慈悲の指示のもとで行われた銃撃がゼネスを襲う

「ふはははは!フレイムロードが無くてはこんなものか!」

「死体も確認せずにぬか喜びか!甘い!」高速移動のスペルカード『ヘイスト』で血だらけになりながらも彼はハイブの包囲網を突破する

しかし、その先は何もない、山から少し離れた空間だ。

 

オーエンは呆気に取られた。もしや遁走するのでは?と

 

だがデプテラに危機感が生じる

ハイブは確かに強力なクリーチャーだ。召喚すればするほど連携が強固になり相手を追い詰める

しかし主軸にしてあるカードが原因で戦術に柔軟性が無くなる。特に生産拠点を潰されればハイブは製造出来ない

 

デプテラの危惧は一つ『カモフラージュ』で身を隠した『ハイブクィーン』がそこにいるからだ

(接近戦に持ちこんだのは離脱する位置から戦闘を避けてる地区を読み取るためか!?そしてテンペストは使えなかったのではない!温存していた!ハイブクィーンを倒しハイブが製造できない状況を作った後で放つ気だったのか…!?)

 

デプテラは一本取られた表情で同じくヘイストを発動させる

二人の競争は僅かな所でデプテラが勝利した。

瞬時に『プレートメイル』を発動させゾウムシの様な強固な装甲に身を包んだ死蟲の主はゼネスの拳を防いだ

 

「残念だったな!」腕にあるストームコーザーを振るったがゼネスはそれを白刃取りで受け止める。

「ぐああああ!!!」だが破壊剣の衝撃が伝わりダメージが残った

 

「もう手を残っていまい!!死ね!竜眼のゼネス!!」

魔力を送り円筒状の女王に司令を送りハイブを生み出そうとしていた。

「魔力エネルギーが不足のため、ハイブの製造が出来ません。繰り返します。魔力エネルギーが不足のため、ハイブの製造が出来ません。」

「バ…バカな!?」

 

追い打ちをかけるようにストームコーザーが壊れ、ハイブ達も糸が切れたように地面に突っ伏した。ハイブクィーンも迷彩が無くなり砕け散った。デプテラは魔力を枯渇したのだ

 

「な…なにが起こった!?」狼狽えるデプテラに向かってゼネスは見せびらかすように左腕の義手を撫でる

「この俺の『バンディッツグラブ』は良く響いたろう?」

殴るほどに相手の魔力を奪う横暴の様なアイテムカード、それが『ブラックスミス』で鋳造した義手の正体だった

 

「さらに俺の貴様の魔力を奪ったことでコレを出せる条件は十分!行くぞ!左腕解放をさせる!!!」

ゼネスはバイヤーであるロッコから取り寄せた目玉の入った座薬?を義手に突き刺した

【古代人の網膜スキャン完了、ボックスを開きます】

電子音声が響き垂直に伸ばした腕から二枚のカードが飛び出た

 

「オーエン!グライダーを動かせるほどの機械の心得があったようで何よりだ!俺も石戦車『ジャガーノート』を動かした技術経験がある!!行くぞ!!俺はβ!貴様はαだ!!」

 

突如としてオーエンの上空に鯨より大きい巨大な機械の球が現れた。

更に輪で出来たビームを照らし吸い込まれるようにその中に入るオーエン

 

(な…何を見ているのだ我々は)(わ…わからぬ、デプテラ様が戦闘不能な状況なのだ。我々だけでも死守せねば)

先ほどまで戦っていたミゴール族は困惑に包まれた

 

いつの間にかその球に向かって同じ大きさはある二足歩行の脚が生えた機械がせまってくる

「行くぞ!バトルギアβ!」「まさかコレに乗るハメになるとは…バトルギアα!」

 

「「合体!!超無敵巨人!バンドルギア!!!!」」

二つの機械はなんやかんやあって一つの巨大ロボに変形した!!!!

(おかしいだろ!!どう見ても!!!)デプテラ達ミゴール族は夢でもみてるかの様な状況に足を竦めた

 

一人のミゴールが弓矢を放ち、もう一人のミゴールは槍を投げても弾かれるだけだった。本来ならば魔象レベラーに傷をつける一撃だが目の前の二足歩行巨大ロボには意味をなさない

 

「やめておけ、これ以上動くと俺のゼネスキャノンが火を噴くぞ」「ゼネス殿…流石にその名前はどうかと…」

漏斗のような形状をしたビーム砲が周囲に滞空してる。飛行船『真理の探求者号』の主砲以上の出力を誇るその砲台は周りの戦意を失わせるのには十分だった…

 

「まさか噂に名高いバンドルギアを収めた金庫をバンディッツグラブに改造なさるとは…」

「俺も最初は金庫の中身を疑ったが…これも何かの縁なのだろうな、よければ俺がこれを手に入れ、バイヤーと共に解除方法を知った経緯を説明しようか?」「辞退させていただく…」

ミゴールもそうだがオーエンはそれ以上に困惑していた。

 

「さて、デプテラを含め貴様らに勝機はない。おとなしくバルティス山を登らせていただく」

「ソンナ事は、サセナい!!」

一人の少年ミゴールが飛び出した。その手にはデプテラを騙したブックが握られている

(やめろ○○!!!貴様はまだセプターとしての修行を終えていない!!)オーエンの拳で立てなくなった戦士が身体を起こしてまで少年を静止する

 

「急にミゴール達の言語が解る様に…これは一体」

「落ち着けオーエン!おそらくバンドルギアに備わった翻訳機能だろう。集音性も高いな…」

 

「ボクは、カードも満足ニ出せナイ出来損ナイセプターだって知っテル!!ソレデモ!!」

少年は周りに懸命に訴える「ボク達は死んデナイ!!生キテル限リ戦イ抜こウ」

 

「β、ミゴール族と会話がしたい。翻訳機能とスピーカーをONにしろ」

「なにをなさるおつもりで!?」

オーエンの静止を聞かず、ゼネスは目の前の少年に語り掛ける

 

「そこのガキ!一ついいことを教えてやる!実は総大将を務めるナジャランという奴はココにいない!俺達すら出し抜き今頃カルドセプトを奪取している頃合いかもしれん」「ゼネス殿!?」

 

動揺したミゴール達を無視するようにさらにゼネスは吠えた

「そしてそのナジャランは愚かにも貴様らミゴール族に生きる場所を与えようと必死に頑張っている。神の座についた際、居場所くらいなら提供されるかも知れんな」

(な…なんだと!?)「ブラフだ!!我らを救おうとする感情なぞ地上で生を謳歌している連中には無縁のはず!」

「そうでもない!」デプテラの叫びをゼネスは否定した

 

「俺の出自は師匠にも良く聞かされなかったが貴族の出らしい。しかし権力争いで両親は殺され俺も瀕死の重傷を負った所を拾ってくださったそうだ。そして償い切れぬ罪の数々…俺の死を望んでいる連中はそれこそ生まれた時から大勢いる…忌み嫌れた存在だ。生の充足なぞ既に捨てたわ」

竜眼を携えた青年の主張に少年は耳を傾けるしかなかった

 

「だが、そんな俺でも前を向いて歩けるくらいの根性はあったと気が付いた。生きて罪を償い続け、賞賛なぞ求めず忌み嫌われようと己の執念に尽くす根性が。お前はどうだ?」

「ソレくらいのモノは、アルつもりだ!」

 

「ならばだ兄弟!このゼネス!バルティス山を攻めてもミゴール族は決して傷つけぬと約束しよう!我が師匠にして義父、サルバトールの名において誓う!」

 

「見え透いた嘘を」「デプテラ!裏で生きてきた貴様なら人間の何を見てきたか用意に伝わるぞ!だがその程度で何もかも推し量った気になるな!」

バンドルギアの指が確かにデプテラを指した

 

「オーエン、すまんな。異論があるなら今すぐαから降りて俺と殴りあえ」

「…デプテラはソロンの街で暗躍した黒のセプター、犠牲に合ったものがどれほどいるか」

「それみた事か!マトモな奴の意見は良く聞くものだゼネス!さっさと我らを殺せ!」魔力を枯渇してもなおデプテラは高慢な態度を崩さない

 

「復讐をして散っていった者達を慰め、己が報われた事は幾度もありました。しかし代償は大きくさらに失われるものが増すばかり…」

バンドルギアが今度は拳を握りしめた

 

「デプテラよ、貴様も誓え。もしナジャラン殿が…人類が勝利した暁にはミゴール族を束ねる長となり場を収めろ」

「貴様はゼネス以上の阿呆か!?」予想外のセリフの数々にとうとうデプテラは力が抜けた

 

「統治能力はソロンでの規模を見れば明らか、言っておくが貴様らミゴール族に哀れみの感情はない。その少年の意思の強さに感謝するのだな」

「だから勝手に話を」

「進めるなあああああアアア!!!!!!!!!!」

 

 

少年の後方に怒号が響き渡った。見れば頭が欠けて煙が立っている人頭杖、ゴリアスがそこにいた

 

「まさか人間に絆されるとはな、我が神バルテアス様の脚を引っ張った失敗作なだけはある」

「ち…違う!」「何も違わぬ!!!!」最早何を言っても届かないだろうゴリアスの頭から煙がモウモウと凄い勢いで噴火する山の様に沸き上がった

 

「裏切りものらに制裁を!!!とくと見よ!我が怒りの炎!イビルブラスト」なぞを遥かに超えた火柱がゴリアスを焼き尽くした

 

「な…なんだアレは!?」

本来エルダードラゴンの炎すら通じないミゴール族の肌が焼き付いた。(これ以上この場にいたら危険だ!)戦士たちは騒ぎだし逃げ惑った

 

「まて!!貴様らが離れたら本土は…バルティス山の同胞は」

引き留めるデプテラの半身が火柱から出た熱線で吹き飛ばされる「げあっ」

その行為に意図はない、本当に彼自身の不運だった。

 

急いで背骨を切り離すが寄生部分は僅かしか残っていない。デプテラはこれから一生、首だけのまま生きねばならない…しかし、それは目の前の事態を切り抜けなければ不可能である

 

「あれが…フレイムロード」

モニターから熱を感じるはずがないのだがオーエンから汗が噴き出す。彼だけではないこの場にいたミゴールも少年もデプテラさえも滝の様に流れ出た

 

「ほぼ1日経っただけだが、何故だか久しぶりに感じるぞ。我が憎悪よ」

しかしその光景を前にしてゼネスは一人不敵な笑みを浮かべる。文字通り自分の肉体と罪の一部がこうして会えたのだから

 

そしてこの場にいた全員は気が付いていない。風の王が空を埋め尽くし世界を漆黒に包んでいることを

この世界で唯一の眩い明かりが目の前にいるフレイムロードただ一つという事を

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