カルドセプト『可能性の1つに』   作:ハガサネ

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第15話 『レジェンド』

「言っておくけどこれが最大速度だからね!?ナジャラン!」

「わ、わかってますよ!」

 

アロンダとナジャランは地図に描かれた情報を頼りに目標ポイントを通過した。

「バルティス山に付近に着いたらワイバーンから飛び降りてよ!ホロビッツさんとの契約はそこまでだ!」

 

「ここまでありがとうございまべっ!?」

陸上に着いた途端ガクンと彼女たちが乗るワイバーンがバランスを崩す

風の流れが死んだ区域に入った事によりエア・ポケットに入った様な急激な気圧の変化に耐えられず身体が揺れてしまったのだ

 

「しまった!?」

アロンダの懐から一つの赤い手帳が飛び出てきた

その時後方にいたナジャランは「あっ」「わっ」と手を振り回し、小指と薬指に安物な皮の感触に安堵した

 

「あぶなかった~」ナジャランは思わず挟んだケースを開いてしまう

中にはワイバーンのカードとアロンダと美形の青年が仲良くツーショットしている写真がある

 

「え…!?わっ!?ごめんなさい!」

「別に減るもんじゃないし、いいよ…」

 

「それにしてもカッコイイ人ですね、彼氏ですか?」

「うん…まぁ、結構ヤバイんだよ、身体」

「えっ?」

 

聞けばその恋人はレアカードを代々守ってる貴族のセプターで奔放なアロンダとは身分違いの禁断の愛だったらしい

 

そこで自分で爵位を買い取り、同じ貴族の身分になろうと大会に出場したり賞金首を取ったりして大金を貯めていたとの事だ

しかし突如として黒のセプター『深淵のフォマルハウト』との強襲に合い応戦するもレアカードを奪われた挙句『デス』の呪いを受けてしまう

治すには大金がいる…ホロビッツに誘われた際、この作戦を運命と感じ引き受けた。と、これまでの経緯を話した

 

 

「ぞ…ぞんな゛悲しい話がっっ」

「いや、ナジャラン…涙もろ過ぎっしょ…」

 

アロンダが軽く笑ってる最中突然遠くの地で眩く巨大な火柱が天を突くように伸びて次第に収まっていく…そして人の形へと変容していった

 

「う…嘘だろ…ありゃなんだい!?あそこのポイントは…方角的にグライダー班の地点じゃない!?」

「フレイムロード…!」

 

四属の王で唯一破壊のみを目的とした火属性の王

それがゼネス達のいた地点に聳え立っていた

 

「アロンダさん!ゼネスの所に」「行くわけないだろ!バカ!引き返して間に合う!?そもそも行って何すんだよ!」

ナジャランの言葉を遮って彼女は叫んだ

 

しばらく沈黙が訪れる。先ほどまで談笑していた仲とは思えない程に…

 

「悪かったよナジャラン…でも、アンタが行ったら何もかも無駄になっちまうんだろ?」

「こっちこそゴメン、アロンダさん…私」

 

ブワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

 

空一面が一瞬にして黒に染まった

「日食ってヤツがコレかい!?子供の頃に見たけどだいぶ違わないか!?」

アロンダは狼狽した

 

「違うわ!日食までまだ時間がある…これは…見ないほうがいい、知らない方がいい!!」

見覚えのあるモノが上空を埋め尽くしている。自分にとってコイツがどれだけ悪縁があるか分からない

 

「あ…あぁ!?ハエ!?」

風の王ベールゼブブが青い空を蹂躙していた

 

今この人類の瀬戸際で神は何処におわすのか…

世界中の人間がそう嘆くだろう

 

しかしそれが可視化されたのは皮肉としかいいようがない

ベールゼブブが唯一進行が阻まれ、まるで光芒のようにバルテアスが眠る山を照らしていた

 

「あれが神々の今までされてきた封印なんだ…!」

神の偉業や奇跡は眼に見えないものだとナジャランはその時理解した

 

「アレがお天道様かい…!凄い勢いで月に塗りつぶされている…」

もう半分以上影に塗り潰される太陽を見たアロンダは尚も速度を上げるようワイバーンに指示を出す

 

「アロンダさん、もう十分に距離は稼げました。後は私がサンダービークで」

「言ったろ!届けるって!こんな事くらいワケないんだ!」

それより来るよ!とアロンダがナジャランに声を掛ける

無風地帯の目の前で魔術で出来た風の壁『ハリケーン』が何体も現れた

 

「しっかり捕まってな!舌を噛むよ」

ナジャランは腰に手を回し、足に力を入れても振り落とされそうになる恐怖に耐えるしかなかった。アロンダもナジャランの感情が良くわかるが今はそれどころではない、急旋回やバレルロール、ありとあらゆる回避行動で見事ハリケーンを搔い潜る

ナジャランの幸運は今なにも食べていない事だ

 

だが最後のハリケーンが一体瞬時に姿を現した。巨大な斧が周囲に待っている、巻き込まれれば一瞬にしてミンチになるだろう

 

「ふざけんじゃないよ!」アロンダは叫び声をあげて武器アイテム『バタリングラム』を発動する

突如としてワイバーンから一本の巨大な一本角が生えた

リュエード最速の推進力を持った翼竜の一撃がハリケーンを突き破る。斧は粉々に砕けさっき迄いたいた悪魔の風は何も無かったかのように霧散した

 

「よしっ突破!あ…と…は…」歓声を上げるアロンダだったが目の前の状況に動揺を隠しきれなかった

 

〖ウゥウウUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!〗

 

悪魔の断末魔より心に響き天使の迎えの声より死を感じた嘆きが二人の耳を襲った

直後として油汗と来るんじゃなかったと後悔が頭の中で飛び交う

 

山頂から螺旋階段のある塔が黒い空の中で太陽を目指すかの様に伸びている

というよりクレーターの底、すなわちバルテアスの頭からその塔が生えているが今のナジャランにはなんらそれを知る術がない

 

その塔の先端には人の形がした彫像がいくつもあり、先端は目玉を生やした台座に立ち手を伸ばした魔王と形容出来る角が生えた像がある

 

「これはいったい…アロンダさん!私はもう大丈夫ですから!」

動じる間も無く塔頂にある魔王像から無数の追尾レーザーが放たれる

「こりゃまずい!飛び降りは禁止だよナジャラン!しっかり捕まってて!」

 

回避行動を取りながら塔に突き進むワイバーン、所々被弾するがナジャランの『タワーシールド』で分厚い装甲に身を包みレーザーの弾幕から強硬突破する

 

「あの塔が防衛装置なのか何なのか分からない…けど破壊しなきゃ…ね!」

再度バタリングラムを発動させようとカードを構えるアロンダ、しかし攻勢に移る瞬間に僅かな隙が出来てしまった

 

アイテムカード『アビサルトーム』だ。一瞬にしてワイバーンの片方の羽が石化してしまう

「くそったれ!!ここまでだ!ナジャラン!」

 

ワイバーンの召喚を解除して二人は中空に投げ出される

「ビーク!」咄嗟にナジャランはサンダービークを召喚させ、アロンダに手を伸ばそうとするがまた無数のレーザーに阻まれてしまう

 

ナジャランに出来る事は閃光と衝撃に身を守りながら塔に向かうのがせいぜいだった。あのままアロンダを探せば自分が死ぬことは明白…一発掠めただけでサンダービークの身体は相当のダメージを受けた

 

巨大な塔の螺旋階段の上層部に着いた彼女はビークを解除すると五体の確認とさっきまでいた彼女の安否が頭を巡った

「はーっ!はーっ!」ナジャランは肩で息をする。無傷だが涙がぽろぽろと溢れた。あの塔の攻撃から生存出来たという安心感とアロンダが行方不明になった己の無力感がせめぎ合った

 

「まさかこのような所まで着くとはな…ベルカイルの言う通り貴様は不確定要素の塊だな」

上空を仰ぐと空に浮く杖が二つ、マスターロッド・バルカンとゴリガンだ

 

「小娘が…」ゴリガンはただ無感情に彼女を見下ろしている。その視線が家族と慕っていた存在にとってナジャランは痛いくらい堪えた

 

「ゴリガン、お願いだから元に戻って!こんな事…ゴリガンらしくない!!」

「何を言うかと思えば…貴様らと共に旅をしていたのが異常以外の何物でもない。むしろ元に戻った状態なのだ」

バルカンの説明にうるさい!と睨みつけるナジャラン

 

「あんたのせいで…アンタたちのせいで…!!ナジャランは怒りのあまり、交渉に出た。

理由は2つ。ベルカイルがやってくるのも時間の問題(この場合ナジャランは地下にいると思い込んでいるが)という事実と日食までの時間があと少しという点だ

 

「動くな!!!」ナジャランは『ダイナマイト』のカードを起動する。掌に銀色のバトンの様な物体が収まる

「これ以上動くとこの塔を吹き飛すわ!そうなったら下にいるバルテアス神が」

「!!!????」

「うはっ!ハハハハハ!!!!ハーーーーハッハハハッ」

 

『ダイナマイト』を見て唯一動揺したのはゴリガンただ一人のみ、バルカンに至ってはゲタゲタと爆笑しているだけだった

 

「やれるものならやってみろ!この塔には大した傷もつかんぞ!?それにしても『ダイナマイト』とは…ふふふ」

「なにがそんなに可笑しいの!?私は本気よ!」

 

 

「これが笑わずにいられるか!!貴様の父と同じ死因を辿ろうとするバカ娘なのだからな!」

 

               え?

 

何を…何を言ってるのかまるで追いついてない、きっと勘違いしてるんだ。嘘だよ、だって父ちゃんは戦って死んだんじゃ

 

「マスター・バルカン、その話は」

ゴリガンが辞める様に促すが意地の悪い笑みを浮かべてバルカンは饒舌に語る

 

「帰還した際、我はそこにいるゴリガンの記憶を読み取った。この人頭杖が記憶を失い、貴様に合う前の記憶だ」

「デタラメを言わないで!」

ナジャランは頭を振ってなにもかも否定しようとした

 

「バノッツだったか?子連れで流浪のセプター、グリフォンとナイトの使い手だが滅多にカードを出さない奇特なセプターだった…かな?」

 

嘘だ嘘だ嘘だ「嘘だ!!!」

ナジャランは自分の血の気が引くのを感じた、絶対に認めるわけにいかない事実がそこにあった

 

「無貌のニヤル、黒のセプターの中で無属性を担当していたものだ。『バルダンダース』の寄生に成功したが人格に問題が生じた、精神に異常をきたし満足に任務が達成できない。まごうことなき『失敗作』だった」

 

ゴリガンは押し黙り、観念したかの様に目を閉じた

「しかしセプター能力は本物、ニヤル自体も他の人間に化けられる優秀な力を秘めていた…そこである運用が決まった。人頭杖も『プロテウスリング』を用いて変装し、人間社会に溶け込む事だ」

 

「まさか…街のゴロツキが…マフィア達を掌握したのは…」

「力の信奉者ほど愚かで便利な手駒はないな。有力者とも話を付けてあっと言う間に支部が立ちあがる算段がついたが鬱陶しいイレギュラーが立ちふさがった、それがバノッツ…貴様の父だ」

 

『ここを取り潰してわけわかんない教会を立てるんだってさ』幼い頃、父がよくいた店の女性が語っていた事を思い出す

 

「ゴリガンはニヤルと共に闇ギルドのアサシンに変装してバノッツを暗殺する手筈だった。所詮は流れのセプター、負ける要素はなかったが…」

バルカンは下卑た笑みを浮かべてナジャランの手に持ったダイナマイトを見た

「娘を避難させた後持っていたダイナマイトをドカン!というお話だ、その後ゴリガンの記憶はショックで喪失。手痛いと言えば手痛いが…まぁペイはできたな?はは、アーーハハハハハ!!!」一通り話すと再度高笑いするバルカン

 

「マスター…」

「みなまでいうなゴリガン、真相を話すのはむしろ敬意というもの…クク…それに」

バルカンが後ろを見ると、変容した地の王『ダークマスター』とその手のひらに乗ったベルカイルが迫ってくる

「時間は十分に稼いだ。日食もじき始まる…なによりバルテアスさまもこうして『依代』に乗り移ってるではないか」

 

「あ…あぁ…」

二人の会話なぞ今のナジャランにとって大した情報ではない

 

あれほどに大切な、家族の様に慕っていたゴリガンが、唯一の肉親である父が死んだ原因の一つだったなんて

「うわ…あああああ…」

 

直視したくない現実に彼女はその場で力なくへたり込んだ

依り代であるクリーチャー『レジェンド』の上でただ茫然とするしかなかったのだ

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