カルドセプト『可能性の1つに』   作:ハガサネ

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※この二次創作の内容は単行本6巻以降、未収録のストーリーを含みます。


第9話  ここにあったはずなのよ

「おやめくださいませ」「ほぅ」本拠地であるバルティス山の奈落からスペルカードを取り出すベルカイルを人頭杖ゴリガンは諫めた

マスター・バルカンを除き人頭杖が自分に意見したのは彼にとってこれが初めてだった。死んでいた好奇心が久しぶりに動いた

「転送円を用いての奇襲というのは私の考え過ぎた妄想、そういいたいのだな?」

 

転送円、セプターが開発した魔道技術の推を集めた代物で魔法陣に入ることで瞬時に移動出来る。便利ではあるが使用を間違えば別の所に飛ばされたり異次元に閉じ込められるため、細心の注意を払わなければならない

ベルカイルが転送円を危惧してる理由はセプターやカードによる干渉が限られている事、そして正確な数や位置も不鮮明である事だ。

生死の境を彷徨っていたとはいえ、転送円に精通している賢者ホロビッツがあのエンダネス島にいるのだ。瞬時とまではいかなくても驚くべきスピードで転送円を作成できるとゴリガンはよく知っていた

 

「いえ、その事ではございませぬ、そうでなくとも今頃は後方でグルベルと作戦を練り指揮を執っている可能性も高く、何もしていない方がありえませぬ。後方にあるエンダネス島に対しての攻撃事態は賛成でございます。むしろ転送円を使用した策は我々の想像では到底及ばぬ洞察力、感服いたしました」

 

「我がいない所でおべっかか、浅ましいな。誰が貴様と我々の目が互角と?」

いつの間にかベルカイルの本来の人頭杖にしてパートナー、マスターバルカンが空中から二人を見下ろしていた

「これはマスター・バルカン殿、全てのエクリプスの発動を完了したご様子。お力添えに敬意を」

「黙れ出来損ないがッ」バルカンが吠えた

 

彼らにとってゴリガンはエンダネス島を発見し、ホープを入手した功績者ではない

むしろたまたま不良品が突然動き出して仲間面しているに過ぎない、正直な所顔も見たくない存在である

バルカンの続け様に罵倒をするがベルカイルは片手を虚空に上げて黙らせた

 

「話を続けろゴリガン」

 

「懸念はもっともでございます、ですが…貴方様やマスター・バルカンほどの智慧者や実力者がいるという事、それ自体が逆手に取られているやもしれませぬ」

 

「罠だと…?そう言いたいのか?」

 

「あの狡猾な賢者の事です、何かしら最低限の策は用意され足止めされては面倒かと」

「代案は?」

「私めをお使いくだされ、人頭杖自体が最低限のセプター能力があるのはご承知のはず」

「貴様の魂胆が読めたわゴリガン」

猶もバルカンは彼らの会話に割って入った

「手柄をあげてバルテアス様が復活の際、我ら人頭杖の上位のポジションに着くのが狙いだ、違うか?」

 

バルカンは人頭杖のトップ、マスターロッドである

全ての人頭杖の記憶を読み取ることは容易ではあるが感情や思考は読み取る事は出来ない、精神がパンクするからだ。しかし1000年生きていれば同じ人頭杖からの衝突や裏切り、果てはなり替わってやろうと反逆してきた個体も少なからずいる。そうした連中と戦ってきた果てに疑心暗鬼になるのも無理はない

 

同情しながらも内心呆れながらゴリガンは毅然として答える

「毛頭もございませぬ。万が一の敗北要因を摘み取ることこそが戦術の」

その一言が怒りに触れたらしい

「敗北!?このマスター・ロッドであるバルカンが助力した策に敗北要因だと!?不良品の分際で」

これ以上の発言は悪戯に彼を刺激することになると悟ったゴリガンは押し黙るしかなかった。

 

「貴様はあの『失敗作』の片割れだな?経歴、記憶は先ほど同期されたぞ」

 

ゴリガンの眉間が微かに反応した。

「まぁ途中で記憶障害が発生したし、そうなった理由も把握した…あの小娘との皮肉ともいえる因果もな」

「バ…バルカン殿!!」「バルカン」

声を張り上げたゴリガンよりもベルカイルのその呟きの方が重く響いた

「雑談に興じるとは珍しいな。『エクリプス』の起動でだいぶ魔力も消耗したはずだ。休眠に入れ」

「ベルカイル…貴様」

「全てにおいて手はもう打ってある。間も無くあの鋼鉄の飛行艇は沈みデプテラ達が全滅しようとも敵の本隊は絶望を胸に死ぬことであろう」

「…!!」

バルカンも流石に驚くに値する発言だった

 

「残す憂いは賢人二つの排除のみ、ゴリガンは引き続き敵の動きを把握。特に鋼鉄の船だ、容易であろう?何かあればリベレーションで報告しろ」

「リベレーションによる通信?このバルカンの力を、我はいらぬと?」

 

「まるで幼子だなバルカン、他の人頭杖の内部にもリベレーションを含ませている。それに貴様には最終の詰めが残されている。万が一足止めをされても貴様さえいれば計画は完遂出来るのだからな」

自分にはベルカイルにはない役目をバルテアスに任せられている。その事実を突きつけられたバルカンは一応それで押し黙った。

 

「ともあれ賢人相手にゴリガンでは力不足だ、罠があるなら猶のこと私が行く。メテオによる爆撃で賢者の居場所を爆破するのが狙いだろう、悪くはないがやはり直接死体を確認するに限る」

「ではこの身を刺し違えても」「重傷であれホロビッツ相手には無理だ。ここは確実に叩く」

 

ベルカイルはスペルカード『テレポート』を使用し魔法陣に吸い込まれる

「後は任せた」そう言い残して

 

──

一人のギルド構成員が筆を取っている老人に話しかける。医療メンバーの長だ

「ホロビッツ様、怪我人と避難民の収容が完了しました。ザガリア共和国からの船による救援が来たのは大きいですが正直意外です…何か血縁者や弱みを握っているものいたのでしょうか?」

 

「ホホ…嫌われ者の王族でも頼ってくる派閥やコネクションはいるというもの、ヴァイデンめやりおるわ。それよりお主らも脱出しろ」

 

エンダネス島にあるセプターズギルドの本拠地にてホロビッツは上半身を裸にして無数の点滴チューブに巻かれながら筆を取っていた

「お心遣い痛み入ります。しかし我々は身寄りの無い身、最後までお付き合いいたします」

「お前には弟がいたろう…メテオか?」「海洋区域の哨戒班でした。リヴァイアサンに巻き込まれたかと」

「済まなかったな。全ては儂の力不足」「何をおっしゃいます、全ては黒のセプター…」

途中で彼は言葉を失った

早い…あまりにも作業工程が早すぎる

 

魔道具のアシストにも頼らずただ自分の技術と職人としての直感だけで動かしている、自分も転送円を作った事はあるがアシストを付ければ3日、なければ最短でも5日は掛かる作業だ。それを数時間でもう完成に近づきつつある

不謹慎に感嘆の声を思わず漏らしてしまった。しかし…この転送円は一体どこに通じるんだ…?

そうしているのもつかの間、急に警報が鳴り響いた

 

「大量の魔力反応を確認!黒のセプターです!」コンソールを操作していた職員が叫んだ

筆を置き賢者は立ち上がった。「時間切れか、無念じゃ…皆は出払え、せめて儂が時間を稼ぐ」

「で…伝令!先ほど緊急の打電が」「内容は?」

ホロビッツはオペレーターと会話をしながら上着を羽織った

「それが…ブティックは何処か?と…何かの暗号ですか?」「あのバカたれ…!」思わずホロビッツは上着を脱ぎ棄て転送円を書くのに戻る。その表情は険しく、今にも急いて飛び出しそうだった

──

魔法陣が展開され中から暗黒の司教、ベルカイルが姿を現した

場所はエンダネス島の中心部、メテオストームで無数のクレーターがある爆心地の中央。

 

本来は避難に遅れた民衆がメテオと共に消滅した凄惨な場所であるはずなのだが全てが無い。まるで砂漠だ

照りつける太陽の中数歩進むとある残骸を確認する

人頭杖ゴリリン、黒のセプター「深淵のフォマルハウト」のパートナーであり彼女が死んで移行エンダネスまでナジャランの動向を探るため尾行していたのである

だが死蟲のデプテラの放った『ストームコーザー』が直撃し、枯れたサンゴの死骸のような姿になってしまった。魔力もない、瀕死だ

 

「ご苦労、最後の仕事だゴリリン」ベルカイルは労いの言葉をかけ、なおも彼女を動かそうとした

「まだセプターの魔力を探知できるか?賢者ホロビッツ…いや、一番強い魔力を感じる所は?」「あ…あ…」

ゴリリンはカサカサの唇を動かしながら何か伝えたいようだが声が出ない

それを自ら悟ると首と視線で誘導する。ギルドがある地点だ

「やはりか、今までよく頑張ったな」そう告げるとゴリリンを処分しようとしゃがみ手を伸ばした

何かに気が付いたのか身体をくねらせるゴリリン、途中でポキンと杖部分が折れてもなお暴れ出す動作を止めなかった

「ゴリリン、その状態では最早助からぬ、せめて私の手で終わらせる事を慈悲と知れ」「う……ろ」「何?」

「うしろ…後ろに恐ろしい魔力を持った女セプターがいます!後ろに女セプタ」

チョークを飲み込んだような擦れた声を出しながらゴリリンは叫び何かの衝撃を受けたのか音を立てて崩れた

殺気だ

 

「ねぇ、近くに私の像が飾ってる広場と老舗のブティックを知らない?」

賢者グルベルが能面の様に表情が固まった状態でベルカイルに歩み寄る。まだ10メートル以上の距離だが血に飢えたウルフですら逃げ出すようなオーラが出ている

 

「私が潰したが、それが何か?」ベルカイルは平然と答えると彼女の長髪がブワっ跳ね上がり周りの空気が震えた

「そこのブティックの店長、もう凄いおばあちゃんなんだけど孫が生まれて大喜びしたのよ。一緒にね、多分一緒に死んだ。友達だった」「良かったではないか、老婆も、その孫も」

 

「あ゛!?」もはや女性の声ではない。ティラノサウルスと形容できる声がグルベルの喉から出た

 

「老婆は病魔や老衰にならずに苦しまずに一瞬で死に、その赤子も今後誰も傷をつける事無く消滅した。何も汚いものを残さず全て無に帰した。これは救いなのだ」

 

「たま~にいるのよね、死は救いとか人類は悪とか可愛い考え持っちゃうやつ。そういった勘違いちゃんは自分が生きる事の尊さと素晴らしさを教えてあげる事にしてるの、貴方はそうね…まず手始めに1億年程、便器の石にでもしようかしら…!!」

悪鬼すら怯えて泣き出すような形相で魔女は司教を睨みつけた

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