フィオレちゃんの婚約者(仮)   作:なんちゃってアルゴン

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カボチャ頭と黒のサーヴァント

 

 ……なんかテンション高いな、このサーヴァント。

 

 原作としてこの世界を知る俺は、原作の展開を超える為にロリジャックちゃんではない存在を黒のアサシンとして呼び出す為の準備を整えてきた。

 そして間違いなく、今回召喚したカボチャ頭の彼は俺が召喚しようとしていた人物の筈だ。マスターになった事で閲覧できる様になった彼の真名やステータスに関する情報も、それを正しいと証明している。俺が彼の召喚の為に用意した霊基に関するギミックも、しっかりと組み込まれているみたいだし。

 ただ、なんて言うか……このカボチャさん、本当にサーヴァントとして戦える? 大丈夫なのか? さっきから妙に陽気なテンションでクルクルピョンピョンしながら「ハッピー・ハロウィン!」って戯けているだけに見えるし、なんか心配になってきたんだけど……。

 

「いやはや! よもや私の様なカボチャ頭を召喚してくださる奇特な御仁と出会えるとは! なんたる僥倖! なんたる運命! そして、なんたる巡り合わせか! 感謝してもしきれないとは、まさにこの事なのでしょう!」

「あ、はい……それなら良かった……です?」

「ハハハハハ! どうか、そう硬くならずに! 奇特なマスター様! せっかくの初対面と言う素晴らしい機会なのですからねぇ! ではでは早速、我がマスター様が愉快で楽しい気分になれる様、力を尽くさせていただきます。具体的には……この場をハロウィンで染め上げてご覧に入れましょう!」

 

 そう言ってテンション高く彼がパチンと指を鳴らすと────────殺風景だった室内が一瞬にしてハロウィンの様相に彩られた。

 壁や床、天井に至るまでハロウィンの季節になったのかと錯覚するくらいに、妖しくも楽しげな飾り付けがこれでもかとキラキラ溢れかえっている。また、空中をハロウィン印のお菓子やお化けのキャラクター達があっちへフヨフヨこっちへフヨフヨと楽しそうに漂い、某夢の国のハロウィンイベントを思わせる様な愉快で楽しげな音楽までもがどこからか流れてきた。さらには何故か、俺を含めたマスター達やサーヴァント、ホムンクルスの格好までもがハロウィンを思わせる仮装に様変わりしていて………………って、なんじゃこりゃあ?!?!?! 

 

「ハハハハハ! さぁマスター様、いかがですかな? これぞ我がスキル『ハッピー・ハロウィン!』でございます! どなた様にも素敵で不気味な、愉快で楽しいハロウィンを!」

 

 そう言って、彼はまた楽しげにクルクルピョンピョンし始めたが────俺の方は冷や汗が止まらなかった。

 今世では魔術師として生きてきたからこそ分かる……彼の引き起こしたこの現象は、決して並大抵のモノじゃない。強力な暗示や幻術の類い……いや、違うな。これは……世界自体が書き換えられたのか? あの指を鳴らした一瞬で? でも空間は閉じていない……ならこれは、固有結界の様な代物ではない……よな? だとしたら、これだけ大規模な周りへの変化を……あの動作と時間だけで行ったのか……?! まるで何でもない様なあの気軽さで?!! 

 しかも今「スキル」って言ってたよな?! この規模の現象を引き起こせるモノなのに、サーヴァントの切り札である「宝具」ですらないのかよ?!!! 

 

 突然、周りや自分のハロウィン化に驚いていたダーニックさんや他のマスター達も、この現象の異常さに気が付いたみたいだ。俺以外の全員が得体の知れないナニカを見る様に、カボチャ頭の彼に視線を集中させていた。

 

 ……これだけで、嫌と言うほど理解させられた。大丈夫なのか、なんて心配する事自体が烏滸がましい。

 これがサーヴァントの────人間に仕える、人間以上の存在の力なんだ。

 

「……改めて、三輪清霞です。まずは俺の召喚に応じてくれた事、本当にありがとうございます。貴方のマスターとして、微力ながら精一杯尽くさせていただきます。それと……ハッピー・ハロウィン、です」

 

 自分の中の驚愕や動揺を面に出し過ぎない様に、マスターとして毅然とした態度で……でも、決して威圧的にならない様に慎重に言葉を選ぶ。

 相手はハロウィンの顔役とも言えるほどの身近でファンシーな存在だが、今は暗殺者(アサシン)として現界している。サーヴァントとマスターの関係になったからと言って、気を抜く訳にはいかない。

 何より、このサーヴァントを制御できずにここで暴れだしたら、フィオレちゃんや他のマスターに危害を加えかねない……! 

 召喚に成功した時の様な高揚したものとは全く違う、警報アラームの様に鳴り続けている胸の鼓動が頭にまで響いてくる。冷や汗で冷たくなった皮膚の全てが、ハロウィンの楽しげな雰囲気に混じる恐ろしいナニカを感じ取っている様だった。

 

「────おや、おやおやおや。私の様な者に対しても丁寧で、それでいて紳士的なその対応……誠にありがとうございます。この様な良きマスターに巡り会えた事は望外の喜び、いわゆるサーヴァント冥利に尽きますなぁ」

 

 そう言ってそれまでの動きをピタリと止め、カボチャ頭をゆっくり揺らしながら近づいてきた彼は……そのままスッと左手を差し出してきた。

 ニコリと笑った顔の様に彫られた目の部分から覗く光は、さっきの「ハッピー・ハロウィン!」と戯けていた時とは雰囲気がまるで違う。暗く、鋭く、そして冷たい目だ。

 

 ────おそらく、試されている。

 

 そう感じた俺は、迷わず令呪の宿った左手で差し出された手を取り、できる限り強く力を込めた。そして品定めする様な冷たい眼差しの光を、真正面から睨み返してやる。

 彼の引き起こした現象や醸し出す不気味な雰囲気に当てられて、普段の力の三分の一も出てはいないと思う。手足も震えていて、なんて弱々しいマスターなんだって思われるんだろうよ。そりゃあサーヴァントである彼からしたら、俺なんて取るに足りないちっぽけな存在でしかないんだろうさ。

 

 でも、お前を招んだのは俺だ。お前の力を求めたのは俺だ。

 お前がどんな存在だろうと、そんなの百も承知でこっちは召喚したんだ! 

 俺にはこの聖杯大戦で為すべき事がある! 絶対に叶えたい望みがある! 助けになりたい人がいる! 幸せになってほしい人がいる! 

 ────だから、力を貸してもらうぞアサシン! 目の前にいる俺が、お前のマスターだ! 

 

 長い時間が経った様な一瞬の後、彼が出していた手を下げようとするのに合わせて俺も力を抜いて手を戻した。そうすると、彼の冷たかった気配はいつの間にかどこかに消え去り、さっきまでの愉快なカボチャ頭に戻っていた。

 

「ハハハハハ! いやー、なるほどなるほど! どうやら私は、素晴らしいマスターに召喚された様ですね! 良いでしょう! サーヴァントとして、そしてアサシンとして、貴方様の力となると誓いましょう!」

「……ありがとう。改めて、よろしくお願いします。差し当たっては、何と呼んだら良いですか?」

「どうぞ、何とでも! 真名を隠しても、私にはあまり意味がありませんからねぇ。アサシンでも、ジャックでも、もしくはカボチャ頭でも! お好きな様に呼んでくだされば」

「なら……ジャックさんで」

「待て待て待て! 小僧貴様、今そのカボチャを何と呼んだ?! 『ジャック』だと?!」

 

 まぁ、そうなるよね。ハロウィンでカボチャで「ジャック」ときたら、めちゃくちゃ有名だし。

 てか、俺と彼との話にすごい勢いで割り込んできたゴルドさんなんだけど………………なんでキンキラな和服とちょんまげ? なんでこの人ジャックさんのハロウィンスキルで徳川ゴルドな仮装スタイルになってんの? 

 でも、そうか……これで黒の陣営サーヴァントが全て召喚されたんだから、原作に倣うなら次はみんなで真名開示のタイミングか。俺の原作介入が少しでも良い影響に繋がればいいんだけど……。

 そんな俺の考えを知る筈もないが、カボチャ頭の彼はこの場にいる全員の耳に届く様、声高らかに自らの真名を口にした。

 

「お初にお目に掛かります、黒の陣営として聖杯を求めるマスターとサーヴァントの皆々様! 私は暗殺者(アサシン)の霊基を依代に現界せし、しがないカボチャ頭! 真名をジャック・オー・ランタンと名乗る者! 以後、どうぞお見知り置きを!」

 

 

 

 

 

 

 

「はいはーい! じゃあ、次はボクの番! シャルルマーニュ十二勇士の一人、アストルフォ! クラスはライダー! よろしくねー!」

 

 ジャックさんの突然の真名開示にポカンとしてしたマスターとサーヴァント達だったが、アストルフォだけは乗ってくれたおかげで原作通りの真名発表タイムが始まった。ちなみに彼女……もとい、彼はウサ耳・白エプロン装備のメイド風な衣装────具体的には、セイバーの彼みたいな感じになっていた。正直、生アストルフォめちゃくちゃ可愛い。これでオ◯ン◯ンがツイてるってマジ? て言うか、確か君のそれはハロウィンじゃなくて、クリスマスに実装されたんじゃなかったっけ? 

 そんなアホな事を考えている間にアーチャー・ケイローン先生の紹介も終わり、次はバーサーカーの彼に順番が移っていた。

 

「うっわー! 君おっきいねー! あと、髪すっごいねー! 白いもこもこの髪に、ハロウィンの飾りがいっぱいだー!」

「う、ゔゔぅ……」

「ありゃ? おーい、大丈夫?」

「ゔゔぅ……ほおって、おいて……くっちまうぞ……」

「うぇえええ?!」

 

 さてと、彼のマスターとして、カウレス君は大丈夫かな……? 前に彼について伝えた俺のアドバイス、覚えてくれてたら良いけど……。

 

「あーちょいちょい、落ち着けって。ほら、どうどう」

「ゔ、うぅ……」

「ご、ごめんごめん! ボク、何かしちゃったかな……?」

「いや、コイツの場合はクラスの影響もあるからな。あまり気にしないでやってくれ」

「うーん、そっかぁ……よしっ! わかった! じゃあ、この子の真名教えてー! マスターは君なんだよね?」

「────アステリオスだ。クラスはバーサーカーだけど、できれば真名で呼んでやってほしい」

「オッケー! アステリオスだね、よろしく!」

「あ──────な、まえ。ぼく、の」

「ああ。お前の人間としての名前で、大事な名前なんだろ? ならマスターとして、俺はお前を……アステリオスを尊重するよ。これから俺のサーヴァントとして力を貸してもらうからな、そん時はよろしく頼む」

「う……う、ん! ぼくは、あすてりおす! ますたぁの、ちからに、なる!」

 

 ────カウレスくーん!!!!! ほんと君って奴はー!!! やっぱり君は最高だよー!!! 俺の中ではフィオレちゃんと獅子劫さんに並ぶくらいの、原作中ベスト・オブ・マスターだよー!!! 

 聖杯大戦に向けての触媒探しの旅でゲットしてたアステリオス召喚の触媒、やっぱり君に託してよかったー!!! 

 

 アストルフォに話しかけられた時はあんなに警戒してたアステリオスが、カウレス君とあんなに嬉しそうに握手をしてる……! 

 カウレス君はカウレス君で、ちょっと照れながらだけど笑顔でアステリオスと向き合ってる……! 

 カァー! コレよコレ! この素晴らしいコンビの誕生の瞬間! 準備してきた甲斐があったなー! 

 

 ……ただ実際のところ、原作のカウレス・フランのベストコンビをこの目で見たかったって後悔はあったりする。俺の介入のせいでカウレス・フランの名コンビをこの世界から無くしてしまったって負い目も、正直めっちゃあるし……。

 

 ────いやダメだ、しっかりしろ! 違うだろ! 覚悟を決めただろ、俺! 

 何の為に10年間ひたすら準備してきた! 何の為に魔術師として血反吐を吐いてきた! 全部、この聖杯大戦に勝つ為だ! 愛するフィオレちゃんの助けになる為だ! 

 そうだ、その為に黒の陣営に参加した! 不利になる要素を片っ端から潰してきた! 有利になる要素を片っ端から取り入れてきた! 

 もっとも敬意を払うべき原作を、フィオレちゃんの為に全部ぶっ壊す覚悟で戦うって決めたんじゃないのか! 

 

 ────ふぅ、危ない危ない。危うく初心を忘れるところだったぜ。

 ………………でも。

 ………………でも、原作の名コンビ見たかったな〜〜〜! 

 

「あの……マスター様? 差し出がましい様ですが、さっきからお顔の方が大変に愉快で可笑しな……いえ、面白い事になってますよ?」

「あぁ………………くしゃみを我慢してたんですよ。ぜんぜん、何か問題あるとかそんなんじゃありません………………ですよ」

「そ、そうですか……」

 

 少々取り乱してしまった様な気がするが、ひとまず今は前を向く事にしよう。カウレス・フランの名コンビが見られなくなってしまった事は確かに残念ではあるが、俺の見立てではカウレス・アステリオスのコンビも中々高いポテンシャルを秘めていると見ている。

 原作のカウレス君は自身の魔力量の低さから、省エネな運用ができるサーヴァントとしてフランケンシュタインを召喚し、活躍させていた。しかし、黒の陣営にはゴルドさん考案の、ホムンクルスを利用した魔力の供給システムがある。もちろん供給があると言っても、バーサーカーと言うのは従えるのが非常に困難なサーヴァントではあるし、それをさらに適切に運用するにはマスターとして確かな実力が必要だと思っている。その点、カウレス君なら的確な判断と魔力運用、そしてアステリオスと結んだ信頼関係によって、黒のマスターとして充分な成果を出す事ができる筈だ。アステリオスにしかできない、超重要な役割もあるもんね。

 

「よーし! 最後は君だ! 真名教えてー!」

 

 さてと……これでいよいよ、俺の原作介入による黒の陣営最後のNewサーヴァント────それは、彼だ。

 

「サーヴァント、セイバー。我が真名をシグルド。貴殿らと共に戦える事、嬉しく思う」

 

 眼鏡キラーン! でお馴染みの彼。ジークフリートに変わって、北欧の大英雄のシグルドさんだ! 

 うーん、ジャックさんのハロウィンスキルで鎧やらマントやらがファンシーな有り様になっているのに、表情や立ち振る舞いが洗練されててめちゃくちゃカッコいい……! 

 アステリオスもそうだったけど、シグルドさんも前世で大好きだったサーヴァントの一人だから、生で見られるのはやっぱり嬉しいな! 

 と、言う訳で……ちゃんとお礼をしないとね。

 

「いやー、俺の提供した触媒が役に立ってくれて、本当に良かったですよー。彼を召喚してくれてありがとうございます、ゴルドさん」

「ふん、白々しい! ジークフリートを召喚しようとしていた事を嗅ぎつけただけでなく、あまつさえ私に脅しをかけ、あのシグルドを召喚する様に仕向けたのは貴様だろうが!」

「なんか人聞きが悪いなー。俺はただ、明らかに致命的な弱点を持つ強いサーヴァントより、致命的な弱点を持たない別の強いサーヴァントを召喚するのはどうかって提案しただけですよ? 同じ黒のマスターとしての、完全な善意です」

 

 各々の黒のマスターが自分の求めるサーヴァントを召喚しようと準備を進めていた時、俺はカウレス君とゴルドさんにコンタクトを取った。その目的は、原作とは違うサーヴァントを召喚してもらう為だ。

 黒の陣営として原作の展開を超えていく必要があるが、それにはどうしても、より優れた力を持つサーヴァントの力が必要だった。しかし、俺一人が用意できるサーヴァントの力だけでは限界がある。そこで、まずは原作とは違う力を持ったサーヴァントで、黒の陣営の抱えていた問題をいくつか解決できる様にしようと思った訳だ。

 

 まぁ、割とスムーズに受け入れてくれたカウレス君はともかく、ゴルドさんは頑固だったからなー。あんまり聞き分けが悪いなら、召喚しようとしてるサーヴァントの弱点なんかの情報含めて、ある事ない事うっかり黒の陣営と赤の陣営に漏れちゃうかも……って言ってやっとだったわ。たく、手間取らせやがって、あの肥満ヒゲオヤジめ。

 

 さて、兎にも角にも黒の陣営サーヴァントは全員召喚され、この場に揃っている。どうやらマスターも含めて、各々の自己紹介も一区切りしてきたみたいだな……。

 ……お? ダーニックさんからアイコンタクトが……と言う事は、いよいよか! 

 任せてくださいよ、ダーニックさん! 

 

「はいはーい! マスターもサーヴァントも、全員注目ー!」

 

 この場に大きく響く様に声を張り上げただけあって、黒の陣営全員の視線が一気に俺に集中した。

 

「無事にマスターとサーヴァントが全員揃ったと言う事で、俺達はこのメンバーで赤の陣営と戦う事になります!」

 

 ────これこそ、前々から俺が提案し準備を進めてきた秘策。黒の陣営の大勝利に向けての第一歩だ! 

 

 

 

 

 

「と、言う訳で────親睦を深める為、みんなで一緒にごはんを食べましょう!!!」

 

 

 

 

 

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