ドーモ。ヴィランスレイヤーです。これはニンジャが来てヴィランを討つ物語。   作:白白明け

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Kindleでニンジャスレイヤーを読んで勢いで書いてしまった何番煎じかもわからないヒロアカにニンジャスレイヤー要素をいれた物語です。
せっかくなので1年B組を舞台に書きたいと思い挑戦しています。作中での描写がA組と違い少ないので、オリジナル展開やキャラ崩壊が有るかも知れません。ご容赦ください。


皆様の暇つぶしになれれば幸いです。m(_ _)m





入学試験①

冷たい雨を全身で浴びながら、メキシコカルテルのボスでもある(ヴィラン)-ジンゲードは三十年前の事を思い出していた。

 

 

彼が生まれ育った荒ら屋(バラック)には、真面な屋根が存在せず雨が降れば身体は濡れ鼠になる。個性により強い身体を持つジンゲードはまだ雨の冷たさには耐えられる。しかし、幼い弟妹たちはそうでは無い。ジンゲードは雨が降る度に、自らが冷たい雨に晒されて身を震わせるのもかまわず、弟妹に覆い被さり温めるのが日常だった。

カルテルの構成員だったジンゲードの父親はテキーラの海に沈み、サボテンの苗床になった。母親も後を追うように姿を消した。残されたジンゲード達弟妹は、身を寄せ合う様にネズミとゴキブリが這い回る其処で暮らしていたが、それが長くは続かないこともわかっていた。

 

「何れここにも、カルテルの連中がやってくる」

 

そうなった時にどうなるのか、ジンゲードは少年ながらに理解していた。このスラム街で身寄りのない子供は、カルテルによって使い捨てにされる。ジンゲードは、それでも良かった。個性により強い身体を持つ自分は、使い捨てとされるような劣悪な環境にも耐えられるという自負があったからだ。しかし、幼い弟妹はそうではない。弟妹は、今の時代には珍しくなってきた個性を持たない人間、無個性だった。

この街では無個性の子供など、使い捨てにすらされない。

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荒ら屋(バラック)に降る雨は止まない。けれども幼い弟妹は、いつの間にか寝息を立てていた。たとえどれだけ雨が降ろうとも、ジンゲードの下に居れば安心できるのだと信じていたからだ。

弟妹のあどけない寝顔を見ながら、ジンゲードは神に誓った。

 

「成り上がってやる。たとえ常人が見たら嘔吐や失禁、失神を引き起こすような悪行に手を染めようとも、必ず弟妹(コイツ)らを連れて行ってやる。・・・冷たい雨の、降らない場所へ」

 

そして現在(いま)、彼はメキシコのスラム街ではなくアメリカ合衆国の摩天楼シティ、そこにそびえ立つ高層ビルの屋上にいた。このビル全てが、彼の所有物。

ジンゲードは三十年をかけて神への誓いを果たしていたのだ!

では何故、冷たい雨に打たれる必要がなくなった彼が屋上で雨に打たれているのか。何故最上階に構えたオフィスにおかれたクロコダイル皮のソファに居ないのか。この物語に読者がいるのなら、疑問に思うことだろう。その理由は簡単だ。

奴が来たからだ!巨大竜巻や巨大地震。巨大な津波と同じように来てはならないものが突然訪ねて来たので、ジンゲードはここまで逃げて来ていたのだ!

 

ジンゲードは雨に濡れた顔を拭う。

そして、次の瞬間だった。彼の目の前には赤黒いニンジャ装束に身を包んだニンジャがいた!

 

「アイエエエエ!ニンジャ!ニンジャナンデ!アイエエエエ!」

 

巨大犯罪組織、メキシコカルテルのボスであるジンゲードが叫び声を上げる。彼は此所まで成り上がるまでに児童売買以外のあらゆる凶悪犯罪に手を染めてきた。そのジンゲードにして、この不様(ブザマ)。これが近年、アメリカで流行中の突発性精神疾患、NRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)だ!

 

赤黒い装束のニンジャはジンゲードの様子を意に介さず両手を合せて挨拶(アイサツ)をする。

 

「ドーモ。ジンゲード=サン。ニンジャスレイヤーです」

 

此所は通常、挨拶をする場面ではない。しかし、赤黒い装束のニンジャ、ニンジャスレイヤーは決して挨拶(アイサツ)を疎かにしない。挨拶(アイサツ)は実際大事。古事記にもそう書いてある!

挨拶(アイサツ)をされれば、返さねばならない。

 

「ど、どうも、ニンジャスレイヤーさん。ジンゲード、です」

 

ジンゲードが振るえる声で挨拶を返せたのは、彼が実際強かったからだ。もし常人(モータル)NRS(ニンジャリアリティショック)を発症した場合、嘔吐や失禁、失神を引き起こし、最悪の場合は心停止していたであろう。

挨拶(アイサツ)からコンマ一秒。ニンジャスレイヤーから夥しい数の手裏剣(スリケン)が放たれる。

 

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

「グワーッ!グワーッ!グワーッ!」

 

ジンゲードの巨体が吹き飛ばされて屋上に倒れる。哀れ(アハレ)!たとえ強力な個性を持つカルテルのボスであろうともニンジャスレイヤーの敵ではないのだ!

倒れたジンゲードの元にニンジャスレイヤーが奥ゆかしくもゆっくりと歩み寄る。

 

「カイシャクをしてやろう。ハイクを詠むがいい」

 

介錯(カイシャク)とは首を断つということ。ニンジャスレイヤーは死に際にジンゲードに対して遺言(ハイク)を残す猶予を与える。しかし、ジンゲードにその余裕はない。

子供の頃のように、冷たい雨に打たれながら身を震わせることしか出来ずにいた。

 

「ナンデ!ドウシテ!」

 

その思いが頭の中をグルグルと回る。アメリカのヒーロー界に突如現れた出自不明のニンジャヒーロー、ニンジャスレイヤー。ペンタゴンによって作られた人型決戦兵器だとさえ噂される彼はその卓越した戦闘能力とニンジャ人気によってアメリカのヒーローチャートを駆け上がり、現在では誰もが認めるアメリカ№2ヒーローだ。

既にボスとして現役を退いていた(ヴィラン)であるジンゲードが敵う筈がない!違う(チガウ)!恐ろしいのはそこではない!

 

ニンジャスレイヤーは、()()

凶悪な(ヴィラン)を、情け容赦なく介錯(カイシャク)する!

彼の口元を覆う面頬(メンポ)に書かれた『忍』『()』の漢字(レリーフ)伊達(ダテ)じゃないのだ!

それはどの国よりも自己責任論が根強いアメリカにおいても異様なヒーローの在り方。

しかし、それが許されるだけの強さと人気をニンジャスレイヤーは有しているのだ!実際コワイ!

 

「イヤー!」

「ヤラレター!・・・あ、ああ?」

 

ジンゲードは死ななかった。介錯(カイシャク)不成立。ニンジャスレイヤーがジンゲードに振り下ろした介錯(カイシャク)手刀(カラテ)を掴んで止めたのは、ニンジャスレイヤーとは別のヒーローだった。

ジンゲードは腰を抜かした不様(ブザマ)で金髪碧眼のヒーローを仰ぎ見る。そのヒーローのヒーローコスチュームのデザインは星条旗。そして、そのバストは豊満であった。

ニンジャスレイヤーの腕を掴んで放さないのは、アメリカNo.1ヒーロー、スターアンドストライプだ!

 

「どうも。ニンジャスレイヤー。スターアンドストライプだ」

「・・・ドーモ。スターアンドストライプ=サン。ニンジャスレイヤーです」

 

 

不覚(フカク)。腕を捕まれた状態では手を合せた奥ゆかしい挨拶(アイサツ)は出来ない。しかし、その状態であっても挨拶(アイサツ)を疎かにすれば、即座に村八分(ムラハチ)だ。実際挨拶(アイサツ)は、本当に大事(ダイジ)

 

「その手を離せ」

「駄目だね。こいつは完全に戦意を喪失している。殺す必要はないさ」

(ヴィラン)死すべし、慈悲はない」

「私はあんたの事が嫌いじゃない。その考えもね。けどね、私はたとえ(ヴィラン)だとしても救える命は救う。それはマスターへの誓いだ」

 

アメリカNo.1ヒーローと№2ヒーローのにらみ合いに巻き込まれたジンゲードは遂に失禁。そして、失神。実に無様(ブザマ)

 

「アンタは私に、大きな借りがあるだろう」

 

スターアンドストライプの言葉にニンジャスレイヤーの殺気が僅かに消える。

 

「それに弟子の門出を血で染める気かい?」

 

その言葉でニンジャスレイヤーの殺気を完全に納めた。戦いは終わった。その雰囲気(アトモスフィア)を察したスターアンドストライプは掴んでいたニンジャスレイヤーの腕を放す。

 

「そうか。もうそんな時期か」

 

気が付けば雨が止んでいる。雲間に姿を現した赤い月を見上げながら、ニンジャスレイヤーは何を思うのか。それは遠い異国の地に送り出した少年。己を未熟者と称するニンジャスレイヤーが、何の因果か教育的指導(インストラクション)を授ける事となった弟子だ。

そう!今日という日はその少年の高校受験日だったのだ!

 

「心配なら着いていってやればよかったのに」

「コジュウタ=サンのカラテなら、問題はない」

「でも、心配だって顔に書いてあるよ」

「・・・問題はない。が、彼は俺に拾われるほど、運が悪い。それだけが、心配だ。何もなければいいのだが」

 

そう言い残してニンジャスレイヤーはビルの屋上から飛び降りて夜の闇へと消えていった。

 

「おい!待ちなよ!・・・って、聞いちゃいないか。ハァ、いまの私(No.1)に後始末を押しつけるなんて、今度あったら拳骨だからね」

 

腕を組んでそういうスターアンドストライプの顔には、奥ゆかしい笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

雄英高校ヒーロー科。そこはプロヒーローに必須な資格取得を目的とする養成校。日本全国同科中、最も人気で最も難しい難関校。その一般入試会場に一人の少年の姿があった。

灰色髪の少年-コジュウタ・フジキド。彼こそがアメリカ№2ヒーロー、ニンジャスレイヤーから必ず雄英高校ヒーロー科に合格できると太鼓判を押された弟子である!

 

「ここがゴッホ、ユウエイ、ゴッホゴッホ」

 

・・・“何もなければ”、必ず合格できると太鼓判を押されたコジュウタは風邪を患っていた。

 

「ブッタシット。なんでこんな大切な日に、オレは風邪を。ゴッホゴッホ、ちゃんとヨロシサン製薬の栄養ドリンクを飲んでいたのに・・・」

 

雄英高校の正門を潜り、試験会場である講堂に向かう間、コジュウタは周りの受験生から明らかに距離を取られていた。当然である。この大切な日にマスクを付けた明らかに体調不良な奴に近づく奴はない。加えて他の受験生にとってコジュウタは合格を奪い合うライバルである。雄英高校ヒーロー科の倍率は例年300倍を超える。中にはライバルが一人減ったと喜ぶものもいたことだろう。殺伐(サツバツ)

 

「これは実際ヤバい。落ちましたなんて、マスターに顔向けできない。ゴッホゴッホ」

 

そんな殺伐(サツバツ)の中、コジュウタにかけられる声があった。

 

「オー、ダイジョブですか? 」

 

コジュウタが声のした方に視線を向けると其処にはブロンドのロングヘアーで青い目をした少女がいた。頭には二本の角が生えていて、顔立ちはカトゥーンめいている。そして、そのバストは豊満であった。

 

「カゼですか?ツライ?クルシ?ヤバいね」

「ゴッホ、ドーモ。コジュウタ・フジキドです。ドーモ」

「え、どーもデース。角取ポニーです。突然の自己紹介?頭やられてマス?ヤバいね」

「大丈夫。ビョーキは気分の問題だから、ゴッホゴッホ、何の問題もない。ガンバルゾー」

「おお、ダイジョブじゃなさそうデース。でも、がんばりたいよね。私会場まで着いていってあげます。着いてきて」

「ドーモ。ドーモ」

 

コジュウタはポニーに手を引かれて講堂に到着することができた。

 

「では、私あっち、アナタそっち。受験番号順の座席ですから、ここまでデース。がんばって。でも、ムリはダメですよ」

「ありがとう。オタッシャデー」

「ワオ、日本式挨拶。ハイ。おたっしゃでー」

 

ポニーと分かれて座席に着いて直ぐに試験の説明が始まった。雄英ヒーロー科教師-プレゼント・マイクにより試験内容が叫ばれる。

 

「今日は俺のライヴにようこそー‼エヴィバディセイヘイ‼受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ‼」

 

プレゼント・マイクの個性を用いた大声は千人では足りない受験生全員に声を届けるには最高のものだったが、頭痛が痛い現在のコジュウタにとっては脳天を直撃する攻撃だ。

 

「アイエエエ・・・」

 

隣の受験生に怪訝な目で見られるも、コジュウタは不様(ブザマ)な声を出しながら机に突っ伏す。結局、彼は試験内容を碌に確認する事も出来ないまま、入学試験を受けることになるのだった。諸行無常(ショッギョ・ムッジョ)

 

 

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