ドーモ。ヴィランスレイヤーです。これはニンジャが来てヴィランを討つ物語。   作:白白明け

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最終種目④

 

雄英体育祭会場のスタジアム内に作られたリカバリーガール出張保健所。

ベッドで眠る友人を見ている灰色髪の少年が居た。コジュウタである。

清潔なベッドやシーツ。薬品の香り。怪我人が傷を癒やすのに最適な環境。しかし、なにかが欠如していると感じる。コジュウタは気が付いた。「センコだ」おもむろに懐から線香(センコ)を取り出して火を付ける。線香(センコ)(こう)が部屋を満たす。

この線香(センコ)の香が部屋に(ゼン)を足す。薬品の香りに対する詫び錆び(ワビサビ)。環境は更に諸行無常(ショッギョ・ムッジョ)を内包した怪我人にとって最高のものに―――「不謹慎」「グワーッ!」実際不謹慎。

この保健所の(あるじ)。雄英高校の看護教諭、妙齢ヒロイン-リカバリーガールが杖でコジュウタの後頭部を強打。線香(センコ)は折れて消えた。

「アイエエエ⁉センコが消えた⁉センコナンデ⁉」コジュウタは床に這いつくばりながら砕けた線香(センコ)を拾い集める。最後の1本だったのに!

リカバリーガールがそんなコジュウタの背中を杖でバシバシと叩く。絶望にむち打つ鬼畜の所業である。「馬鹿なことをやってないで、さっさとお行き」「アイエエエ・・・」「次の試合、棄権する気かい!」「・・・バカナー」

コジュウタが立ち上がる。リカバリーガールに尋ねた。「リカバリーガール=サン。旋=サンは大丈夫ですか」

リカバリーガールは気休めを言わない。事実を伝える。「全身に熱傷。身体にもかなりの負担をかけたね。両足首の骨折。もう少しで粉砕骨折しているところさ。そうなっていたら、キレイに元には戻らなかったよ」

リカバリーガールは溜息を吐く。「今年の子たちはどうしてこうもやりすぎるんだろうね。身を滅ぼす子が多くて、嫌だよ、あたしゃあ・・・。ごめんね。あんたに言っても仕方のことだね」

コジュウタは言う。「旋=サンがこうなった原因は、オレにある」

リカバリーガールが返す。「どういうことだい」

回原旋の両足首の怪我。原因は明らかだ。

「オレのインストラクションが未熟だった。チャドー奥義、タツマキ・ケン。旋=サンのセンカイ・ジツで実際できた。スゴい。でも、身体が追いつかず骨が折れた。オレが原因の怪我だ」

リカバリーガールは落ち込むコジュウタの頭を杖で小突く。「あんた、それをこの子の前で言っちゃいけないよ」「何故?」「この子が何のために無理をしたのか、考えてやりなさい」「・・・なんのために」

 

『決勝で待つ』コジュウタが回原旋に言った言葉だ。

 

「・・・リカバリーガール=サンの言うとおりだ。旋=サンは、オレに謝られる為にガンバッタのではない。約束を守るために、ガンバッタ」

コジュウタはリカバリーガールにお辞儀(オジギ)した。「旋=サンをヨロシクオネガイシマス」

そして、眠る回原旋にもお辞儀(オジギ)。「ハゲンデキマス」

 

 

 

準決勝第1試合間近(まぢか)。ステージに向かう廊下を歩くコジュウタに声をかける大男がいた。近寄りがたい雰囲気(アトモスフィア)を纏う大男はフレイムヒーロー、エンデヴァー。本名を(とどろき)炎司(えんじ)。コジュウタがこれから戦う轟焦凍の父親であり、日本の№2ヒーローだ。

「やっと来たか。棄権するのかとヒヤヒヤしたぞ」エンデヴァーはコジュウタを待っていた。

コジュウタがまずは挨拶(アイサツ)。「ドーモ。コジュウタ・フジキドです」「知っている」

エンデヴァーから挨拶(アイサツ)が返ってこない。コジュウタが言う。「挨拶(アイサツ)は実際大事。アナタは誰だ」

エンデヴァーが(いぶか)しむ。「俺を知らんのか?」「ハイ」「・・・留学生だったな。なら、仕方あるまい。俺はエンデヴァー。これから君が戦う焦凍は俺の息子だ」

似ていない親子だなとコジュウタは思った。「ドーモ。エンデヴァー=サン。それでオレになんの用事ですか?」「激励だよ」

エンデヴァーが笑った。獰猛な笑みだ。「前の試合でようやく子供じみた駄々を捨て、ウチの焦凍は一皮むけた。君との試合は先ほどより有益なテストベッドになる。できる限り焦凍の力が引き出せる様に頑張ってくれたまえ」

不躾なお願い。失礼(シツレイ)だ。エンデヴァーは目の前にいるコジュウタを見ていない。

コジュウタは言った。「“地震、雷、火事、ニンジャ”」「なんだって?」

コジュウタがエンデヴァーの横を通り過ぎながら続ける。「命知らずのパンクスだって恐れるのだから、エンデヴァー=サンも実際恐れるべきだ。自慢の息子さんが、オレに為す術もなく敗れるという可能性を」

エンデヴァーは眉をひそめる。「なんだと?おい、待て」

コジュウタは振り返らない。「オタッシャデー」

 

 

 

 

 

最終種目(トーナメント)、準決勝。第1試合。

 

遂に来たぜ準決勝。知らぬリスナーにサプライズ!

実は互いにヒーロー家、エリート同士の対決だ!

 

ヒーロー科A組。轟焦凍。

         VS

ヒーロー科B組。コジュウタ・フジキド。

 

 

試合開始直後、コジュウタが両手を合せて奥ゆかしく挨拶(アイサツ)。「ドーモ。轟焦凍=サン。コジュウタ・フジキドです」

轟焦凍が応じる。「どうも、フジキド。轟焦凍です」

コジュウタは挨拶(アイサツ)を通じて轟焦凍の心にある迷いを感じ取る。騎馬戦の時と違う雰囲気(アトモスフィア)。これまでの戦いで轟焦凍()に何があったのかをコジュウタは知らない。だが、感じ取る。迷いの雰囲気(アトモスフィア)を!

舌打ちをしたい気分だった。どいつもこいつも「・・・ザッケンナコラー」

コジュウタは言う。「先ほど、轟=サンのオトーサンに会いました」「・・・アイツめ。親父になにか言われたかも知れねぇけど、気にしないでくれ」「気にしません。けど、気にくいません」

 

コジュウタがカラテを構えたる。轟焦凍もコジュウタの態度を気にしながらに戦闘態勢。

「どういう意・・・」言葉は続かなかった。

「イヤーッ!」コジュウタが流鏑馬(ヤブサメ)めいた速度で轟焦凍に迫る。ハヤイ!

轟焦凍は決断的に危険(アブナイ)と判断!地面を凍らせる。コジュウタの足元が凍り付く。片脚が凍った。

反対の脚でカラテ踏み込み。「イヤーッ!」氷ごと地面を割る。

地面の氷結を意に介さないで進む。業前(ワザマエ)ッ!

「ならこれだ」轟焦凍の手が地面に触れる。凪ぐように範囲を拡大。出力を上げて個性『()()半熱』。

「・・・ッ!」叫びもなく周囲を凍らせるッ!

 

周囲の空気が冷やされ霜が降りる。白煙が晴れた時、ステージ上には氷山が出来上がっていた。氷山の中にはコジュウタの姿がある。危険(アブナイ)ッ!このままでは冷やされたコジュウタの身体はジワジワと壊死してしまう。

轟焦凍が左手に火を灯す。「すまねえ。やりすぎた」

審判のミッドナイトは試合終了を宣言しようとしたその時、「・・・ザッケンナコラー」地獄めいた声を聞いて鳥肌が立つ。

轟焦凍が異変に気づいて左手の火を消す。氷山が鳴いていた。

 

「どいつもこいつも、ザッケンナコラー」氷山の中にいるコジュウタの眼がギョロリと動いて轟焦凍を見る。オバケ!コワイッ!

氷山が震える。そして、悲鳴めいた音を立ててひび割れて倒壊ッ!爆発四散ッ‼

中から出てきたコジュウタがしめやかに着地。

轟焦凍は息を呑む。「アイエエエ・・・どうやって・・・出てきたんだ・・・」

コジュウタは答えない。ただゆっくりと轟焦凍に向かって歩いていく。

おおッ、見よ。コジュウタの腕と背中に浮かび上がる縄めいた筋肉を!よもやこの筋力で氷山を割ったとでも言うのか⁉力業(チカラワザ)

 

 

観客席で試合を見ていたエンデヴァーは思わず立ち上がる。轟炎司()は知っている。その後ろ姿を知っている!全て(オール)をねじ伏せる無体な筋力(パワー)。究極の脳筋。

その目に映るコジュウタの後ろ姿が、かつて己を絶望させた漢の背中と重なって、思わず叫んでいた。「ショートォオオ‼」

 

 

轟焦凍の動かない身体を動かしたのは、憎むべき父親の声だった。その事に屈辱を覚える暇はない。判断ッ。決断的に危険(アブナイ)と判断ッ‼全力で『個性』を行使ッ‼

それは最終種目(トーナメント)、第2試合。瀬呂範太との試合で見せた最大規模の『()()半熱』。

「イヤーッ‼」先ほどよりも巨大な氷塊がステージの半分を埋め尽くす。

 

 

試合を見ていた爆豪勝己は轟焦凍を認めていた。轟焦凍()は自分に「敵わねぇかも知れねぇ」と初めて感じさせた同年代(タメ)だ。個性『半冷半熱』は実際強力な個性だ。

だが、爆豪勝己は言う。「強え“個性”故に攻め方が、大雑把だ」

既に爆豪勝己は轟焦凍を見ていない。その視線は常に強者へと向かう。視界には目障りな青黒い疾風(カゼ)が吹いていた。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・」轟焦凍は肩で息をする。その耳に銅鑼めいた「ドラ!」音が聞こえた。「ゴンッ」音は続く。「ドラ!」氷山が鳴く。「ゴンッ」それは最早、「ドラ!」悲鳴ではない「ゴンッ」。断末魔である!「ドラ!」氷山は再び「ゴンッ‼」爆発四散ッ‼

氷山を拳で砕き進む勇姿は、まるで大地を掘り進む怪物土竜(モグラ)のようであった!ドラゴンッ‼

 

コジュウタが再び轟焦凍の前に姿を現す。コジュウタが発するアトモスフィアが青白い光となって立ち上っている。陽炎(カゲロウ)。ゆっくりと歩み寄るコジュウタの姿が、轟焦凍の眼にはオバケに見えた。

オバケは言う。「ようやくカラテ・シャウトを解禁したか。それでいい。オレは決断的に覚悟した。“軍師は死してなお走った”。旋=サンの(イクサ)がオレの力となっている。全力で来い。“注意は一秒、後遺症は死ぬまで”。死ぬなよ」

轟焦凍には意味のわからない言葉の羅列だ。コワイッ!

オバケが来る。轟焦凍は後退(あとずさ)り。オバケが来る。轟焦凍は後退り。オバケが来る!轟焦凍は後退り!

オバケの眼に鬼火めいた青色の光が宿っている!コワイッ!

轟焦凍は後退り!・・・足を踏み外す。ストンとステージから、落ちた。

轟焦凍は自分の信じられない不様(ブザマ)に気の抜けた声を出す。「・・・は?」

信じられないことが起きていた。既にステージの土俵際だったことにも気づかず、轟焦凍は後退り、ステージから落ちたのだ。

観客は静まり返っている。轟焦凍は呆然と観客席を見渡した。観客席で立ち上がっている一際大きな男の姿が目に映る。エンデヴァーだ。エンデヴァーもまた轟焦凍と同じように呆然としていた。数秒の後、ようやく状況が理解出来た轟焦凍がステージ上に視線を戻す。

そこにオバケはいなかった。そこに居るのは驚いた様子で轟焦凍を見下ろすコジュウタだけだ。

轟焦凍の顔が羞恥で赤く染まる。不様(ブザマ)だ。「・・・ッ」轟焦凍は言葉にならない声を噛みつぶす。「・・・クソッ」叫びたかった。しかし、これ以上の不様(ブザマ)は晒さなかった。

ステージ上のコジュウタは轟焦凍にお辞儀(オジギ)した。

何も言わなかった。クラスの違う轟焦凍()のことをコジュウタはよく知らない。彼の抱える家庭の悩みも、蕎麦が好物なことも、何も知らない。だが、迷いを抱いて(イクサ)に挑んでいることは察していた。

その目は目の前にいるコジュウタではなく、別の場所を見ていた。エンデヴァーと同じだった。だから、コジュウタは苛立っていた。

それは回原旋の(イクサ)を、これまでの全ての(イクサ)を穢す行為だと感じたからだ。

「ハゲミナサイヨッ」と一言、言ってやりたかった。だが、お辞儀(オジギ)を終えたコジュウタは何も言わずに踵を返す。

轟焦凍の羞恥に歪む表情を見て、自らを(かえり)みると思ったからだ。ならば、一言は敗者に鞭打つ行為に他ならない。それは畜生にも劣る行為。すれば村八分(ムラハチ)だ。

代わりに片腕を一本松(イチマツ)めいて突き上げた。

静まり返っていた観客席の観衆の声が(せき)を切ったように流れ込む!

 

 

「「「「オタッシャデーッ‼」」」」

 

 

その声はベッドで眠る回原旋の耳にも届いていた。

 

 

準決勝、第1試合。勝者はコジュウタ・フジキド。

 

 

 

 

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