ドーモ。ヴィランスレイヤーです。これはニンジャが来てヴィランを討つ物語。 作:白白明け
職場体験編、スタートです。
エッジショット=サンのキャラ崩壊が有るかも知れません。
皆様の暇つぶしになれば幸いですm(_ _)m
待ち合わせ場所は新宿歌舞伎町二丁目にある隠れ家的BAR『囲炉裏』だった。
『囲炉裏』の奥座敷、
上座の男、エッジショットが言う。「遅い」
下座の少年、コジュウタは頭を下げていた。「申し訳ゴザイマセン」
コジュウタは待ち合わせに遅刻していた。目上の人との待ち合わせに遅刻する行為はスゴク
エッジショットが尋ねる。「なぜ遅れた。言い訳はあるか」「ありません」コジュウタは頭を下げたままだ。
エッジショットの只でさえ細い目が細くなる。コワイ!
「本当にないのか?
コジュウタは驚いて頭を上げた。エッジショットは全てを見透かすような視線。コジュウタは慌てて再び頭を下げる。
「なぜ、それを言わなかった」エッジショットは威圧的
嘘は通じないとコジュウタは悟る。「…少し、やりすぎました」
「そうだな。殴りすぎだ」エッジショットは見ていたかのように頷く。実際彼はコジュウタが
「だが、善行だ。なぜ、それを言わなかった」「“困っている人を助けないのは腰抜け”。当たり前のことをしただけなので、伝えるようなことではないと思いました」
エッジショットは頭を下げ続けるコジュウタを見下ろし、溜息を吐いた。「面を上げろ」「ハイ」
エッジショットはコジュウタの目を見ながら言う。「謙虚も過ぎれば自分の評価を下げる。次からは気をつけろ」「ハイ」「わかったならいい。飯にしよう」「ハイ!」
エッジショットが手を叩く。奥座敷の障子戸が開いて女性店員が入ってくる。女性店員の手には朱塗りのお盆。お盆の上には
「「いただきます」」2人は手を合せて
女性店員はクスクスと奥ゆかしく笑いながら、障子戸を閉めて出て行った。
「・・・」「・・・」「・・・ッ」「・・・ッ」2人は無言で食べ続ける。切り身が艶を失わぬうちに食すことが、
コジュウタは手慣れた手つきでテーブルの上にある
エッジショットは
食事後、
コジュウタは横に首を振った。「だろうな」エッジショットは腕を組みながら話を続ける。
「職場体験は1年次に行われるが、インターンは仮免取得後の2年次から行われる」
仮免の有無により、その活動内容は大きく違うと語る。「受け入れた生徒をお客様扱いするかどうか・・・」
エッジショットは懐にある[ニンジャスレイヤー]からのオリガミ・メールに書かれていた内容を思いながらに問う。「“獅子は我が子を千尋の谷に落とす”。覚悟はあるか?」
コジュウタは答える。「“タイガー・ダンジョン・クエスト”(注釈:虎穴に入らずんば虎児を得ず)」
奥ゆかしく頭を下げた。「どうか
エッジショットは小さく頷く。「異例ではあるが、俺はお前をお客様扱いしないこととする。抱えている案件で
コジュウタは大きく頷く。「ハイヨロコンデー!」
「では、さっそく向かうとしよう」エッジショットは立ち上がり、コジュウタを伴い、店を出る。
向かう先は『
「つまりは
コジュウタはどうなってしまうのか⁉それはブッタのみぞ知る!
〈ズンズンズンズン、ズンズンズンズン、ズンズンズンズン・・・〉法螺貝めいた重低音が外にまで響いている。此所は合法ファイトクラブ『
このクラブで行われるファイトは実際合法である。ライセンスを持つ選手同士が安全に戦うショービジネス。そういうことになっている。
『穴熊』の
小型無線機からエッジショットの声がする。〈ノレンを潜った後は、地下に向かえ。上で行われているショービジネスに用はない〉
コジュウタは小さく返事をして、周りをキョロキョロと見渡した。丁度、建物の中央にある土俵型バトルフィールドではチャンピオン・ヨコズナとチャレンジャー・オオゼキのショービジネスバトルが行われていた。
「「「ノコタ!ノコタ!ノーコタ‼」」」「「「ワアアアア‼」」」
クラブの熱狂を無視して、地下への入り口を探す。黒人パンクス、一癖あるファッションのオタクや海外からの観光客じみた外人の間を擦り抜けて進む。そして、見つけた!グラブの隅にある
しかし、扉の前には威圧的に腕組みをした屈強なメキシコ系黒人の警備員が立っていた。警備員の来ているTシャツには[カラテ十三段][殺人のライセンス(仮)][日本語を理解しない]などの戦慄のメッセージがプリントされている。コワイ!
コジュウタが小型無線機越しに訪ねる。「どうしまショー」[大丈夫だ。そのまま進め]
エッジショットの指示どおり、コジュウタは進む。当然、警備員が立ちはだかった。警備員はガムをクチャクチャと噛みながら、偉そうにジロジロと場違いな少年を見下ろす。
「
コジュウタは言う。「
警備員は驚きながらも逞しい上腕筋を見せつけてから、少年を教え諭すように扉に書かれた[立ち入り禁止]のマークを指さした。そして、Tシャツに書かれた[カラテ十三段][殺しのライセンス(仮)]のプリントを指でなぞる。まともな判断力を持つ者であれば、これだけで震え上がり、自分の間違いに気が付いて立ち去るだろう。
しかし、コジュウタは小さく数回頷いた後、再度言う。「
警備員は舌打ちして、ガムを床に吐き捨てた。警備員の丸太のような腕がコジュウタの襟首を掴む。「
コジュウタはエッジショットの言葉を繰り返す。「
警備員が痺れを切らして丸太のような腕を振り上げる!
その時、「STOP‼」と叫びながら2人の元に中年男がやってきた。左眼に眼帯をした中年男性の名はグリズリー・大五郎。『穴熊』のオーナーだ。
「子供相手になにやってやがる」大五郎は警備員をギロリと睨んだ。オーナーの登場に警備員は慌てて[立ち入り禁止]のマークとTシャツの[殺しのライセンス(仮)]を交互に指さす。
大五郎は状況を理解した。コジュウタをギロリと睨む。「坊ズ、あんた誰だ?」
コジュウタは両手を合せて奥ゆかしく
大五郎は本物の
疑う大五郎を信用させるため、「イヤーッ!」コジュウタは空中に3発ほどパンチとチョップを叩きこむ勇ましいカラテの型を見せた。タツジン!
大五郎は息を呑む。「嘘じゃねぇようだ。モリタさん。アンタ、年は?」「20歳デス」「見えねぇな」「そういう個性です。よく言われマス」「そうか」
成人しているなら問題ないなと大五郎は警備員に扉を開けさせる。「どこでウチの噂を聞いたかは知らねぇが、丁度よかったぜ。あんたは運がいい。今日は飛び入り参加歓迎デーだ」
こうしてコジュウタは『穴熊』の地下へと潜入を果たした。
勿論、こうもすんなりとコジュウタが潜入することができたのには理由がある。しかし、コジュウタはそれを知ることはない。
『穴熊』の地下闘技場は地上と変わらない作りだった。中央には土俵型バトルフィールドがある。違いは客層。此所には黒人パンクスや一癖あるファッションのオタク、海外からの観光客じみた外人は居ない。代わりに身なりの良いスーツを着た男性客が水商売のオイランを連れていたり、堅気には見えない黒ずくめの者たちが腕を組んで座って居たりする。
大五郎は言う。「此所でのファイトは実際合法だ。パチンコ屋と同じ、わかるな?」「ワカル」「ならヨシ。参加費もねぇ。勝てば賞金だ。気張ってけよ」「ガンバルゾー」
コジュウタの返事に満足げに頷いた後、大五郎は店員に後の説明を任せて去って行った。
説明を任されたメキシコ系黒人の店員が言う。「セツメイする」彼が着ているTシャツには
[カラテ十八段][殺しのライセンス][日本語を理解する]とプリントされている。コワイ!
「オマエがファイトする。客がギャンブルする。店が儲かる。Win-Win。ワカル?」
コジュウタが頷く。「ワカル」
店員も頷き説明を続ける。「急所アリ。凶器アリ。“個性”アリ。反則ナシ。ナンデもアリ。ただし殺しはナシ。このファイトは実際合法。ワカル?」
コジュウタが頷く。「ワカル」
店員も頷き説明を続ける。「オマエ、これからファイト。30分アト。ワカル?」
コジュウタが力強く頷く。「ワカル!」
店員は満足げに頷いて去って行った。説明が終わったのだ。
コジュウタは店員に
小型無線機越しにエッジショットが言う。〈目的の違法薬物の現物を抑えたい。試合に勝て。そうすれば売人の方から接触してくるはずだ〉
コジュウタが首を傾げる。「本当に合法ファイト?」
エッジショットが答える。〈灰色だ。オーナーの言うとおり、パチンコ店と同じだ〉「なら、ダイジョブか」〈だが、当然未成年は入店禁止だ〉「アイエエ・・・ダイジョバナカッタ」
エッジショットは忍び笑い。〈コジュウタよ。こんな諺は知っているか?“嘘をついてもいい”〉「アイエエ・・・センセイに怒られる」〈大丈夫だ。何があろうと監督責任は俺にある〉
エッジショットは「それに」と続ける。コジュウタは驚く。聞こえた声が、小型無線機越しでは無かったからだ。
どこからともなくエッジショットの声がする。「俺も既に潜入している。何があろうとお前1人を逃がすことなど簡単だ」
コジュウタはキョロキョロと周囲を探すが、当然、エッジショットを見つけることはできない。
コジュウタは気が付く。「エッジショット=サンが潜入できるなら、俺が危険を冒す必要はナイ・・・?アル・・・?」
エッジショットが叱る。「黙らっしゃい。これも修行の一環だ」
コジュウタは考えを改める。確かにこれは良い機会だ。グレーゾーンのアングラファイトで得られる経験は、通常の職場体験で得られる経験とはレベルの違うモノになるだろう。
入ったのは熊の穴だが、まさに“タイガー・ダンジョン・クエスト”だ‼
コジュウタは気合いを入れた。その時、肩が叩かれた。振り返るとそこに居たのはマスクをした美少女、被我トミコだった。
コジュウタは驚きながらもまずは
被我トミコは目をキラキラと輝かせながらコジュウタの手を握った。「運命です。これは運命なのです!」
被我トミコはコジュウタの隣に座る。手は握ったままだ。「エヘヘ、会いたいと思っていたら直ぐに会えました。すごくうれしーです」
コジュウタは再度問う。「なぜこんな所に・・・?」
被我トミコが答える。「コタローくんはどうして此所にいるのですか?」「・・・言えません」「なら、私も教えてあげません」悪戯っぽく笑う。
被我トミコはコジュウタを揶揄いながら、握っていた手に指を絡ませる。恋人繋ぎだ。コジュウタは何故だか、その手を振り払う気にはなれなかった。「コタローくん」呼ばれる度に、罪悪感を刺激されているからだ。「ナンですか?」「此所は良いところなのです」
被我トミコは続ける。「血がねぇ。いっぱい出てねぇ。みんな、キラキラしています。好きに戦って、好きな事をしている人って、素敵だよねぇ。コタローくんは、血、好き?」
彼女が
そんな変態的異常者と彼女では、比べることすら
コジュウタは時計を確認する。「もう行かなくては。シツレイします」
被我トミコは残念そうに言う。「え?見ていかないのですか?」「見ません。出ます」「え⁉コタローくん、ファイトするのですか‼ヤッター‼」
被我トミコはジャンプして喜んだ。「コタローくんの血。見られるかなあ!」
コジュウタは溜息を吐いた。彼女は自分に友好的に接してくれている。そんな相手の流血を喜ぶ嗜好。さぞや生きづらいだろうと思った。
溜息に気が付いた被我トミコはジャンプを止めてシュンとした。「・・・怒った?」
はしゃぎすぎて叱られるのを怖がる子供のようだ。コジュウタは首を振る。「隠し事をするよりずっと良い」それは自身に向けた言葉だったかも知れない。
「いいの?」上目遣いで被我トミコが訪ねる。コジュウタはマスクの下で笑った。「被我=サンの見たいものは見られないかも。オレのカラテは実際スゴい」
少女は土俵型バトルフィールドに向かう少年を見送った。
もしかするとこの時、少女は自分の身にただらぬ脅威が迫っていることを、乙女の第六感によって感じ取っていたのかも知れない。あるいは単に、これから見られる血みどろに興奮していただけなのかも知れない。少女は喉の奥から絞り出すようにか細く「■■■」と言ってから、奥ゆかしく笑った。
スパーン!スパーン!スパーン!土俵型バトルフィールドの上でコジュウタの蹴りが、頭を掴まれて強制
「グワーッ!グワーッ!グワーッ!」対戦相手は抵抗できない!「そこまで!」レフリーが高らかにコジュウタの勝利を宣言する!
「「「ワアアアア‼」」」会場が沸いた!大穴を当てた
コジュウタは対戦相手に
顔に飛び散った返り血を拭いながら、コジュウタは土俵を降りる。ファイトクラブにおいて勝者はヒーローだ。直ぐにバニーガールの女性店員たちに囲まれる。「スゴくスゴい!」「アカチャン」「アタシいま体温何度あるかなー」バニーガールたちがコジュウタにしな垂れる!これは店側のパフォーマンスだ。勝てば名誉・金・女が手に入るのだと示す事で、ファイターたちのモチベーションアップを謀る大五郎のやり口である!
コジュウタはバニーガールたちをすり抜けて観客席へと向かう。そして、被我トミコの前まで来ると奥ゆかしく忍び笑い。「残念?」
被我トミコはポカンとした後、満面の笑顔になった。「残念です!」
2人のやり取りを見ていた人々は訳がわからない様子だ。会場のどこかにいるエッジショットも首を傾げていた。短い付き合いであるが、2人の間でしか伝わらないナニカがある。
それがどういう結果を生むことになるのか、コジュウタはまだ知らなかった。