ドーモ。ヴィランスレイヤーです。これはニンジャが来てヴィランを討つ物語。   作:白白明け

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今後も皆様の暇つぶしになれば幸いです\(^o^)/




林間合宿②

 

それは温かな記憶。小学年の宿題。『お母さんに名前のゆらいを聞いてみよう』。

埋れてしまった古い記憶。(マイコ)はなんと応えたか。一言一句違わずに記憶している。

「ママが大好きな人の名前からとったのよ。非道い人だって言う人もいるけれど、カッコいいし、優しい事もあるし・・・」母は子を抱きしめながら言った。

「今は離れて暮らしているけれど、きっといつかみんなで一緒に暮らせるわ」

それが母の口癖だった。それを言うときの母はとても幸せそうなので、きっとそれは幸せなことなのだろうと思った。

・・・その幸せは訪れなかったけれど、幸せだったことは忘れない。

仕事柄、母は夜に家を空けることが多かった。「かわいい弧重太(コジュウタ)。今は頑張ろうね。ママも頑張るから」

今ならわかる。母は本当に強い女性だった。そんな母は・・・もういない。幸せになる前に死んでしまった。彼は母を幸せにはできなかった。

 

 

 

マタタビ荘。午後1時。プッシーキャッツが用意していた食材とコジュウタが取ってきた山の幸で決断的バーベキューが開催される最中、喧騒を忍び足で離れる。教師陣とプロヒーローの間で合宿に関するミーティングが始まってしまったため、一生徒であるコジュウタはその場に居づらかった。

コジュウタは現在の己と同じ立場である子供の元に向かった。

「ドーゾ」紙皿に乗ったバーベキューを、マンダレイの従弟(じゅうてい)に差し出す。

ギロリと睨まれるが、気にするべくもない。バーベキューを押しつける様に渡すと、両手を合せて奥ゆかしく挨拶(アイサツ)。「ドーモ。コジュウタ・フジキドです」

「・・・出水(いずみ)洸太(こうた)だ。馴れ合うつもりはない」まだ小学校にも上がっていないと思われる子供にしては、刺々しい雰囲気(アトモスフィア)だ。

「ドーモ。出水=サン。ドーゾ、ヨロシクお願いします」しかし、挨拶(アイサツ)をしっかりと返せるだけで十分だろうと思った。コジュウタは出水洸太の瞳に己と同じ悲しみの色を感じていた。

「洸太=サンと呼んでも?オレのことはコジュウタでドーゾ」「・・・あっちいけ」「アッチは居づらい。つまりそのう・・・お話しても?」「・・・俺にかまうなよ」

再びギロリと睨まれるが、気にするべくもない。コジュウタは出水洸太の隣に腰掛ける。

「チッ」出水洸太は舌打ちをして立ち上がると少し離れた場所に座る。コジュウタは追いかけて腰掛ける。

「チッ」出水洸太は舌打ちをして立ち上がると少し離れた場所に座る。コジュウタは追いかけて腰掛ける。

「チッ」出水洸太は舌打ちをして立ち上がると少し離れた場所に座る。コジュウタは追いかけて腰掛ける。

「なんだおまえ!」出水洸太が怒った。嫌がる相手を追いかけまわす行為は、奥ゆかしさに欠けた実際失礼(シツレイ)な行為だ。ストーカー!

おお、コジュウタよ。それをわかっていながら行うとは、どういうことだ?

「・・・アナタには悲しみのアトモスフィアが溢れている」「なに言ってるんだよ!」「孤独(ひとり)は、寂しいデス」

コジュウタの言葉に出水洸太はビクリと反応する。「マンダレイか⁉」「マンダレイ=サン。カワイイヤッター!」「ハア⁉」「いえ、突然マンダレイ=サンの名前を出されたから・・・ファンなんデス」「本当に・・・なんだよ・・・」

出水洸太は口元をへの字にした後、ボソリと言う。「マンダレイから、俺のことを聞いたんじゃないのか?」「なにも。プライバシーを吹聴する人ではないでしょう」「そうかよ。・・・そうだな」「・・・なにがあったか、聞いても?」

コジュウタはソーセージを囓りながら訪ねた。そんな軽い態度だったから、出水洸太は俯きながらも口を開けた。

「俺の親は、ウォーターホースっていうヒーローなんだ」「ウォーターホース=サン?スミマセン。知りません」「もう居ない」「同じデス。オレも両親が居ません」

出水洸太は顔を上げた。コジュウタは黄土色の茸を食べていた。

「・・・」「・・・?」「・・・話せよ」「いいですが、面白い話ではないデスよ。どこにでもある悲しい話。チャメシ・インシデントです」

 

忘れもしない小学1年生の夏休み。就学祝いで初めて行った海外旅行先で志村(シムラ)弧重太(コジュウタ)という少年は唯一の肉親であった母親を(ヴィラン)に殺された。

天涯孤独となった少年はフジキド・ケンジというヒーローに拾われて、コジュウタ・フジキドになった。

要約してしまえばそれだけの話だ。ありふれたひげき。

「チャメシ・インシデントです」

 

奇しくもそれは出水洸太と同じ境遇と言えた。違うのは親がヒーローだったかどうか、くらいのことだ。コジュウタの話を聞いた出水洸太は、腕で目をゴシゴシと擦っている。色々と思い出してしまったのだろう。

「赤くなってしまいマス」やんわりと止める。鼻を啜る音がした。「ごめん」「いえ、もう乗り越えました」

 

コジュウタは言う。「オレの母は強かった。オレを守る為に、ヴィランに立ち向かったのデス。そして・・・アタリマエのように死んだ。だからオレは、誰よりも勇敢なヒーローにならねばなりまセン」

 

「・・・ヒーロー」出水洸太の顔が少し歪む。

コジュウタは奥ゆかしくクスリと笑った。「ヒーローは嫌いですか?」

「・・・嫌いだ。ヒーローとか、(ヴィラン)とか、そんなこと言って殺し合って、死んじゃうんだろ。イカレてるよ・・・みーんな・・・」

 

ウォーターホースは(ヴィラン)から市民を守り殉職した。ヒーローとしてこれ以上にないほどに立派な最期であり、名誉ある死だった。しかし、そんなことは子供には関係ない。洸太の脳裏に焼き付いた光景は、両親(ヒーロー)の死を素晴らしいものと褒め称える社会。

無機質で血の通っていないテレビ越しの言葉と拍手が、死者を英雄へと祭り上げる。少年が欲しかったのは他人を命懸けで助けるヒーローではなく。ただ側にいてくれる家族が欲しかった。

少年の細やかな願いはもう叶わない。

 

「死んじゃうなら・・・ヒーローなんて・・・誰も助けなきゃいいんだ」「ソーですね」「・・・怒れよ。馬鹿にしてんだぞ」「怒りまセン。洸太=サンの言葉は実際正しい。自分を犠牲にしてまで他人を助けるなんて、端から見れば狂気の沙汰デス」

 

「でもね、洸太=サン。母がオレを助けてくれたことを、ウォーターホース=サンというヒーローが誰かを守る為に戦ったことを、間違っているというのなら、この世界はあまりにマッポーじみている」

 

そう思う。

 

「なにが正しいかは、オレにもわかりません。でもウォターホース=サンがしたことは、立派な事だと思います。だから、わかりません」

 

「…なにもわかってねぇじゃんか」

その言葉は、知ったような口を利かれるよりもよっぽど深く、出水洸太の心に染みた。

 

 

 

 

 

 

午後6時。マタタビ荘のエントランスにて、クラスメイト達を出迎える灰色髪の少年がいた。コジュウタである。「ドーモ。皆さん。オツカレサマでした」

コジュウタは両手を合せて奥ゆかしくお辞儀。

「・・・おつかれ」「・・・おっす」クラスメイト達は疲労困憊の様子だ。彼らは午前9時半から約9時間の道のりを経て、ここまでやってきたのだから無理もない。

今回のサバイバル(サヴァイヴァル)演習は本来、それだけの時間を要するものだ。コジュウタは忍者(ニンジャ)だったから、約3時間でマタタビ荘に来られたに過ぎない。

「コブチャです」コジュウタは疲労困憊のクラスメイトたちに用意していた昆布茶(コブチャ)を配って渡す。

「ありがとデース。でもね、冷たいのがいいかもネ」受け取ったポニーが疲れた様子で言う。

「スポドリとか飲みてェ」鉄哲徹鐵がぼやく。

コジュウタは言う。「コブチャには疲労回復効果以外にも、対ストレス効果がありマス。実際イイ」「そうなんデースね。でもね、冷たいのがイイネ」「サイダーとか飲みてェ」

昆布茶(コブチャ)は不評だ。確かに汗をかいている時に温かい(チャ)は辛い。昆布茶(コブチャ)を用意するのなら、実際冷やしておくべきだったのだ。

コジュウタのオモテナシ精神は未だ洗練の途上にあった。

 

回原旋が昆布茶(コブチャ)を啜りながら言う。「コジュウタは昼飯に間に合ったか?」「ハイ。ギリギリでしたが・・・なんとか」「流石だな」

物間寧人が昆布茶(コブチャ)をガブ飲みしながら問う。「コジュウタ。A組に昼ご飯に間に合った奴は居たかい?」「居ませんデシタ」「ふっ、B組の優秀さがまた証明されてしまったようだね」「ですが、A組の方々は皆さんより30分早く到着していマス」「アイエエエ⁉ナンデ⁉ドウシテ⁉」

物間寧人が膝から崩れ落ちた。そして、A組への対抗心の塊である彼にとって、信じがたい現実を直視し嘔吐!「アバー!」「アイエエエ⁉寧人=サンが吐いたァ⁉」「疲れているときにガブ飲みなんてするから!」

回原旋が物間寧人の背中をさする。「おい、大丈夫か⁉」「だ、だいじょうぶだって・・・」「大丈夫じゃなさそうだ‼」「キノコ!このキノコを!キノコは漢方(カンポ)なので実際身体にイイ!」

慌てているコジュウタが物間寧人の口にキノコを突っ込む!「アバー⁉」物間寧人の身体が虹色に光り出した!フシギ!

回原旋が驚く。「アイエエエ⁉バカ、コジュウタ!バカ!なに食わせた⁉」「森で拾ったキノコです」「なんの茸だ?」「・・・松茸ではありません。実際それは確か」

鉄哲徹鐵が叫ぶ。「小森ィイ‼小森来てくれェエ‼」

茸の専門家(プロフェッショナル)である小森希乃子がやってきた。「うわ。物間が光っているノコ。誰の個性?」「コジュウタが茸を食わせたらこうなった!なんの茸だこれ⁉」「見せて」「ドーゾ」

小森希乃子が受け取った茸をマジマジと見る。「これは・・・カラダガヒカリダケ。食べたら身体が光るノコ」「毒茸か⁉」「身体が光るだけだから、心配いらないノコ。少し待てば光も消えるから、大丈夫ノコよ」

小森希乃子は頬を膨らませてコジュウタを叱る。「素人が茸を無闇に食べさせるのは駄目キノコだよ!反省して!」「アイエエ・・・申し訳ゴザイマセン」コジュウタは深々とお辞儀。

「寧人=サンも、申し訳ゴザイマセン」「き、君って奴は、本当に仕方のない奴だな・・・。貸しひとつだからね。・・・忘れないでくれよ」物間寧人は発光しながら、コジュウタの謝罪を受け入れた。ブキミ!

 

茶番を見ていたブラドキングが溜息を吐いた後、生徒たちに言う。

「遊んでないでさっさとバスから荷物を降ろせ!合宿の本格的なスタートは明日からだ!遅れればそれだけ、身体を休める時間が減るぞ!部屋に荷物を運んだから食堂にて夕食!その後、A組の後に入浴で就寝だ!」

 

「「「ハイヨロコンデー」」」

B組生徒たちは一斉に動き出した。

 

 

 

 

 

午後8時。B組入浴時間。露天岩風呂。

 

マタタビ荘には温泉(オンセン)が湧いている。温泉(オンセン)にはあらゆる怪我と病気を治す効果があり、実際身体にイイ。だが、時々健康に良くないガスが充満している温泉(オンセン)もあるので注意が必要だ。そういう温泉(オンセン)に入浴する際にはガスマスクの着用が必須とされている。

 

ガスカスクを装着したコジュウタが、回原旋にガスマスクを差し出す。「旋=サンもドーゾ」「いらないだろ。どうしたんだそれ?」「A組の八百万=サンにソウゾウ・ジツで作って貰いました。なぜか怪訝な顔をされていました」「そりゃそーだろ。怖いから外せよ」「ガス?有毒?ダイジョブ?」「ダイジョブダッテ」

 

温泉に浸かる物間寧人が隣の鉄哲徹鐵に不安げに言う。「ねえ、僕の身体。まだぼんやり発光してない?」「アァ?アァー、光ってんなァ。湯気でよく分かるぜェ」「だよね。本当にこれ平気なやつかな?流石に不安になってきたんだけど・・・」「小森が大丈夫だっつってンだァ。大丈夫だろォ」

 

丹念に身体を洗う宍田獣郎太。体毛で泡だった彼の身体は巨大な泡の塊となっていた。隣で身体を洗っていた骨抜柔造が笑う。「宍田。やりすぎじゃない?」「しっかりと洗わねば、抜け毛が湯に浮いて迷惑をかけてしまいますからな」「おまえのそういうところ、本当に好き」

 

B組の男子たちが各々に温泉を堪能している。ほのぼのとした雰囲気(アトモスフィア)の中、ふとした瞬間に訪れた静寂。

隣の女風呂から、女子たちの会話が聞こえた。

 

 

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取蔭切奈の声だ!「「「ブブッ⁉」」」男子たちは思わず咳き込んだ!

 

 

今日日(きょうび)、学校行事で男女の入浴時間をズラさないという雄英の怠慢によって、聞こえてしまった花園(パライゾ)の声‼

ポニーのナニがアメリカンサイズなのかを、残念ながら筆者が書くことはできない!読者諸君のご想像にお任せしたい‼

とりあえずコジュウタは爆発四散ッ‼「グワーッ!」

回原旋が慌ててコジュウタを介抱するが、もう遅い!「コジュウタ⁉しっかりしろ!」「アイエエ・・・ポニー=サンの・・・アメリカンサイズ・・・」「コジュウター⁉」

鉄哲徹鐵が背後から回原旋の口を塞ぐ。「バカ!静かにしろって・・・」

 

尚も木の壁の向こう側で続く女子たちの会話(ガールズトーク)

 

「そういう切奈だって、良いものをもってマース」「まーね。ちょっと自信あるんだから。見てみて、どうよ?」「素晴らしいデース!」

回原旋が顔を真っ赤にする。「取蔭・・・アイツ、恥じらいってもんをな・・・」

物間寧人が動揺しながら同意。「ままままったく、はは恥じらいって、その通りだよ。あんな会話はさあ、B組の品位を下げるよね!拳藤の奴はなにしてんだかなあ!」

 

件の拳藤一佳の声。「希乃子のさ、綺麗だよね。お手入れってどうしてる?」

なんということか⁉B組のまとめ役である彼女すら、退廃的ピンク色なガールズトークに参加していようとは⁉

「しっかりもみ洗いするのが大切ノコ」

「グワーッ!」小森希乃子に密かに思いを寄せる黒色支配が倒れた⁉宍田獣郎太が咄嗟に助ける!頭を打っていないのに鼻血を出している⁉アブナイ!「く、黒色氏⁉しっかりするのです!傷は浅いですぞ!」

 

既にB組男子の2人が倒れた。骨抜柔造は柔軟に状況判断。「うん。これ以上はマズいね。みんな、耳を塞ぐんだ!」

こういう会話を男子が聞くのは実際失礼(シツレイ)!骨抜柔造の言葉は正しい!男子たちは一斉に頷く!「応ゥ!」「そうだね!」「ヨロコンデー!」「そうしよう!」「そうするべきですぞ!」

 

「でも、やっぱり・・・一番大きいのは唯だね」

 

・・・誰も耳を塞がなかった!骨抜柔造も塞いでいない!ウソツキ!

 

「うらめしい。じゃなくて、羨ましい」

柳レイ子の声に続き、小大唯の恥ずかしそうな美少女ボイス!

 

「ん。ちょっと・・・恥ずかしい」

 

「「「グワーッ!」」」円場(つぶらば)硬成(こうせい)泡瀬(あわせ)洋雪(ようせつ)。鎌切尖の3人が崩れ落ちた!小大唯は実際美少女!そこに恥じらいが加わることで大和撫子(ヤマトナデシコ)効果で破壊力は倍加重点‼

死屍累々である。生き残っているのは僅かに数名。その数名も最期に聞こえた塩崎茨の声で死ぬ運命(さだめ)だ・・・。

 

「私はみなさんと違って無いですから・・・少し恥ずかしいです・・・」消え入る様な声。

平坦な胸にも良さはあると男子たちは思ったが、口には出せない。

寂しげな塩崎茨に小大唯が声をかける。「じゃあ・・・、触ってみる?」「いいんですか?」「ん」

男子たちはゴクリと唾を呑んだ。

 

「じゃあ、お言葉に甘えさせていただいて・・・わあ、とっても大きくて柔らかいですね―――この洗身スポンジ‼

 

 

「「「「モウダメダーッ!」」」」

 

 

勘違いをしていた男子たちが一斉にひっくり返る。

「男子!ちょっとうるさいぞ!」「「「うるさーい」」」拳藤一佳と女子たちの声が、湯気に乗って運ばれてくる・・・。男子浴場・・・そこはもはや見捨てられた地・・・。答える声はなく・・・地獄盆地(ヘルボンチ)の鎮魂の丘めいて・・・静寂のみがあった。ナムアミダブツ!

 

 

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