ドーモ。ヴィランスレイヤーです。これはニンジャが来てヴィランを討つ物語。   作:白白明け

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侵入者有

オールマイトが雄英の教師になって以降、連日雄英高校正門前には人だかりができていた。

TV局のカメラが祭りのぼんぼり(ボンボリ)が如くに並び、マスコミが的屋(テキヤ)の如く通学してきた学生たちを待ち構えている。マスコミの目当てはオールマイトである。日本のNo.1ヒーローが雄英の教師になったことは、当然、世間を賑わせる一大ニュースになっていたのだ!

「オールマイトの授業はどんな感じですか?」インタビュアーの一人が地味目の緑髪の少年にインタビューをしていた。マスコミに詰め寄られる学生は、彼だけではない。

「“平和の象徴”が教壇に立っているということで様子などを聞かせて!」「教師オールマイトについてどう思ってます?」「オールマイト・・・あれ?君「ヘドロ」の時の‼」丸顔の可愛い少女。眼鏡の真面目そうな少年。爆発頭のヤンキーなど、多くの学生たちにマイクが向けられる。「ザッケンナコラー!オールマイトにインタビューさせろオラー!」アブナイ!マスコミの中には口汚い言葉(ヤクザスラング)を発するものもいた。報道の自由が常識よりも優先されると勘違いした厄介なマスゴミである。

 

コジュウタは一緒に登校していたポニーの手を握って言った。「ポニー=サン。オレに着いてきてください」

ポニーはニコニコと笑いながら、頷く。「ハーイ!」

コジュウタはポニーの手をしっかりと握りしめたまま正門に向かって行く。迂闊(ウカツ)!コジュウタはどうしたというのか!このまま行けば自分はおろかポニーまでマスコミにもみくちゃにされてしまうではないか!不様(ブザマ)か?否、チガウ!

マスコミでごった返す正門前であったが、コジュウタは避けるそぶりすら見せず、なおかつ誰とぶつかることなく、スムーズに前進する。ワザマエ!

コジュウタはマイクの一つも向けられることなく正門をくぐり抜けたところでポニーの手を離した。しかし、離した手は直ぐに握り返された。「Why(どうして)⁉どーやったの?」ポニーが、その豊満な胸をコジュウタの腕に押しつけながら、目を輝かせている。とても興奮したようすだ。

コジュウタは平衡を装う。「これがカラテだ」「カラテ、ヤバいね!」コジュウタは紳士的にポニーを遠ざけようとする。しかし、ポニーはコジュウタの腕を放さない!実際ウレシイ!

だが、これ以上ポニーの豊満を堪能することは欲張り(ヨクバリ)村八分(ムラハチ)だ。

コジュウタはスルリと腕を抜いた。ポニーはコジュウタがマスクの下で顔を赤らめているのを確認する。「恥ずかしい?カワイイデスね」それを口に出さずに、ポニーはコジュウタの隣をニコニコ笑顔で歩くのだった。

 

 

 

午前の授業が終わり昼休み。賑わう教室の片隅に緊張した面持ちの灰色髪の少年がいた。コジュウタである。コジュウタの机の上には昼食がある。それはナニか。勿論、寿司(スシ)だ。だが、それはコジュウタの知る寿司(スシ)ではなかった。形こそ海苔巻きに分類される寿司(スシ)なのだが、巻かれているものはネギトロやカンピョウ、胡瓜(カッパ)ではない。チリコンカンだ。一緒にチーズも入っている。上には更にガスバーナーで炙ったチーズがのせられ、バジルも振りかけられていた。

これはポニーが作ったナチョ・寿司(スシ)である!

「コジュウタの為に作りました!沢山食べてくだサーイ」出がけにそう言って渡されたのだ。

異色の寿司(スシ)だが、食べないという選択肢はない。ナチョ・寿司(スシ)弁当(パック)には箸ではなくフォークが付いていた。コジュウタはフォークでナチョ・寿司(スシ)を差し、口に運ぶ。そして、目を輝かせた。実際美味しい!

女子生徒数名で集まり昼食を食べながら、コジュウタの様子を伺っていたポニーが小さくガッツポーズをしていた。

 

コジュウタが日本とメキシコのフロマージュに感動していると声をかけられた。

「どーも、コジュウタ。一緒していいか?」

回原旋が弁当を手にやってきて、空いている席の椅子を借りて座る。

「ドーモ。旋=サン。どーぞ」

「美味そうなの食べてるな?」

「実際ウマイ。・・・悪いが、あげられない」

「とらねーよ」

闊達に笑う回原旋にもう影はない。彼の胸に燻っていた陰鬱な思いは、コジュウタによって既に晴らされていた。

二人は昼食をとりながら談笑する。

HR(ホームルーム)は惜しかったな」

話題は、午前中のHR(ホームルーム)で行われた学級委員長決めだ。回原旋は残念そうに言う。「俺はコジュウタに投票したんだ」

学級委員長はクラスの纏め役だ。普通科なら、雑務と思われ人気がないが、ヒーロー科では集団を導くというトップヒーローになるための素地を鍛えられるために人気がある。その為、自薦が多くB組学級委員長は投票によって決められることになったのだ。

結果、B組学級委員長になったのは4票を獲得した拳藤一佳だった。

「コジュウタは3票だったろ。残念だよ」

「オレは自分に投票していない」

「え、なんで?」

「リーダーは実際大変。オトコギの徹鐵を推した」

「なら、俺の他にもお前に入れた奴が2人もいるのかよ。やっぱスゲえなコジュウタは」回原旋は自身を救ってくれたコジュウタを高く評価している。

「入れたのは誰だろうな」

その疑問に答える声があった。

 

「入れたのは僕だよ」

 

クラスメートの物間(ものま)寧人(ねいと)が、座る二人を見下ろしていた。

コジュウタが両手を合せて挨拶(アイサツ)

「ドーモ。物間=サン。コジュウタ・フジキドです」

コジュウタの挨拶(アイサツ)は、クラス内で彼の癖として既に認知されていたので、物間寧人も直ぐに答える。

「どーも。物間寧人です。君、ファミリーネームで呼ばれるの嫌いなんだろ?名前で呼ぶから、僕の事も好きに呼んでくれていいよ」

「では、寧人=サン。ヨロシクオネガイシマス」

「はいはい、よろしく」挨拶(アイサツ)を終えた後、物間寧人は言葉を続ける。

「君、入試1位だろ?B組の顔に丁度良いと思ったけど、本人にやる気がないなら見込み違いだったかな」口調はどこか喧嘩ごしだ。その雰囲気(アトモスフィア)を感じ取り、回原旋がジロリと睨んだ。

「その言い方はなんだよ」

「彼が舐められればB組全体が舐められるんだ。当然の期待だろ?」

物間寧人はニヒルに笑う。

「ここはヒーロー科だよ。やる気がないのがトップならなくて、本当によかったよ」

「言葉がすぎるぞ」

露骨な挑発に回原旋が椅子を倒して立ち上がる。

その時、コジュウタは回原旋の口に素早くナチョ・寿司(スシ)をねじ込んだ。「アイエエ!」突然の事に回原旋はむせ込んだが、ナチョ・寿司(スシ)は実際美味い。そして、コジュウタが立ち上がる。

物間寧人は突飛な行動で回原旋を鎮めたコジュウタに驚きながらも余裕な態度は崩さない。

「君も何か言いたい事があるなら、遠慮しなくていいんだよ。僕らはクラスメイトなんだから」

コジュウタの目がキラリと光る。そして、言った。

 

「“武士は食事をしないとヨウジの値段が高騰しなくてよくない”」

「・・・は?」

「忠告、ありがとう。イタミイリマス」

 

コジュウタは一礼してから席に着く。物間寧人は突如、意味のわからない言葉の羅列を聞かされてポカン顔だ。コジュウタとしては“個人(自分)にとっては、委員長をやりたくなかったので、自分に票を入れなかったのは正しい行動だったが、全体を見れば確かに悪影響を及ぼす(今年の入試1位はやる気がないと思われる)怖れがあったかもしれないと反省した”ことを(コトワザ)で伝える雅にして奥ゆかしい行動。そこには勿論、適当なことをいって物間寧人を煙に巻こうという気は微塵もない。

その雰囲気(アトモスフィア)は物間寧人にも伝わった。

コジュウタは自信満々にドヤ顔を決める。

「平安時代の哲学者にして剣豪、ミヤモトマサシの言葉である」

物間寧人は復活した回原旋に問いかける。

「ねえ、江戸時代の宮本武蔵ならまだしも、平安時代のミヤモトマサシなんて僕は寡聞にして知らないんだけど、これは僕の教養不足かい?」

回原旋は物間寧人の肩を優しく叩いた。

「諦めろ。コジュウタはこういう奴だ」

先ほどまで敵対していた二人の心が、少しだけ通じ合っていた。ユウジョウ!

 

 

そして、その時、教室内に警報が鳴り響く。「ウウー!」雄英に侵入者があったことを告げるセキュリティ3の警報アラートだ!

 

〈セキュリティ3が突破されました〉

〈生徒の皆さんはすみやかに屋外に避難してください〉

 

電子アナウンスが流れ、ざわめく教室。

先ほど学級委員長に選ばれた拳藤一佳が立ち上がり、クラスを纏める。「皆、指示に従って避難するよ!」「いったいなんだァ」「詮索は後にするノコ。いそご」「慌てず騒がずですぞ」ざわめきながらもパニックを起こす生徒は居なかった。流石は雄英ヒーロー科!実際流石!

コジュウタはクラスメイト達が避難を開始する中で、窓の外に視線を向けていた。

外でナニが起きているのか、此所から伺い知ることはできない。だが、コジュウタは己の首筋にチリチリとする熱を感じた。不吉(フキツ)

「・・・マイコ」コジュウタは呟く。唯一の肉親であった母の名だ。何故、いまその名が出てきたのか。コジュウタ自身にもわからない。わからない事に答える声に、応えてはならない。

 

「ブザマでごぜぇやす」しゃがれた声が答えた。コジュウタは目の前の窓ガラスに映る青黒い忍者(ニンジャ)の姿を見た。「コジュウタ・○○○=サン。ボウハチ・ニンジャです」忍者(ニンジャ)は言った。コジュウタは訝しんだ。「ドーモ。ボウハチ・ニンジャ=サン。コジュウタ・フジキドです。・・・ブザマ、とは?」「実にブザマでごぜぇやす」ボウハチは言った。奈落(ナラク)めいた嘲笑の声だ。「あんたが為すべきことを思いだぜ」面頬(メンポ)の『敵』『討』のレリーフがギラリと光を反射した。「母の仇が、近いのか?」「そうだ。敵を討て、()()()」コジュウタは気が付いた。

これはコジュウタの師匠(マスター)、ニンジャスレイヤーから聞いたニンジャソウルだ。ニンジャソウルとは平安時代に切腹(ハラキリ)儀式(リチュアル)を行った結果、死した忍者(ニンジャ)の魂だ。ニンジャソウルに憑依されることで人間は忍者(ニンジャ)に変わる。

コジュウタは幼少期に死にかけた時、このニンジャソウル助けられて忍者(ニンジャ)になったのだ。「()()()」「黙れ」ボウハチに応えてはならない。

コジュウタの魂がニンジャソウルの闇に呑まれた時、それは彼がニンジャスレイヤーに殺される時だ。「『忍』『殺』のレリーフに偽りなし。マスターはオレを殺すだろう」それはコジュウタにとって、そして、ニンジャスレイヤーにとってもきっと悲劇だ。「コロセー!」「ダマラッシャー!」コジュウタはボウハチを黙らせる。

 

「なにしてんだ?拳藤が先導してる。早く避難するぞ」「ハイヨロコンデー」コジュウタは窓ガラスに映ったボウハチから視線を外し、教室から出て行く。「いつまでも目を逸らせるもんじゃねぇ」ボウハチは奈落(ナラク)じみた笑みで、それを見送った。

 

避難指示はその後、直ぐに解除された。侵入者は取材のためなら不法侵入も辞さない厄介なマスゴミだった。警察の到着後、彼らは厳重注意の上、追い出されるのだった。

 

 

 

数時間後、コジュウタは家にいた。ホームステイ先であるポニーファミリーが彼の為に用意してくれた部屋だ。壁には「郭公(かっこう)鳥」の書道(ショドー)が飾られ、その下の焦げ茶の壺には水仙が刺さっている。オレゴンハウスには実際似合わないこれらは彼がアメリカから持ち込んだものだ。これらがある事で部屋にはごく小さくも奥ゆかしい(ゼン)の空間が出来上がっている。「・・・」コジュウタは墨を擦り、毛筆で手紙をしたためていた。ボウハチ・ニンジャのことをアメリカにいるニンジャスレイヤーに伝える為の手紙だ。「マスターから大切なことは手紙を書けって言われているけど、実際不便」コジュウタは書き上げた手紙を蛙の折り紙に変えてアメリカに送るのだった。

 

 

 

 

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