ドーモ。ヴィランスレイヤーです。これはニンジャが来てヴィランを討つ物語。   作:白白明け

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雄英体育祭ッ、開幕‼




障害物走①

 

 

雄英体育祭、当日!

雄英の体育祭は日本のビックイベントの一つである。オリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ、全国を熱狂させていたのも今は昔。超常以後、規模も人口も縮小し形骸化した。そして、この国(日本)において“かつてのオリンピック”に代わるのが、雄英体育祭なのだ!その注目度は海を越え、海外でもネット中継されている。実際スゴい!

 

アメリカ合衆国。摩天楼シティ。

目深(まぶか)に被ったハンチング帽とトレンチコートという身なりの男は、1ドル寿司(スシ)(バー)でタマゴ寿司(スシ)を食べながら、カウンターに置いたタブレット端末に目を向けていた。タブレット端末に写し出されている映像は、雄英体育祭のリアルタイムライブ中継だ。

 

〈雄英体育祭‼ヒーローの卵たちが我こそはと鎬を削る年に一度の大バトル!〉中継を務める海外ヒーローの叫び(シャウト)が、男の耳に心地よく響く。男は次に烏賊(イカ)寿司(スシ)を口に運ぶ。

 

〈どうせてめーらアレだろ!こいつらだろ⁉(ヴィラン)の襲撃を受けたにも拘わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星‼〉男は次にマグロ寿司(スシ)を口に運ぶ。

例年の雄英体育祭は3年間の集大成として、ラストチャンスにかける3年生ステージに注目が集まると男は聞いていた。しかし、今年は例外。司会のヒーローが言うように、1年生。

先日、(ヴィラン)に襲われたA組の生徒への注目が高い。

 

〈ヒーロー科‼1年‼A組だろぉぉ⁉〉男は1ドル寿司(スシ)(バー)にありながら、1ドルでは食せぬ高級品、オーガニック・イクラ寿司(スシ)を口に運ぶ。ブルジョア!

1年A組に向けられる歓声が、画面越しにも伝わった。

 

〈そして、B組に続いて普通科、C・D・E組・・・‼サポート科F・G・H組もきたぞー!そして経営科・・・〉男は最後に粗茶(あがり)で喉を潤す。

画面の端に映る灰色髪の少年が放つアトモスフィアを確認して、タブレット端末の映像を消した。男はカウンターの脇に代金を置き、お辞儀(オジギ)して立ち去った。「あの様子なら、大丈夫だ」店を出る男の口元には、奥ゆかしい小さな笑みがあった。

 

 

 

 

同時刻、雄英体育祭1年生ステージ。

B組生徒の誰かが言った。「選手宣誓。大丈夫かな?」視線の先には朝礼台に上がる灰色髪の少年がいた。コジュウタだ。入試1位であるコジュウタは、雄英体育祭1年生ステージの選手宣誓を任されていた。「センセイ!」独特のイントネーションが周囲に響く。コジュウタは日本生まれ海外育ちの留学生である。その為、日本語が少し不自由であるとクラスメイト達から思われて居た。コジュウタ本人曰く、“古事記を全編読破しているので実際問題ない”らしいのだが、そんな戯言(たわごと)の時点でお察しである。

 

「カラダニキヲツケネ!」

 

大声である。素晴らしい!“カラダニキヲツケテネ”とは、凄絶(そうぜつ)(イクサ)(おもむ)かんとする者への手向(たむ)けの言葉である!これから戦う相手への気遣いに溢れた、なんと日本的で奥ゆかしい選手宣誓であろうか!実際奥ゆかしいコジュウタも、これには思わずドヤ顔である。

しかし、周囲は静まり返る。次第に言葉の意味を理解した生徒から、首を傾げる。「“身体に気をつけてね”?」B組生徒たちは「あちゃー」と顔を手で覆っていた。

選手宣誓を終えたコジュウタが朝礼台から降りてクラスの列に戻ろうとするのを止めたのは、今年の1年生ステージの司会を任された教師、プロヒーローのミッドナイトだ。「ちょ、ちょっと待ってね」ミッドナイトは“18禁ヒーロー”。SM嬢のような過激なコスチュームに身をつつむ長身の美女だ。そのバストは豊満であった。

「ごめんなさいね。もう少しちゃんとお願いできるかしら」我が儘(ワガママ)!ミッドナイトは先ほどの気遣いに溢れた素晴らしい選手宣誓以上のものを求めている!欲張り(ヨクバリ)村八分(ムラハチ)だ!・・・と、コジュウタは憤るが、ミッドナイトは可愛らしく言う。「お願い。ね♪」コジュウタの目の前でミッドナイドの胸が絹豆腐(トーフ)のように揺れる。そのバストは豊満であった。「アッハイ」コジュウタは再び朝礼台に上がる。

コジュウタは考える。「センセイとは、奥ゆかしいだけではダメなのか」言われれば確かに、先ほどの選手宣誓は気遣いに溢れた実際素晴らしいものだったが、闘争本能をかき立てるには足りなかったかも知れない。「イクサに・・・、赴くのならば・・・」コジュウタは目を瞑ってから大きく息を吸い、大きく息を吐いた。心の平衡(へいこう)をたもつチャドーの呼吸だ。目を開いたコジュウタの瞳には、鬼火めいた青い光が宿っていた。

 

 

 

普通科生徒の誰かが言った。「俺らって完全に引き立て役だよなあ」雄英体育祭の主役は、誰が見てもヒーロー科である。同じ競技に挑むとはいえ、ヒーロー科は普段からヒーロー基礎学で身体と心を鍛えている。スタートからして違うのだ。「たるいよねー・・・」多感な時期に差異を見せつけられる。雄英の校風が“Plus Ultra(更に向こうへ)”だとしても、実際惨い(ムゴイ)。「だから、せめて、ヒーロー科()には憧れて居て欲しいのにさぁ」「入試1位がアレかよ・・・」失望と嘲笑が、普通科生徒の間で広がっていた。

その中で誰も居ない朝礼台をジッと見ている普通科生徒が居た。心繰人使だ。心繰人使は、陰口を叩くクラスメイト達の気持ちがわかる。「普通科(おれ)たちは、確かにヒーロー科(あいつら)を盛り上げるだけの踏み台かも知れない」だからこそ、誰に踏まれるかが重要なのだ。

心繰人使は信じて居た。憧れは、止まらないことを―――そして、彼は戻ってきた。

灰色髪のマスクをした少年。朝礼台に再び立った彼は、目を瞑る。誰かが嘲笑う。「緊張してるよ」しかし、その嘲笑は彼の目が開かれた瞬間にかき消えた。「アイエエ・・・」「アイエエ・・・」「アイエエ・・・」心繰人使はクラスメイト達の震える声を聞いた。朝礼台の上で膨れ上がった殺気じみた雰囲気(アトモスフィア)に触れ、さほど感受性の高くない普通科生徒すら震え上がっているのだ。心繰人使自身も気を抜けば膝が笑ってしまいそうだった。

心繰人使はヒーロー科へと目を向ける。「これがヒーロー科の生徒だったなら・・・ッ⁉」ヒーロー科の生徒たちも震えていた!しかし、それは武者ぶるいである!普通科生徒たちが震え上がった無言の宣誓を受けて、彼らは心を奮い立たせていたのだ!実際見事(ミゴト)!否、チガウ!感心している場合ではない!自らもそうあらねばとッ!心繰人使は再び朝礼台を見る!

 

選手宣誓(センシュセンセー)」独特のイントネーションが周囲に響く。続く言葉は、先ほどのものとはまるで違った。彼は両手を合せて深くお辞儀(オジギ)

「ドーモ。皆さん。コジュウタ・フジキドです」(ニンジャ)にとって挨拶(アイサツ)は、(イクサ)における絶対の礼儀。どんなことがあろうとも(イクサ)に挑むのならば、絶対に欠かしてはならない。古事記にもそう書いてある。

心繰人使はそれをA組B組(ヒーロー科)だけでなく、C組D組E組(普通科)F組G組H組(サポート科)、経営科にも向けている意味を悟り、再び身を()()()()

 

「タムイズマネー。オレの不手際で、時間がありません。多くは語りません。でも、言っておきたいことがあります。“勝っている時がアブナイ”。油断しません。A組もB組も、普通科もサポート科も、経営科だって関係ありません。かかって来てください」

 

鬼火めいた青い光を宿した眼は見下ろす全ての生徒たちが、敬意を払うに値する相手。(イクサ)の舞台に上がるものとして見ていた。だからこそ―――

 

 

「それでは皆さん。カラダニキヲツケテネ(大怪我はしないでくださいね)

 

 

これが雄英ヒーロー科1年生代表!今年度入試1位!

これから戦う相手をも気遣うなんと奥ゆかしく素晴らしい宣戦布告だろうか!

“カラダニキヲツケテネ”!

 

 

 

 

 

 

雄英高校体育祭。運命の第1種目は“障害物競走"だ。

司会のミッドナイトが言う。「いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!」計11クラスでの総当たりレース。コースはスタジアム外周4km。ルールは()()()()を売り文句とする雄英らしく、コースを守ればなにをしたって構わない!

 

「さあさあ位置につきまくりなさい!・・・スタート!」運命の火蓋が切られる!

 

生徒たちが一斉に駆け出す!しかし、スタジアムから外にでるスタートゲートが狭すぎだ!殺到した生徒たちによってスタートゲートは寿司(スシ)詰め状態!

人をかき分け前に進めるか、スタート地点から既にふるいにかけられているのだ!殺伐(サツバツ)

そんな状況のスタートゲートで、人を避けるそぶりすら見せず、なおかつ誰とぶつかることなく、スムーズに前進する灰色髪の少年が居た。コジュウタである。この歩法は以前、マスコミ対策で読者の皆様に披露したカラテである。カラテとはナニか、聞いてはならない。カラテの意味を聞くようなものは、カラテができないからだ!

コジュウタはスタートゲートを抜けた先の地面が凍り付いているのに気が付いた。先を行く生徒の仕業だ!早速の妨害!「ヒョウトン・ジツか。イヤーッ!」コジュウタは凍った地面を飛び越える。下には凍り付き動けなくなった生徒たちの姿。まるでツキジの冷凍マグロ倉庫のような光景!惨い(ムゴイ)

 

妨害を越えたコジュウタの耳に実況を務めるプレゼント・マイクのシャウトが聞こえた。

 

〈さぁいきなりの障害物だ‼まずは手始め・・・第一関門ロボ・インフェルノ!〉

 

生徒たちの目の前に現われたのは雄英入試、実技試験の仮想(ヴィラン)ロボットたち!おお、南無阿弥陀仏(ナムアミダブツ)・・・!なんたる暴力的な光景か。そこには、何体もの0P(ポイント)超巨大ロボットがそびえ立つ。

 

「入試ん時の0P(ポイント)(ヴィラン)じゃねぇか!」「マジか!ヒーロー科、あんなんと戦ったの⁉」「多すぎて通れねえ‼」

 

ヒーロー科の生徒は個性を用いて0P超巨大ロボットを回避。既に先へと進んでいる。しかし、それができない他の科の生徒たちが思わず立ちすくむ中で、コジュウタがマスクの下で僅かに笑う。これはボーナスステージだ!

足を止めることなく駆け抜けるコジュウタに0P(ポイント)超巨大ロボットの巨大な腕が振り下ろされる。〈圧倒的脅威ドスエ!圧倒的脅威!ドスエ!〉誰かが叫んだ!「あぶねえッ!」コジュウタは進む。そして、巨大な腕が振り下ろされる。南無三(ナムサン)

コジュウタは振り下ろされた巨大な腕を紙一重で回避!ニンジャの動体視力と反射神経が成せる技である。ワザマエ!そして、巨大な腕を掴み取ると()()()

「イヤーッ!」見事な一本(イポン)背負いである。0P超巨大ロボットの巨体が、コース端に飛んでいった。「アイエエエエ!」周囲の生徒たちが思わず叫ぶ。信じられないモノを見た。そう言いたかった。

体格差を考慮しないカラテの種明かしは、コジュウタの個性『無重』(ムジュウ・ジツ)である。コジュウタは触れたモノの重さを無視できる。カラテ×個性『無重』(ムジュウ・ジツ)()、見事な一本(イポン)背負いだった

そして、コジュウタのカラテは止まることはない。

 

〈圧倒的脅威ドスエ!〉巨大な腕が振り降ろされる!「イヤーッ!」コジュウタは紙一重で回避、巨大な腕を掴み取り一本(イポン)背負い!〈ピガーッ⁉〉0P超巨大ロボットはコース端に投げ飛ばされた!

 

〈圧倒的脅威ドスエ!〉巨大な腕が振り降ろされる!「イヤーッ!」コジュウタは紙一重で回避、巨大な腕を掴み取り一本(イポン)背負い!〈ピガーッ⁉〉0P超巨大ロボットはコース端に投げ飛ばされた!

 

〈圧倒的脅威ドスエ!〉巨大な腕が振り降ろされる!「イヤーッ!」コジュウタは紙一重で回避、巨大な腕を掴み取り一本(イポン)背負い!〈ピガーッ⁉〉0P超巨大ロボットはコース端に投げ飛ばされた!

 

 

〈圧倒的脅威ドスエ!〉巨大な腕が振り降ろされる!「イヤーッ!」コジュウタは紙一重で回避、巨大な腕を掴み取り一本(イポン)背負い!〈ピガーッ⁉〉0P超巨大ロボットはコース端に投げ飛ばされた!

 

〈圧倒的脅威ドスエ!〉巨大な腕が振り降ろされる!「イヤーッ!」コジュウタは紙一重で回避、巨大な腕を掴み取り一本(イポン)背負い!〈ピガーッ⁉〉0P超巨大ロボットはコース端に投げ飛ばされた!

 

〈圧倒的脅威ドスエ!〉巨大な腕が振り降ろされる!「イヤーッ!」コジュウタは紙一重で回避、巨大な腕を掴み取り一本(イポン)背負い!〈ピガーッ⁉〉0P超巨大ロボットはコース端に投げ飛ばされた!

 

「ゴウランガッ!」

 

0P超巨大ロボットたちが水揚げされたマグロの如く、コース端にキレイに並んで倒れている。その光景に固まっていた生徒たちが、沸き立つ!「カラダニキヲツケテネが道を切り開いたぞ!」「オタッシャデーの人よ!」「漁夫の利ぃ!」「あいつに続けぇ!」コジュウタが切り開いた道を、立ち往生していた生徒たちが一斉に駆け抜けるのだった。

 

 

後方で沸き立つ歓声を聞いて、先頭を駆け抜ける少年、A組の轟焦凍は足を止めずに僅かに振り返った。後方との差は開いている。何故か立ちこめる砂煙もあって、なにが起きたのかうかがい知ることはできない。その時、追い上げてきた生徒の怒声が聞こえた。「よそ見とは余裕だなぁ、半分野郎!」クラスメイトの爆豪勝己だ。「気にしている余裕はないな」轟焦凍は前に向き直り、白い息を吐いて全力で走り出した。

 

 

スタジアムのモニターで見ていたミッドナイトが微笑みながらに言った。「青臭いわね」第一関門の0P超巨大ロボット、もしあの灰色髪の少年が前や後ろに投げ飛ばしていたなら、それは他の生徒への大きな妨害になっていた。障害物()()である以上、そうするべきだった。ルールは()()。言外に妨害は推奨されている。「それでも、しなかったのね」他の生徒への被害を避けた。その上、投げ飛ばす必要のない何体もの0P超巨大ロボットを投げ飛ばして、後続への道を切り開いた。

そして、灰色髪の少年は足を止めて叫び、()()()()()()()()とでも言いたげに振り返っていた。

他の選手への援護。無駄に足を止めてのタイムロス。競技者としては失格だ。けれど、その姿は、なりたい未来(ヒーロー)を示す若者そのものだ。「好みっ!」ミッドナイトは身もだえていた。

 

 

 

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