双星方舟〜翠玉を渡る詩〜   作:青瑠璃

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変化へ

 

「え、シレモトスを変える……んですか?」

 俺たちは港にある軽食店で、ここまで来た話をハルバラトが全てリーナに話した。

 話を聞いたリーナは、やはり想定通り驚いた顔を返した。

「うん! ボクはスナタザを倒して、シャオトはシレモトスを出るの!」

 と元気な声でハルバラトは言ったが、リーナは決して明るい顔はしなかった。

「でも……シレモトスを出るのは無理だと思うわ」

 とリーナは言い、緑海を指さした。軽食店の窓から丁度、緑海が見渡せる位置に俺たちは座っていたのだ。

「緑海の向こうにスナタザの砂嵐が壁のように覆っているのは知っているでしょう? 今まで何人もの人が、無謀に緑海を渡ろうとして断念したか」

 リーナが指す方向は、確かにぼんやりとした砂っぽい壁が見えていた。見通しがいいはずの緑海の水平線がなく霧がかかっているように見えるのは、スナタザが起こし続けている嵐のアーツらしい。

「……あの嵐、どう思う?」

 俺は両隣にいるココットとナギに小声で聞いてみる。リーナはシャオト、ハルバラトと雑談中だ。

「うーん、嵐のアーツは見たことあるけど……」

「ずっと嵐を起こし続けられるなんて、信じられない……」

 とココットとナギが言うところ、やはり俺と考えは同じようである。シレモトスの住民がこの島に閉じ込められている理由は分かるが、ならどうやってスナタザは周りの嵐を起こし続けているのか……。

 更に、何度も俺たちを襲撃する力は、一体どこから湧いているというのか。

「ね、そうだよね? 船長さん」

 唐突にハルバラトに声を掛けられ、俺は思考の外に追いやられる。ハルバラトがこちらを見つめていた。

「なんの話だ?」

 俺が聞くと、先程スナタザに襲撃されたことをシャオトとリーナに話していたらしい。俺たちに、スナタザを追い払ったんだよね? と聞いていたようだ。

「そうだな」

 俺はそう頷いてもう一度緑海へ視線を戻した。するとそこには、見たこともない羽獣が緑海に着水していて俺は目を見張った。俺はハルバラトたちへ目を向ける。

「ハルバラト、あの鳥はなんだ?」

 俺は、足の長い鳥を指して聞いてみた。ハルバラトはテーブルに身を乗り出し、窓を覗き込んだ。俺も一緒に窓を見、緑海をクチバシでつついている鳥を観察する。獣車を引いていたあの駄跳獣と似ているが、翼がある。そういえば、あの羽獣をどこかで見たことがあるような……。

「あれがコンドゥアだよ!」とハルバラトは言い、彼が持っている鞄から、借りてきた図鑑を取り出した。「ほら、これ! 背中に乗ったり、ご飯にしたりするんだよ!」

 そこには、シレモトス書館で借りてきた図鑑のコンドゥアの絵が描かれていた。緑海にいる足の長い羽獣と特徴が一致する。

「そうか……」

 俺はもう一度、緑海にいるコンドゥアを観察した。そこに何人かがイカダのような船で近づく者がおり、何をしているのかと見守っていると、突然網を投げ出したのだ。コンドゥアたちは驚いて飛び立ったが、狙われた一羽は見事その網に捕まり、漁師たちに連れられて港へと戻って来る。なるほど、シレモトス内では貴重なたんぱく源となっているようだ。

「……パパ?」

 ココットが俺の目を意味深そうに覗き込む。なんだと問えば、とぼけないでよと返される。

「何か考えているんでしょ」

 とココットに指摘され、俺は思わず目を逸らしたが、逃がさないとばかりにナギが視界に映り込んだ。

「わたしたちにも手伝わせて」

 ナギも俺が何か思いついたことに気づいているようだ。

「俺は……」

「それで、船長さん。船は直してくれるんスよね?」

 俺が答えようとしたところに、蚊帳の外だったシャオトが話を振ってきた。そうだった。今は船を直す話をしていたんだったか。

「ああ、出来る限りのことはしよう。だが、船出はスナタザを倒してからだ」

 俺は頷き、店を出ようとすると、店員が何かを運んできた。

「お待たせしました。コンドゥアの唐揚げです」

 と鳥の唐揚げのようなものを皿に乗せて俺たちの席に置いた。思えば、腹が減っている。

「まずは飯食おうぜ、パパ!」

「うん、お腹空いちゃった」

 ココットとナギにも言われ、俺も腹ごしらえをすることにした。

「わぁい、コンドゥアの唐揚げだ!」

 ハルバラトは無邪気そうに喜んだ。

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