因習村の名家に転生し忌み子と捨てられた、異形の剣士の物理無双   作:一森 一輝

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大妖怪、鵺

 ―――一つ、人より影黒し、二つ、踏まれて動けない、泥の御足で沈みなさい―――

 

 歌と共に、宵子は釘を放った。鵺の影を、的確に釘が貫く。

 

「遊戯舞は、祭神様とのお遊戯。正面から術を破るのは、祭神様を超える力がなければできません。つまり、実質的には不可能ですが」

 

 鵺が、一瞬ビタと止まる。

 

 だが、それは初見の技だから、という事でしかなかった。

 

 鵺の体が、暗雲のようにどよりとほどけ、釘を避けて俺たちに追いすがる。

 

「あはははっ♡ すごい術を使うねぇ、子供たちぃ♡ 食事前に軽い運動を挟ませてくれるのかい?」

 

「……! この通りです。鵺は本質的に正体不明。あらゆる攻撃を、雲のように体をほどいて避けてしまいます」

 

「なるほど。当主周辺レベルじゃないと、手も足も出ないわけだ」

 

 物理攻撃どころか、あらゆる攻撃に無敵となれば、どうにもならないのは頷ける。

 

 俺は考える。逃げるのに必要な手は何か。鵺に対して何が有効か。

 

 一つ、首肯。俺は言う。

 

「なぁ、二人とも。俺の体は宿業……つまり、霊力のすべてを生まれながらに捧げてるから、こんな強いんだよな」

 

「う、うん。そう聞いてるけど~」

 

「ならさ、約定を使ってるって意味じゃ、俺も立派な術士なワケだ。で、少なくとも、約定なら俺も確実に使える術ってことになるよな?」

 

「は、はい。そうですが……朔斗様? 何をなさるおつもりですか?」

 

「危険なことはしないさ。ただ、俺も俺なりに、術を使ってみようと思ってな」

 

 俺は鵺を見据える。そうしながら、呟く。

 

「邪魔が入らなければ、今から十分ですねこすりは禁足の森から脱出できる。だから、十分だ。今日一日の残りの分の宿業を、これから十分に凝縮する」

 

 約定は、何かを差し出す代わりに、それにふさわしいものを得る術。

 

「俺は御陵宮では命を狙われる身だ。宿業を失って一日過ごすのは、知られるだけで命に関わる大きなリスク。そのリスクも込々で、約定を結ぶ」

 

 俺はみんなの見様見真似で、人差し指と中指を揃えて立てる。それから深呼吸をして、言った。

 

「急々如律令」

 

 ぐん、と自らの体が、明らかに強くなった実感が湧いた。それに、俺は嬉しくなる。

 

 曲がりなりにも、霊力がなくとも、俺は術士なのだ。そういう自覚が湧いてくる。

 

「ええと、オリジナルの術を作ったら、名前を付けなきゃならないんだよな。未来の身体能力を供物に捧げて、今の力を得る。なら―――」

 

 術の名は、自然と頭に浮かんだ。

 

「約定:刻身御供(ときみごくう)

 

 かつては鬼への人身御供にされた俺だ。そんな俺の、時間と身体能力を、約定に御供として捧げる。俺に、ぴったりの名前だ。

 

 これなら、素の力でもすねこすり以上の速度が出せる。鵺相手でも、戦える!

 

 ―――三つ、水より影淡し。四つ、夜明けに逃げていく、風の御足で踊りなさい―――

 

 そこに、暁子が俺に、速度バフを載せた。俺の体が、更に軽くなるのが分かる。

 

「ありがとな、暁子。よし。二人とも、サポートは頼んだ」

 

「はい、承りましてございます」

 

「まっかせて~! 朔斗様っ!」

 

「すねこすりは、全力で駆け抜けてくれ。二人を任せるぞ」

 

「きゅんっ」

 

 俺は立ち上がる。それから、とうとう間近に迫る鵺を見つめる。

 

「あはぁ♡ 坊やから食べさせてくれるのかい? 君は小粒だけど、肉々しそうで美味しそうだなぁ~♡」

 

「気色悪い笑み浮かべやがって、猿顔が。余裕ぶってられるのも、今の内だぜ」

 

 トンッ、と軽い調子で、俺はすねこすりから飛び降りた。

 

 鵺の腕が、猛スピードで迫る。黒づくめが避けようとすらできなかった、豪速の一撃。

 

 俺は、笑った。

 

「見て分かったぜ。今の俺は、お前より速い」

 

 一閃。

 

 鵺の体が、風圧を受けた霧のように散った。

 

「お、お、お」

 

「ハハハハッ! どうしたよ鵺! 鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をしてよ!」

 

 鵺が、目を丸くして俺を見る。獲物に噛みつかれたのが、それだけ驚きだったか。

 

 そう思った途端、鵺は表情を引き締め、言った。

 

「そうか、ぼくは侮っていたのだね、少年。君は単なる獲物でなく、敬意を払うべき武人だったようだ」

 

「ッ」

 

 気配の変化を感じて、俺は着地直後に大きく飛び退り、再びすねこすりの上に着地する。

 

 鵺はその場にとどまり、続けた。

 

「ならば、礼を失した詫びに名乗ろう。古くは延喜五年より人と関わりし物の怪。捉えどころなき様にて人を惑わし、長く歴史を眺めたり」

 

 鵺の体が、どよどよとした黒雲を纏い、ゆらめく。

 

「通り名を、(ぬえ)。鵺とぞ申し侍る」

 

 ニィ、と不敵に笑い、鵺は問う。

 

「少年。君は何者だ? 憎き御陵宮の血の者なのだろう?」

 

「俺は―――」

 

「妖怪にその口で名を教えてはなりません! 名から侵入(はい)られてしまいますよ!」

 

「っ」

 

 つい答えようとしてしまった俺を、宵子が慌てて制する。すると、鵺は駆けだしながら、ゲラゲラと笑いだす。

 

「術士としては未熟だねぇ、少年! 自分より年幼い子に助けられる気分はどうだい!」

 

「はっ、舐めやがって。なら」

 

 大きく、一呼吸。

 

「度肝を、抜いてやる」

 

 跳躍。近くの木に、足を掛ける。

 

 そして、全力で跳ねた。

 

「ッ!?」

 

 俺はまるで、ピンボールになったかのような速度で、木を次々に跳ねて、追ってくる鵺の周りを駆け抜けた。

 

「おっ、おおっ、目でっ、目で追えないっ?」

 

 鵺は混乱した様子で、すねこすりを追いながらも、足が遅くなっていく。

 

 そこを突くように、俺は飛び掛かりざまに一閃した。

 

 鵺の体が黒雲を纏い、バラバラに散らばる。

 

「うぉおおおっ! はっ、反応できなかった!」

 

 が、と鵺は笑う。

 

「ここまで頑張っても、ぼくに一太刀も入れられないのだから、君は哀れだねぇ! 武人としてそれほどの実力があっても、意味がないのだから!」

 

「あ? 意味がない? 分かってないのか? 俺たちは、逃げれば勝ちなんだぜ」

 

「あっ」

 

 鵺は目を丸くする。見れば、この攻防の最中に、すねこすりは俺たちからさらに離れている。

 

「んで、俺はお前より速い。すねこすりが逃げた後に、悠々と逃げるだけで済む」

 

 そういう意味では、鵺への攻撃は全然有効だ。身体を雲に散らされると、再集合するのに、鵺はいくらか時間を要する。それがそのまま、脱出の時間稼ぎになるのだから。

 

 俺は、鵺を見習っていやらしく笑う。

 

「哀れだなぁ、鵺。お前はこれだけ頑張っても、俺たちにありつけないんだ」

 

「っ……! ぐぎ、が、がぁぁああっ!」

 

 鵺が、存分に悔しがる。舐めていた俺の策に、まんまとハマっていたと悟ったのだろう。

 

 だが、悔しさの雄たけびは、すぐに雰囲気を変化させた。

 

「ヒョォォオオオオオオ!」

 

「っ?」

 

 甲高い、ツグミのような鳴き声。ゾワゾワと、背筋が寒くなるような気持になる。

 

 そこで、宵子が叫んだ。

 

「鵺を黙らせてくださいまし! すねこすりが怯えて、足が遅くなり始めています!」

 

「っ! 鵺ッ!」

 

「ヒョーッヒョーッ! ああ、可哀想に。君が頑張って稼いだ時間も、ぼくの鳴き声一つで無駄になってしまうねぇ♡」

 

 俺は前に踏み出す。鬼切丸を地面にくぐらせ、リーチを隠して鵺に肉薄する。

 

 それに鵺は、巨躯に似合わない軽やかな動きで跳び上がり、空中で何かを唱え始める。

 

「我が暗雲は瘴気と病魔。凝りて凝れば、恨みの矢」

 

 鵺の両手が、そして尻尾の蛇が合わさり、離れたかと思うと、その中心に毒々しい黒色の矢が現れる。

 

「妖術:呪厭(ジュエン)禍矢(マガツヤ)

 

 パンっ、と鵺が両腕を合わせる。

 

 直後、すさまじい勢いで、俺に向かってどす黒い矢が放たれた。

 

「さぁっ、どうする少年! ぼくが宮廷を脅かした瘴気の雲に、討たれた矢の恨みを込めた! 当たれば即死! 避けても爆ぜる瘴気で即死さ!」

 

 鵺は勝ち誇る。だが俺は、笑って振りかぶった大太刀を振るう。

 

「鵺! お前は何も分かってねぇ! 当たれば即死!? 避けても即死!? 脅しにもならねぇよバカがッ!」

 

 俺の動体視力は、完全に矢を捕らえている。

 

 爆ぜる、と鵺は言っていた。ならば、衝撃で爆ぜる爆弾に近い性質の矢なのだろう。そして妖術で作られたとするなら、切り落としても効果を発揮する。

 

 ならば、だ。

 

 俺は、矢の矢尻から羽の先までを、一直線に切りかかった。

 

 鬼切丸は斬りたいものを斬る刀。狙うは妖術の矢の、妖術効果全部。

 

 大太刀が斬り裂いた先から、矢が消滅して消えて行く。それを、矢の頭から尻まで、寸分違わずやればいい。

 

 一閃。

 

 ズパァンッ、と音を立てて、病魔の矢は散り消えた。

 

 空中で、鵺が勝ち誇った顔のままでいる。遅れて、効果が現れないことに気付いて表情が消える。

 

 そして、困惑の顔になった。

 

「はぁ?」

 

「宵子、影」

 

『はい、朔斗様』

 

 ―――一つ、人より影黒し、二つ、踏まれて動けない、泥の御足で沈みなさい―――

 

 どこからともなく聞こえた声と共に、鵺の影に釘が打たれる。空中の鵺はピタと停止する。

 

 出来た隙に、更に隙を拡張するかげふみ。できた隙は、コンマ一秒。

 

 それだけあれば、俺は間に合う。

 

「まずは一撃!」

 

 弾かれるように、俺は鵺目がけて跳躍。同時に、鬼切丸を振るった。

 

 鬼切丸が鵺を裂く。鵺の体から、血が噴き出す。

 

「―――――ッ」

 

「ハハハハッ! 入れてやったぞ鵺! 殴って血が出るなら、このまま勝てちゃうんじゃねぇの!?」

 

「……」

 

 俺は離れた場所に着地。遅れて鵺の体が黒雲になり、釘を避けて地上に降りる。

 

 そして鵺は、自分の血を見つめ、言った。

 

「素晴らしい」

 

「……は?」

 

「少年。君は、素晴らしい武人だ。その若さでこれだなんて、震えてしまうよ」

 

 鵺は、自分の血を舐める。「だから」と言いながら、俺に振り返った。

 

「ここからは、本気でやろう。どこまでやれるか、見せておくれ」

 

 振り返った、鵺の顔。

 

 そこに浮かんでいたのは、狂気的な笑みだった。

 

 鵺の姿が、僅かな黒雲を残して消える。

 

「っ? どこに」

 

『朔斗様! 上です!』

 

『アタシが守るよッ、朔斗様!』

 

 ―――かごめ、かごめ。籠の中の鳥は、いついつ出やる―――

 

 遠くで、暁子が歌う。俺の体が透明に、不干渉下に置かれる。

 

 直後、鵺が頭上から、俺の体を圧し潰した。

 

「―――――ッ」

 

「あれぇ? 少年が消えてしまった。ダメだよぉ、ちゃんとぼくと戦ってくれないと」

 

 ニタァ、と狂った笑みで、鵺は言う。

 

「じゃなきゃあ。本気で女の子たちを追いかけて、あっちを先に食らってしまうよぉ?」

 

「術を解け、暁子!」

 

 俺は鵺から距離を作りながら言う。すると、暁子の『かごめかごめ』が解除される。

 

「あっ♡ そこにいたんだぁ。ダメだよぉ、隠れ、ちゃあッ!」

 

「ぐッ」

 

 何の変哲もない、シンプルな打撃。

 

 だが、体格差と速度を伴うだけで、鵺の一撃は熊数体分を遥かに上回る。

 

 結果、俺は刀で防御しつつ、どんっ、と数メートル吹き飛ばされる。吹っ飛ばされながらも転ぶ事はなく、ズザザと足で枯れ葉をまき散らす。

 

「だが、防ぎきったぞ! ここから俺の」

 

「我が暗雲は瘴気と病魔。凝りて凝れば、恨みの矢」

 

 立ち直った直後の俺目がけて、鵺は呪文を唱えている。

 

「妖術:呪厭ノ禍矢」

 

 そして、何でもないように、放たれた。

 

「―――――!」

 

 やることは変わらない。即死攻撃でも、鬼切丸なら斬り払える。

 

 俺は意識を全集中して、黒雲の矢を切り崩す。ズパァンッ、と音を立てて、矢が崩れ散る。

 

 その、横。

 

 鵺は俺が、矢を防ぐのに一手使うことを想定して、その隙を突くように、俺の真横に迫っていた。

 

「な」

 

「ガ・ラ・空・き♡」

 

 シンプルな横殴り。

 

 それが、俺の体を、数十メートル吹き飛ばした。

 

「がぁぁあああああっ!」

 

 俺はトラックに轢かれたような衝撃と共に吹っ飛び、禁足の森にある、小さな池の中に突っ込んだ。

 

 パァンッ! と水しぶきを上げて、俺は池の中を転がる。深みから浅瀬に跳ね上げられ、それから何バウンドかして這いつくばる。

 

「ゲホッ! ゲホゲホッ!」

 

『ごっ、ごめんなさっ、術が間に合わなかっ』

 

「ごほっ、ごはっ! きに、気にするな、暁子! それより、お前らはちゃんと逃げれてるのか!? 声が聞こえるぞ!」

 

 俺が水浸しで応えると、宵子の声がどこからともなく聞こえてくる。

 

『言の葉飛ばしという、簡単な陰陽術でございます、朔斗様。ワタシどもですが、もう少しで禁足の森の出口に差し掛かります』

 

「よし、じゃあそのまま向かってくれ。俺のことは忘れて良い。適当に切り上げる」

 

『そんなことしないよ~! アタシたちの方で、上手く回収するから~!』

 

『暁子の言う通りです。ですので、どうぞ存分に、戦い抜いてくださいまし』

 

「は、そりゃあ頼もしい」

 

 俺は池の中で立ち上がる。鵺が、ニタァと狂気的な笑みを浮かべ、俺を見ている。

 

「い~い姿だねぇ、少年♡ ぼくらの戦いも、いよいよ終局と見える」

 

「そうだな。最後にどちらが勝つか、やり切ろうじゃねぇの」

 

 俺は大太刀を肩に担ぐ。ポタポタと、服から水滴が垂れる。

 

 鵺が姿勢を深く、飛び掛かりの体勢になる。鵺の脇腹から、血が垂れる。

 

 先の先を取ったのは、鵺だった。

 

「我が暗雲は瘴気と病魔。凝りて凝れば、恨みの矢」

 

 低い姿勢の上。鵺の背中に持ってきた蛇の口が開き、そこから素早く黒雲の矢が放たれる。

 

 俺には分かる。その目的は、俺の行動の阻害。大威力の矢に意味はないと、鵺は速射性に重きを置いたのだ。

 

 矢が、眼前に迫る。

 

 俺はそれを斬り払った。三度目ともなれば、危ぶむ部分は存在しない。ズパァンッ、と音を立てて、矢が砕け散る。

 

 その直後、跳躍していた鵺が、俺の頭上に襲い掛かっていた。

 

 鵺の顔は、真剣そのもの。笑みなどはなく、ただ俺を倒すことに集中している。

 

 振るわれるは虎の腕。俺は考える。

 

 返す刃で普通に切りかかっても、鵺は体を暗雲に変えるだけだろう。攻撃は通らない。先ほどは、呆気にとられた鵺の隙に、宵子のかげふみを打ったから出来た芸当だ。

 

 しかし、同時に思う。鵺は俺を殴り飛ばした。つまり、殴るその瞬間は確実に体を暗雲に変えないのだと。他の体の部位はともかく、腕だけはそうではないと。

 

「なら、こうだ」

 

 俺は、自分の体に鬼切丸を通過させる。鵺は俺に腕を叩きつけようとしながら、俺の行動に意味不明さに瞠目する。

 

 だが、鵺の攻撃は止まらない。俺を狙い、俺に迫り、俺に触れる。

 

 そのタイミングにちょうど合うように、俺は大太刀を振るった。

 

「斬り払え、鬼切丸」

 

 一閃。

 

 鵺の腕が肘まで裂かれ、血と肉、骨を晒す。

 

「なぁっ、なっ、なっ、何ぃぃいいっ!?」

 

 鵺は悲鳴を上げて仰け反った。そのままもんどりうって、背中から倒れる。

 

「しょっ、少年! きっ、君は、今!」

 

「ああ、そうだ。雲に変化できるお前でも、雲のままじゃ俺を殴れない。だから殴られる俺の体の内側に、刃を走らせ斬ってやった」

 

「そんなこと……! だがねぇ少年! そんな真似が何度も通用すると思ったら」

 

「思ってねぇよ。だが、この場では十分有効だった」

 

 俺は、ニッと笑う。

 

「時間だ」

 

 ―――かごめ、かごめ。籠の中の鳥は、いついつ出やる―――

 

 俺の体が、暁子の術によって無敵になる。鵺は俺を見失い、「っ! どこに、どこに行った、少年!」と慌てふためく。

 

 ―――夜明けの晩に、鶴と亀が滑った―――

 

 続いて、宵子の歌が響く。恐らくは禁足の森の入り口で、二人は術を展開しているのだろう。

 

 鵺は、この場の敗北を悟ったか、「ふ」と笑う。

 

「ふ、ふふ、ははははっ! そうか、そうか! ぼくは負けたか! 少年! 君は僕に痛打を与え、逃げ延びるか!」

 

 ならば、と鵺は続けた。

 

「ぼくは君を忘れない! 君という武人を、この胸に刻みこむ! 覚えておくといい! 君がもし御陵宮大結界を抜けたその時、ぼくが君の下に、即座に訪れることを!」

 

 鵺は、ひどく恍惚とした表情で、ニタリと笑う。

 

「その時は、この続きをしよう、少年♡ 強くなった君との戦いを、心待ちにしているよ」

 

 ―――後ろの正面、だぁれ?―――

 

 かごめかごめが歌い終わるのと同時、俺は禁足の森の入り口にワープする。

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