カタカタヘルメット団を助け、お礼として一部物資を貰った哮達は、アビドス高等学校に戻って物資を倉庫に入れ、戦闘と運搬で疲れた皆は、部室に戻って椅子に座った。
お茶を飲み、少し休憩したのち、定例会議を開くことにした。
「火急の事案だったヘルメット団の件は、これで片付いたと言っていいでしょう…!」
タブレットを大事そうに抱えながら、対策委員会定例会議と大きく書かれたホワイトボードの前で、アカネは笑みを浮かべて話す。
「これも先生のおかげ…」
「いや~…それほどでも~…!」
シロコに褒められて、哮は少し照れくさそうにする。
「これで、借金返済の方に注力できますね」
「……借金返済って?」
ノノミが口にした借金返済という単語が気になった哮は、首を傾げて尋ねる。
「あっ…それは…」
「待って! アヤネちゃん! それ以上は…!!」
哮の質問に答えようとしたアヤネをセリカが会話に割って入って止める。
「別にいいんじゃな~い? 話しちゃって…別に犯罪をしているわけでもないし、隠すようなことでもあるまいし」
「そ、そうだけど…! 先生は部外者だから…!」
「確かに先生1人がパパッと解決してくれるような問題じゃないけど…それでも話すだけ話してみようよ~…この問題に唯一手を差し伸べてくれそうな大人だしさ……悩みを打ち明けてみたら何か解決法が見つかるかもよー? それとも、他に何かいい方法があるのかな、セリカちゃん?」
「うっ、うう…!」
ホシノの発言に、セリカは反論しようとしたが、言葉が詰まってしまう。そして、ホシノから
「で、でも…さっき来たばっかりの大人でしょ!? 今まで大人達がこの学校がどうなるかなんて気に留めたことなんてあった!?」
正論を言われてなお、セリカは哮という
「この学校の問題はずっと私達だけでどうにかしてきたじゃん! なのに今更……今、更…! 大人が首を突っ込んでくるなんて………」
そしてセリカは、怒りに身を震わせながら哮のことを睨め付けて、
「私は認めないっ!!」
と言い残して、部室から飛び出して何処かへ走って行ってしまった。
「私、様子を見てきます!」
椅子から立ち上がったノノミは皆にそう言い残し、セリカを追って部室を出た。そして、部室に残された4人の間で、気まずい空気が流れ始める。
「えーっと、先生…簡単にこの学校の問題について説明するんだけど…」
気まずい空気を換えるため、ホシノが口を開いた。
「ん? ああ…! 続けてくれ」
「うん。いやー…この学校、借金があるんだよね~……9億くらい…」
「…きゅ、9億…!?」
ホシノから借金の金額を聞いた哮は目を開いて驚く。
「……正確には、9億6235万円です。アビドス…いえ、私達対策委員会が返済しなくてはならない金額です。もしこれが返済できないと、学校は銀行の手に渡り、廃校の手続きを取らざるを得なくなります」
「あー…だから、廃校対策委員会なのか」
「ん、その通り」
アヤネから詳細を聞いた哮は、ポンと右手で左手を叩きながら、彼女らが所属する部活の名前に納得する。
「ですが…9億6235万円を完済できる可能性は0パーセントに近く……殆どの生徒は諦めて、この学校と街を捨てて去ってしまいました……学校が廃校の危機になったのも、生徒が居なくなったのも、街がゴーストタウン化しつつあるのも、全て借金のせいなんです」
「この学校が抱えている問題は分かったけど…こうなった経緯を教えてくれない?」
哮からの質問に、アヤネは片手で眼鏡を押し上げてから、説明を始めた。
「数十年前に、アビドス郊外にある砂漠で大規模な砂嵐が起きたんです。その砂嵐は想像を絶する物で…アビドス自治区のいたる所が砂に埋もれました。そのため我が校は、復旧のために多額の資金が必要だったのですが…片田舎の学校に、融資をしてくれる銀行は見つからず……」
「結局、カイザーローンという悪徳金融業者を頼るしかなかった」
お茶を飲みながら、シロコも説明に入り、哮は顔を少ししかめる。
「……最初の頃は、すぐに返済できる算段だったと思います…しかし、その後も砂嵐は幾度もなくアビドスを襲い。そしてついに、アビドスの半分以上が砂漠となり、借金は膨れ上がっていったんです…今の私達では、毎月の利子を返済するので精一杯の状況でして…」
「「……」」
部室内に静寂が訪れる。
「なる…ほど…」
静寂の中、セリカがどうしてあんなに怒っていたのかについて、理由が分かった哮は、誰にも聞こえない小ささで呟いた。
「…なら、対策委員会の顧問になって、微力ながら手助けをしよう…!」
「「「っ!?」」」
哮の発言に、ホシノ達は驚愕する。
「そ、そりゃあ…顧問になってくれるのは嬉しいけど…別に借金は気にしなくていいんだよ?」
「その通り、先生は十分力になってくれた。これ以上、迷惑をかけられない」
「俺は、どんな境遇の
驚くホシノとシロコの言葉に、哮は満点の笑みを浮かべながら、協力を買って出た。
先程、横暴をしていたカタカタヘルメット団を厳しく罰するのではなく、更生を約束させていたこともあり、哮の先生としてのポリシーを信じたアヤネの顔は明るくして、
「はい! よろしくお願いします!」
哮に頭を下げた。
そして、それを見たシロコの頬は緩み、ホシノは少し眠そうに欠伸をしながら、
「へぇ、先生も変わり者だねー…こんな面倒な事に自分から首を突っ込むなんて」
哮の善性に少し呆れる。
「まあね。俺は人助けが好きなんだよ」
「……そう」
哮の返答に、ホシノは一瞬、とある人物の面影が重なったように感じるが、
(気のせい…きっと、気のせいだ……)
と、唇を少し噛みながら自分の心に言い聞かせた。
「良かった……シャーレが力になってくれるなんて…これで私達も、希望を持っていいんですよね?」
「そうだね。希望が見えてくるかもしれない」
2人の表情が明るくなる中、ホシノは机に顔を隠すように突っ伏した。
翌朝。
対策委員会の部室では、ホシノ、ノノミ、アヤネの3人の前で、哮が深い溜息を吐きながら、机に突っ伏して落ち込んでいた。
「…どうしたの? 先生?」
丁度そのタイミングで部室に入って来たシロコは、不思議そうに首を傾げながら尋ねた。
「…いやー…実は……」
シロコからの質問に、哮はポツポツと理由を言い始める。
早朝、アヤネからセリカの自宅がある地区を教えて貰った哮は、セリカと少しでも話をするため、色々な場所で積極的に話しかけたのだが、「しつこい!」「ダメ大人!」「ストーカー!」などと言われ、仲良くなるどころか怒らしてしまったとのこと。
「それは、ツンデレ娘のセリカちゃんじゃなくても、誰だって怒るって~」
「アハハハッ……」
話を聞いたホシノは呆れ、ノノミは苦笑いをする。
「はぁ~…先走ってしまったなぁ~…」
哮は再び深い溜息を吐き、セリカを怒らせてしまったこと、先走って空回りしてしまった自分の不甲斐なさに、気を病む。
そして、話を聞いたシロコは、
「そう言えば、セリカは…?」
当事者であるセリカが居ないことに気づいた。
「今日は自由登校ですからね。私は、昨日貰った物資の整理をノノミ先輩に手伝ってもらおうと思いまして…ホシノ先輩は……」
「おじさんは、学校のいつもの場所でお昼寝したいから来ただけだよ~」
「俺は、アビドス高等学校について、もう少し知っておこうと思って…シロコは?」
「休憩を取るために寄っただけ」
それぞれが学校に来た理由を述べる。
「こうしてみると、セリカちゃんだけが来ていないの…少し気になりません? それに、今覚えば、いつも自由登校の時は、学校に来ないですし…」
「そうですね…」
「確かに…」
「おじさんも気になって来たね~…」
ノノミはセリカが何をしているか気になり始め、他の者達も気になり始める。
その時、哮は「あっ」と声を漏らし、
「バイトに行くって言ってたな」
セリカがバイトに向かっていたことを思い出した。
「バイトですか…」
「気になる」
「でも、どこでバイトをしているんでしょう…?」
「それなら、おじさん。大体の見当がついているよ~」
「本当ですか!? ホシノ先輩!?」
「見当だけどね~…それじゃあ、昼飯ついでに行ってみようか~」
こうして、ホシノの案内で哮達は、セリカがバイトをしているかもしれないという飲食店に、行ってみることになった。
アビドス高等学校の近郊。
砂嵐の被害が比較的少ない街の中心部にある和風造りになっている建物の前で、ホシノは足を止めた。
「ここだよ~」
柔らかな笑みを浮かべながらホシノが指さす方には、紫関ラーメンと書かれた木製の看板が掛けられているラーメン屋があった。
「それじゃあ、行こうか~」
そう言って、ホシノは扉を開けて中へと入っていき、哮達も後に続いて入る。
「へいらっしゃい!!」
一同が中に入ると、厨房で麺の湯斬りをしていた大将が、元気のよい挨拶をしてくれた。
「いらっしゃいませ! 何めっ……!」
大将の声で新たな客が入って来たことに気付いた店員は、入口に駆け寄ってくるが、その客達の顔を見るや否や、驚きのあまり言葉が詰まってフリーズしてしまう。
客として入った哮達を出迎えたのは、紫関ラーメンの制服を身に纏い、三角巾を後頭部に着けたセリカだった。
「あの~、5名なんですけど~」
にっこりと微笑みながら、ノノミは半分冷やかしで、フリーズしているセリカに声をかける。
「お疲れ」
「あはは…セリカちゃん。お疲れ様…」
「お、お疲れ様…」
シロコが平然とした顔で労いの言葉をかける一方、アヤネは少し気まずそうに言い、朝にストーカーみたいなことをしてしまった哮は、少し怯えつつ作り笑顔を浮かべて言う。
「せ、先生まで…皆、ど、どうしてここに…!? やっぱ先生はストーカー!?」
哮が居ることに気付いたセリカは持ち直し、対策委員会の皆が居るのは、哮のせいだと思って睨みつける。
「うへ。先生は悪くないよ~? 前に、セリカちゃんがここから出るのを見かけて…もしかしてと思って来てみたんだよ」
「うぐっ! ホシノ先輩だったか…!!」
犯人がホシノだったため、セリカは強く言えなくなる。
「アビドス高校の生徒さんか…セリカちゃん、知り合いとのお喋りはそこまでにして、案内してあげな」
「う、うう…はい、大将……それでは、席にご案内します…こちらへどうぞ……」
哮達は、恥ずかしさのあまり顔を赤く染めているセリカに案内され、6人用の席に腰掛ける。
ホシノとシロコ、ノノミとアヤネがそれぞれ並ぶように席に腰かけた後、哮はどちらに座るべきか少し悩む。
「先生! 私の隣、空いてますよ~」
「…ん、私の隣も空いてる」
悩んでいる哮を見たノノミとシロコは、互いに隣に座るように呼び掛ける。
(……何かアクシデントがあった時、ノノミの場合俺の教師人生が終わりかねないから…シロコの方に座るか…)
ちらっと、ノノミの豊満な果実を見た哮は、もしもの事を考えてシロコの隣に座ることにした。
「セリカちゃん。バイトのユニフォームとっても可愛いです☆」
「もしかして、セリカちゃんって、ユニフォームでバイトを決めちゃうタイプ~?」
ドンっと音を立てて人数分のお冷を置いたセリカに、ノノミとホシノは笑みを浮かべながら、冷やかしを言う。
「…ち、ちち、違うって! ここは行きつけのお店だったから……! そ、それで! ご注文はっ…!?」
リンゴのように顔を真っ赤にしているセリカは、少し震える手でペンを取った。
「私は、チャーシュー麺をお願いします!」
「私は塩」
「私は…味噌で…」
「特製味噌ラーメン、炙りチャーシュートッピングで!」
「俺は~……っ!」
対策委員会の皆がラーメンを言う中、初めて来た哮をメニューを見たくて、壁に立てかけられている看板を見ようとした時、鋭い目つきでセリカが自分のことを睨んでいることに気付き、少し驚いてしまう。
「先生も遠慮しないで、ジャンジャン頼んで~」
「……えっと、じゃあ…俺もチャーシュー麺で…」
笑顔で言うホシノを見た哮は、気まずい気持ちになりながら、ノノミと同じ物を頼むことにした。
そして、軽く雑談をしていると、セリカが次々とラーメンを運んできて、哮はその都度、セリカに睨まれる。
哮だけが気まずい中、皆はあっという間にラーメンを食べ終えて、会計をすることとなった。
「それじゃあ、いつも通り。私が~…」
ノノミは財布から、煌びやかな光を放つ黄金のカード。キヴォトスゴールドエキスプレスカードを取り出し、それで代金を払おうとしたが、それをホシノが止めた。
「ノノミちゃんばかりに頼るのは良くないからね~…先生、支払い頼んだよ~」
「ホシノ、そう言う台詞は、自分が払う時に言うんだぞ」
哮はニヤつきながら言うホシノを軽く注意しながら、財布から
「え~っと、5人で~」
伝票に書かれたラーメンの値段をセリカがレジに打ち込む中、哮はノノミに服の袖を引っ張られたため、ノノミの方に顔を向ける。
「先生、これ貰ってください…」
「…いや、生徒から貰う訳には行かない」
そう言ってノノミは、自身の財布から出した万札を哮のポケットに入れようとするが、哮は首を横に振って断った。
「え…大丈夫なんですか…?」
「ああ、大丈夫だから。君達はそういうのは気にするな」
「…分かりました」
「ねえ! 早く払ってよ!」
「あー、ごめんごめん。ノノミ、先に出といて」
「はーい」
ノノミからのお金を断った哮は、セリカに急かされながら大人のカードで支払いを済ませた。
「いやぁー! ゴチでした。先生!」
「ご馳走様でした」
「奢っていただき、ありがとうございます」
「うん、お陰でお腹一杯…」
哮が外に出ると、先に出ていた4人がお礼を言う。
「仕事の邪魔だから、早く出て行って! 後、二度と来ないで!」
恥ずかしさで一杯のセリカは、制服のまま店の入口に出てきては、哮達に向けて叫ぶ。
「あはは…セリカちゃん、また明日ね」
「また明日!」
「また明日ね~!」
哮達はセリカに別れの挨拶をして、店から離れて行った。
「……はぁ~…なんだったのよ…もう…」
溜息を吐きいたセリカは、今日は最悪な日だと思いながら、店の中へと戻っていった。
「お疲れさまでした~」
一通りの閉店作業が終わり、セリカはまだ店内に居る大将に一言掛けたのち、店の裏口から外に出た。
「はあ…やっと終わった。今日は、目まぐるしい日だったわ」
夜空の下、セリカはアビドスの制服に着替え、家へと向かっていた。
「……先生先生って、チヤホヤされて…ホント迷惑、何なのアイツ…!」
コツコツと足音を立てながら大通りを歩くセリカは、昼間に来た哮の顔が脳内に浮かんできて、腹を立てるが、それと同時に、一昨日に助けてくれた姿や、昨日のヘルメット団を助けるために戦闘していた哮の姿が脳裏に浮かんでくる。
「……ふざけないで…! 私がそう簡単に折れると思ったら、大間違いなんだから!」
脳裏に浮かんできた哮の姿を振り払うように、セリカは首を横に振った。
そして、セリカが人気の少ない通りに、差し掛かった時、路地裏からセリカの目の前に、空き缶のような物が投げ込まれる。
「っ!」
それに気づいたセリカは銃を取ろうとしたが、空き缶らしき物から勢いよく催涙ガスが噴出し、ガスに包まれたセリカは咳き込み始める。
「だ、誰…よ……」
目の前に人が居ることに気付いたセリカだったが、ガスを吸ってしまったことで気を失い、その場に力なく倒れ込んだ。
「こいつで間違いないな?」
「はい。ターゲットの1人であるアビドス対策委員会のメンバー、黒見セリカです」
「よし。車に乗せて、合流地点に向かうぞ!」
ガスが晴れ、気を失っているセリカに近づいたスケバン達は、縄でセリカを縛り上げると、近くに止めてあったトラックの荷台に乗せ、何処かへ走り去って行った。
語呂が良い上に、ブンブンジャーのバクアゲ2『情報屋は認めない』にかけれたから、気に入っているタイトルの1つなんですよねぇ~…前回の『荒れるぜ力!大人の凄さ』も気に入ってます。
後、個人的に、アビドスの借金のことや対策委員会のことを大也が知ったら、「ホレた!」とか言って、借金全額負担する所か、カイザーコーポレーションを買い取りそうだな~と思いました。
それと、オリジナル設定がどこまでが許容範囲かなっと思ったので、アンケートを取ることにしました。参考にしたいので、是非、投票してください!!
リンちゃんSS
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哮とリンちゃんの慰安旅行
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豊夜哮の配信(リンちゃん視点)
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床のトマトジュースを血だと思って焦るリン
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幼児退行リンちゃん
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哮とリンちゃんラジオ~脳破壊を添えて~