ゴジュウアーカイブ   作:盈月さん

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第15話 さよなら便利屋

 アグヌスを撃退した日の夜。

 哮は、寝泊まりしているホテルの一室で、パソコンでできるシャーレの仕事をしていた。

 パソコンに文字を打ち込んでいた哮だったが、一区切り付いたため、椅子の背もたれも持たれつつパソコンの隣に置いてあった缶コーヒーを手に取って開け、1口飲む。

 

「……カイザー……か……」

 

 一息ついた哮は、ヒナから聞かされた情報のことを思い出す。

 

「一体アビドスの砂漠に何があるって言うんだ……?」

 

 窓の外に見える砂漠を見つめながら、哮はカイザーコーポレーションの思惑を考えてみるが、情報不足もあり考えても無駄だと判断する。

 

「何としてでもカイザーの思惑を壊すか、せめて判明させないと……もし、カイザーとアグヌスが利害の一致で協力関係になったら、面倒くさいことになる……」

 

 思惑を考えている時に出て来た1つの仮設が、現実になっていない、ならないことを祈りながら、哮は仕事を再開した。

 しかし現実は無情であり、哮の最悪な予測は当たっていた。

 

 

──〇──

 

 

 アビドス砂漠カイザーPMC基地。

 基地内の岩山に隠れるように建てられている巨大な倉庫内で、数十体のロボが昼夜問わず作業をっ続けており、組み立てられた鉄の足場の上で、黒いスーツを身にまとった1体のロボが、その作業を見ていた。

 すると、そこにアグヌスが物陰から姿を現した。

 

「例の件はどうなっている……?」

「おや、来ていたのかね……見ての通り順調そのものさ」

 

 アグヌスからの質問に、ロボは作業の様子を見せながら答える。

 

「思ったより進捗が早いな」

「当たり前だ。これはカイザーコーポレーション総出で取り組んでいる一大プロジェクトだ。少しでも進捗を怠ったりすれば、あの御方がお怒りになる。死んででも必死になるさ」

 

 2人は肩を並べて親しそうに話しながら、作業場を見つめる。

 

「……契約は覚えているな?」

「ああ勿論だ。我々の実験室に、君が望む生徒が来た場合、実験への参加をさせるだったな?」

「そうだ。そして、その見返りとして、我々は平行世界の技術と設計図を提供し、カイザーコーポレーションの力を高める。お互いに利益がある契約だ」

「こちらがあまりにも有利過ぎて、何か企んでいるのではないかと思えてしまうがな……」

「そうか……」

 

 質問に短く返すアグヌスをロボは不気味に思いつつ、懐からタブレットを出し、とある画面を表示した状態でそれをアグヌスに渡した。

 

「ここにBKR計画の進捗データがある。見ておくがいい」

 

 タブレットを受けったアグヌスは、現在目の前で作られている物の進捗状況の確認を始める。

 その画面には、ここキヴォトスでは全く見たことのない姿形をしているロボの全体像が映し出されており、まだ未完成の箇所は赤色で、完成した箇所は白色で分かりやすいように表されていた。

 

「頭部が進捗46パーセント…右腕が93パーセント、左腕が61パーセント……それ以外は完成済みか……いつ頃に完成する?」

「そうだな。作業速度を含んで考えると……早くて3日か……最低でも5日後くらいになるかな……?」

「そうか。なら3日後にまた来よう……」

「そうするがいい……」

 

 アグヌスはタブレットをロボに渡すと、次に来る日を伝えて暗闇へと消えて行った。

 そして、一人残されたロボは、タブレットを片手に持ちながら、改めて建造中のロボを見つめる。

 

「…そう言えば、コイツに名前を付けるのを忘れていたな……」

 

 建造中のロボを見ていた際、ふと名前を付けていなかったことを思い出し、鉄の柵の上に肘を置いて名前を考え始める。

 

「奴が取引に来た時に言っていた元の名は、ブンブンなんとかだったが、新たな名前としてギガンテスと名付けよう…! うむ。我ながら素晴らしい考えだ!」

 

 ふと脳裏によぎった名前を気に入ったロボは、満足そうに作業場から離れて行く。

 ロボが背を向け、作業用ロボ達が配線を通したり溶接をしているBKR『ギガンテス』と名付けられた機械仕掛けの巨人の姿は、かつて爆上戦隊ブンブンジャーを追い詰め、苦しめた悪の巨大ロボ、ブンブンキラーロボと瓜二つであった。

 

 

──〇──

 

 

 翌日。哮は、コンビニで買った弁当や飲み物、お菓子などが入った袋を片手に、アビドスの住宅地内を歩いていた。

 

「え~っと、確かこの辺に……」

 

 地図を表示しているスマホの画面を何度も確認しながら、哮は辺りを見渡す。

 すると、とある建物の前に停まってあるトラックの荷台に、荷物を詰めている便利屋68を発見し、哮は笑みを浮かべると、作業をしている便利屋68の方へと歩み寄る。

 

「これで全部です。積み終わりました!」

 

 4人の元へ歩いている哮の耳に、ハルカの声が聞こえてくる。

 

「じゃあどこ行く?」

「うーん…どうしましょうか……」

「それなら、ゲヘナに戻る?」

 

 行き場所を考えている3人に、哮は声をかけてみることにした。

 

「行くなら、気を付けて行くようにね~。後、ほら差し入れ」

「!!」

「えっ…!?」

「シャーレの……」

「えっ…あ、先生だ! 来てくれたんだね! 差し入れもありがとう!」

 

 アル、ハルカ、カヨコが驚く中、ムツキは笑みを浮かべながら、哮から弁当や飲み物などが入った袋を喜んで受け取る。

 

「な、なんで来たのよ! アビドスを手伝っている身でしょう!?」

「そうだけど、それはそれ……これはこれ。困っている生徒には、平等に手を差し出すのが、俺のスタンスだからね! それに、君達には昨日助けられたからね」

 

 困惑しているアルに、哮は会いに来た理由を話す。

 

「アルちゃん、先生の言う通り、それはそれとして、仲良くしたくない?」

「私も、そう思います…先生のお陰で、上手く風紀委員会から逃げれましたし……」

「悪意があるようには見えないし…それに、私達はアビドスから出て行くんだから、態々敵対しなくてもいいでしょ」

「…そ、それもそうね……」

 

 他のメンバーに言われ、アルは納得する。

 その会話を聞いていた哮は、カヨコのアビドスを出て行くという言葉が気になり、行き先を尋ねてみることにした。

 

「それで、これからどこに行くつもりなんだ?」

「えっ、あ…また別の依頼を求めて、ちょっと移動するだけよ!」

 

 哮からの質問に、アルは少し慌てながらも見栄を張る。

 

「そうか…それじゃあ、また会おうね。皆…!」

「……ふふっ、うふふふふっ! 勿論よ、先生! 貴方とは事業パートナーとして、協業するのも悪くなさそうだし。ただ、今は忙しいからまたの機会にね」

 

 笑顔で別れの挨拶を言う哮を見たアルは、本調子を取り戻して満面の笑みを浮かべる。

 

「まあ、アビドスに二度と来ないっていうわけじゃないよ。ここいい所だったからね」

「それはそうだね…」

「はい、あそこのラーメン、とっても美味しかったですし…」

「そうね。また来るわ! 本当に美味しかったから……」

 

 便利屋68の皆は、また来ることを哮に約束すると、トラックに乗り込んで走り出した。

 それを哮は、トラックの姿が見えなくなるまで、その場に留まり見送った。

 ふと、哮がスマホの時間を見ると、スマホの画面の時計が9時31分を表示していた。

 

「やっべ…! セリカ達との集合に遅れる…!!」

 

 セリカ達との集合時間が迫ってきていることに気付いた哮は、時間に間に合わせるために走り出した。

リンちゃんSS

  • 哮とリンちゃんの慰安旅行
  • 豊夜哮の配信(リンちゃん視点)
  • 床のトマトジュースを血だと思って焦るリン
  • 幼児退行リンちゃん
  • 哮とリンちゃんラジオ~脳破壊を添えて~
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