D.U.外郭地区・シャーレの部室付近。
モモカがサボ…もとい、昼休憩に入ってしまったため、ヘリの用意ができなかった先生とユウカ達の5人は、何とか確保することができた車から降り、走って戦場へと突入していた。
「邪魔する奴らは全員どけぇ!!」
「お前らも邪魔すんじゃねぇ!!」
「なんで私たちが、戦わなきゃいけないの!」
荒れるスケバン達の怒号や銃声音などが聞こえていくる中、ユウカは愛銃のロジック&リーズンを片手に愚痴を言う。
「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要条件ですから……」
ユウカの愚痴に、サポートポインターと肩掛けバックを持ったチナツが宥める。
「今は先生が一緒なので、その点に気を付けましょう。先生の護衛が最優先事項です」
愛銃のインペイルメントを抱えたハスミは、愛銃セーフティーと閃光弾を装備したスズミの後ろを走りながら、他の者にそう注意をがける。
別世界の先生達であれば、その通りなのだが…この世界の先生は、一味違った。
「いや、皆は俺の援護をしてくれ。俺が最前線で戦う…!」
「えっ! ですが、先生は外部の方…弾丸一つで命の危機が…!」
哮の発言に驚きながら、ハスミは止めようとするが、哮はそんなこと構わずに、前へと出る。
「あー…チナツだっけ? これ、持っといてくれ。大切なお守り人形なんだ」
「え? あ、はい!」
前に出ることにした哮は、ここまで持って来ていたあのロボをチナツに投げ渡し、軽く体操をすると、右手の人差し指に着けていた深紅の指輪を手に取った。それと同時に、哮の右手にロボとよく似た金色の右手の形をしたガントレットが出現する。
「エンゲージ!」
指輪を左手に持った哮はそう叫び、指輪をガントレットへとはめ込む。
ガントレットから周囲へ鳴り響く待機音に合わせ、哮はガントレットを右上に掲げて2回クラップ。そして、左上に来るようにステップを一度踏みながら1回クラップ。更に、正面にガントレットの青い刃で円を描き、2回クラップ。そして最後に、その場で1回転して、頭上で1回クラップ。
ガントレットからの掛け声と共に哮の姿は、狼のような意匠をした仮面に、金色で彩られた赤と黒のアンダースーツで包まれた。
「アオオオォーーーーーーーーンッ!!」
リングの上に姿を現した赤き狼、ゴジュウウルフは、狼のような咆哮を響かせた。
その咆哮は、アビドス高等学校、ゲヘナ学園、トリニティ総合学園、ミレニアムサイエンススクール、百鬼夜行連合学院、山海経高級中学校、レッドウィンター連邦学園、ヴァルキューレ警察学校といったキヴォトス中へと広がり、強者達だけはその咆哮が耳に入る。
「…変、身…した…?」
「せ、先生?」
現場に要るユウカのみならず、別の場所からカメラで様子を見ていたリン達までもが、変身した哮を見て目を開いて驚く。
「スズミ、閃光弾投擲! 隙を突き、俺とユウカで接近して、一気に敵前線を崩す。ハスミとチナツは援護をしてくれ!!」
「「「「は、はい!!!!」」」」
「よし…行くぞ!」
哮の戦闘指揮に従い、スズミはオーダーメイド閃光弾を暴れているスケバンへと投げつける。
「なんだっ?!」
「うっ!」
閃光弾を受けたスケバン達は、怯んでしまい。その隙を突いて哮とユウカは接近し、
「行くぞ…!」
「まだ終わらないわよ!」
哮は近接戦闘を仕掛け、ユウカは愛銃を乱射して、次々とスケバンを倒していき、あっという間に一部地域を制圧し、先へと進む。
「…なんだか、いつもよりも戦いやすかった気がします」
「やっぱり、そうよね?」
「先生が指揮をしながら共に戦ってくださったおかげで、普段よりずっと戦いやすかったです」
「なるほど……あれが先生の力……まあ、連邦生徒会長が選んだ方だから当たり前か……」
哮が先頭で走る中、その後ろで4人は先生の力について話す。
そうしていると、シャーレの部室が近づいてきた。
それと同時に、別行動をしているリンから連絡が入る。
『先生。今、この騒ぎを起こした生徒の正体が判明しました』
「一体誰だ?」
『はい、狐坂ワカモという百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局から脱獄した生徒です。無差別かつ大規模な破壊行為を行う事から災厄の狐と呼ばれる程に、危険な人物のためお気を付けください』
「……分かった」
リンからの忠告を哮はしっかりと受け入れ、シャーレへと走り続ける。
そして、スケバン達を押しのけて進み、一行がシャーレの前までやってきたその時、
「っ! 全員その場で止まれ!!」
何かに気が付いた哮は、全員に停まるように言いながらその場に停まった。
「どうしたんですか先生。もうほとんど誰も居ませんよ? 早くシャーレを抑えましょう!」
そう言いながらユウカは哮へ詰め寄るが、哮は質問に答えることなく、一瞬自分が感じたとある匂いを確認するため、改めて周囲の匂いを嗅ぐ。
「……そこに居るんだろ。出てこい厄災!!」
瓦礫と化した戦車に向けて哮が叫ぶ。
生徒達はその行動に不思議そうに首を傾げて見ていると、規則性のないバラバラの化物が十数体程、物陰から出て来た。
「な、何よアイツら!?」
「ロボット…? いえ、それっぽい物も居ますが、明らか生物らしきものも居ますね…」
彼女らにとって化物は初めてみるようで、全員が驚きながら武器をしっかりと握り始める。
「全員気を付けてくれ。奴らはモリス…正真正銘の化物だ」
「知っているんですか…?」
「ああ、ここに来る前、俺が戦っていた連中だ。数こそ多いが、特別な能力とかはない。先程同様、俺とユウカが近接戦を仕掛ける。3人は援護してくれ!」
「「「「はい!!」」」」
化物達を哮はモリスと呼び、全員でモリスに挑むことにした。
「ウルフデカリバー!」
哮の言葉に反応し、胸部にある黒い円に左手をかざすと、狼の全身を模した小型の剣が現れ、哮は逆手になるように左手で持った。
「行くぞ、ユウカ!」
「はい…!!」
2人はモリス目掛けて走り出し、哮はガントレットの刃部分とウルフデカリバーで、次々とモリスを切り倒し、ユウカは愛銃を必死に撃ち続ける。
「流石に数が多すぎます…」
「はい。一体何処から湧いて来ているのやら…」
障害物に隠れながら、チナツとハスミは次々と出てくるモリスに対して愚痴を吐く。
「だったら、これだ…!」
周辺に居たモリスをガントレットの刃の衝撃波で吹き飛ばしたのち、腰のベルトバックルから1つの金の指輪を取り出す。
「エンゲージ!」
先程と同じように指輪をガントレットにセットした哮は、戦いながら2回クラップした。
掛け声と待機音と共に、哮はゴジュウウルフの一部アーマーを着けたまま、激走戦隊カーレンジャーの赤き戦士、レッドレーサーへと姿を変えた。
「バイブレード! フェンダーソード!」
哮はレッドレーサーの装備である2本の剣を取り出し、目にも止まらない速さで車のようにスライドで移動しながら次々とモリスを切り倒し、残党を一か所へ集めて行く。
「よしっ! 全員! 一斉攻撃でトドメと行くぞ…!」
通常のゴウジュウウルフに戻った哮は、4人に呼びかけながらガントレットのボタンを押した。
「行くぞ。テガソード…!」
哮はガントレットにそう呟きながら、刃の部分にエネルギーを溜め、全員の一斉攻撃に合わせて、ガントレットを振るい斬撃を飛ばした。
「「「「「はぁっ!!!!」」」」
5人はそれぞれが今持つ最大の攻撃をモリス達に浴びせ、それを食らったモリスは火花を散らしながらまとめて爆散して消えて行った。
「す、すごい…」
「あんだけ居た敵を一瞬で…」
その場に居た者達は、改めて豊夜哮という先生の力に驚愕する。
「…ふぅ、リンちゃん。こっちはオールクリアだ。さっさとシャーレに突入しよう」
シャーレ周辺の敵が殲滅されたことにより、哮は一息ついて変身を解き、リンを通信で呼びかける。
『…誰がリンちゃんですか……ですが、シャーレ奪還の完了は確認しました。私も、もうすぐで到着の予定です。建物の地下で会いましょう』
リンと合流地点を決め、5人は白色と青色が基調の六角柱が複数重ねたような形をしているシャーレの建物の内部へと入って行った。
シャーレ・建物地下。
そこでは、薄暗い室内で、狐面を被った1人の少女が、タブレットのような物と睨めっこしていた。
「うーん……これが一体何なのか、全く分かりませんね。これでは壊そうにも…………あら?」
そう独り言を呟く彼女の元に、皆と別れて探索している哮が1人でやってきて、それに気づいた彼女は哮の方に顔を向ける。
「…こんにちは、君は一体…?」
「あ、ああ……」
「…?」
「し、し……失礼いたしましたーー!!」
哮と暫く見つめあった狐面の少女は、少し可愛らしい声を出しながら、手に持っていた物を投げ捨て、脱兎のごとく部屋から出て行った。
「……なんだったんだ?」
脱兎のごとく去って行った狐面の少女を哮が不思議に思っていると、コツコツと足音を立てて、リンが部屋に入って来た。
「お待たせしました。ここに、連邦生徒会長が残した物が………何かありましたか?」
部屋に入ってきたリンは、哮の顔を見て何かあったのかと聞くが、
「いや、何も無かったよ」
哮は狐面の少女ことを伏せて、リンにそう言った。
「そうですか…っ! これですね。幸い、傷一つなく無事そうですね…」
床に投げ捨てられていたタブレット端末に気づいたリンは、それを拾い上げて傷が無いか確認し、安堵した。
「それが…?」
「はい。これが、連邦生徒会長が残した物……シッテムの箱です」
リンちゃんSS
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哮とリンちゃんラジオ~脳破壊を添えて~