ゴジュウアーカイブ   作:盈月さん

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第3話 管理者アロナ現る!

「…シッテムの箱…か…」

 

 リンからタブレット端末を受け取った哮は、その名前に既視感を覚え、その既視感の正体を探ってみるが、思い出せそうで出せないということになり、むずがゆくなってきたので諦めた。

 

「はい。普通のタブレットに見えますが、その実態は不明な点が多い代物です。製造会社、OS、システム構造、動く仕組みの全てが不明……連邦生徒会長は、このシッテムの箱は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだ…と言ってました。私達では起動すらできなかった物ですが、先生ならこれを起動させられるのでしょうか…それとも………では、私はここまでです。ここから先は先生にかかってます…それでは、私は邪魔にならないよう離れています」

「色々とありがとう。リンちゃん…!」

「…誰がリンちゃんですか……それでは失礼します」

 

 哮のちゃん付け呼びにリンは呆れつつ、哮が集中できるように部屋から一度出て行った。

 

「さて……できるかどうか分からないが…試してみるか」

 

 黒い画面のシッテムの箱を見つめ、哮はシッテムの箱にあるホームボタンのような物を押した。すると、シッテムの箱はリンが言っていたこととは裏腹に、簡単に画面が付き、

 

システム接続パスワードをご入力ください。

 

 という言葉が画面に現れ、パスワードの入力を求めて来た。

 

「パスワード…か……」

 

 起動されたシッテムの箱の画面を見つめながら哮は、脳裏に浮かんできた言葉をパスワードとして打ち込み始める。

 

……我々は望む、七つの嘆きを。

……我々は覚えている、ジェリコの古則を。 

 

 哮がパスワードを打ち込むと、数秒ほど経ったのち、

 

《接続パスワード承認。現在の接続者情報は豊夜哮、確認できました。》

 

 という言葉が画面に現れ、続くように機械的な音声が聞こえて来た。

 

シッテムの箱へようこそ、哮先生。生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します』

 

 音声が言い終えると同時に、哮の意識は遠のいて行った。

 

――◇――

 

「…どこだ、ここ…?」

 

 気が付いた哮は、周囲を見渡してみる。

 先程彼がいた場所はシャーレの地下だったはずが、今居る場所は爽快な青空が広がる半壊した教室であり、目の前では淡い水色髪の少女が、机の上にうつ伏せですやすやと寝ている姿が見える。

 

「…むにゃ、カステラにはぁ……いちごミルクより…バナナミルクのほうが……」

「…」

 

 哮は無言のまま、寝言を言っている少女へと近づき、顔が見るようにしゃがんだ。

 

「えへっ…まだたくさんありますよぉ……」

 

 人が近づいても起きない少女の頬を哮は突いてみる。

 少女の頬は柔らかく、ぷにぷにしており、その触感の良さから哮は少し激しめに突き始めた。

 

「うにゃぁ~…うぅぅぅん………んもう………ありゃ?」

 

 眠たそうに目を擦りながら少女は目覚め、ようやく自分の目の前に哮が居ることに気付く。

 

「ありゃ、ありゃりゃ…? え? あれ? あれれ???」

 

 少女は哮が目の前に居ることに気が付くと、頬を赤く染めながら目を見開いて驚く。

 

「せ、先生!? この空間に入ってきたっていうことは、ま、まま、まさか、哮先生…?!」

「…その通りだが…君は…?」

「う、うわああ!? そ、そうですね!? って、もうこんな時間!?」

「一旦深呼吸して落ち着け…」

「えっ、ああ! はい…!!」

 

 1人慌てふためく少女を見ていられなくなった哮は助言をし、少女はその助言通りに、深呼吸をし始める。

 

「す〜〜っ、は~〜~……えっと、まずは自己紹介からですね! 私はアロナ! このシッテムの箱に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれからの先生の秘書です!」

「……そうか…」

 

 少女アロナの自己紹介を聞き、哮は先程のこともあって少し不安に思うが、

 

「やっと会うことができました! 私はここで先生をずっと、ずーっと待っていました!」

 

 頭の上にあるヘイローをハートのようなマークにしながら、可愛らしい笑みを浮かべてそう言ってくるアロナを見て、どうでもいいかとなった。

 

「…よろしくな。アロナ」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 2人は互いに笑みを浮かべながら挨拶をする。

 

「あ、そうです! まずは、形式的ではありますが、生体認証を行いますね。少し恥ずかしいですが…私に近づいて、私の指に先生の指を当ててください」

「ああ…」

 

 アロナに言う通りに、哮はアロナの指と自身の指を合わせた。

 

「まるで、指切りして約束するみたいでしょう?」

「……どっちかというと、宇宙人の映画のワンシーンじゃない?」

「これで生体情報を確認しているんですよ! 結構重要なことなんですよ!」

 

 指を合わせながら、茶化す哮にアロナは頬を膨らませながら怒る。

 

「では、私の目で直接確認しますね!」

 

 アロナはそう言って、合わせたままの状態で、指先をじっと見つめ始める。

 

「……うう………うーん……よく見えないかも………まあ、これでいいですかね…?」

(……OSがこんな適当だけど…リンちゃんが起動すらできないと言っている辺り、相当セキュリティは高いはずなんだよな……高いんだよな…?)

 

 指先を見つめるアロナから、とても不安になるような言葉が聞こえてきて、哮はシッテムの箱がよく分からなくなってきた。

 

「…はい! 確認終わりました♪」

「それじゃあ、こっちのことを話してもいいか?」

「はい! 先生の事情を把握するのも、秘書の務めですので!」

 

 教室の椅子にそれぞれ座った2人は、対面しながら哮の状況について、アロナに話すことにした。

 

「なるほど…先生の事情は大体分かりました」

「それで、サンクトゥムタワーはなんとかなるか? アロナ?」

「はい! お任せ下さい! サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します! 少々お待ちください!」

 

 哮の頼みにアロナは目を輝かせながら受け入れると、目を瞑って微笑みながら何やら作業を始める。

 

「………サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了…先生。サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収しました。サンクトゥムタワーは、アロナの統制下にあります! 今のキヴォトスは先生の支配下にあるとも言っていいです!」

 

 数秒程の時間が過ぎた後、アロナは自慢げに哮からの頼みを達成したことを報告した。

 

「先生が承認してくださったら、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管できますが…どうしますか?」

「うーん…」

 

 アロナからの提案を聞いた哮は少し迷う。

 

(……サンクトゥムタワーの制御権を手に入れることが出来ている辺り、アロナが優秀なのは分かったけど…どこか抜けているというというか、ポンコツな面があるというか……勝手なイメージだけど、緊急事態の対処は苦手そうなんだよなあ……もしもの時のための対策は必要か……)

 

 色々と考えた後、哮はアロナに1つ頼みをすることにした。

 

「移管する前に、俺やアロナが入れるバックドアを用意してくれないか?」

「バックドア? 何でですか…?」

「サンクトゥムタワーとやらは、キヴォトスを支配するのに大切な施設なんだろ? もし仮に、そこを敵に取られた時の対策が欲しいんだよ」

「なるほど……分かりました! バックドアを用意したのちに、連邦生徒会に、サンクトゥムタワーの制御権を移管します!」

「それじゃあ、俺はリンと話があるから戻る。また会いに来るよ」

「できたら、いちごミルクを持ってきてください〜」

「…覚えていたらな」

 

 アロナにサンクトゥムタワーにの細工を頼んだ哮は、いちごミルクを要求されながら現実へと意識を戻して行った。

 

――◇――

 

 哮が目を開けると、そこはシャーレの地下、シッテムの箱を起動させた部屋だった。

 ふと、手元にあるシッテムの箱の画面を見ると、目が合ったアロナが笑顔で手を振っている姿が見えた。

 一々あの教室に行く必要は無いようだ。

 

「先生。サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。これで、連邦生徒会長が居た頃と同じように行政管理が進められます…」

 

 部屋の外で待っていたリンが、そう言いながら部屋に入ってきた。

 

「お疲れ様でした先生。キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝します」

「いやいや、リンもお疲れ様。それと、早速で悪いんだけど…先生権限で、モリスの情報を封鎖して欲しいんだけど…できるかな?」

「…何故です…?」

 

 哮からの頼みに、リンは身体を突き刺すような鋭い眼光で見つめながら、理由を聞いた。

 

「モリス…もとい、厄災の動向は全くの不明だ。俺も知っていることはそう多くない。そんな中、奴らのことが広く知られたら、キヴォトスの混乱の元になりかねないし、最悪の場合厄災を使おうとする者も出てくるだろう…」

「だからこそ、情報封鎖を行うと…?」

「嗚呼…可能な限りでいいからそうしてくれ。まあ、奴らが隠しきれない被害を出した時には、逆に大々的に公表して、危険性を言うのがいいだろう。一応聞いておくけど、今までで似たようなことはあっか?」

「いえ…私が知る限りでは、今回が初の事例かと…」

「そうか……じゃあ、頼むよリンちゃん」

「誰がリンちゃんですか…話は以上ですね。シッテムの箱も渡しましたし、最後に連邦捜査部シャーレへと案内致します。着いてきてください」

「はーい」

 

 哮の頼み事を聞き入れたリンは、シャーレの部屋へと案内するために歩きだし、哮はその後をついて行った。

 地下からエレベーターを使って、2人はシャーレの建物のとある階層にやって来た。そして、「空室 近々始業予定」と書かれた紙がガラスに貼られているシャーレのメインロビーへとやってきた。

 

「長い間空っぽでしたが、ようやく主人を向かい入れることができましたね…」

 

 そんなことを呟きながらリンはドアを開けて、哮と共に中へと入って行く。

 

「そして、ここがシャーレの部室です」

 

 リンに案内された部屋に入る。

 部屋には、3つのモニターが置かれた大きなデスク、様々な書類や本が入った金属製の棚、大きなホワイトボード、銃がかけられるラックなど、空室だったと言う割には、色々と揃っていた。

 

「先生が入るということで、こちらで用意できそうな物は、既に用意しました。ここで仕事を始めるのが良いでしょう」

「それで、俺はこれから何をすればいい?」

 

 哮の質問に、リンは少し難しそうな顔をする。

 

「……シャーレは、権限はありますが目標はない組織なので…特にやらなけらばならないということはありません……であれば、時間が有り余っているシャーレなら、連邦生徒会に聞いている面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね」

「……え?」

「その時はよろしくお願いしますね。先生…ああそれと、シャーレについての資料などは机の上に置いてあるので、確認しておいて下さい。それでは、私は後処理があるので、これにて失礼します」

 

 面倒事を持って来られるかもしれないとなって戸惑っている哮を置いて、リンは話を切り上げて去って行った。

 

「……取り敢えず、今回色々と助けてくれた皆に礼を言ってくるか…」

 

 深い溜息をついた後、哮は1度シャーレの前に居るであろうユウカ達と合流するために1階へと降りた。




ちなみにですが、今回のタイトルはゴーカイジャーの第1話「宇宙海賊現る」からです☆

リンちゃんSS

  • 哮とリンちゃんの慰安旅行
  • 豊夜哮の配信(リンちゃん視点)
  • 床のトマトジュースを血だと思って焦るリン
  • 幼児退行リンちゃん
  • 哮とリンちゃんラジオ~脳破壊を添えて~
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