先に校庭に来たシロコ達は、防衛用として校舎内から持ち出したロッカーや机、土嚢などで作った障害物に身を隠して、カタカタヘルメット団の攻撃を耐えていた。
「弾薬が少ないというのに、あの数は少し困りますね…」
「どうします? ホシノ先輩」
「う~ん…そうだね~」
充分な補給を受けれて無駄に銃弾を撃てるヘルメット団とは違い、まだ補給を受けれていないシロコ達は、弾薬節約のために出方を考える。
「…皆、援護して!」
「ちょっ! シロコちゃん!」
ホシノが考えていると、シロコが障害物を使いながら前へ移動し、反撃を始める。
「攻撃だ! 攻撃!! アイツらの弾薬は尽きかけてる!」
リーダー各は仲間を鼓舞しながら、前へと移動してきたシロコに銃弾の雨を浴びせる。
「皆、シロコちゃんを援護するよ!」
「「はい!」」
ホシノは先に出たシロコに続き、盾を展開しながらセリナと共に前へと出て行き、ノノミはミニガンの銃口をヘルメット団へと向け、圧倒的な連射力で銃弾を撃ち始める。
だが、ヘルメット団のリーダーは、余裕を崩さなかった。
「そろそろ決着をつけるか…全員! 手榴弾を投げてやれ!!」
リーダーがピンを抜いて1つの手榴弾を投げると、それを合図にヘルメット団達は、次々と手榴弾を投げ、投げられた手榴弾は校庭のあちらこちらで爆発する。
「これだと、前に出れない…!」
「なんか、いつもと違くない!?」
大量の手榴弾による爆発を前に、シロコは前へと進めなくなり、セリカは大量の手榴弾を投げてくるヘルメット団に違和感を感じる。
『皆さん! ここは一度、校舎内まで引くべきかと…!』
アヤネはドローンの通信機を通して、アビドスの者達に一時撤退を促す。
「…そうだね。ここは一度、校舎まで撤退しよ――」
ホシノが撤退を決断しようとしたその時、校舎の入口から哮が歩きながら出てきて、右手に装備したガントレットソードこと、金色のテガソードからリズミカルな音楽を鳴らし、その音楽に合わせてテガソードを叩く。そして最後に、歩きながら一回転して、頭上で1回クラップする。
「アオオオォーーーーーーーーンッ!!」
ゴウジュウウルフへと変身した哮は、ヘルメット団への牽制のために咆哮を上げる。
「なっ! 何だアイツ!?」
「うるせぇー…!!」
「せ、先生…?」
「ちょっと! どうなってるのよ!」
哮の咆哮は、ヘルメット団のみならず、アビドス高校の者達にも効いており、その場にいる殆どの者が耳を塞ぐ。
ただ1人、小鳥遊ホシノだけは、哮の咆哮を聞いて、煩さよりも驚きが勝っていた。
(どうして? どうしてあの大人が、あれを…?)
ホシノは十日前、哮が初めてキヴォトス中に轟かせた咆哮を聞こえており、あまりにも迫力から昼寝から飛び起きていたのである。
(これは…気を付けないとね~…)
咆哮の主が哮だと知ったホシノは、その腹の内で、哮への警戒心を高めることにした。
そして、そんなことを知らない哮は、咆哮を終えると、ヘルメット団が怯んでいるうちに、障害物を軽快に飛び越えながら、距離を詰めていく。
「くっ…蜂の巣にしてやれ!!」
片方の耳を手で抑えながら、ヘルメット団のリーダーは動ける者達と共に、哮を銃口を向けて撃ち始める。
「ノノミ! 弾幕を張れ!!」
「は、はい! お任せください!」
哮の指示に従い、ノノミはミニガンを相手の手前の地面に向けて撃ち、土煙を立たせる。
「クッソ、何も見えねぇ!!」
「お、おい! 落ち着け!」
土煙により視界を奪われたヘルメット団は、一気に浮足立つ。
「ホシノ、シロコ! 三方向から距離を詰めて近接で倒すぞ! セリカは援護してくれ!!」
「うん!」
「うへ~…おじさん頑張っちゃうよ~」
「分かってるわよ!!」
その間に、セリカは見える範囲のヘルメット団の頭に、一発一発丁寧に弾丸を叩き入れ、確実に倒していく。
「く、くそ…何が起きてるんだっ!」
土煙でよく分からない状態で困惑しているヘルメット団の一員の首に、一筋の青く光る刃が付けつけられる。
「他校を襲う悪い子には…」
「なっ――」
「お仕置きだ」
「きゃっ!」
いつの間にか接近していた哮に驚きつつ、ヘルメット団の一員は銃床で殴ろうとするが、受け流されながら懐を掴まれ、そのまま地面に叩きつけられる。
「く、クソっ!」
「怯むな! アイツは銃を持ってねぇ! やれぇーー!!」
仲間が地面に叩きつけられて動かなくなった姿に怯えながら、周りに居た3人のヘルメット団は固まって銃を哮に向けて撃つが、
「はあぁぁぁぁーーーー!!」
哮は威勢を上げ、飛んでくる銃弾を右手にあるテガソードの青い刃で弾きながら、恐れず前へと突き進み、距離を詰めていく。
ヘルメット団との一定の距離を詰めた哮は、地面を蹴り上げて宙を舞い、テガソードにあるボタンを押し込む。
「はぁっ!!」
哮はヘルメット団の上を飛び越えてながら、青い刃から斬撃を放ち、前転をしながら着地する。
「「「きゃあぁーーー!!」」」
斬撃を受けたヘルメット団の者達は悲鳴を上げながら爆発に巻き込まれる。そして、ヘルメットのバイザー部分を破壊された状態で、目を回しながら地面に倒れ込んだ。
「お、おい! しっかりしろ…!!」
近くに倒れた仲間にリーダーは声をかけながら、無茶苦茶に銃を撃ち始め、焦りを見せる。
「トドメだシロコ! リーダー格を倒せ!」
「了解…!」
リーダーの周りに人が居なくなったことを確認した哮はリーダーから一番近くに居たシロコに声をかけ、シロコは返事を返しながら走って距離を詰める。
「く、来るな! 来るなって言ってんだろぉーーー!!」
怯えながらリーダーはシロコに向けて銃を撃つが、焦りと恐怖から標準は定まらず、シロコはドンドン距離を詰め、リーダーの腹部に鋭い蹴りを入れて吹き飛ばす。
「うっ!」
シロコに蹴り飛ばされたリーダーは、擦りながら地面に仰向けになる。
そして、仰向けになって痛がっているリーダーに近づいたシロコは、銃口をリーダーの眉間に突き付ける。
「まっ、ままままま待てっ! こ、降参だ! 降参する!!」
慌てながらリーダーは降参を口に出すが、
「これでおしまい…!」
シロコは無常にも引き金を引き、リーダーのゴーグルを破壊する。
「痛っ! いたたたたたたたっ!! や、やめっ! やめてっ!!」
「なら、さっさと帰って…」
「わ、分かった! 分かった、帰るから!!」
リーダーが痛がる中、シロコは残弾を惜しむことなく撃てる分全てをリーダーの頭に入れながら、脅して、リーダーは承諾した。
(やっぱ、キヴォトスは色々違うな…)
普通ならば、あれほどの至近距離で弾丸を撃ち込まれた即死の上、更にあの数を叩き込まれたら、頭部の原型がなくなるはずなのだが、リーダーは痛いだけで済んでいるため、哮は改めてキヴォトスと自分が居た世界の違いを実感する。
そうしていると、
「お、覚えとけよぉーーーーー!!」
立ち上がったリーダーが、半泣きになりながら他の者達と共に、小物臭い台詞を吐きながら街の方へと脱兎の如く逃げて行った。
「わあ! 勝ちました!!」
「まさか、あの状況から勝つとはねぇ~…」
戦闘が終わったことにより、アビドスの皆はシロコの元へと話しながら集まり始めた。
哮もまた、テガソードにセットしていた指輪を外して変身を解除して、皆の元へと向かう。
「皆お疲れ様、ここは少し暑いし、一回校舎に戻ろうか」
「「「「はい!!」」」」
哮は労いの言葉をかけ、少女達と先程の教室に戻るため、歩き出した。
「先生の指揮と戦闘力凄かった。あそこから逆転できるとは思ってなかった。大人ってすごい」
「ははっ、まあ…指揮は兎も角、戦闘力に関しては俺と同じ奴がいるということはそうそうないと思うけどね」
廊下を歩きながら、横に並んだシロコから向けられる尊敬の眼差しに、哮は気分が良くなり笑みを浮かべる。
「先生のあのお力って、何なんですか?」
「うーん……神様から貰った守る力かな?」
「ちょっと、ごまかさないでよ!」
ノノミからの質問に、哮は右手の指輪を皆に見せながら分かるように答えるが、セリカは勘違いをして怒る。
そうしていると、5人は教室の前にやってきて、ホシノが扉を開けた。
「あっ、おかえりなさい。皆さん!」
教室に入ると、アヤネが人数分のお茶を入れたコップをテーブルに並べて待っていた。
「……ぷはぁ~…戦闘後のお茶は沁みるねぇ~」
コップを手に取り、お茶を一気に飲み干したホシノは、その容姿からは想像できないおっさんっぽい言動を言い、哮は内心困惑するが、
(こういう子も居るか…多様性多様性)
多様性という便利な言葉で片付けた。
「でもこれで、ヘルメット団がまた来てもへっちゃらですね!」
教室のパイプ椅子に座ったノノミは、笑顔を浮かべながらそう言うが、
「でも、あいつらしつこい」
「ほんと、その通りよ」
「ヘルメット団以外にも問題を抱えているので…その対応もしていかないとですね…」
といった感じで、他の者達の反応は芳しくなかった。
すると、ホシノが口を開いた。
「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたよー」
「うそっ!?」
「あのホシノ先輩が…!?」
「おじさんだって、やる時にはちゃんとやるよ~?」
アヤネとセリカの反応に、ホシノは何処か悲しそうに笑みを浮かべる。
「…で、どんな計画なんですか?」
「そうだねー。その前に先生、おじさん達の補給はいつぐらいに来そう…?」
「そうだな……リンちゃ……首席行政官に頼んだのが一昨日くらいだったから、今日の昼過ぎか、明日の午前中には届くとは思う」
「色々とありがとうね~」
哮から補給が来る日を聞いたホシノは、ホワイトボードに赤色で印がつけられている一枚の地図を張り出した。
「おじさんが調べたら、印をつけているビルを奴らが拠点にしているみたいなんだよねぇ~。だから、先生が居て、尚且つ奴らが万全な状態ではない今のうちに、こっちから仕掛けようと思ってさ。まあ、補給が来てから動くことになるから、決行は明日の昼かな~」
「…ほ、ホシノ先輩が…」
「真面目に作戦を組んでいる…」
ホシノが考えた作戦の内容を聞いたアヤネとセリカの2人は、まるで信じられない物でも見たかのような表情をして驚く。
「ノノミちゃ~ん! 後輩達が虐めるよ~!」
「よしよし、頑張りましたね。ホシノ先輩!」
2人の反応に傷ついたホシノは、ノノミの元へと向かい、たわわな胸に顔を埋めて頭をノノミに撫でて貰う。
(…親子かな? 年齢と立場的には逆のはずなんだけど…)
その光景を見ていた哮は、思わずそんなこと考えてしまう。
「あの、それで先生の方は大丈夫なんですか…?」
「ああ…! 俺は君達の作戦に参加できるよ。当面の間は、アビドスの問題をある程度、片付ける予定だったし」
「本当ですか! ありがとうございます!」
哮の言葉に、アヤネは嬉しそうに一礼しながら礼を述べた。
「それじゃあ、俺はまた明日に来るよ。ちょっと今、お腹が空いてて…一回駅の近くまで戻りたいんだよね」
「ん、私がバス停まで送っていく」
「おお、ありがとうシロコ!」
こうして、明日の作戦に参加することにした哮は、シロコと共に教室を出て行った。
2人の生徒から、疑いの眼差しを向けられているとは知らずに…
リンちゃんSS
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