超かぐや姫!Encore -超かぐや姫!短編集- 作:YURitoIKA
本当に。
本当に長い旅路だった。気が遠くなり、そのまま自分がパッと消えてしまうんじゃないかと思えたほど、長い時間だった。
幾千回、幾万回、彼女の名前を叫んだか分からない。一緒に過ごした日々を振り返ったか分からない。
その名前の彼女が、今、目の前にいる──。
彩葉の初ログイン日。
ワタシが、待ちわびた日。
現実が信じきれない。
夢なんじゃないか。
ホログラムなんじゃないか……?
──と、FUSHIが頬をつついてくれて、これは念願の現実であると教えてくれた。どうやらこの子は涙を堪えているようで、きっと破裂してしまうくらい嬉しいだろうに、なんだか威嚇しているような顔つきだ。可愛らしい。
他人事じゃない。ワタシでさえも、気を緩めたら変な顔をしてしまうと思う。
駄目。
彼女との、本当の意味での逢瀬は今じゃない。
だから。
今はツクヨミの管理人、トップライバーの月見ヤチヨとして、彼女に接しなくてはならない。
「や、ヤチヨだ……本物だ……。いや、本物ではないか。たぶんコレ、プログラムだもんな……。でも、ほんとに……ッ」
「仮想空間ツクヨミへようこそっ! 管理人のぉ、月見ヤチヨでーす☆」
手を握る。
「ふぇえっ!?」
驚く彩葉。いとかわゆし。
うん。分かってたよ。ここは仮想空間だから、手の温かさなんて分からない。でもいいの。八千年ぶりに、この手を握ることができたんだから。…………駄目だよ。泣いちゃうよ。もうおばあさんみたいな年齢だけど、いや、だからかな。涙腺が緩くなっちゃってるよ。
「さぁ、出かける前にぃ。その格好じゃあ、つまらない!」
「あ、そっか。コスチュームを決めないとか」
あー、そういえば彩葉、こんなコスチュームだったね。可愛いなぁ。愛おしいなぁ。うーん、難なら口出しして別のコスチュームにぃ……。いや、これはこれで懐かしいからいっか。
「これに決めた! あの、決めましたッ」
「よーしッ、これで準備は整ったね。さぁ、いってらっしゃ──」
彩葉の手を引っ張って、ツクヨミの入り口である、鳥居をくぐらせる──のが段取りなんだけれど、
「う、うわぁ──あれ? ヤチヨ?」
「…………」
ちょっと。足を止めてしまった。彩葉がぶんと振り回されて、目をキョトンとさせている。
「あの……ヤチヨ?」
「……ふふ。ごめんね。それじゃー改めまして、いってらっしゃーいッ」
で、気を取り直して彩葉をぶん投げる。鳥居を抜けて見えなくなる彩葉に手を振る。他のユーザーよりも手荒い送り出しになっちゃったけど、まぁ彩葉なら許してくれるか。
はぁ。それにしてもつい長く手を握っちゃった。でもいいよね。仕方ないよね。八千年も待ったんだもの。これくらいの我が儘、運命って神様も、許してくれるよね。
耳を澄ませると星の降る音。
未来へのはじまりの合図だ。
ここから先は、いや、ここから先も、楽しいことばかりの日々が待っている。
唄うようにワタシは笑う。
さぁ、物語を巡りましょう────
/おしまい