超かぐや姫!Encore -超かぐや姫!短編集- 作:YURitoIKA
今日は彩葉と一緒に、彩葉のお父さんのお墓参りに来ていた。
「あっついね〜〜。こんなことなら温度感覚の機能オフにしておくんだったよ〜〜」
「人が血と汗と涙を流しながら作った機能をオフるんじゃないよ。まぁ、暑いのは同意だけど……。クーラーの効いてる研究室に戻りたい……」
お互いに汗でびちゃびちゃの額を拭いながら、墓地へと続いている階段を登っていく。
頂上──ようやく墓地に辿り着いたところで、彩葉は水をがぶ飲みしていた。
「ワタシのいる?」
「いい、もう一本あるから」
お墓参りに行こう、と言い出したのは彩葉だった。彩葉はお母さんと仲直りしてから、時たま来ていたみたいだけど、ワタシを誘うことは無かった。
ワタシもついて行きたい気持ちが無かったわけじゃないけれど、それを言い出すことはできなかった。
彩葉のお父さん。彩葉がちいちゃな時に亡くなってしまった人。彩葉に音楽の楽しさを教えてくれた人。つまるところ、超人気ライバー・かぐやちゃんの生みの親と言っても過言ではないわけで、挨拶はしておきたかった。
けれど、ワタシと出会ったばかりの時期は家族の話を避けていたし、彩葉がお母さんと仲直りして、ワタシが新しい身体を手に入れてからも、あまりお父さんについては教えてくれなかった。
ナニか思うところがあったのだと思う。このかぐやちゃんも大人になっているので、そこら辺の〝弁え〟はできちゃうわけなんだな。偉い! 天才!
「今日呼んだ理由はさ、」
もうそろそろ我慢できなくなって、今日呼んでくれた理由を聞こうとした丁度のタイミングで、彩葉から言葉を切り出した。絶妙なタイミングだった。
「復活ライブも無事終わって、一息ついたし、改めてかぐやをお母さんに紹介できたし、お父さんにも紹介したいなって、私の覚悟ができたからなんだ。諸々、遅すぎるけどね」
「そっか。嬉しいな。ワタシも彩葉のお父さんと話してみたかったし」
「話すって……。ま、それを否定したらバチが当たっちゃうか。うん。こちらこそ付き合ってくれてありがとね」
彩葉のお父さんの墓前に立って、五供を済ませて、二人で合掌する。
……はて。彩葉のお父さんに何を語りかけるべきか。この辺の台本を考えないのが大変ワタシらしいのだけれど、うーん困ったな。彩葉を生んでくれてありがとう……は重すぎるし、ワタシ(ライバー)を生んでくれてありがとう……もよく分かんないし、うーん、うーん。
そうして真夏の暑さも忘れて、数分ほど合掌してから、ワタシたちは階段を降りていく。
「彩葉は何を話したの?」
「近況とかね。まだまだやるべきことは残ってるけど、一旦は一段落はついたし。あと、新しいメロディのネタくださいって言っといたかな」
「うわー図々しいー。イロハらしいね〜〜」
「あんたにだけは言われたくないっ。で、かぐやはウチのお父さんとナニを話したのさ」
「そりゃあ──ご挨拶と、彩葉はワタシが必ず幸せにしますってね」
「…………まるで結婚の許可を貰いに挨拶に来たみたいじゃん」
「え、違うの?」
「大違いッ!」
彩葉がぷいと余所を向いてしまう。
これはきっと幻聴の類か、それともワタシの身体のバグかもしれないと思っているけれど。
これまでの人生で聞いたことが無いほど暖かく穏やかな声で、一言、
『────彩葉をよろしくね──』
と言われた気がするのだけれど、彩葉には内緒。最近彩葉もアラサーとやらになってしまったせいで、ワタシのスキンシップの一通りが効かなくなっているのだ。こんなことを言っても信じてもらえなそうだからね。
だけど、それはそれとして──、やっぱり──、
「彩葉は、かぐやが必ず、もっともっとハッピーエンドに連れて行くよ」
かの一言への返事を、もう一度呟いた。これまでの人生も充分にハッピーだったけれど、最高到達点はまだまだ未知数。きっとこの先の未来に、まだ見ぬワクワクや幸せが、ワタシたち二人じゃ抱えきれないくらい待っているんだ。
はー、楽しみで仕方がないっ!
だからね、彩葉のお父さん。
一緒に抱えて、くれるかな。
「そっか」
ちょっと遅れて、照れくさそうに返事をする彩葉と、誰かの声がダブって聞こえたのでした──。
/おしまい