へへっ、もう一つ小説を作っちまったぜ。
……聞こえてますか。
こちらはキヴォトス、深夜〇時。
眠れない生徒と、うっかり起きてしまった誰かのための時間。
先生の深夜ラジオです。
今日も特に大きな事件はなくて……と言いたいところだけど、まあ、この街で「何もない日」ってだいたい嘘になるからね。だからこそ、せめてこの時間だけは静かに話そうと思う。銃声も爆発もない、声だけの場所だ。
このラジオでは、肩書きも所属も気にしなくていい。名前を書かなくてもいいし、まとまってなくてもいい。質問でも、愚痴でも、「これって変じゃない?」でも構わない。先生は万能じゃないし、正解を持ってるわけでもないけど……聞くことと、考えることくらいならできる。
答えが曖昧になることもあると思う。途中で話が逸れるかもしれない。それでも、深夜ってそういうものだから許してほしい。眠気と本音が、少しだけ近づく時間だから。
じゃあ、最初のお便りを待とうか。
今夜の質問役さん、どうぞ。
ペンネーム『眠りから覚めし勇者』より
『こんばんわ!アリスです!アリスから先生に質問があります!先生はどんなゲームが好きですか?』
……こんばんは、「眠りから覚めし勇者」さん。
名乗り方がもう元気だね。アリス、ありがとう。ちゃんと聞こえてるよ。
先生の好きなゲーム、か。
うーん……これ、意外と難しい質問だな。だってね、「好き」って言葉の中に、逃げたい気持ちと、立ち向かいたい気持ちが両方入ってるから。
昔から好きなのは、時間をかけて考えるゲームかな。派手じゃなくても、選択ひとつで結果が変わったり、取り返しのつかない失敗が残ったりするやつ。ロードし直せば元に戻るのに、それでも「このまま進もう」って思わせてくるゲーム。そういうのが好きだった。
でも正直に言うとね、今は――
ゲームそのものより、「一緒に遊んだ記憶」が残るゲームの方が好きかもしれない。
勝ったとか、強かったとかより、
「ここでミスしたよね」
「なんであの時ああしたんだろう」
って後から笑えるやつ。誰かの隣でコントローラーを渡し合ったり、画面を覗き込んだりする時間ごと、記憶に残るゲーム。
キヴォトスに来てから思うんだ。
この街は、セーブもリトライもできない場面が多すぎる。だからこそ、せめてゲームの中では、ゆっくり考えて、失敗して、やり直せるのがいい。
アリスはどう?
勇者って名乗るくらいだから、きっと派手な冒険が好きなんだろうけど……たまには、何も起きない町で、意味もなく寄り道するゲームも悪くないよ。
さて、今夜の放送はまだ続く。
次のお便りも、待ってるよ。
ペンネーム『暁のおじさん』より
『うへー、先生の女性の好みは?』
……こんばんは、「暁のおじさん」。
この時間帯に来ると思ってたよ、こういう質問。まあ、ラジオだからね。正直に、でもちゃんと答えよう。
先生の女性の好み、か。
見た目の話を期待してるなら、たぶん拍子抜けすると思う。正直、外見だけでどうこう、ってあんまり考えなくなった。キヴォトスに来てから、特にね。
強いて言うなら――
自分の世界をちゃんと持ってる人、かな。
不器用でもいいし、口下手でもいい。誰かの言葉を借りて生きてるんじゃなくて、「私はこう思う」「これは譲れない」ってものを、静かでも持ってる人。そういう人を見ると、少し安心する。
あと……これは完全に個人的だけど、
疲れてる時に、無理に励まさない人。
「頑張れ」じゃなくて、「今日はここまでにしよ」って言える人は、すごく大人だと思う。
可愛いとか綺麗とか、そういうのは後からいくらでも変わる。でも、その人が何を大事にしてるかは、意外と変わらない。先生は、そこを見るようにしてる。
……まあ、こんなこと言ってる時点で、
先生自身が一番面倒なタイプかもしれないけどね。
深夜の質問、ありがとう。
次はもう少し平和なの、来るといいな。
ペンネーム『キボトスⅠのアウトロー』より
『先生元気かしら?私は元気よ!…それで先生、最近アウトローな事をしたら、相手から「いい子ね〜、どれ、飴ちゃんあげる」と言ってパインアメを貰ったわ!
ふふっ、アウトローをするのは気持ちいいわね!でもそれをムツキに話したら笑われちゃった!……ところで先生、先生の思うアウトローな事はなにかしら?』
……こんばんは、「キボトスⅠのアウトロー」。
元気そうで何よりだよ。パインアメを貰った話、情景がはっきり浮かんでちょっと笑ってしまった。ムツキが笑うのも、まあ……うん、分かる気はする。
先生の思う「アウトロー」ね。
派手なことを想像してるかもしれないけど、たぶん君が思ってるのとは少し違う。
先生にとってアウトローなのは、
「みんながそうするから」という理由で動かないことだ。
この街では、戦うのが当たり前で、命令に従うのが普通で、無茶をするのが美徳みたいに扱われる時がある。でも、そういう流れの中で「今日はやらない」「それはおかしい」って言うのは、意外と勇気がいる。
空気を読むのをやめる。
期待されてる役割から、一歩だけ外れる。
怒られるかもしれないし、笑われるかもしれない。それでも「自分はこう思う」って言う。先生は、それが一番アウトローだと思ってる。
だからね、君がアウトローなことをして、結果として飴を貰ったなら……それはたぶん、相手から見て「危ない子」じゃなくて、「面白い子」「放っておけない子」だったってことだ。悪くない。
ムツキに笑われた?
それも含めて、ちゃんとアウトローしてる証拠だよ。
本当にアウトローな行動って、大体あとからネタにされるものだから。
今夜もお便りありがとう。
次はどんな“悪さ”の報告が来るのか、少し楽しみにしてるよ。
__あとキボトスじゃなくてキヴォトスね
皆さんも質問があればジャンジャンください!