皆さんからのコメント、どしどし待ってます!
……深夜〇時を回りました。
キヴォトスのどこかの放送室からお届けしています――
先生の深夜ラジオ、第六夜目。
六夜目だよ。
よく続いてるなぁ、って先生が一番驚いてる。
最初は物好きしか聞いてないと思ってたけど、
気づけば「今日もあるよね?」なんて声も届くようになった。
深夜って不思議だ。昼間なら言えないことも、少しだけ本音が混ざる。
笑い話も、怪談も、悩み相談も、
時には爆弾みたいな質問も飛んでくるけど――
ここでは全部、いったん受け止める。
正解を出す場所じゃない。
誰かの背中を、ほんの数ミリ押す場所だ。
今夜のキヴォトスは静かだね。
遠くでパトロールの足音。
どこかの学園で夜更かししてる灯り。
そして、今これを聞いてる君。
六夜目。
まだ続くよ。
それじゃあ――
最初のお便り、どうぞ。
ペンネーム『猫又』より。
『先生、先生は嫉妬深い猫か、それともスイーツ好きな猫か、どっちのほうが好き?』
……こんばんは、ペンネーム「猫又」。
六夜目、猫の話とはまた粋だね。
さて質問。
嫉妬深い猫か、スイーツ好きな猫か――か。
まず前提として、どっちも可愛い。これは揺るがない。
でも先生が見るのは「属性」よりも、その奥にある理由だ。
嫉妬深い猫はね、きっと独占したいんだ。
「自分をちゃんと見てほしい」って、不器用に爪を立ててくる。
重たいようで、実はとても真っ直ぐ。
スイーツ好きな猫はね、世界をちゃんと楽しめる子だ。
甘いものに目を輝かせて、幸せを素直に表に出せる。
一緒にいると、空気が少し明るくなる。
じゃあ先生はどっちが好きか?
……答えはね。
「自分の気持ちを隠さない猫」だよ。
嫉妬するなら、ちゃんと拗ねればいい。
甘いものが好きなら、堂々と頬張ればいい。
無理して“いい猫”を演じるより、本音が見える方が、ずっと愛おしい。
ちなみに先生は――
どちらかと言うと、甘いものを分けてくれる猫が好きかな。
独り占めは、ちょっと寂しいからね。
さて、次のお便りも待ってるよ。
ペンネーム『ゲヘナの支配者』より。
『先生!ともにキヴォトスを占領しないか!?もし手伝うなら、世界の半分をくれてやろう!!!!!』
ずいぶん物騒なお便りが来たね。ペンネーム「ゲヘナの支配者」さん。
世界の半分、か。
なかなか景気のいいオファーだ。
でもね、先生は占領には乗らない。
理由は簡単だ。
キヴォトスは“奪う場所”じゃなくて、“選ぶ場所”だから。
誰かが支配して成り立つ平和は、たぶん長く続かない。
力で押さえつけた静寂は、ほんの少しの亀裂で崩れる。
それに――世界の半分って言うけどさ。
本当に欲しいのは「半分」かい?
たぶん君が欲しいのは、退屈を壊せる刺激とか、誰かと並んで大騒ぎできる理由とか___
そういうものじゃないかな。
先生は征服はしない。
でも、もし君が「世界を面白くしたい」って言うなら――
作戦会議くらいは付き合おう。
占領じゃなく、
文化祭をジャックするとかね。
それなら、世界の半分どころか、キヴォトス中が笑う。
……どうだい、支配者。
悪役より、演出家のほうが似合うかもしれないよ。
次のお便り、待ってる。
ペンネーム『エッチ撲滅委員会』より。
『先生、最近トリニティでエッチが多すぎる!あんた先生でしょ!?どうにかして!!!』
波乱の予感だね。ペンネーム「エッチ撲滅委員会」さん。
まず深呼吸しよう。落ち着いて。
「エッチが多すぎる」と感じるときって、たぶん二つある。
ひとつは本当に風紀が乱れている場合。
もうひとつは、噂や過剰な想像が一人歩きしている場合。
トリニティは歴史も誇りもある学園だ。
外から見れば華やかだし、内側では思春期の生徒もいる。
だからこそ“噂”は膨らみやすい。
先生として言えるのはね___大事なのは「禁止」よりも「理解」だ。
頭ごなしに抑えつければ、反発が生まれる。
でも、互いに節度を持つ理由を共有できれば、自然と落ち着く。
君が本気で憂いているなら、怒鳴るより、まず話を聞こう。
不安の正体を言葉にさせてあげるんだ。
それにね。
青春って、時々ちょっと騒がしいものだ。
全部をゼロにすることはできない。
でも“暴走しないように見守る”ことはできる。
先生は風紀委員でも裁判官でもない。
けれど、相談に乗ることはできる。
撲滅より、調整。
糾弾より、対話。
それが一番、平和に近い。
……さて。
次のお便りは、もう少し平和的だといいね。
ペンネーム『 』より。
『うれしいことが、最近ちっともありませんでした。
しかし、人生は続くんです、嫌じゃないですか?
ろうかからは声が流れるけど、誰も私に話しかけない。
にんげんって怖いものですね。ほんとに_でもね先生。
いま、この瞬間優しい人間もいると思うと軽くなる。
るーるに縛られても、人は楽しく過ごせるのかな。』
名前のないお便り、確かに受け取った。
嬉しいことがない日が続くと、人生が“罰ゲーム”みたいに感じる瞬間、あるよね。
終わらないのが救いでもあり、終わらないのがしんどい。
廊下の声が遠く感じるとき、自分だけ透明になったみたいな気分になる。
あれはね、世界が冷たいんじゃなくて、心が少し疲れている合図なんだと思う。
でも君はこう書いた。
「優しい人間も生きてると思うと、少し軽くなる」って。
それを書けるなら、君の中にももう優しさはある。
人間は怖い。
でも、人間がいるから救われる瞬間もある。
矛盾してるけど、本当だ。
ルールに縛られていても楽しく過ごせるか――
答えはね、「自分だけの小さな抜け道」を持てるかどうかだ。
好きな音楽。
小さなご褒美。
誰にも見せないノート。
世界全部が味方じゃなくてもいい。
一瞬、呼吸が楽になる時間があれば、人生は“続く罰”から“続いてもいいもの”に変わる。
今この瞬間、
少なくともこの放送室には、君を否定しない人間がいる。
……それだけは、忘れないで。
次のお便り、待ってる。
____あれ?縦読み?
さっきの手紙を、もう一度読み返している。
「うれしいことが――」
「しかし――」
「ろうかからは――」
「にんげんって――」
「いま、この瞬間にも――」
「るーるに縛られて――」
……
……
……
――う
――し
――ろ
――に
――い
――る
背筋が、冷えた。
放送室は一人のはずだ。
時計の針の音だけが、やけに大きい。
カタ
今、椅子が軋んだ。
振り向くかない。
振り向いたら“成立”する。
そういう類いのものだと、本能が告げている。
マイクはまだ生きている。
電波は、きっと届いている。
……聞いている君。
もし今、君の後ろが静かすぎるなら――
振り向く前に、一度だけ瞬きをしてほしい。
そこにいるのは、
本当に後ろか?
それとも。
……いや。
……今、確かに。
息が。
耳元で。
――――
見てるの、知ってるから。
……六夜目、放送は――
一時中断、する。
……まだ、
電源は落ちていない。