真・三國無双ORIGINぬ   作:モドラナイッチ

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 本話以降、戦いの最中の台詞や描写が話の流れの都合でゲーム本編と順番が前後するかと思います。
(例えば、ゲーム本編ではAと接敵した後にBと接敵とする所を逆にしたり等。)
 その分、武将同士の会話描写を描いていこうと思いますので、ご理解いただけますと幸いです。


第六話:広陽の戦い

「どういう事だ‼︎

 敵は義勇軍と聞いたぞ‼︎」

 

 部下からの報告に、幽州侵攻を任された黄巾党の将_程遠志は声を荒げた。

 

 先頃、彼がいる本陣に侵攻してくる部隊が確認されたとの報には一時陣内が浮き足だったものの、よくよく敵の軍勢についての報告を聞けば、その数は現在自分達が陣に残している千人の半数にも満たない上に、その装備も官軍のそれとはとても思えない貧相なものだと言うのだ。

 

「そう言えば、先晩近隣の村人から組織された義勇軍が劉焉に目通りしたとか...。

 身軽故に、本陣の急襲を任されたのやも...。」

 

 今回の幽州侵攻に際して、副将として自身を支えてくれている鄧茂の言に、程遠志は成程と思わされた。

 侵攻が開始されてからの期間を考えれば、官吏側に自分達の陣容の凡そを把握されている可能性はあり、各地に展開している部隊の規模から本陣が手薄になっていると判断されてもおかしくはない。

 正規軍でないが故に守らなければならない任地というものを持たない義勇軍が、自分達の侵攻の間隙を突く役目を任されたという事だろう。

 何しろ官軍からすれば失敗した所で損害が無い上に、本陣への襲撃の報が前線に渡れば黄巾党の攻勢が緩まり、反転の機会を期待出来る。

 万が一、本当に義勇軍によって敵将が討ち取られようものなら、官軍からすれば笑いが止まらない結果だと言えよう。

 無論、現実的には義勇軍から死者が出れば、それだけ人口が_つまりは納税者が減る為に決して国にとって良い事ではないのだが、眼前に押し寄せる黄巾党の大軍勢への対処に四苦八苦している現状では、官吏から見れば渡りに船と言わざるを得まい。

 

「成程...、正面から来ると言うなら迎え撃ってやろうではないか。

 迎撃部隊を編成しろ‼︎」

 

 故にこの時の程遠志は間違いなく相手を侮っていたのだが、それを責められる者は陣内に一人としていないと言わざるを得ない。

 何しろ、彼ら黄巾党にしろ、攻め寄せてきている義勇軍にしろ、その多くが元を辿れば同じ貧困に喘ぐ民である。

 幽州太守劉焉に目通りしたとの情報から、多少武装に際しての工面はされたであろうが、根本的に義勇軍は決して訓練を受けた正規兵ではない。

 そんな状態で戦う事の難しさを、彼らは各地での蜂起が始まったばかりの頃に痛感していたのだ。

 前提条件が同じならば、場数を踏んでいる自分達が容易に勝てる筈_そんな彼らの思惑は、先行した迎撃部隊が敗走したとの報告によって脆くも崩れ去るのだが。

 

 

 

「そ、それが...、敵の中に一人、とんでもない偉丈夫がおりまして...。」

 

 そんな情けない報告という名の泣き言を言ってくる部下を怒鳴りつけたい衝動を、程遠志は深く息を吐く事で何とか抑えた。

 現実として、彼を叱責した所で問題が解決する訳でもなく、本陣に敵が攻め寄せている現状で部隊内の不和を生む事は百害あって一利なしである。

 件の偉丈夫がどの程度のものかは分からないが、義勇軍の士気が高いだろう事と部隊全体の油断が併さった結果と考えるべきだろう。

 寧ろこの状況を、部下の気を引き締め直す事に利用し、着実に勝利を目指すべきだ。

 

「徐和!」

 

「はっ、ここに。」

 

「兵百五十を与える。

 何曼と共に正門前に布陣し、敵の侵攻を食い止めよ。」

 

 程遠志はまず二人の将へと指示を出した。

 最初に声を掛けた徐和は周りをよく見ている人物であり、兵の扱いに長けていた為に義勇軍の勢いを食い止める防衛を任せたのだ。

 一方の何曼は、自称ではあるものの『截天夜叉(せつてんやしゃ)』と称するだけの武勇に自信を持っている人物だ。

 件の偉丈夫に彼を当て、よしんば討ち取ろうという狙いである。

 

「ははっ‼︎」

 

「うむ。

 鄧茂、よいか?」

 

 拱手と共に力強い返事をする二人に頷くと、今度は信を置く副将へと声を掛ける程遠志。

 この戦いに勝利する為の策を彼に与えようとの考えだったのだが。

 

「で、伝令‼︎」

 

「今度は何だ‼︎」

 

「て、敵が東側からも侵攻中!

 そちらにも猛者が二人いる他、妙な物体が...!」

 

「なっ⁉︎」

 

 その報告に程遠志は愕然としてしまう。

 今しがた鄧茂へと伝えようとしていた策、その根底が崩壊してしまった故に。

 彼に一軍を与え東側からの通路の警戒をさせている韓忠と合流、義勇軍の進軍路をそのままなぞる形で背面を突き、挟撃しようという狙いだったのだ。

 それが、あろう事か自分達が東西双方からの挟撃の危機に瀕しているとなっては、思考が停止してしまうのも無理からぬ事だろう。

 

「東側には韓忠殿が警戒網を敷いていた筈...。

 何故、こんなにも報告が遅れた?」

 

「そ、それは...、その...。」

 

 程遠志の様子を見かねたか、鄧茂が彼に代わりこうも事態が悪化してしまった理由を部下へと問い掛ける。

 程遠志が『東側から回り込む』という発想に至った事からして、彼らも当然東西の道からの同時攻撃の可能性は考慮していた。

 故に韓忠を置き、仮に今回の様に敵が東側通路を利用しようとしても迎撃、また早期の本陣への連絡が出来る様にしていたのである。

 そちら側にも敵方の猛者がいるらしい事から、現実的に韓忠のみで食い止められたかは兎も角、敵を発見した時点で報告を受けるのと、攻め込まれた後に報告を受けるのとでは天と地程の差がある。

 その猛者達の実力如何によっては、自分達がこうして話を聞いている時点で韓忠が敗走し、更に進軍されているかもしれないのだ。

 それに対して何とも煮え切らない態度の部下に、彼への責は問わないと先を促すと、漸く、そして彼らにとっては受け入れ難い真相が伝えられた。

 

「か...、韓忠様と一部の同志が...、東側に有ります村で略奪を...。

 その騒ぎを聞きつけた義勇軍の先遣隊と戦闘となり、その後例の猛者達が兵を率いて増援として現れた次第です...。」

 

 その報告がなされた瞬間、何かを殴り付けた様な音がその場に響く。

 程遠志が憤怒の形相と共に、自身の目の前の軍議台に拳を叩き付けた音だった。

 

「ふぅっ、ふぅっ...、大賢良師様の教えも解さぬ愚か者めが...!

 くそっ...!」

 

 部下に対する八つ当たりをせぬ為だろう、額に青筋を浮かばせながらも程遠志は大きく息を二度吐く事で何とか平静を保つ。

 尤も、小さく呟かれた呪詛の言葉からして、韓忠に対する怒りと軽蔑は微塵も緩和していない様だが。

 

「こうなっては致し方ありますまい。

 私が向かいましょう。」

 

「すまん...。

 急ぎ後詰部隊を向かわせよう。

 それとおぬし、すまぬがもう一つ頼まれてくれるか?」

 

「はっ、勿論でございます‼︎」

 

「うむ。

 おぬしは北方の警戒を行っている馬元義にこの状況を報せるのだ。」

 

 自身の意図を理解した部下が足早に去っていくのを見送ると、程遠志はまた別の将へと指示を出し始める。

 東側への増援へと向かう鄧茂の援護の為、そして何より自分達が生き残る為に。

 

 

 

「...おっ、へへ。

 兄者達もやってるぜ。」

 

 張飛の言葉に無名と天の助が彼の視線の先を見れば、劉備、関羽に率いられた主軍もまた黄巾党の防衛線を攻略しようとしていた。

 彼らもまた鄧茂を討ち取り、韓忠や馬元義ら黄巾党を撃退してこの場に辿り着いたのだが、反対側から進軍する事になっていた劉備達の姿が見えた事に、作戦が順調に進んでいる事を実感する。

 

「だが、あの門を破るのは多少なりとも時間が掛かるだろう...。

 どうする?」

 

「俺達だけで突っ込むには、ちょいと厳しいか...。」

 

 無名からの指摘に張飛は眉根を寄せ、思案する。

 彼らの視線の先はそのまま黄巾党本陣へと開けた道が繋がっており、西側と違い物理的な障壁は存在しない。

 故に、劉備達が正門を破ろうとしている間に自分達がこのまま突入する、という選択を取る事自体は不可能ではないのだ。

 しかしながら、自分達はただでさえ主軍より少ない人数で進軍してきた上に、村を襲っていた韓忠達、そしてそこからの増援に次ぐ増援を乗り越えてきている故に、兵達は明らかに疲弊している。

 敵本陣が視界に入った事も相まって士気は確かに高く、自身と無名の存在から押し切る事は可能だとも思えるが、それはあくまで更なる損耗_即ち義勇兵達の死傷を配慮しない選択だ。

 自分達が門の内側から開こうにも、敵本陣の中を突っ切るのは流石に現実的とは思えない。

 兵の回復と併せて一度ここに待機し、門を破る迄の間敵の退路を塞ぐ選択が賢明か_張飛が決断しようとした時だった。

 

「...! 門が開くぞ‼︎」

 

「奴ら、打って出るつもりかよ‼︎」

 

 何と、主軍が破ろうとしていた門が徐に開き始めたのだ。

 ここから考えられる可能性として、敵が逆に打って出る事で東西の包囲網を突破、多少の損害は覚悟の上で程遠志ら主要人物だけでも脱出を狙うというのが考えられる。

 目的を敵の打倒から逃走に絞った場合、その勢いたるや侮り難い。

 劉備達もまた同様の可能性に行き着いたのか、東西の義勇軍全体に緊張が走るが。

 

「ようこそおいで下さいました。

 皆様どうぞ、いらっしゃっいませ‼︎」

 

(何してんだ、アイツーー‼︎‼︎)

 

 中から現れたのは、何故か現代で言う所のデパートの店員の様な制服を身に纏ったバカだった。

 

「ははっ、こちらへ来てしまったか!

 翼徳と一緒に、東側を頼みたかったんだがな。」

 

「だが、これは僥倖。

 兄者、天の助、参ろうぞ‼︎」

 

「...俺達も行くか...。」

 

「ああ...。」

 

 何故敵陣内から彼が現れたのか、黄巾党は気付かなかったのか、或いは気付いて尚何も思わなかったのか_様々な疑問が浮かぶが好機である事は間違いなく、張飛と無名もまた兵を進める。

 

「くっ、門が⁉︎

 おのれ、寄せ集め共が...!」

 

「いや、お前らがアイツ止めないからだろ⁉︎」

 

 遂に義勇軍と相見えた程遠志。

 彼らの門が開かれたのは内側からであり、その理由を考えれば過失はどう考えても黄巾党側にある筈なのだが、彼は門が『破られた』と信じて疑わない様だ。

 

「我らは、圧政に苦しむ者を救わんと起った!

 天意は我らにあり! 蒼天の獣は滅ぶべし!」

 

「どうにも分からないのだが...。

 お前達が救おうと言うのは、誰なんだ?

 こうして住む所を襲われ、救われる者がいるのか?

 俺には今、泣き声しか聞こえないんだ。」

 

「天意も大局も解さぬ愚か者め!

 我らの邪魔をするならば、ここで果てよ!」

 

 義兄の正論に対する程遠志の言い分に、関羽はいっそ憐れみすら感じ始めていた。

 元は宗教団体である事を考えれば、今日黄巾党として各地で蜂起している者達の中においても教えに対する温度差が有るだろう事は想像に難くない。

 この程遠志の様に、大賢良師・張角の教えを敬虔に信じ世を憂えて起った者もいれば、今回の戦いの最中に東側の村を襲っていた様なただ力を振り翳したい者も入り混じっているのだろう。

 事実、少なくとも関羽達がかつて共に戦った者達は、自らが暴力を振るう側に回るとは思えなかった。

 無論、力を持ってしまったが為に、高潔だった心が変わり果ててしまうという事も有り得るだろう。

 だが残念な事に、黄巾党は内部での自浄作用が働かず、かつての自分達と同じ様な者達を更に苦しめ、徒に混乱を齎す暴徒に堕っしてしまった。

 

「天が何と言っているのかは知らない。

 俺は、泣いている人を助ける...、それだけだ。」

 

「よくぞ言われた、兄者。

 さらばこの関雲長、兄者の志の為、一度は協働した者を討たん‼︎

 共に行こうぞ、天の助‼︎‼︎」

 

「えっ、天の助...?」

 

「おうよ、プルプル真拳奥義『ところてんトリートメント』‼︎‼︎」

 

 劉備の意志を支える刃として一歩前に立ち、程遠志と対した関羽。

 しかしそこから、意外な人物に声が掛かった事に彼ら二人以外は困惑するが、そんな周囲の疑問を尻目に天の助が液体へと姿を変え、それは何と関羽の長い髯と同化してしまった。

 

「ぬお⁉︎

 こ、この変幻の技...、まさか貴様が大賢良師様の言っていた...!」

 

「唸れ、我が義の刃よ‼︎‼︎」

 

「ぐがっ...⁉︎ 力及ばず...か。」

 

 天の助が一体化し、驚異的な長さへと変化した関羽の髯が程遠志の四肢を絡め取り、その自由を奪ってしまった。

 ただでさえこの戦場随一の猛者である関羽を相手に、自由が奪われた状態_程遠志が勝てる道理はなく、彼の血が黄色の布を赤く染め上げた。

 かくして、劉備率いる義勇軍の初陣は彼らの完勝という結果に終わったのである。

 

「ふう...、終わったな。

 皆、よくやってくれた! 俺達の初陣は、大勝利だ!」

 

「見事な活躍だった、無名、天の助。

 我らの元に参じてくれた事、改めて礼を言う。」

 

 幽州の地に響く勝鬨。

 それは、劉玄徳という英雄が天下へと躍り出た事に対する天からの祝福なのかもしれない。

 

 

 

「いや待て待て待て、その髯どうなってんだよ‼︎⁉︎

 兄者も何流してんだよ⁉︎

 これ、俺がおかしいのか‼︎⁉︎」




 まさかの誰得な程遠志視点。
 今後、無双武将以外のキャラクターの口調や性格は、ゲーム本編の台詞を膨らませる形で描写していこうと思います。
 その為、皆様の中のイメージと剥離が発生する可能性がございますが、あくまで拙作独自のキャラ付けと認識いただければ幸いです。
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