ありふれてない呪言師は世界最悪   作:オワタ+式=サン

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絶望へ垂らす希望の糸

 

 

時は遡り、ハジメとシュウヤが奈落へ落下し、死亡報告がされた3日後。

 

香織と雫は、気絶した様に眠っていたが、不思議な香りが鼻をくすぐると共にゆっくりと目を覚ました。

 

「…あれ?ここは…」

 

「ん…あれ、雫ちゃんもベッドに居る…なんで?」

 

ぼんやりとする二人へ、メイドが深々と頭を下げた。

 

「香織様、雫様、よくぞお目覚めになりました。私、このままお二人が眠ったまま弱って行くのかと不安で不安で…」

 

よよよ…と泣くメイドは顔を上げて二人を見つめる。

 

「…貴女は…?」

 

「あれ、そうだ…南雲くん…南雲くんはどこ?」

 

「お二人とも、目覚めたばかりで状況が掴めていないご様子…私が説明致しましょう」

 

そう言うとメイドはぴっと人差し指を立てながら、淡々と話し始める。

 

「南雲ハジメ、影野シュウヤ二名は、オルクス大迷宮の転移トラップにより転移した後、ベヒモスと共に落下。死亡したものとして報告されています」

 

「いやっ!そんなの嘘よ!私達を傷付ける為の嘘でしょ!!」

 

香織は絶叫する様に声を荒げ、メイドを睨みつける。

 

「…ぁ…」

 

そして、雫は落下して行くシュウヤの姿がフラッシュバックし、口元を抑えた。

 

そんな二人に対して、特に何を思う訳でもなく、メイドは事実を告げる。

 

「いえいえ、嘘ではございません。現にメルド団長より正式な報告書として上がっております故…」

 

「ちがう!死んでなんかない!絶対、そんなことない!どうして、そんな酷いこと言うの!!」

 

烈火の如く怒りを露わにする香織に対して、雫は気持ち悪さを抑えながらも、メイドに対して違和感を覚えた

 

(…このメイドさんは、死亡したという報告があったと言っているだけ、なのに何?この違和感と…目の前の相手に対する不快感は…)

 

「香織様、私はさっきから言っている通り、その報告があったと申しているだけです。それに…そもそも、南雲ハジメと影野シュウヤは死んでませんし」

 

「…ぇ?」

 

「…は?」

 

さらりと告げられた言葉に、二人は硬直する。

 

「おやおや?雫様は私の正体、分かるかと思いましたのに」

 

そう言うと、メイドは顔に手をかけ、ビリビリと己の皮膚を剥がした。

そして剥がした下から出てきたのは、シュウヤの専属メイドの顔だった。

 

「…っ!貴女は!?」

 

「あれ?やっと気付きました?鈍いですねぇ、雫様」

 

メイドはクスクスと笑う

 

「えっ…南雲くんも影野くんも…死んでない?」

 

「はい、その通りです。ま、私ちょーーっとだけ魔法が使えまして、失せ物探しの魔法なのですが…シュウヤ様に付けてましてね。死んでいたら反応しないのにしてるのです。それならば同時に南雲ハジメも生きているかと」

 

「…なんで影野にそんな魔法を?」

 

鋭く睨む雫に対して、メイドはごく普通に答えた。

 

「シュウヤ様、気付いたら何処かに行ってしまうので、目印にと…」

 

「…あぁ、そういう事」

 

雫も同じ経験が何度かある為にその理由に納得する。

 

「っ…教えて!南雲くんはどこに…!」

 

「そんなの、簡単ではありませんか?奈落の底ですよ」

 

「…やっぱり、そうなんだ…」

 

「はい、それではお伝えしたので、私はこれにて」

 

そう言って、メイドは部屋を出て行く。

 

「雫ちゃん…お願いがあるの」

 

「なに?」

 

「私、もっと強くなりたい…それで、あんな状況でも今度は守れるくらい強くなって、自分の目で確かめる。南雲くんのこと…だから

…力を貸してください」

 

「……」

 

「それに、雫ちゃんも…私と一緒…でしょ?影野くんの事守れるくらい強くなりたい…そうでしょ?」

 

「…えぇ、あのメイドの言葉を信じるなら、影野は生きてる…なら、助けに行くだけよ…お互い、頑張りましょう」

 

「うん!」

 

 

 

そんな二人の言葉を、メイドは扉越しに聞いていた。

 

「…やれやれですねぇ…ここで折れたままでは困るんですよ」

 

そう言うと、メイドの姿は黒煙で覆われる。

 

「強くなって貰わないと困りますよ…我が主の依代…その候補なのですし」

 

その姿は、黒髪の少女に猫耳と尻尾を二尾付けたような見た目だった。

 

「まぁ、この国にもう用は無くなったので良いんですけど…偽ってメイド続けて来ましたけど、やっと解放ですねぇ…あーしんどかった!」

 

伸びと背伸びをした後、少女はぽつりと言葉を零す。

 

「『ここに少女は居なかった、メイドの数は、減ってはいない』」

 

魔力が乗り、染み渡る様に広がって行く己の声にうんうんと頷き、少女は窓から身を乗り出し、城から飛び降りた。

 

警備している兵士さえ、真横を素通りする少女に気付かない。

 

「さーてさて、後は先回り先回り!お次はどんな姿に成ろうかなぁ!」

 

ケラケラと笑う少女の声は、誰の耳にも届かない。

 

この次の日、メイドが一人居なくなった事

…そして、宝物庫から厄災を封じた杖が何故か無くなっている事が発覚した。

 

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