ありふれてない呪言師は世界最悪 作:オワタ+式=サン
ハジメとシュウヤは、生き残る為にどうすれば良いかを考えた。
「じゃお互いにやれる事を考えるか。僕は呪言に新しいのが追加されて、恐らく無条件に相手を毒状態に出来る技能を得てる」
「…僕には錬成しかないけど…少しづつ範囲を広めて行けば…あの熊の魔物を落とし穴に落とす…とか、出来るかもしれない」
ハジメの言葉にシュウヤは疑問を口にする
「なぁ、ハジメ、魔物って食えるのか?」
「…食べれはするよ、問題は食べたら肉体が崩壊して死ぬって事だけど」
「…やっばぁ…ん?待てよ…ハジメ、魔物の肉を安全に食える方法、あるぞ!」
「えっ?食べれるの?」
シュウヤのその言葉に、ハジメは首を傾げた。
「この水だよ、これは怪我を治してくれる水なんだろ?それなら魔物の肉を食ってそのままこの水を飲めば肉体の破壊と再生が拮抗して生き残れそうじゃないか?」
「…つまり強引に魔物の肉を食うって事だね…でも、結局は何か食べないとこのまま餓死するだけだし…うん…どうせ死ぬなら飢えて死ぬより、何かを食べて死んだ方がマシだ…!」
「よし、早速魔物を取ろう!」
行くか、と決めたシュウヤへ、ハジメは冷静に意見する
「シュウヤ、入ってきた場所にはあの熊の魔物が居るはずだから、別方向に向けて進んで行くしかないよ」
「…それもそうだったな」
その日から二日間、ハジメは錬成による掘削と、シュウヤはハジメが急拵えで作った簡易スコップで別の道を作る為に壁を掘り進め、同時に今の場を拠点とする為に動きやすいように広くする為に掘削した。
同時にいつの間にか杖もシュウヤの側にきた。どうやら杖の方も最初は入れる大きさではなかったらしい
やっと外へと繋がる道が通った時は、二人してやったー!と叫んだものだ。
その声を聞いてウサギの魔物が現れ、二人を蹴り技で攻撃して来た為、急いで来た道を戻る事になったが。
「可愛いウサギだと思ったのに…」
「ウサギの脚力は舐めてはいけないぞ…確か唯一直角で曲がれるはずだし」
ハジメは可愛いウサギから放たれる殺意マシマシの蹴りに怯え、シュウヤは冷静にウサギの脚力と、直角ターンでの追跡に対してコメントする。
「ウサギって凄いんだなぁ…」
「しかも一匹なら何とかなりそうだ。ハジメ、最初の獲物はウサギにしよう、多分まだ食える」
こうして、二人は最初の獲物をウサギにする事に決めた。
その後、再び外へと出れば、ハジメとシュウヤは周りを警戒しつつコツコツと落としな穴を作り、底の方にはハジメが錬成でトゲを作り、落とし穴を塞ぐ様に錬成で薄い板の様な土で覆う。
「…よし、後は罠にかかるのを待つだけだね」
「ハジメ居なかったら餓死してたな、助かる」
「僕も、錬成師って天職に自信持てたかも…」
そんな事を話しながら、二人は空腹を訴える腹を無視して拠点に戻った。
そして、一日経った。
二人は罠に何がかかっているかな、と様子を見に行く事にした。
落とし穴は蓋代わりの土が壊れており、何かが落とし穴に落ちたのは明確だ。
穴の底を覗けば、底には足が折れたのかヨタヨタと歩くウサギの魔物と、棘が首に刺さった狼の魔物が二匹づついた。
「よし、ここからは呪言師出番だな…《その身を蝕め》」
ウサギと狼を見つめて放ったその呪いは即座に発動した。
「ギッ…ギィィ!!」
「ガフッ…ガァァ…!」
ウサギと狼は口の端から泡を吹きながらのたうち回ると、身体をビクンビクンと震わせる。
そして、一分も経たないうちにぐったりと脱力しあっけなく絶命した。
「「…怖っ」」
目の前で起きた事に、ハジメとシュウヤは声を揃えた。
「…ねぇ、これ食べたら僕らもそうなるって訳じゃないよね?」
「呪いだから大丈夫だろ、回収しようぜ」
ハジメは不安に思いながらも、錬成を使いウサギと狼の遺体を押し上げ、回収する。
同時に、生肉を食べる気もないので、近くの森から枝を回収する。
そして拠点に戻った二人は、火起こしをする事にした。
「そう言えば、シュウヤって魔法の適性はあったの?」
「聞いて驚け、少しはあった」
「あったの!?」
「だから火おこしは任せろ…」
そう言ってバッと手を突き出したシュウヤは、ハジメに振り向いて質問する。
「…所で火種の呪文と魔法陣ってなんだっけ?」
「…教えるね」
その後、ハジメから教わったシュウヤは無事に火起こしに成功する。
同時に、しっかりと煙の通り道は作っていた為、酸欠の心配もない。
「よし、ハジメ、やりたかったアレ、やるぞ」
「や、やるんだね…!」
毛皮などを苦労して剥いだ狼とウサギの肉を持ちながら、二人は目を合わせる
「せーの…」
「「炎へ、ぽーーん!!!」」
同時に投擲されるウサギと狼の肉。
肉の焼ける良い匂いに、二人の腹は空腹を訴える様に鳴り始める。
そして、焼き終わった肉に、二人はかぶり付いた。
久々の食事、しかもただ肉を焼いた為なので獣臭く、味も現代料理と比べたら最悪だ。
しかし、久しぶりの食事なのだ、残しはしないと食べ尽くした。
「ふー…食った食った…がっ!?」
「久しぶりの食事…うっっ!?」
二人の全身を激しい痛みが襲った。まるで体の内側から何かに侵食されているようなおぞましい感覚。その痛みは、時間が経てば経つほど激しくなる。
「い、いぞいで…飲まないと死ぬっ!」
「う…ぐぁぁ…!!」
二人は気絶しそうな程の激痛を耐えながら、水溜りに溜まった神水を飲んだ。
直ちに神水が効果を発揮し痛みが引いていくが、しばらくすると再び激痛が襲う。
同時に身体からドクンドクン…と脈打つ様な音が聞こえ始め、同時に全身からミシッメキッという音がし始めた。
しかし、即座に神水が効果を発揮し、痛みと異常を治す。だがまた痛みと身体の軋みが襲う。
そのループへと二人はハマった。
絶叫を上げ、のたうち回る。神水の効果により気絶する事さえ出来ずに永遠に続くかと思われた。
すると、二人の体に変化が現れ始めた。
まず髪から色が抜け落ちてゆく。許容量を超えた痛みのせいか、それとも別の原因か、日本人特有の黒髪がどんどん白くなってゆく。
次いで、筋肉や骨格が徐々に太くなり、体の内側に薄らと赤黒い線が幾本か浮き出始める。
超回復という現象がある。筋トレなどにより断裂した筋肉が修復されるとき僅かに肥大して治るという現象だ。骨なども同じく折れたりすると修復時に強度を増すらしい。今、二人の体に起こっている異常事態も同じだ。
やがて、永遠に続くと思われた痛みは収まりら二人はぐったりと倒れ込んだ。その頭髪は真っ白に染まっており、服の下には赤黒い線が数本ほど走っている。まるで魔物と同じ様だ。
「はー…はー…魔物肉やべぇ…こんなの毎回食ってたら死ぬ」
「な、何とか…生き残れた…?」
起き上がった二人は、自分の体を確認する。
「おっ、怪我した所が治ってる」
「…流石になくなった左腕は戻らないみたい」
「部位の欠損治せる程じゃないかぁ…それにしても身体が軽いな?今ならフルマラソン走れそうな気がする」
「…うわっ!?シュウヤ見てよこれ」
「悪趣味なタトゥーか?…いや、魔物に走ってた線と同じだな…僕らは魔物になったのか???」
「分かんない…でも前よりも強くなった気がする」
「ステータス変わってたりしないか?」
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影野 終夜 17歳 男 レベル:12
天職:呪言師
筋力:255
体力:255
耐性:255
敏捷:500
魔力:500
魔耐:500
技能:呪言[+力抜きの呪言][+足もつれの呪言][+恐怖の呪言][+蝕毒の呪言]・報復[+魔の返し][+物理の返し][+痛みの報復]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・言語理解
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「めっちゃ強いじゃん…」
「シュウヤ、僕も強くなってたよ」
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:12
天職:錬成師
筋力:200
体力:300
耐性:200
敏捷:400
魔力:350
魔耐:350
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・言語理解
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「おおー…あの地獄を乗り越えたらこうなる訳か」
「なんか知らない技能を得てるね…」
「雷を纏えるとかカッコ良さそう」
その後、新たに得た技能を試そうとして纏雷で放電したり、天歩で壁に激突したりと二人で試行錯誤する事になったり、激突した壁から見知らぬ鉱石が出てきたりと発見が多かった。
ハジメとシュウヤは、奈落の底という絶望的な状況の中で、楽しく過ごせる程度にはメンタルが回復した。