ありふれてない呪言師は世界最悪   作:オワタ+式=サン

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封じられし災厄

 

気絶したシュウヤは、目を覚ますと薄暗い何処かに居た。

 

『あぁ、嘆かわしい。こんな者が所有者など…命を吸い上げようにも上手くいかぬ…異界の魂というのは面倒なものよ』

 

そんな空間に、鈴の音の様な声が響く

辺りを見渡しても、声の主は居ない

 

『なんじゃ?…死の淵でこちらに来たか、全く…異界の魂はこんなにも面倒なモノなのかのぅ…』

 

「お前は誰だ…?そしてここは何処だ?」

 

『ふん、生意気な小僧め…仮にも所有者。その質問にだけは答えてやる。ここは我が封印された閉じた世界じゃ、そして我はその封じられた者…

 

…む?この力…なるほどのぅ…こほん…そうじゃな…小僧、我の願いを叶えると言うのなら、その身に宿る力…引き出してやれん事もない』

 

唐突な交渉に、シュウヤも思わず身構える。

 

『そんなに警戒せんでもいいじゃろう、我に今出来るのは声を届かせる事と、小僧の天職に対して干渉が出来るだけじゃ』

 

「…って言う事は、貴方はこの呪言師の天職について何かを知ってるって事ですか?」

 

シュウヤの質問に、声の主は呆れた声音で答えた。

 

『当たり前じゃろう、我の天職は呪術師じゃ、小僧の呪言師の真似事くらいは出来る』

 

「それでも真似事なのか…」

 

『当たり前じゃ、呪術師はその全てを使い呪いを振り撒く者。呪言師は言葉で世界を呪う者じゃ。何でも80点を出せるモノと一点特化の100点を比べるでないわ!!』

 

「はい、すいません」

 

怒気を感じるその声音に、シュウヤも反射的に謝罪する。

 

『小僧はマヌケなのか聡明なのか分からんのぅ…まぁ良い

 我から出す条件はたったの二つじゃ

 

 ひとつ、小僧の持つその杖に定期的に魔力を注ぎ込むのじゃ。気絶する程注げとは言わぬ、毎日コツコツと注げ…そうすれば何れは小僧に対して我がより良く力を引き出せる様になる

 

 ふたつ、我に合う肉体を探し出すのじゃ。期限は設けぬ、この我に似合う肉体など、早々ないからのぅ

 

このふたつを果たすと約束せよ。そうすれば、小僧の天職…その力を今は…ほんの少しは引き出す事が出来る』

 

「…あの…もしかして杖を持った者の魔力を吸うってのは…」

 

『我が吸っておる、代わりにやっとるじゃろ。杖を手元に戻してるのを…アレ意外と大変なんじゃぞ?それを小僧、お主は便利だからと杖を投擲の武器に変えるなど…正気か貴様??』

 

「正気だし合理的な攻撃方法でした。ご苦労かけてすいません」

 

『…まぁ謝れば良いわ、謝れば……小僧、この契約を受け入れるか?…あぁ、先に言うが、受け入れぬ場合…死ぬぞ?』

 

死ぬ…その言葉にシュウヤも思わず息を飲んだ。

 

『小僧の命はもう消えかけている…そのまま死なないのは、偶然にも小僧が我の領域に入り込み、我がこうして話している事で引き留めているだけじゃぞ?

 

今は小僧に対して仲間が呼びかけている様じゃが……このまま死ねばどうなるかのぅ?』

 

クックックッ…と声の主は笑う。

声の主の発言から、ハジメはどうやら生きている様だった。

 

「…因みに、その引き出せる力ってのは知れるか?」

 

『む?前向きじゃの、良い事じゃ。引き出せる力は二つになるのぅ

 

 ひとつは《恐怖の呪言》…効いた相手の心を恐怖で支配しその動きを鈍らせる呪言じゃ、発動させるのは簡単じゃぞ《汝、我を恐れよ》これ一つじゃ。ただし小僧の強さが相手を上回っていないのなら不発になるぞ…まぁ今の小僧なら…幼子相手が精々じゃろう。

 

 ふたつは《蝕毒の呪言》…これは簡単じゃの、相手に対して毒で蝕む呪言じゃ、発動させるのはちと難しいがの…相手を見つめて《その身を蝕め》じゃ、相手を見つめずにやれば…小僧の周囲に居る全てを毒で蝕むじゃろうな。我としてはこっちがオススメじゃ、何より我が魂が奪えるからの』

 

「…なるほど…って待ってください魂を奪うってなんですか??」

 

『魂を奪うのが分からんのか?死んだ後に天に登らんとする魂魄を我がひょいと掴んでな、一片も残さずに喰らうのじゃ。これをやると我はパワーアップするんじゃぞ…まぁ、やるにしても杖のある近場しか今は無理じゃがの!』

 

「えぇ…嫌なパワーアップ方法…」

 

『我の時はこれが主流じゃが??』

 

声の主の発言をスルーして、シュウヤは考える、後々強くなれば格下相手であれば無力化が可能な《恐怖の呪言》、条件は少し厳しいものの、毒を付与する《蝕毒の呪言》…ハジメと一緒にこの迷宮の底で生き延びるのならどちらも欲しくなる

 

「ちょっと待ってくれ、呪言の毒は相手が死んだ後も肉体に残るのか?」

 

『阿呆か?肉体に残る訳なかろう…そもそもじゃが、呪言による毒は生物の扱う毒ではない。それ故に普通の治癒魔法では癒せぬ、解呪した上で毒を治癒魔法で抜かねば死ぬまで相手を蝕み続ける毒じゃぞ』

 

どうやら思った以上に厄介な毒らしい

 

「…なら安全に動物を殺して食えるわけか…」

 

『そうなるのぅ…というよりも、肉体に残っておったら我ら呪い師は早々に殲滅されておるわ』

 

「そういう貴方は封じられてる?みたいですけど…」

 

『まぁの!我を恐れて殺しに大勢でやって来たが、結局我を殺す事は出来ずに我の魂魄を肉体から無理やり引き剥がしてこの杖に封じ込め、我が戻らぬ様に肉体も焼かれた程度じゃが』

 

武勇伝の様に嬉々として語る声の主に、シュウヤは答えを告げた

 

「…はぁ、中々壮絶な人生送ってるんですね……分かりました、その約束…二つ目は難しいけど、一つ目だけなら…果たします」

 

『そうかそうか!ならこっちへ来い、我が引き出してやる』

 

そう言うと、紫の火の玉か道を作る様に左右へ等間隔に並ぶ

その先へ進むと、そこにはあの杖に付いていた、赤黒い宝石の様なものが鎮座していた。

 

『さぁ小僧、触れるがいい』

 

声の主に言われるままに、赤黒い宝石に手で触れる

見た目は冷たそうなのに、手から伝わるのは人肌の様な暖かさだった。

 

『これで契約は成された…小僧、期待しているぞ?』

 

その声と共に、シュウヤの意識は闇へと落ちた。

 

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