スタレ世界に転生!?アラスターなりきり人生満喫します   作:黒しゃぶ曜日

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【第五話】今は唯、この出会いに感謝を

 

 

『千早ふる』

 

 

 

空気が変わった。

 

不味い。

まともに喰らえば治療も間に合わず死にかねない。

 

だが、あれを見た瞬間ある事実に気付いた。

自分は必殺技、奥義と言えるものを獲得していないという事実に。

作中のアラスターの再現に意識を割き過ぎていたせいで、

この世界で強敵と渡り合うには火力不足という事実に。

 

私としたことが、未だに心のどこかでこの世界を舐めていたようだ。

ゲームには名すら登場しないモブだからと侮っていたのかもしれない。

適当に喧嘩を売った相手が、まさかこれほどの武芸者だったとは。

 

 

 

『神代へ流るる 黄泉の川』

 

 

 

竜巻と錯覚するほどの、膨大なエネルギーが渦を巻き、彼の双剣に編み込まれていく。

 

 

嗚呼、なんと美しい。

その神業、この目に焼き付け、盗まなくては。

 

全力で受ければあの奥義を防ぐことは可能かもしれない。

しかし、あれを乱暴に弾き返すなど以ての外。

なにより、それではじっくりと見て、感じることができない。

 

つまり、急所からギリギリで逸らし、その一撃を我が身で体感するべきだ。

唯見るだけでなく、その業を敢えて喰らうことで、真の意味で理解できる筈。

 

 

『やっぱお前イカレてんなぁ!取り憑いて早々死のうとしてやがる!!』

 

 

いいや違いますよ、ヴォックス。これは決して自殺願望なんかじゃない。

 

覚悟です。

 

今の私は停滞している。

その壁を破壊し、遥か遠くに輝く一筋の光に向かい歩む為の覚悟。

 

生き延びたいという死への恐怖も、自身を傷つけたいという犠牲の心も打ち砕く。

この覚悟こそ、私が豊穣の忌み物に墜ちず、己を保ち続ける為の支え。

 

相手がこれほどの誠意を魅せてくれると言うのです。

こちらも覚悟を見せなくては不作法というもの。

 

 

お待たせしました、VOX。

 

『待ち望んだ初仕事がこんなに地味とは思わなかったぜぇ!』

 

 

純エネルギー生命体である歳陽は、

エネルギーに関しては唯人には到達不可能である領域まで扱うことができる。

彼に任せるのはエネルギーへの感応性の底上げ。

感覚的に彼の奥義を理解する為にあらゆるリソースを割く。

 

全ては遥かなる未来で、この世界を知る為に、楽しむ為に。

 

 

 

さぁ!来い!!

 

 

 

『からくれなゐに 水くくるとは』

 

 

 

 

三界分かつ二振りの一閃

 

 

 

 

 

彼らの決闘の様子は、ラジオ配信によって仙舟中に放送されていた。

演武典礼では起こりえない、命を掛けた真剣勝負。

長命種でも中々見る機会のない戦いに過去最高の聴取率を記録し、

更に相手が奥義を披露したことで最高潮に達した。

アラスター自身は全く意図していなかったが、この熱気が偶然にもこの戦いを大きく左右する要因となった。

 

数多の注目と様々な感情が、彼に注がれる。

そしてこの放送は歳陽であるヴォックスが取り憑いたマイクを介して発信されたことで、

間接的にとはいえ莫大な量の感情が彼に返信された(・・・・・)

 

つい最近まで自我すら確立していなかった彼だが、

とうとう他の貧弱な歳陽を容易く吸収する程まで一気に成長する。

 

 

『OH YEAH!!満員御礼ってやつだぜぇ!』

 

ヴォックス?

 

『アゲてけよアラスター!!俺たちは一歩進んだぞ!』

 

 

...ええ、魅せてさしあげましょう。

 

 

 

Ah, This Will Be Fun ...(嗚呼、本当に楽しみだ)

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「...まさか避けようともしないとは。どういうつもりだ?」

 

 

彼には眼前で膝をつく挑戦者の選択が理解できなかった。

荒れ狂う風を纏った双刀は、ほとんど棒立ちであった彼に直撃。

辛うじて動脈や内臓を傷つけてはいないが、すぐに治療する必要がある程の重傷である。

 

 

「...これにて勝負は決着した。治療を...」

 

何勘違いしていらっしゃるんです?

 

!?

 

 

ほとんど反射的に彼から距離を取った。

 

笑っている。

何故だ、もう満身創痍の筈なのに。

 

 

いやはや見事な技前でした!

貴方ほどの達人に、ここで巡り会えたことに感謝を!

 

「馬鹿な...」

 

 

我が人生を掛けた技をその身に受けたのだ、。

いくら致命傷を避けたとはいえ...

 

 

「待て、何故致命傷を避けられている?」

 

 

相手はほとんど棒立ちだったのだ。

頭と心臓を狙えば即死する威力、どこを狙っても動脈にまで刃が届く筈。

 

 

よく視えましたので、ギリギリで避けたんですよ。

 

 

術で糸を操り、傷を縫いながら乱れた服を整える彼はどこか興奮している。

新しい玩具を買い与えられた童のような笑みを浮かべて。

 

 

どういうつもりだ、と仰いましたね?お答えしましょう!

 

先へ進む為!

 

貴方のお陰で掴んだのですから、お礼をさせてください!

 

 

「なんだと...?」

 

 

 

 

 

 

 

 

Brace For Radio Silence(沈黙に備えよ)

 

 

 

 

"I'm afraid you've lost your signal.(残念ながら、風は止んでしまったようです!)"

 

 

 

 

 

「...お見事。」

 

 

 

 

 


 

 

 

犯行事件受理簿

 

星歴○○○○年○月○日

 

 

【罪名】

 

・傷害

 

・建造物等損壊罪

 

 

【犯行場所】

○○地区、○○○道場敷地内

 

 

【被害程度】

 

・被害者

 

 全身に切り傷、軽い火傷と打撲

 左腕の骨折

 両耳の鼓膜の破壊と耳内部からの出血

 意識不明

 

 

・加害者

 

 全身に小さな切り傷

 胴と左足に大きな切り傷 

 

 

・建築物

 

 敷地内、稽古場の天井、壁、床が一部炎上、中破

 

 

・道場の他の関係者、敷地外の施設への被害なし

 

 

【被害者】

 

■■■■

 

 

【被疑者】

 

自称【ALASTOR】

 

*本名【■■■】

 

 

【備考】

 

現場に居合わせた道場利用者の証言から、

正式に行われた決闘が徐々に過激化し被害が拡大した可能性あり。

 

 

 

 




フォントいじりとか本当に大変だった。
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