夢過ぎ去りし跡の世界で転生者が生き抜くクトゥルフ神話   作:カーキtrpg

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 ニコニコ動画見てたらクトゥルフ神話を書きたくなって書きました。
 ただクトゥルフ成分は、這いよれニャル子さんがクトゥルフ神話物だと思うなら、ぎりぎりクトゥルフだと感じるくらいしかないと思います。
 TRPG要素に関してはフレーバー程度なので解らなくても問題ありません。
 それとAIを小説の文章校正と推敲に使わせてもらってます。


夢過ぎ去りし跡の世界で転生者が生き抜くクトゥルフ神話 プロローグ

 放課後の教室。既にクラスメイトの姿もなく静寂な空間に一人でいた俺――佐伯田 貞久(さえきだ ひさひで)はスマホをいじりながら何度目かもわからないため息をついた。

 俺が見ているスマホの画面には、TRPGのリプレイ動画が流れている。

 ダイスロールの結果に一喜一憂し、狂気と死の隣り合わせで生を実感するプレイヤーたちの様子が映し出されていた。

 

 「現実にも、これくらいの刺激があればな……」

 

 独り言は、無意識ながらも切実な願いとなって空間に響いた。

 自分の口から出す気のなかった言葉が漏れたのを理解したとき、俺は上の空で動画を見ながら今の生活を振り返る。

 客観的に見れば、俺は恵まれている側だ。裕福な両親、円満な人間関係、淀みのない成績。

 それでも、俺にとってこの生活は退屈だった。

 いや、心の奥では疎んでいると言っても過言ではない。

 この整いすぎた人生は、俺にとって退屈という名の緩やかな処刑台に等しかった。

 

 「いっそ、この動画のように神話生物でも現れたら、面白いだろうにな……」

 

 そんな益体もないことを言う自分がおかしく思えて顔に苦笑を浮かべた、その時だった。

 

 「なら、その願いを叶えてあげる」

 

――息を吞む。

 間違いなく誰もいなかった教室。

 それなのに【ソレ】は確かに俺の隣にいた。

 学生服を着た特徴のない女、が、顔を直視できない。

 目線を向けるたび女の目鼻立ちが万華鏡のように組み換わり、焦点が結べないのだ、脳髄の奥からは本能が危険だと警報を鳴らし続けている。

 精神が悲鳴を上げていた。

 

 「君、退屈なんだろう。なら最高のエンターテイメントに招待してあげる、神と怪物が世界を闊歩する、希望と絶望に満ちた刺激的な世界にね」

 

 体が、動かない。

 まるで石になったように指一本反応しない。

 俺は叫びださないように歯を噛み締めるので必死だった。

 

 「んー?どうしたの、折角私が君のために骨を折ってあげようというのに、その顔は」

 

 女はそう言って俺を嘲笑いながら続ける。

 

 「まあ、安心していいよ、今回の私は本当に善意で提案しているんだ、君が嫌だというならこの話はなし」

 

 その瞬間、何かが切り替わったかのように異様な雰囲気が消え去った。

 体を縛っていた圧力が消え、止まっていた呼吸が戻ってくるのを感じる。

――明らかな異常。

 理性は関わるなと警鐘を鳴らしている。

 それでも俺は恐怖を感じながらも同時に、今までの退屈を打ち壊せそうな存在を前に、抑えきれない歓喜と興奮を感じた。

 

 「お前の言う刺激的な世界とやら、それは、本当に俺の退屈をなくしてくれるのか?」

 

 気づけば、口から漏れ出たのは女の提案に乗り気な自分の心を映し出したかのような言葉だった。

 

 「フフッ、それでこそだね」

 

 女は満足そうに笑い、続ける。

 

 「約束しよう、世界(わが王)は君を飽きさせない。どんな世界かは、君のスマートフォンで流れている動画を見たほうが早いんじゃないかな」

 「……そうか、なら俺はその話に乗る、連れていけ、その刺激的な世界に」

 

 その瞬間、世界が変わった。

 気づいたら俺はすべてが白い空間にいた、影も境界もない、無機質な何もない場所。

 

 「キャラクターの作成を開始してください、なんてね」

 

 悪戯っぽく告げる目の前の女の言葉に少しずつ今までの動揺が収まっていくのを感じた。

 だが、その言葉に俺は眉をひそめた。

 

 「キャラクターの作成だと?」

 「そうだよ、ただ単に君を転生させてあっけなく死なれでもしたらつまらないからね、流行り物に乗っかったのさ」

 

――それに、好きなんだろう?そういうのが(転生チートハーレム)

 

 その言葉に俺は思わず苦笑を浮かべてしまった。

 確かに俺は好んでそういう小説を読み漁っていた。

 しかし真正面から言われてしまうとどうにも居心地が悪い。

 

「チートの内容は君が解りやすい形で渡そう、これからの君はTRPGのキャラ作成のように能力を身に着けられるようになる。他人には見えないキャラクターシートを表示できるようにするからそれを使って自身のことを決めていってくれ」

 

 なるほど、文字通りのキャラクターの作成というわけか、確かに俺はTRPGに慣れているから下手なチートよりは扱いやすいだろう。

 

 「チートの概要はわかった、だが具体的にどんなシステムを使うんだ?TRPGといっても千差万別だろう、ルールブックはあるんだろうな」

 

 ここ(ルールブック)は譲れないところだろう、流石に手探りでキャラ作成なんて御免だ。

 まあ、話の流れからしてクトゥルフの呼び声(COC)だろう、さっきまで見ていた動画がそうだったし、まず間違いない。

 だが、もしかしたらこの女が作ったオリジナルシステムかもしれない、確認は必須だろう。

 

 「君が分かり易い形で渡すと言っただろ、心配しないでも君の好きなものだから、キャラクターシートを見ればすぐにわかるよ。ただ、追加事項(ハウスルール)もあるからそれはキャラクターシートに注釈として載せておくね」

 

 「ただし」

 

 女はそこでいったん言葉を区切り、そして、俺に見せるようにその人差し指を立てる。

 

 「あくまで君のチートは君自身の能力を補正するだけだから、TRPG(ゲーム)のようにダイスを振って何でも解決とはいかない、キャラシ以外で能力が変化しないわけでもない」

 「経験すれば成長するし、努力次第で技能も身に着けられる」

 「つまり……」

 「選択と結果の全ては君次第だ」

――それと、私も君のいく世界に降りるから探し当てたらチートの強化をしてあげる。

 最後にそう言った女は話は終わったと示すように細長い指を鳴らした、その直後、床が、いや空間そのものが、ドロドロの黒いタールのように溶け落ちる。

 重力も、上下左右も消失して俺の体は無限に広がる漆黒の空間に放り出された。

 いつまでも続くと思うような落下を感じながら、しかし、唐突に終わりが訪れた。

       

 視界が真っ白に染まり、激しい圧迫感が体を襲った、肺に冷たい空気が流れ込み、眩い光の中で巨大な影が動くのを感じた。

 

 「おめでとうございます!元気な男の子ですよ。」

 

 俺は本能的に察した。

――生まれたのか。

 医者に体が抱き上げられるのを感じながら、俺は即座に転生特典を確認する。

 念じると目の前に半透明の板が浮かぶ。

 俺はこれからのキャラ作成を考えながらその板を覗くと中身は想像とはまるで違うものだった。

 右上に輝くcp総計という文字。

 キャラのつま先一つまで決めろと言いたげな細かい記入欄。

 有利な特徴と特典の記入欄。

 そして不利な特徴とくせ。

 これは、俺の知っているクトゥルフの呼び声(COC)ではない

 

 「ガープスじゃねえか! 何が動画を見たほうが早いだ、システムが全然違うぞくそ女がぁッ!」

 

 生まれて初めて抱いた殺意の罵倒は、赤ん坊の喉を通ると泣き声にしかならず。

 周囲の人間には誕生の産声にしか聞こえなかった。

 

 

 

 出産を終え、母親と同じ病室のベッドに寝かされた俺は、キャラクターシートの注釈を読み込んでいた。

 『転生者は、生前に所持していたサプリメントおよび参加卓のハウスルールを選択可能』

 最初の一文にそう書かれているの見た現金な俺は怒りを忘れて、期待に胸を膨らませていたのだ。

 しかし、その期待も長くは続かなかった、後に続く規制事項の数々を目にするにつれ、気持ちは徐々に萎えていった。

 チートという話はどこにいったのか、楽をさせる気はないということだ。

 この板によるとどうやらこの世界における異能は魔法か神授、もしくは宇宙パワーだということだ、気や超能力といったものはないので、これらを使って表現するように求められていた。

 そのまま、俺の卓における現代クトゥルフシナリオのルールを持ってきたような感じだが、それなら俺のやることは決まっている、魔術師しかないだろう。

 

 現代が舞台なら素直に銃を使えばいいのでは?生前の卓仲間がそう言ってたのを思い出す。

 俺も《矢よけ(Missile Shield)》を習得できる程の作成した魔術師の攻撃に、呪文ではなく銃を使わせていたのだ、その気持ちは痛いほどわかる。

 (敵には簡単に《矢よけ》を使わせられないから銃でいいとなってしまう)

 勿論そう簡単に銃を使わせないため、基本的に日本をシナリオ舞台としてセッションをするのだが卓の皆はそれでもと、『特殊な背景/武器商人の友達』や自作銃器製造のための技能などにCPを使ってまで銃を使いたがった、キャンペーン物のシナリオをやらず単発のシナリオばかりなのも皆の銃器偏重に拍車をかけた。

 次を考える必要がない以上シナリオの間だけ持てばいいと、キャラクターの後のことなどは知らんと言いたげに皆そろって銃を使ったのだ。

 もちろんそういう遊び方がいけないわけではない、卓の皆もそれを認めていた。

 問題は戦闘では銃ばかりで他の技能や《矢よけ》以外の異能が息をしていないことなのだ。

 そのため、銃を禁止せずに卓独自のハウスルールによってそれ以外の選択肢を取らせようとしたのだ。

 その調整の結果、戦闘においてはまさに大魔術師時代が到来したといっても過言ではないバランスの変化が起きた。 

 この結果俺が遊んでいた身内卓における戦闘はこの一言に集約されるようになった、『魔術師にあらずんば探索者()にあらず』だ。

 

 そして魔術師の戦闘能力を際限なく高められるこのルールは、今の俺には救いだった。

 TRPGでは、信用できる数人のPL(プレイヤー)と共にシナリオを回せるが、現実では仲間がいる保証はない。

 一人で事件に立ち向かうなら、選択肢は一つだ。捜査や交渉に特化した探索者よりも、戦闘に優れた探索者を作るべきだろう。

 

「……構成は、もう決まっている」

 

転生前に幾度となく繰り返した作業だ。手足は満足に動かないが、念じるだけで半透明のシートに数値が刻まれていく。そうして最後まで記入を終えたその時。

 

「……あ」

 

 直後、脳内に凄まじい情報の洪水が押し寄せてきた。

 頭蓋骨が内側から破裂するような激痛。自我が摩耗し、かき消されそうになるほどの精神攪乱。

 俺はベビーベッドのシーツを掴み、必死に耐えた。

 永遠とも思える苦痛の果てに――不意に、すべての負荷が消え去った。

 

 「あう、あ……」

 

 口から漏れたのは赤ん坊の情けない声だったが、口角は自然と吊り上がっていた。脳内に刻み込まれた知識、全身の細胞に浸透した、超人的な技能の感覚。掌の中に溢れるような全能感が、確かにそこにあった。

 

 これなら、いける。

 

 俺は、これからの神話的恐怖が巻き起こすだろう事件に対する覚悟を悦びとともに決めた。

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