【2年生編開始】新入生のみなさん!よう実ラジオのお時間です!   作:やさかみ

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今日は書く時間もないのでこれだけです。おまけもストックもないので。


知識相談

 自分はまた彼女の部屋へと足を踏み入れていた。

 部屋に入れば鼻に入ってくる香り、女の子の部屋と言えばで男が想像するような香り。二度目ではあるのだが、なぜかすごく新鮮に感じる。

 この部屋に来るまでに色々考えた。彼女になんて言うべきか。なんと言い出すべきか。

 清隆の時は向こうからある程度の確信を持って自分にあるチグハグさを指摘してきた。だからこそ、迷うことなく言うこともできた。

 しかし、今回自分は彼女に対して打ち明ける側にある。彼女が相談して欲しいと言った側だが、清隆の時とは状況が似ているようで違う。

 

「……」

「お茶コーヒーココア紅茶があるけど、どれがいい?」

「……紅茶」

「はーい」

 

 一之瀬は紅茶を淹れに行く。別にどれでも良かったのだが、まだ1番時間がかかりそうな紅茶を選択する。と言っても、お茶以外は大した違いがないだろうが。ティーパックかインスタントだろうし。

 

 どこまで明かすべきか。今からでも断るべきか、流石にそれはダメか。なら違う悩みを打ち明けるか、しかし彼女に隠し切れるか。

 清隆にすら明かしていない原作知識のことをそのまま明かすことはまずない。ならなんらかの知識があることを清隆に対して行ったことと同じように明かすか。

 しかし、それをすれば彼女にこれまでの自分の行動の種が割れ、この関係が終わってしまうのかもしれない。……いや、そもそも原作知識があったから生まれた今の関係そのものが、自分の思考を囚われさせているのではないだろうか。

 自分は、どうやって彼女に

 

「はい。紅茶とバームクーヘンだよ」

 

 しかし、思考の途中で彼女が机に紅茶と茶菓子をおき、彼女も座る。

 

「……」

「……その、言いにくいなら、まず飲まない?」

「あ、うん」

 

 しかし、悩んでいたのを彼女は察したのか、さきに紅茶とバームクーヘンを食べることとなる。あまりマナーも考えられず、普通にカップの取手の穴に指を入れ込む。

 この関係そのものが原作知識への囚われを発生させているのか。ならばこの関係を終えさせれば囚われから脱せれるのか。わざわざそんなことをしてまで囚われから脱する必要はあるのか。

 囚われていてもなんやかんやあって楽しくやれている。自分自身、囚われていること自体は問題では……どうなのだらうか。薬物依存よりはマシかもしれないが、そもそも何かに依存すること自体があまり良いことではない。

 それに前世と今世の記憶について。前世の自分が具体的にどんな場所でどんな人と関わりどんな名を持っていたかの記憶はない。だからこそ、異なる記憶が今の佐原 嶺二の記憶と混同されている。

 自分の玩具箱に他人が名前シールを貼っていない玩具を入れるようなもの。確実にこの世界の記憶とわかるものもあるが、全てではない。

 更に言えば、今の自分は前世なのか今世なのか。

 

 ……気づけば紅茶もバームクーヘンも食べ終わってしまった。

 

「あー……おかわり、いる?」

「……いや、いい」

 

 おかわりまで認めてしまえば、おそらくまた無限の思考の海に潜ろうとしてしまうだろう。いい加減にけりをつけないといけない。一度に原作知識について、そして前世と今世のことについて話すのは自分にとっても彼女にとってもあまりに難しい。

 清隆相手ならば気にすることなく言えるのだが。

 

「……帆波さん」

「うん」

「ごめん」

「……え?」

「今まで、嘘ついてた」

 

 どちらにせよ、原作知識を基に築かれたこの関係のままに相談をするのはなにか違う気がする。というか相談の内容的にはまず謝っておかなければいけないことがある。その後がどうなるかはわからない。相談したくなくなるほどに嫌われるかもしれないが。

 

「嘘?それって」

「色々。これまで、自分がSシステムのことについて調査して特定したように見せてたこととか。あれ、自分が見つけたわけじゃなくて、元から知ってたのを調べ直してそれらしく教えただけ。過去問もそう」

「そ、そうだったんだ。でも、私はそれに助けられたんだし、謝るほどじゃないよ。それに、勝手に勘違いしちゃってたのは私で、嶺二くんは自分で見つけたなんて一言も言ってなかったし」

 

 帆波さんは笑って自分の告白を流した。彼女自身は自分があの情報をどうやって掴んだのかを重要視していないのだろう。だが、問題は次なのだ。

 

「帆波さんに友達になってとお願いした日の、生徒会には入れなかったことの相談の時にも嘘ついてたし、プールの後にだって嘘をついてた。いや、嘘はついてないけど意図的に黙ってたことがある」

「……」

 

 彼女は少し考え、そしてその二つの共通点に思い至ったらしい。そう、両方とも、彼女の過去に食い込む話なのだ。そこに関して自分に黙秘があった。

 彼女の信頼が大きく揺らぐかもしれないこと。

 

「自分は、帆波さんに告白される前から帆波さんが何をしたか、なぜしたかも知ってた。帆波さんにとってどれほどのものなのかも」

「!!……」

「その上で黙って、プールの後の告白で初めて知ったように振る舞ってたし、意図的に知らない風を演じてた」

「……なんで知ってたの?」

 

 帆波さんは衝撃を受け、何かを言いそうになったが飲み込んだようで冷静に自分へ問う。

 

「……自分は色々知ってた。Sシステムのことも、須藤暴行事件が起きることも、無人島でCクラスがスパイを送ることも。本当に色々。そのうちの一つが帆波さんの過去。そして、それらを知ってる理由は……」

 

 知ってる理由をどう言えばよいか分からず停止してしまう。清隆にすら言っていない内容。そのまま話すには他人にとっては少し非現実的がすぎる。

 

「……言えない?……もしかして、それが清隆くんに相談したかったことに関することなのかな」

「うん……ごめん」

「あ、謝らなくていいよ?相談して欲しいって無理を言ったのは私だし」

「それもあるし、騙してたことも」

「……あー……確かにびっくりしたよ?でも、怒ってないし不快にもなってないから」

「……下手したら絶交される気でいた」

「えぇ!?そんなに?確かに、人を騙すことはあまり良くないけど、嶺二くんなりに考えてくれてた結果でしょ?多分、当時の私が嶺二くんに知られてるって知ったら結構動転してたと思うし。それに、今教えられて色々納得することも多かったし、絶交なんてしないから安心して?」

 

 やはり彼女は優しい。仮に、彼女ならば自分が事実を述べたとしても信じてくれるだろう。しかし、だからこそ言ってよいものか。

 

「そっか、ありがとう帆波さん……それで、相談のことなんだけど」

「うん、なにかな」

「抽象的でも、いいかな」

「うん。いいよ」

「色々なことを知りすぎて、その知識が有用だけど依存しちゃったらどうしたらいいかな。」

「……うーん」

 

 帆波さんは頭に手を当てて考えている。抽象的すぎただろうか。例えをあげたほうが良いだろうか、ゲームの攻略法を知りすぎてそれ無しではゲームをできなくなったとか……帆波さんゲームしないんだった。他に良い例え方はないだろうか……例えという話なら本当のことを言っても良いのではないだろうか。

 

「例えば、自分がいないこの世界を舞台とした物語があったとして、自分が読んだ結果、この世界の色んなことを知れたけど知識に囚われたり、とか?」

「うーん。現実感がない話だね。でも、うーん」

「例えだから」

 

 彼女の現実感がない話というのに内心同意する。自分が今こんな状態にいるから強制的に信じ込まされているが、明らかに異質だろう。異能バトルモノの世界ならそういう能力かで済むのだが、この世界は知能で成り立つ世界。

 

「依存やめちゃえば?なんて簡単にできたら悩んでないよね。うーん、もし、私なら……話すかな。他の人のことも物語の人物みたいに見えちゃうかもしれないけど、実際に話して向き合ったら案外友達に……ってこれは例えにより過ぎてるか。うーん」

 

 帆波さんは迷走しているようで、あーでもないこーでもないとうーんと悩んでいる。

 

「……やっぱり、私は他の人に話しちゃうかな。私一人だけ知ってたら囚われちゃうかもしれないけど、積極的に他の人と共有したらなんとかなるかもしれないし。って今がそうか。うーん。……ごめんね?私が相談してって言ったのにこんなので」

「別に大丈夫。参考にもなったし……話す、か……」

 

 自分がこれまでに色々知っていることを話したのは清隆 生徒会長 そして帆波さん。この3人のみである。もっと多くの人に明かせば自分は囚われなくなるのだろうか……そうなるビジョンが見えない。では、話をして友達になる。……友達の定義はなんなのだろうか。

 清隆と同じようなことを考えてしまう。清隆は友達である。神崎も友達である。須藤も……まぁ友達である。では、須藤とかよりも親しくしている帆波さんは友達……なのだろうか。

 

「帆波さん。自分たちは友達なのかな」

「え?そうでありたいとは思ってるし、私はそう思ってるけど、嶺二くんはどうなのかな」

「自分は……よく分からない。清隆とか神崎相手には友達って言い切れるけど。帆波さんと親しくないってことはないんだけど、少なくとも須藤よりは親しくしてるし」

「うーん、やっぱり性別が違うとそこらへんも難しくなるのかな……嶺二くん、思い切って名前を呼ぶ時さんをはずしてみない?帆波ってさ。その、嶺二?」

「……帆波?」

「……なんか恥ずかしいね」

「そだね。やめとこう」

「うん」




これからは余裕ができない限り一日一本投稿かなぁ。そもそも明日投稿できるかなぁ

 作者の雑談コーナー

主人公は前世と今世の境界がわからなくなっています。人格も前世か今世かよくわからなくなっています。
 その中でも、明らかにこの世界の中ではあり得ない原作知識というもの明確な前世の知識に対して依存を見せたのです。
 本人は気づいていませんが今世では前世の記憶が混じるまでラノベなんて読んだことはないです。
 確実に今世と言える記憶もありますが、明確に前世と断言できる記憶はそれしかありません。もっとも、今世と前世の違いなどから探せばありますが、1番印象として強い前世の記憶はそれです。

おまけではどのルートが好き?

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