【2年生編開始】新入生のみなさん!よう実ラジオのお時間です! 作:やさかみ
今日はこれでおわりー
よう実ラジオ33
自分の先に自分がいる。おそらく、それは佐原嶺二なのだろう。前世の自分ではなく、今世の僕。
塞ぎ込んでいる彼へと手を伸ばすが、触れない。大きな見えない壁がそこにはある。それが彼の周囲を覆っている。
微かにごめんなさい、ごめんなさいと言う声が聞こえる。
彼は今なお過去に苛まれているのだろう。もしかすれば、自分が佐原嶺二として今ここに存在しているのは、彼がこのように塞ぎ込んでいるからなのかもしれない。
そんな彼に対して罪悪感が湧く。自分は、そんな彼の過去を、都合よく利用した。
遅刻することを連絡したあとの堀北先輩との話にまで時間は遡る。
「例の計画進める案ができたんで、以前言った通りあなたには進言してもらいたいんです」
「それは良いが、いったい何を思いついた」
「ただ二人が掲示板とか手紙とかで言われてるだけなら学校側が動かないんでしょ?なら、学校全体を強引に巻き込めばいいじゃないですか。だから、自分は、よう実ラジオをします。」
自分は決めた計画を堀北先輩へと語り始める。この計画には堀北先輩の協力が確実に必要なのである。堀北先輩の協力がないと不確定すぎるのだ。堀北先輩にはこの計画の制御役をしてもらいたいと思っている。
「全校放送をして強引に全校を巻き込むか。だが、何を放送する気だ。」
「特大のネタですよ。特大の二人のちっぽけな噂で無理なら、特大の噂をより特大にして全校に放送してしまえばいい、一応はいじめに敏感な学校です。教員達も困っちゃうくらい悪意のある噂をいじめみたいに放送するので、そこを狙って禁止にする方向に教員を誘導して欲しいんですよ。」
「はぁ、何やらかすのかは知らないが、まぁ承知した。昼休みだな?」
「はい。5分後くらいに放送します」
堀北先輩への根回しは完了した。次は、よう実ラジオの準備である。放送するネタはすでにあるので原稿作りと、流石にこの内容の声役を帆波さんに任せるわけにはいかない。
よって……自分かぁ。まぁ頑張ろう。あの時よりはだいぶんマシにはなったのだ。最近見てるアニメのキャラでも参考にしてやろうか。
今回、遅刻をするのは自分が噂にやられているという演出のためでもあるが、実際は様々な準備のためである。
とりあえず、人がいなくなりいつも以上に静かになった寮で録音することとした。
録音も終わった後は噂流されて苦しんでいる可哀想な少年の演技のリアリティを増やすために薬とかを買いに行き、その後に学校に行く。放送室に行き、放送権を事前に支払っておいて録音のデータも送っておく。放送するのは昼休みである。
そして昼休み、自分は嘔吐して痙攣して気を失ったように見せかけて清隆にお姫様抱っこされながら保健室のベッドに寝かされる。
目を閉じながらベッドにいれば清隆と星之宮先生の話し声が聞こえる。よく聞こえないが、焦った様子でどこかに行ったらしい。どこに行ったのだろうか。
部屋に二人になったので目を覚ますこととする。
「んんぅ」
「起きたか」
「何時間くらい気失ってた?
「寝ぼけてるのか?ふりだったくせに」
バレていたか、まぁ最初から清隆にはバレるつもりではいたが。清隆は気づきながらも自分が何をしたいか察してわざわざ保健室にまで連れてきてくれたらしい。お姫様抱っこされてたこともちゃんと覚えている。
「……」
「何その視線」
「人を焦らせておいてしれっとしているなと」
「清隆なら自分触った時点で精神崩壊による体調不良じゃないって気づいたでしょ?嘔吐も嘔吐剤だし、痙攣とかも多少薬とか使ったけど演技多かったし」
「それは気づいたが、俺でも焦ることはある」
「お前に焦りという概念があったことに驚きだわ」
清隆が焦ってる場面なんて思いつかない。こうして過ごしてきた今でも、原作でも。彼が本心から焦ることなんてあっただろうか。
「一つ聞きたいんだが、あの放送はお前か?あの放送は真実か?もしそうなら目的は?」
「うん。自分だよ。後、悪意を多分に含ませてるけど真実。実際は正当防衛の範疇だけどね。あと、目的は噂を根本から禁止にするためだよ。噂を全校規模にしたし、今頃、事前にお願いしておいた堀北先輩が元生徒会長としての立場を使って教員たちに噂を禁止するよう進言しているはずだよ。よう実ラジオで他人の秘密も明かすよう仄めかしてたしね」
「そうか……すまなかった」
「なんの謝罪だ」
突然頭を下げてくる清隆に疑問符を浮かべる。特に謝られることなんてされてないのだが、一体何に対する謝罪なのか。
「俺が最初から解決していれば、お前にこんなことをさせる必要はなかった」
「いやぁ、自分も清隆に任せっきりだとは思ってたし別にいいよー。そういえば星之宮先生は?ここ保健室でしょ?」
「ベッドからじゃ聞こえなかったのか?今は留守だ。職員会議で1時間ほど空けるだと。お前に何かあったらすぐに連絡するようにと連絡先も渡された。あと、午後は自習だ。あとこれ」
「なるほど。ありがと」
清隆に差し出された栄養ゼリーを食べる。毒物摂取して体力を消費しているだろうと。実際消費してたので助かる。
その時である。保健室の扉がノックされた。自分は怯えモードに入り、誰かと見ればそこにいたのは隆二だった。怯えモードを終える。
「嶺二が気絶したと聞いたが、元気そうじゃないか」
「気絶のふりだしそりゃそうよ」
「……一応聞くがあの放送はお前か?船の龍園みたいに坂柳とかがやったとかでは」
「ないよ。純度100%自分、原稿から声まで。まぁボイスチェンジャー使ってるけどね」
「そうか……綾小路はよう実ラジオについて知っているのか?
「知っている」
「そうか。お前は嶺二と仲が良いからな。当然か」
隆二は清隆がいる場所で自分の秘密を話したことに気づいたようで悪そうにしていたが、清隆もすでに知っていることを知るとホッと息をついていた。
「ならば、なぜあんなことを」
「清隆と同じこと聞くねぇ。噂騒ぎをおっきくするためだよ。教師陣を動かすために。あとは堀北先輩が噂を禁止するようにしてくれるはず」
「そうか……あの放送をAクラスは信用していない。一応聞くが、あれは真実か?」
「うん。さっきも清隆に説明したけど悪意マシマシだけどね。実際は正当防衛だし。」
「そうか。ならば、全ては話さないが少なくともお前が放送の内容ほどに悪意の込められた存在ではないことを言っておく。そもそも大半が放送の内容を信じていないがな」
「嘘ついてないだけで真実なんだけどなぁ」
「切り取られた真実は時として嘘よりも意味を持つぞ。ではな」
「じゃねー」
隆二が保健室を出たと同時、予鈴が鳴った。
「自分は置き手紙残して早退する気だけど清隆どうする?」
「普通に教室に戻るが、何をする気だ?」
「今高校に残ってたら後から問い詰められそうだし、問い詰められるにしても明日がいいかなー。気分的に。あと、堀北先輩がうまくやればあとは帆波さんの精神ケアだけだしそっちの対応に向かう予定」
「そうか。わかった」
「おう。自分もやるときゃやることを見せてやろう」
まさかこんな凶行に出るとは思わんやろうなぁ。自分自身の罪やから名誉毀損にもならへんし訴えられるリスクもない。さらに殺人という一際重い罪の上によう実ラジオということで話題性も抜群。完璧だぁ、今後の学生生活でヒソヒソされそうではあるけど。
冬休みまでのおまけ どれが好き?
-
龍園クラス
-
一之瀬クラス
-
坂柳クラス