【2年生編開始】新入生のみなさん!よう実ラジオのお時間です! 作:やさかみ
自分は自分が思い出した内容を淡々と悪意を込めずに語る。
昔は優しかった酔っ払った父に襲われ、抵抗にカッターナイフを振り回していれば幾つも傷がつき、怯んだところを蹴飛ばしたらよろけて頭を机の角にぶつけて死んだこと。そして、それを原因として母が悩みこの学校への進学が決まったくらいの頃に自殺したこと。
これを言った時、なぜか帆波さんは泣きながら自分を抱きしめていた。私の過去なんかよりもずっと、ずっと……と言っている。大丈夫だよ、大丈夫。と言いながら背中をさすっている。
まぁ、客観的に見たら【貧乏で妹のために万引きした少女】と、【元々仲良しだったが酔って襲いかかってきた父に抵抗して不意に殺してしまい、そして母が自殺した少年】。どう考えても後者の方が話が重い。
自分が佐原嶺二ではない誰かではなかったら帆波さん以上に病んでいたことだろう。
前者は少女が犯罪者だが、まだ美談として救いようはある話。しかし、後者に関しては少年は被害者だが、サイコパスでもなければ美談にはできない救いようのない話である。
まぁ、父殺しは正当防衛になったので罪の重さだけで言えば彼女の方が重いのだが。
自分を抱きしめる帆波さんに対して精神的にも物理的にも母性を感じながら、特に過去については何も感じてないから大丈夫と話す。
何も感じてないは何も感じてないでと心配される。どうしたことか。
あと、そんな噂を流した坂柳にも珍しく怒っている。何気に、帆波さんが怒るのはあまりみない。意地悪した時に『もー』と可愛らしく怒るくらいはあるが、憎悪とかが籠ったような怒りはなかなかにみない。
さてどうしたことか。坂柳が晒したのは殺人を犯したことがあるという情報のみで、父親とかの情報を発信したのは自分なのだが。
下手にこのこと言えば私のせいで嶺二くんにそんなことさせてしまったとまた自責の念に囚われそう。とりあえず坂柳には殺人を犯したという噂しか流されていないと言っておく。
どうせ後々バレるだろうが、まぁ、今彼女に教えるよりかは安定した後に教えた方が得策だろう。
帆波さんは本当に大丈夫?無理してない?相談して?と、自分が過去に対して無関心すぎることに対して心配をしている。なんだろうか、原作で清隆に精神折られた帆波さんの気配がする気がする。
しかし、相談してねか。以前、またいつか相談をすると約束していたが、それを今するのも良いだろうか。自分が過去に対して無関心な理由もついでに語れるし、相談もできる。一石二鳥である。
「なら……前の約束も踏まえて相談していい?いやまぁ相談って言っても、ただ自分が抱える秘密を告白するだけだけど。自分が過去に無関心な理由もそこにあるから」
「あ、う、うん!いいよ!」
「ありがと。端的に言えば、自分は佐原嶺二であって佐原嶺二じゃない。……精神的にね?人格が違うっていえばわかるかな」
「えと、二重人格ってやつかな」
「近いね。今の自分はこの高校に向かうバスの中で目覚めた。だから、この体の本来の人格である佐原嶺二の過去を見ても客観的にしか見れないから、無関心。だから心配する必要はないよ?」
自分は端的に無関心である理由を説明する。他の人格で自分にとってはこの体佐原嶺二の過去であっても客観的にしか考えられないということ。
しかし、帆波さんは顔を明るくはしない。
「……それで心配しないは無理だよ。だって、二重人格って精神病んだりしたときにできるんでしょ?なら、やっぱり無理したりしてない?」
「あー。いや確かに佐原嶺二に対しては心配すべきだね」
実際、前世の記憶が蘇ったのは今世の佐原嶺二の精神になにかあったからなのかもしれない。魂の構造とかなんて知らないが。
原作知識がなければ、前世の記憶も脳が作った偽の情報かとも考えていたことだろう。この世界にはあり得ない原作知識という情報があったからこそ前世と今世の二つを認識できるわけだが。
「嶺二くんだけじゃなくて……えっと、入学前の嶺二くんだけじゃなくて、私の知ってる嶺二くんもだよ」
「?特に心配されることはないと思うけど」
「……なんとなく、少し無理してる気がするの」
「そう?自覚ないけど」
どうやら帆波さんから見たらそのように見えるらしい。本当に佐原嶺二の過去を他人事のように思っているのでそこまで心配されることはないと思うのだが。
いや、もしやそのこと自体だろうか。たとえ他の人格だろうと、したのは自分自身であることに変わらないのだ。完全に他人のしたことと割り切ることは難しいだろう。普通なら。
まさか、自分が全く違う人生を実際に歩んでいた人格というオカルトに踏み込む存在だとは思われていないだろうし。
「……あと、一応この人格の話って自分が色々知ってる理由でもあるんだ」
「え?……その、なんでなのかな」
彼女の反応は正常と言える。別人格が生えたところで色々知れるわけがない。別人格と共に架空の記憶が作り出されることはあるかもしれないが、自分が持っているのはこの世界でのリアルな情報。
なので、自分に別人格があるから色々知っているは通常成立し得ないのだ。
「あー、さっき二重人格みたいなものかって問いに近いっていったでしょ?」
「あ、そうだね……ちがうの?」
「まぁある種では二重人格だね。自分という人格がここに存在してるのが佐原嶺二の精神崩壊という話も真である可能性はある。でも、自分は単純に脳内で生成された人格じゃないんだ。外から来たというか……あー」
言い出したはいいものの、こんなこと話されて彼女はどう思うだろうか。厨二病と判断されるか精神が壊れて現実と区別がついてないやつと見られはしないだろうか。
否定はせずに苦笑いしながらそうなんだ。という帆波さんは簡単に想像つく。
「……やっぱり、私なんかにはまだ話せない、かな」
「いや、そんなことはないよ。内容が内容だけに誰にも話したことないし、どういう反応されるかわからないから言い淀んでただけ」
「その、どんな内容でも信じるし、真摯に受け止めるから」
彼女はどこか凛々しい顔をしている。本当に自分のことを受け入れるつもりなのだろう。彼女の過去も元から知っている自分の異常性は彼女も認知しているのにその覚悟があるのは賞賛に値する。
「そっか。じゃあ隠し事なくいうと自分は佐原嶺二の前世なんだ」
「へ?」
「あと、自分が色々知ってるのは自分がいないこの学園を元とした物語を前世に読んだから。前の相談で例えとしてこの世界を元にした物語を読んでなんたらって言ったでしょ?あれ例えじゃなくて事実」
「……」
流石にダメだったか。自分の話したことは彼女の覚悟も上回ってしまったらしい。もしくは脳の処理能力を上回ったか。あのときの堀北先輩たちみたいにポカーンとした顔をしている。スマホを取り出して写真をパシャリと撮っておく。
その後にシャッター音で正気に戻ったらしい帆波さんは、少し渋い顔をしている。
「一応言っておくけど嘘はついてないよ?あと狂ってる自覚もない。いやまぁ狂ってる奴には自覚ないものだろうけど。でも自分が色々知ってるのはこれが理由。信じられないなら」
「いや、信じるよ。嶺二くんの言うことだし。でも、うーん」
「まぁそうなるのもわかるし、信じれるだけ帆波さんはすごいよ」
少しねっとりした感じの空気だったのが、自分の発言があまりにも常軌をいしたものだっからか離散している。
「嶺二くんは嶺二くんだけど、嶺二くんの前世の誰かで、その誰かはこの学校の物語を読んでて、そして、今は嶺二くんがその嶺二くん」
彼女の頭の中ではこの事実がこんがらがっているようだ。彼女は少し考える様子を見せ、こちらへと向き直る。
「私の知る嶺二くんと、入学前の嶺二くんのことはなんて呼んだらいいの?」
「自分のことは変わらず嶺二でいいよ。入学前の僕のことは、別に呼ぶ必要はないかな。今の所自分でも一回その存在を認識したことがあるくらいだし、多分表には当分出てこないし。」
自分が消えたりしたら出てくるかもしれないけど、と言いかけたがそれはやめる。絶対心配されるし、そもそも確証も何もないのだ。ただ、よく多重人格キャラでは元の人格以外が消えるなんてことがよくあるからと自分に当てはめているだけだし。
その後は前世と今世の記憶とかがごっちゃになってることなども話していればまたもや心配され、彼女のメンタルケアをするはずが自分がメンタルケアをされていた。
まぁ、自分がした過去と前世今世に原作知識もいう衝撃的な告白をしたのに見習い、私も勇気を出してBクラスのみんなに告白すると言ってくれたのでまぁよしとしよう。
よし。前回の迷走期間の分を処理できた。 雑なのは許してクレメンス
冬休みまでのおまけ どれが好き?
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龍園クラス
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一之瀬クラス
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坂柳クラス