【2年生編開始】新入生のみなさん!よう実ラジオのお時間です! 作:やさかみ
「俺は、お前のことが人として嫌いだ、坂柳」
坂柳はあまりの言葉に力が抜け、膝から崩れ落ちる。しかし、杖で踏ん張り、綾小路をみる。その目は、道具を見る目でも友達を見る目でもなく軽蔑を含んだ目をしていた。
「な、なぜ、なのでしょう。私、何かしてしまいました、か?私は、あなたのために」
「親友に手を出した奴を嫌いになるのは当然だろう。お前は、そんなこともわからずに人肌のぬくもりとやらを教えようとしていたのか」
「あうっ」
坂柳自身は特に痛いところをつかれたなんてことは思っていない。だが、綾小路がさも当然のことのように言うので反論できずにいた。実際正論ではある。
「あと、お前は俺と勝負をしたいんだったな。はっきりいうが、俺は嫌いな奴のしたいことに付き合う気はない。クラス間で何かがあっても、俺がお前と戦うことはない」
「そ、そんな……すみ、ません。わたし、わかっていませんでした。ですから、どうか、どうか、それ、は、それだけは」
そして、自身が昔から望んでいたことさえも本人から明確に拒絶される。
人肌の温もりを与えられず、人工的な天才としてつくりあげられた彼に人肌の温もりを教えてあげたい。人工的な天才では本物の天才には勝てないことを証明したい。
坂柳は幼馴染のような感情、自覚があるかは知らないがほぼ初恋をした男の子に嫌われただけではなく自身の目的すら拒絶され、彼女の精神は限界を迎えていた。
「謝るのは俺じゃないだろ。手を出した嶺二に謝るべきだ。嶺二がお前を許さない限り、俺はお前のことを嫌い続ける。お前が嶺二に生半可な許しを乞えば、嶺二が許そうと俺が許すことは絶対にない。お前が心の底から嶺二に謝らない限りは俺はお前を認めない。許されても認めるとは限らないが」
「そん、な……綾小路く」
「俺に次、嶺二の許可なく接触しようとしたら俺はお前のことを人としても認識しない。以上だ」
綾小路はそう言って屋上から去っていく。坂柳は膝から崩れ落ちながらも、そんな彼の背中へと手を伸ばす。しかし、肉体的に弱く、そして精神的にも弱っている今の彼女では到底届かない、縮めることのできない距離だった。
「あやの、こうじ、くん」
昔から追い求めてきた人による完全な拒絶。それにより、まだなんとか耐えていた自身の精神は崩れ去った。
放心状態になり、坂柳はその場で固まる。心配になり迎えに来た神室に声をかけられ、ようやく活動を開始し、その場を移動したのは30分後のことである。
神室に付き添われ、寮へと帰った。
その日は神室とともに寮に戻る。神室は坂柳の尋常ではない様子に坂柳の部屋にそのまま残り、介抱する。
そして、次の日は神室とともに学校を休んだ。その日のうちに彼女はまだ立ち直れておらず、神室に看病されながら過ごす。その次の日も休み、そして、その日の昼間くらいにはようやく、一見すれば問題なく振る舞えるほどには回復していた。見る人が見ればおかしさに気づくだろうが。
彼女の脳内では今後どうするかの策を練りだす。しかし、下手な策を練り、綾小路くんや佐原くんの逆鱗に触れれば本当に彼は自身を認識しなくなってしまう。拒絶されてしまう。
昔から家族を除いて特別に思ってきた唯一の相手にそんなことをされるのは、いくら自身が天才であろうと辛いところがある。
そして、坂柳は考えに考え抜いた。思考力もまだ回復しきっていない、何だったら凡人並みの思考すらできていないかもしれない彼女が出した結論は、ただの謝罪だった。
坂柳は絶対に許されたいことがある場合、どのように謝れば良いかを神室に聞く。神室はそれに対し、は?なにそれ……まぁ定番どころで言えば土下座じゃない?と返した。
坂柳にはプライドが、尊厳がある。故に、土下座なぞ父相手であれ、綾小路くん相手であったとしてもそんなことはできない。さらには、しなければいけない相手はその2人でもなく凡人である、自分が格下と決めつけていた相手である佐原嶺二である。圧倒的屈辱感。
しかし、プライドを優先していれば綾小路くんがこちらに振り向いてくれることはない。自身の尊厳か彼、そのどちらを取るか。
弱っている彼女はプライドも捨て、後者をとった。
そもそも綾小路に嫌いと言われている坂柳と好きと言われている嶺二。本当に佐原の方が格下かは議論の余地がある。
神室は何で坂柳がこんな弱ったことになったのかを聞いたが坂柳は答えない。どのように謝れば良いか聞いてきたことからも坂柳でさえ謝らなければならないことが起きているのだと推測しているが、その内容すらわからない。
そして、坂柳は今日の放課後に学校に行ってやることがあると言う。神室はついていくと言うが、坂柳は首を横に振る。神室は今のあんたを1人にさせられるかと言い、坂柳はならば途中で見張りに回ってくださいと述べる。
神室にまで屈辱の姿を見せたくはない。
そして、学校に行き、放課後前につく。そして、Cクラスの前に行き、授業が終わり放課後になった。
坂柳は事前に、神室に対して屋上に誰もいないことを確認させている。そして、自身が屋上で行なっている最中は入って来るものがいないかの監視を任せていた。唯一綾小路だけは通しても良いとも。
坂柳は教室にいる綾小路がこちらを全く見ていないことに密かに心の傷を負いながらも平然を装えるだけ装い、佐原へと声をかける。
警戒に包まれるCクラスと、佐原を静止する堀北。そして警戒はしているが素直について来る様子の佐原。
坂柳はそのまま佐原と共に屋上へと辿り着く。途中階段で人がいるか確かめていた神室とすれ違い、誰も来ないように見張りを頼んでおく。
そして、階段も抜けて屋上につく。
屋上に進み、少し進んだところで坂柳は佐原の方へと振り返る。言葉を紡ごうとすれば、荒んだ心と尊厳の崩壊により固い言葉となる。
「佐原、くん、今回の、こと」
坂柳は許されなかった場合に対する恐怖と、尊厳を捨てる行いに震えながらも身をかがめ、土下座をしようとする。しかし、その途中で無様にも倒れかけてしまう。
それを佐原に抱えられ、屈辱感を感じる。これから謝る相手に、格下に庇われたのだ。現在の彼女の精神は正常ではない。
とにかく土下座をしようと、彼におろすことを要請する。
「良い、です、離して、ください。」
そして、地面へと伏せられる。屈辱感を感じながらも、綾小路くんに許されるためと思い、耐えてできる限り綺麗な姿勢を取ろうとする。しかし、肉体の調子が悪いのか、精神の調子が悪いのか。酷い体制となるが土下座を成功させる。
これで、綾小路くんに許してもらえる。その思いの一心でそれを終えさせ、声を出す。
「佐原、くん、今回のこと、誠に、すみません、でし、た」
「……は?」
これで、私は、綾小路くんに許してもらえる。
――――――
自分、佐原嶺二はあまりの光景に驚愕の声をあげる。あの坂柳が、自身を天才と呼称し、周囲を見下し、クッソ高いプライドを持つ彼女が。
土下座をしていたのだ。
美少女の土下座って、いいよね。許してあげたくなるよね。なるよね?相手がナチュラル見下し女郎だとしてもね?ね?
冬休みまでのおまけ どれが好き?
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龍園クラス
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一之瀬クラス
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坂柳クラス