【2年生編開始】新入生のみなさん!よう実ラジオのお時間です!   作:やさかみ

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ぶっちゃけ、前話の説明の時点で勝敗はわかっている気がする。


決着

 堀北はそれの発動に動揺を見せる。

 司令塔ルール、30分間の間司令塔が指示をだせる。それすなわち、司令塔が直接試験に手を出せる構造。本来の参加者を押し除け司令塔がその位置にとって変われるほどのルール。

 それを使うことのメリット、それは司令塔が高い能力を保有していた場合、それより低い能力の参加者に変わって駒を打てるというあまりにシンプル故に強力。

 しかし、それには司令塔の方が参加者よりも能力が高い必要があるという前提が存在する。

 ここでそれが発動されたということは、司令塔である佐原嶺二が堀北がこのままするよりも自身がやった方が状況が好転すると、堀北より自身の方が高い能力を持っていると判断したということ。

 別に、それだけではない。参加者が押されているのなら場を乱す目的で実力が多少低い状態で参加して勝利への道をどうにか探るという戦略もある。

 しかし相手は天才、坂柳有栖。凡人が場をかき乱したところでそれで乱れた戦場を踏まえて掌握するだろう。

 

 堀北は疑問に思っていた。佐原嶺二がそれを発動した意図を。何か作戦があるのか、それとも、単純に自身の方が実力があることを確信しているのか。

 堀北はそこそこ自身が優れている自覚はある。少なくとも橋本を下せるほどには。綾小路という自身を上回る隠された実力者はいる。

 しかし、佐原嶺二が自身を上回っているのかについては疑念があった。成績も自身の方が上である。綾小路のように隠された実力を見たこともない。

 

 彼に任せた結果、状況が悪化しないか、彼の指示に従うべきか。

 堀北は逡巡する。

 彼が持つ異様な人間関係、綾小路くんと深く携わっている、そして兄さんともなんらかの繋がりがある。その関係が偶然に生まれたものか、それとも、それは彼の実力などから作られた必然的なものか。

 もし、それが必然ならば、彼はもしかしたら綾小路くんのように自身の実力を隠した、私以上の実力者なのかもしれない。しかし確証はない。

 

 堀北は少し悩み、そして思考を打ち切る。

 

 どのみちこのままであれば坂柳に自身が負けることは変わらない。ならば、その可能性に賭けるべきである。

 

 堀北は佐原の指示に従いコマを動かす。

 

 

 

 

 

「おや、少しあなたの指示に従うか悩んだようですね。」

「まぁ、自分は堀北さんよりも成績も悪いし、チェスしてるところなんか見せてないし。即決で従うのは難しいでしょ」

「なるほど。ですが、今のあなたの一手で確信しました。あなたの実力は堀北さんの先を進んでいます。」

 

 有栖はそんな会話をしながらも駒を進める。自分も彼女の駒の動かし方を見て駒を動かす。

 流石に、有栖や清隆のように一瞬の思考で駒を進めるなんてことは自分にはできない。5秒かは思考する。まぁ、プロ同士の決戦とかならそれでも短い方だと思うが。

 自分の場合は長ったらしく考えるより短く考えもするが直勘も交えた方が強いと清隆に言われている。

 まぁ、30分も干渉できる時間があるので十分だが。有栖が時間稼ぎに出てくれば話は別だが、どちらが勝つにしてもおそらくそれいないに決着は余裕で着く。

 

「いいですね、佐原くん。あなたの一手一手は凡人が打ち続けても到底打つことができない領域に差し掛かっています。しかし、それでは天才には届きませんよ」

「教えられ始めて一週間の奴に威張んなよ天才さん」

 

 こちらが思考している間に話しかけてくる有栖に雑に返答をしながらも駒を打つ。試しにイマジナリーフレンド作ったりして盤面を様々な視点で見たり判断を下したりする。ぶっちゃけ効果は薄いがたまに独特な性格を設定してるイマジナリーフレンドがミスに気づいたりするので案外有用である。

 

「ほう?たったの一週間でそこまでですか。綾小路くんの教えあってのものですが、伸び率だけで言えば私も超えているでしょう。認めましょう、佐原くん、あなたは凡人ではありません。天才の領域には至っていないようですが、その伸びが継続されるのならばもしかすれば、ですね」

「へいへい。楽しそうで何より何より」

 

 有栖は清隆と違って楽しいとかそういう感情はちゃんとある。いやまぁ今の清隆には楽しいの感情も多少はあるとは思うが。有栖は別に、清隆のように能面というわけでもない。

 なんやかんや有栖の友達としてたまに遊んだりしていたからか、有栖の感情とかそこら辺が見えるようになってきた。

 

「えぇ。少なくとも堀北さんと打ち合っているときなんかとは比べ物になりません。本音を言えば綾小路くん本人と打ち合いたいところですが、今は彼から教えられたあなたで我慢しましょう」

「所詮、自分は清隆の代用品ですよーだ」

「おや、別にあなたでは足りないという話ではないのですよ?彼とあなたはそれぞれ別ですから。そのように卑下なさらぬとも。この場を借りて言わせてもらいますが、実は少しあなたに謝意があるのですよ?最初、あなたのことを凡人と称したことに」

 

 少し期待すればこれだよ。自分に対して謝意を抱けただけ成長と見るべきか、見下している相手には徹底的に謝意を抱かないという根本的な部分が変わってないことを嘆くべきか。

 

「いい加減例の件に謝意を抱いてくれませんかね。どんだけ教育したらいいんだよ」

「改善と言うべきかは分かりませんが、少しではありますがあなたの望む通りに私も育ってはいるのですよ?あなたはちゃんと、お友達です。特に他意も多分に意味を含ませたりもありません」

「喜ぶべきかそれでも謝意を抱けてないことを嘆くべきか」

 

 会話をしながらも盤面は進む。わかっていることだが、やはり実力は有栖の方が高い。堀北さんより善戦はできているが、こちらが不利である事に依然として変わりない。

 

 そして何手も打つ。どちらかが一つミスればその瞬間に負けが確定する盤面。しかし、自分の場合はミスせずとも追い込まれてはいる。有栖の場合はミスをせずに進めるだけで勝てるが、自分の場合はミスをせずに清隆のような最善を超えた脅威の一手でも搾り出さなければ盤面を変えることができない。

 自分は思考し、現段階で最善と思えるものからはあえて外す。

 

「なるほど。その手ですか。よくぞそこまで考えました。しかし、その手は私の思考の範疇です。一週間でここまで鍛え上げたことは素直に賞賛に値します。ですが、私とて負ける気は無いのです。慢心もしておりませんので、ですので、これにてゲームセットです」

「……やられた」

 

 その瞬間に敗北したわけではないが、ここからでは有栖がミスをしなければ清隆ですら逆転は不可能な域に達した。しかし、有栖がそんなミスをするような奴では無いことくらいはわかっている。

 清隆を餌に精神的な揺さぶりをかければミスを誘えるかもしれないが、流石にそれはしない。

 

「これにて、本当の終わりです。」

 

 そして、そのままゲームは終わった。自分は、純粋なチェスの実力で負けたのだ。

 

「やられた」

「今回は私が勝ちましたが、次回があれば私が負けるかもしれませんね」

「本心じゃないだろ」

「バレましたか。ですが、あなたの成長に関しては私としても十分警戒に値していますよ?もしかすれば、あなたは開花している最中なのかもと」

 

 有栖に負けるのは仕方ないと言う気持ちと悔しいと言う気持ちがある。今回、予感はあったが負ける気はなかった。土壇場で覚醒とか起きてくれればもしもがあったかとしれないが、所詮もしもである。

 仮に、次回があれば、もう善戦はできるだろう。

 

 

 まぁ、どちらにせよ、選抜種目はCクラスの敗北に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

「負けたよ清隆慰めてぇ」

「ひっつくな鬱陶しい」

「友達にひどいぞこんにゃろー」




佐原は過去の天才と称される資格はある。しかし、現代の能力だけを見る天才と呼ばれるには、まだ、値しない。
佐原くんは能力の高さという意味では天才未満の成長段階なんですよ。

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