巡海レンジャー(自称) 今日もスウォームを狩り歩く 作:内モツ
九日ナインソールを何周もしていて小説を書く暇がありませんでした(´・ω・`)
仙舟・羅浮、金人港。
屋台から立ち上る湯気と、行き交う人々の活気。その平和な日常を切り裂くように、一人の「異物」が立ち止まっていた。
「……赤髪、異邦人。特徴、完全一致。ターゲット、桂乃芬、捕捉」
煤けた黒衣を翻し、カボチャの兜の奥で赤黒い電子眼を光らせるオムニック――サムウェインは、手元の端末と目の前の少女を交互に見比べた。
ちょうどその時、桂乃芬は一人の少女……銀河を駆ける星穹列車のナナシビト、星に向かって、いつもの調子で声を張り上げていた。
「こんにちわ、リスナー! 心霊現象に興味があってあたしのところに来たんだよね?」
「うん、気になって来たよ」
星は淡々と答える。彼女はこれまで数々の星々で奇妙な事件に関わってきたが、仙舟の「幽霊」にはまた違った好奇心を抱いているようだった。
「ちょうどよかった! さっきの配信で撮った動画の編集が終わったところなの。これで証拠を見せられるよ!」
桂乃芬は自信満々に胸を張り、星の目を真っ直ぐに見つめた。
「動画を見る前に、あんたに聞きたいことがあるんだけど……コホン。あなたは幽霊や鬼の存在を信じますか?」
「絶対に存在するって信じてる!」
「やっぱり! あたしたちみたいな好奇心旺盛な人間は、勘が鋭くて身の回りの奇妙なモノに敏感なんだよね!」
その盛り上がりに、冷や水を浴びせるような低く無機質な声が割り込んだ。
「Hello。怪談、興味。桂乃芬、あなた?」
「ひっ……!? 幽霊っ!?」
桂乃芬が文字通り垂直に飛び上がった。
星は無表情のまま、ヌッと背後に現れたカボチャ頭の男をじっと見つめ、心の中でつぶやいた。
(……これ、幽霊より先に地衡司に突き出すべき不審者だ………)
カボチャ頭のオムニックは、驚く二人を気にする様子もなく、胸に手を当てて妙に丁寧な一礼をした。
「私、サムウェイン。巡海レンジャー(自称)。スウォーム駆除、専門。……趣味、怪談、ホラー、映画。……大好き」
「……え、えぇ……? あんた、あたしのメール見て来たの? さっきの不気味なカボチャ写真の……」
「Yes。あなた、“怪談盛りだくさん”と、言った。……誇大広告、確認。……信用、調査。ゆえに、来た」
(……言い方がもはや取り立て屋なのよ……)
桂乃芬が引き攣った笑顔を浮かべる中、星が恐る恐る口を開いた。
「えっと……初めまして? 私は星。」
「初対面。あなた、星。……映画館、噂、聞いた。……羅浮、反物質レギオン、一掃。……戦友、認定。……ただし、映画、ネタバレ、禁止」
「映画の話、一回もしてないよね!? 」
星の鋭いツッコミに、サムウェインはカボチャを軽く叩き、満足げに目を光らせた。
「怪談、ホラー、上映。……全部、好き。……今回の、心霊ドキュメンタリー。……私、参加、希望。……エキストラ、ガードマン、照明係。……何でも、やる」
桂乃芬はしばらく固まっていたが、その背負っている武器の「本物感」と、何より「バズりそうなビジュアル」を計算し、肩をすくめた。
「……まぁ、実力はありそうだし、画面映えもしそうだし……いいか! 怪談に年齢も種族も関係ないもんね!」
「感謝。……上映前、ロケハン。……悪くない」
「さ、おしゃべりは終わり! 見て、これが昨日『綏園』で配信した時に起こった、ガチの心霊現象だよ!」
桂乃芬が端末を操作し、映像を再生しようとしたその時、サムウェインが厳粛な面持ちで手を挙げた。
「質問。……幽霊、実在? あなた、本気で、信じる?」
「だから! 今からその証拠を見せるって言ってるでしょ! 黙って見てて!」
「了解。……上映、開始」
映像が流れ始める。
『みんな、けいちゃんは今、羅浮イチ怖いって言われてる心霊スポット――「綏園」に来ています!』
画面の中では、怯える素裳を桂乃芬が無理やり引っ張り回していた。
『お願い、チャンネル登録とグッドボタンで、けいちゃんを励まして!』
『ここ最近、よく変なことが起こるって……』
『臆病者! あたしを守るって言ったじゃん!』
『雲騎剣法でも、見えないものは切れないよぉ!』
その時、画面の端を、青白い不気味な鬼火がふわりと横切った。
『い……今、なにか通らなかった……?』
『だだだだだ大丈夫、アタシがい……いるんだから……!』
『『うあああああ!!』』
鬼火?:『うらめしや~~……』
最後は、十王司の判官が無様に気絶した素裳を揺すり、配信が強制終了する場面で終わった。
映像が終わると、サムウェインは深く考え込むようにカボチャを傾けた。
「……判定。……不合格」
「はぁ!? どこがよ! バッチリ映ってたじゃん!」
「違。……重要ポイント。……“鬼火、演技下手”。……声、安っぽい。……三流ホラー映画、以下。……B級、パニックもの。……演出、過剰。……非常に、残念」
「そこじゃない!! 演技とかじゃないの、あれは本物の幽霊なの!!」
桂乃芬の絶叫が、金人港に虚しく響き渡った。
「演技じゃないってば! よく見て、この問題の対処に来たのは地衡司でも雲騎軍でもなくて、『十王司』の判官だったんだよ!」
桂乃芬がフンスと鼻息を荒くして映像を指差す。しかし、星は首を傾げた。
「十王……司…って何?」
「仙舟で最も謎めいた組織だよ! 十王司の捜査官はどこからともなく現れ、気が付けば忽然とと姿を消してしまう……彼らが現れる場所には必ず『仙舟を揺るがす大事件』が起きてるんだから!」
星が納得しかけたその時、サムウェインがカボチャの面をガクンと動かして納得の声を上げた。
「理解。……つまり、十王司。……仙舟における“ホラー専門部署”。……あるいは、“未公開シーン、管理団体”。……非常に、興味深い」
「違うけど……まぁ、今の状況なら大体合ってるかな! とにかく、判官が出てきたってことは、綏園にはあたしたちの想像を超える『ネタ』が眠ってるってことだよ!」
桂乃芬は星の肩を叩き、身を乗り出して提案した。
「どうかな、二人……あ、いや、三人で綏園を探索してみるというのは。今度こそ真相に辿り着けると保証しよう!」
星は少し考えた後、いつものナナシビトらしい好奇心を瞳に宿して答えた。
「行こう、幽霊を探しに。……ついでに、サムウェインが暴走しないか見張っておくよ」
「……失礼。私、理性的。……上映妨害、されなければ、至極、友好。……スウォーム以外、基本、不干渉」
サムウェインは心外だと言わんばかりに仕掛け武器のグリップを撫でた。
「よし、決まり! じゃあ“三人で”綏園に行こう! あたしがカメラ、星ちゃんが調査、サムウェインさんは……えーっと、雰囲気作りとボディーガードね!」
桂乃芬は勢いよく手を叩いた。
実は、彼女が最初に星だけに声をかけ、サムウェインを誘おうとしなかったのには、配信者としての極めて現実的な理由があった。
(……だって、このビジュアル、幽霊より不審者なんだもん。最初から一緒にいたら、あたしが通報されちゃうよ!)
そんな彼女の心の声を知ってか知らずか、サムウェインは満足げに頷き、武器の変形機構を「ガコン」と一度だけ鳴らした。
「了解。……上映前、怪談探索。……悪くない。……映画化、検討。……タイトル、『カボチャ騎士、幽霊、爆殺』。……あるいは、『赤髪少女、叫ぶ、金人港』」
「勝手に不吉なタイトルつけないでよ! さあ、出発進行ー!」
こうして、星穹列車のナナシビトと、バズりを狙う配信者、そして「映画バカ」のバグった土木ロボという、十王司も頭を抱えそうな奇妙な一行が結成された。
金人港の賑わいを背に、三人は薄暗い霧に包まれた禁足地「綏園」へと向かう。
そこでは、歳陽という名の「本物の恐怖」が、新たな獲物を待ち構えていた。
「……上映開始、まで、あと少し。……ポップコーン、持参、忘れた。……不覚」
サムウェインの赤い電子眼が、霧の向こうにある闇を静かに見据えていた。
サムウェインの資金源
主な資金源は爆発する前に回収したスウォームの素材の売却と二次元ホース先生のアシスタントですが二次元ホース先生が給料を払わないせいで収入は実質スウォーム素材の売買だけです。
手に入った信用ポイントは
・シネマ号の内装改造
・爆薬補充
・サブスク料金
・映画館の特等席買い占め
・加糖スラーダのダース買い
・映画撮影で使われた小道具の収集
・スウォーム討伐で使う武装の購入とメンテナンス
・シネマ号の整備・点検
で9割溶けます