気がついたら禪院直哉だったので好き勝手させてもらいます   作:黙々睦模目

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20 直哉の記憶

 

「改めて名乗ろう。私は星見宗一郎、星見家当主だ」

 

 目の前に来た、男はそう名乗った

 

 そして、僕にお酒の入ったグラスを渡す

 

「…星見家の人間が俺に何の用や?」

 

 そして彼は僕にお酒を勧めたのに、

 

 お酒ではなく…

 

 ジュースを飲んでいるようだ

 

 ずるいな…

 

「いや、君は良くも悪くも有名人だからね、孤児への支援や、教育団体の設立に始まり、君が関わった事業は全て成功し、君が投資する会社はほとんどが急成長を遂げ、今では新エリー都でも上位の投資家となっている聞いている。急激な拡大でTOPSの方には恨まれているそうだが、防衛軍とはよくやっているそうじゃないか?」

 

「…そんなの偶然やろ、その時の巡り合わせや」

 

「その偶然がそんなに頻発する事はない。…君はなにか見えているんじゃないかね?」

 

 僕がボロを出す前無理やりにでも話を変えないと

 

「へぇ〜、じいさんは妄想が好きなん?」

 

「は?」

 

 宗一郎は目を見開く

 

「だから娘さんと距離が離れるんちゃうん?」

 

「ハハハ…君、私を挑発してるのかい?」

 

 先ほどの作り笑いは嘘のように消える

 

 これだ! これしかない

 

「俺はあんたの娘さんの事は知らんけど、あんたみたいなのが親なら反抗期まっしぐらやない? あんたしつこそうやからな〜! コミュニケーション下手そうやん!」

 

 すると彼の目がピクピク揺れている

 

 思った以上に短気みたいだ

 

 それで僕のボロが出る心配はない

 

「…自分の娘が危ない時に、こんな所で油を売っててええんか? 娘さんと更に距離が離れるんちゃうん? あの世にいるあんたの奥さんとの距離みたいにな?」

 

「なにを言っている!」

 

 そう言い、彼は僕の胸ぐらを掴む

 

 すると先ほどのオオカミのシリオンが、

 

 宗一郎の肩を掴んだ

 

「宗一郎様、お電話です」

 

「む! ライカン君私は忙しいのだ! 後にしたまえ!」

 

 だが耳元でなにかを呟いて、表情が一変する

 

 そしてライカンというシリオンに連れられ、

 

 宗一郎はその場を去った

 

 これでやっと帰れる

 

「じゃ…俺は失礼するで〜…、あぁ?」

 

 すると目の前にサメの尻尾を持つ少女? 

 

 僕の前に立ち塞がる

 

「おい、どけやガキ、俺は忙しいんや」

 

 すると少女は面倒くさそうに答える

 

「ご主人様から、直人様をお連れするとように頼まれてまして〜…」

 

「…行かへんって言うてんねん、ガキ」

 

「そう言わずに〜…」

 

 そして少女は僕の背中を押し、

 

 僕を個室の中に押し込んだ

 

 中にはソファーが2つに、その間に机の置かれていた

 

 その片方のソファーに座っている人物

 

「…待っていたよ、さぁ座ってくれ」

 

 そこにいたのはこの会場で、

 

 最初に話し掛けてきた相手がいた

 

 誰だか思い出せない

 

 なんで僕の名前を知っていたのか…

 

 どうして僕を捕まえようとしないのか、

 

 わからない…

 

「覚えていないのかな…? 直人君、いや…直哉君。先ほども私を古狸と言う所は昔から変わらないみたいだったけど、思い出せないのかな…?」

 

「…はぁ? そんなの…」

 

 頭が…頭が痛い…

 

 僕はその場で蹌踉めき、片手で頭を抑える

 

「直哉君!」

 

 すると彼はその場で立ち上がった

 

 その姿を僕は片手で静止する

 

「…知らん。俺はお前を知らん、高まお前からは胡散臭さを感じるだけや」

 

「そうか…」

 

 そう言い彼は座り直した

 

「覚えていないようだから、改めて自己紹介を…私は現新エリー都の市長だ」

 

 やっぱり権力者だよね、

 

 僕は対面に用意されたソファーに座る

 

「…で? なんや? そんなお偉いさんの市長様が指名手配犯の禪院直哉に用があるんか? 今ここで捕まえるんか?」

 

 ここで暴れるとなると色々面倒なんだけどな…

 

 捕まるよりはマシかな〜

 

「…君との約束を果たそうと思ってね、これを君に返そうと思って…」

 

 すると長身のメイド服を着た女性が、

 

 トレーに古びたノートを乗せていた

 

「どうぞ…」

 

 なんだこれ? 見覚えはある…かも、…? 

 

「なんやこのボロッボロのノートは?」

 

 僕はそれを受け取り、内容を確認する

 

「…俺が書いた物なんか?」

 

 ペラペラと1枚1枚丁寧に読む

 

 これは自分が記憶を無くす前に書いたのだろう

 

 自分はどんな存在で、どんな事をしないといけなくて

 

 その為には何が必要でなにが不要だったのか

 

 無くしたら困る記憶、どうでもいいような記憶、

 

 …そして、家族について…

 

 家族…? 、家族とは…? 

 

 "僕には家族はいない"はずだ、

 

 頭が理解できない

 

 そんな存在しない事を言われても…

 

 わかるわけがない

 

 そもそも僕、なんの為に戦ってたんだっけ? 

 

 あれ…、なんでだ…? どうしてだ…? 

 

 なんで思い出せない…? 

 

 すると市長は口を開く

 

「これは君が失踪する前、私に託した物だよ」

 

 そんなわけが、ない

 

「そんな訳がない…」

 

 だが彼は反論する

 

「いや、これは旧都陥落の一ヶ月前か…君は私を訪ねて来たんだ、忍び込んでね」

 

「ありえへん…」

 

「君について僕も調べた、君が幼少期、ある研究施設にいた事、その後路地裏で育った事に、雲嶽山にいた事、…そして家族ともいえる存在が君にはまだいると言う事」

 

 そんな訳がない…僕に、僕に、家族なんて…

 

 家族はここにいない…

 

 それにこの世界の家族だってもういないはずだ!

 

 こんな世界にいていいわけがない! 

 

「そんな事あるわけ無いやろ! お前らがこれに細工したに決まってる! 俺に家族なんているわけがないんや!」

 

 さっき感じていた頭痛が増す、

 

「お、俺に、か、家族…? 家族、そんなんいない…、いるわけがない!」

 

 頭が…頭が、痛い…

 

 何者かが頭の中で、暴れている様な…

 

 頭の中をかき乱されているとは何かが違う、

 

 一体なにがどうなって、

 

 わからない…

 

 頭を思考させようにも"何か"にかき乱される

 

「直哉君! 大丈夫か!?」

 

 彼は慌てて駆け寄ろうとする

 

 だが僕の視界が一瞬、反転し、

 

 視界が真っ暗になり、

 

 気づいた時には僕は、市長の前におり、

 

 僕がナイフで…

 

 彼の首を狙って突き刺そうとしていた

 

 だがそのナイフは寸での所で止まっていた

 

 その状況を見て僕は混乱する

 

 一体…今の一瞬で僕はなにをしようと…

 

 僕は慌てて、ナイフを捨て、後退る

 

「市長様! 下がってください!」

 

 先ほど僕にノートを渡した彼女が、

 

 僕と市長の間に入る

 

「な、直哉君…」

 

 彼の僕を見る目が一瞬怯えていた

 

 やめてくれ! そんな目で僕を見ないでくれ! 

 

「ち、違っ! 違う、! お、俺やない! 俺やないんや!」

 

 僕は両手で頭を抑える

 

 どうしていったいなにがどうなって…

 

 僕はそんな事しようと思ってすらいなかったのに

 

 なにがどうして…

 

「お、俺は、俺…は、俺は、違う…違うんや…!」

 

 僕は慌ててその場を駆け出し、外へ向かう

 

「直哉君待ってくれ!」

 

 そんな彼の叫びなど聞く余裕もなかった

 

 僕はその場から逃げた

 

 冷や汗も、動悸も止まらない…

 

 手は手汗でべっとりしている

 

 なにがが僕を乗っ取ろうとしていたような、…

 

 そんなわけがない、

 

『始まりの主』はまだ出てこないはず、

 

 まだ猶予があったはずなのに、…! 

 

 讃頌会は今、星見雅に、無尾に夢中なはず…

 

 まだ大丈夫なはずなのに、

 

 違う…違う…僕は僕だ…

 

 まだ…僕は僕のままなはずだ…

 

 大丈夫、大丈夫だ…

 

 僕は会場から抜け出した足で外を歩く…

 

 そして僕は道すがら見た店の窓から

 

 自分の顔を覗き込む

 

 いつも通りな、直哉の顔…

 

 なんだ…大丈夫じゃないか…

 

 と安心する

 

 目が白い靄のような、何かに包まれたように見えた

 

 僕は後退り、

 

 その場に尻もちをつく、

 

 自分の顔を両手で触って確認する

 

「俺やな…俺だよな…!」

 

 動悸が止まらない…

 

 僕は大丈夫だ…

 

 そうだよな…そうに決まってる

 

 すると僕のスマホがなる

 

 なんなんだよ…! 、こんな時に、

 

 スマホの画面にはしたっぱ1と書かれていた

 

 記憶を失う前の僕酷いな…

 

 自分を慕ってくれているであろう部下なのに、

 

 でもなんだか、笑えてくる

 

 自分を慕ってくれているのに…

 

 それに報いようとしない自分に

 

 でもなんだか落ち着けたように思う

 

 落ち着いたように思えた…

 

 僕はその電話を取った

 

「もしもし、…俺や、どないした?」

 

「……」

 

 相手から返事が返ってこない

 

「おい、! いい加減なにがあったか話せや!」

 

 だが相手からは一行に返事がない

 

 するとスマホから叫び声が聞こえてくる

 

「…親分! 帰ってきちゃダメだ! にげ」

 

 プツン…

 

 すると電話が切れてしまった

 

「はあぁ?」

 

 もう一度掛け直すが、電話に出ない

 

 仕方ないので運転役に電話する

 

「…もしもし? 俺や直人や、お前どこにおる?」

 

「は、はい! 親分! すぐ向かいます!」

 

「後、お前の方で警備組の2人と連絡取れるか?」

 

「あれ? 親分もですか? いつもはすぐ出るんですが」

 

 あの2人とは仲のいいはずだけど

 

「まあええわ、とりあえず帰るわ」

 

「親分、俺はどこに向かえば?」

 

「…駐車場前で待っとけ、俺はちょい散歩したいから歩いてそこまで歩いて向かうから待っとけ、ほなよろしくな」

 

「わかりやした、親分!」

 

 …とりあえず、落ち着かないと…

 

 

 

 数分前…

 

 新エリー都 某所 直哉の家

 

「いや〜なんか親分、前あった時より口調酷くなったけど、前より優しいな! なんでも奢ってくれるし」

 

 直哉の家の前では、子分2人が門番をしていた

 

「家にも上がらせてくれなかったしな!」

 

「前まで、直人の親分に勝手について行くだけだったもんな〜…」

 

「信頼してくれたのかな親分?」

 

「そう思おうぜ!」

 

「だな!」

 

 するとコツコツと足音が近づいてくる

 

「、ッ!おい警戒しろ」

 

「…わかってる」

 

 2人は身構える

 

 足音のする方を見つめる

 

 2人は警戒を強める

 

「おい止まれ!」

 

 1人はその場に叫び声を響かせる

 

 すると街頭の下で止まった

 

 そこには白髪の女性が立っていた

 

 白髪の女性はその言葉を聞いて止まり、

 

 こちらへ語りかけてくる

 

「お前さんら、直人の邸宅がどこか知らないか?」

 

「知ってても教えるわけないだろ」

 

 2人は直感する…

 

 こいつは強いと、

 

 1人はもう1人に合図し、

 

 女性に飛びかかる

 

 その間にもう1人は直人に電話を掛けながら、

 

 直人の邸宅の中に駆け込もうとする

 

「遅い」

 

 そう短く呟いた女性は

 

 気づいた時には2人は倒れ伏していた

 

 だが、

 

『もしもし、…俺や、どないした?』

 

 だが女性はその声を聞いて、

 

 スマホを奪い、耳元に傾ける

 

『おい、! いい加減なにがあったか話せや!』

 

 その顔はどこか懐かしいのか嬉しそうして見えた

 

 違う!そんな事を思っている暇はない!

 

「…親分! 帰ってきちゃダメだ! にげ」

 

 そう叫んだ瞬間電話は切られ、

 

 子分は女性の手によってに気絶した

 

 「兄者…待ってるぞ」

 

 

 

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