気がついたら禪院直哉だったので好き勝手させてもらいます   作:黙々睦模目

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閑話 直哉の過去

 20年前…

 

 

 

 禪院直哉が6歳の頃…

 

「…ぁあ、れ俺はどこに…ッ゙!??」

 

 僕が眠気から来るだるさに耐えながら

 目を開けると…、

 僕の体はアニメで見た『禪院直哉』の姿だった

 まだ6歳で成長しきっていないはずなのに…

 

「どういうこっちゃ…」

 

 周囲には荒れ果てた市街地が見える

 どこもかしこも瓦礫の山

 人っ子ひとりいない

 とりあえず周囲を確認しようとするが

 思うように動かない

 寧ろ、どこかに案内されるがまま

 体が動いているように感じる

 

(どこに向かってるんだ…)

 

 分けもわからず体が進み続けていると

 前に坂道が見えたのだが…

 進み続けていくと奥から

 鼻をつんざく匂いに思わず

 顔を顰めてしまう…

 

(うわ…なんだ…この匂い…、…はぁ?)

 

 僕が坂道を登り切ると…

 目の前には『雲嶽山』と書かれた服の着た

 集団が血を流して倒れており…

 既に事切れていた

 

「んな…、アホな…」

 

 そんな彼らを置いて体は前に進み続ける

 何かを目指して…

 

(これを見せておいてまだ何かあるのか…)

 

 この先に一体何が待ち受けているのか分からない

 だけど僕には身構える事しかできない…

 僕は目を閉じ…、

 自由が利かない体が止まるのを…

 ただ待ち続けた…

 体の止まった感覚と共に体の自由が戻った

 

(やっと自由に動かせる…)

 

 安堵と共に僕は目を開ける

 …それは間違いだった

 目の前には白髪の姉妹2人が…

 胸を貫かれ…、

 大量の血を流して…手を繋いで

 壁に寄りかかっていた。

 誰が見てももう『手遅れ』な状態だった…

 

「ハァ! ハァ、ハァ、…あぁぁぁ〜!」

 

 僕は過呼吸になりながらも2人に駆け寄る

 僕は自分の着ていた服を破り

 なんとしても傷口を塞ごうと

 きつく縛りつける

 だが、赤黒く染まり続けるだけだった

 

「くそ…! クソ…! クソがぁ…!」

 

「あ…、兄者…?」

 

「黙ってろや…! 傷口がふさがんやろ!」

 

「もういいんだ…兄者」

 

「何がええねん! 黙ってろ…!」

 

「ごめんね…直哉。1人にさせちゃうよね…」

 

「黙れ言うてんやろが!」

 

「小さい時…、私達を助けてくれて…ありがとう…」

 

「黙れ黙れ黙れ!」

 

「私…、貴方の事…好きだった…」

 

「そんなん後で好きなだけ聞いたるわ!」

 

「直哉…」

 

「黙ってろや!」

 

 僕が必死に傷口を抑える中

 儀降の右手と儀玄の左手が僕の頬に触れる

 

「「今までありがとう…」」

 

 そういった儀降と儀玄は…

 自分たちの血で真っ赤に染まった手が

 僕の頬をなぞりながら

 地面に降りていった…

 

「おい! 返事しろや…! おい! おい!」

 

 僕は2人を寝かせ、

 心臓マッサージを行いながら

 人工呼吸を試みる

 でも彼女達は黙りこくるだけだった

 

「おい! 起きろや! 俺に言いたかった事あるんやろ!」

 

 いくら声を掛けても2人から返事は帰って来ない

 僕は何度も…何度も…

 彼女達が起きるまで続けた…

 でも彼女達が目覚める事はなかった

 

「あぁ…、あああぁぁぁぁ〜!!!!」

 

 僕は肘を地に付け、両手を地面に叩きつけた

 もう彼女達は目覚めない…

 いくら呼びかけようと彼女達は起きない…

 僕は絶望し…目を閉じた

 

「クソがぁ…、なんでや…、は…?」

 

 また目を開けた時には

 僕が最初にいた場所まで戻っていた

 

「ありえへん…ありえへん…!」

 

 今回は体の自由が効いた

 僕は直ぐ様駆け出し…

 あの2人のいた場所に向かう

 

(頼む…頼む…頼む…!)

 

 2人の無事を祈りながら

 先ほどと同じように

 鼻をつんざく匂いも…

 雲嶽山の者達の死体を越え、

 2人のいた場所まで辿り着く

 

「いやぁぁぁ〜…!」

 

 僕が辿り着いた先で

 僕の耳に儀降の悲鳴が響いた

 僕の目の前には心臓を貫かれ…

 もう息絶えそうな儀玄の姿があった

 

「姉様が…無事でぇ…よかった…」

 

「ダメよ…! 儀玄…! 死んではダメぇ…!」

 

 儀降は必死に儀玄を抱き寄せる

 僕はそんな儀降の元に駆け寄る

 

「まだ諦めるんじゃねぇ!」

 

「兄者…もう私は…だめだぁ…」

 

「まだホロウから出れるやろ!」

 

「兄者ぁ…姉様を…」

 

「そんなん後で好きなだけ聞いたる!」

 

「儀玄ダメぇぇぇ〜…!!!」

 

「泣いてねぇで手を動かせや!」

 

「すまない…姉様…兄者…」

 

 そう言い、儀玄の目から光が消える

 

「嫌ぁ…いやぁぁぁ〜…! 儀玄〜!」

 

 儀降は玄を抱き寄せ

 泣き続ける

 

 

「……」

 

「儀玄行かないでぇ〜…! 待ってよぉ…!」

 

「……」

 

「兄者…助けてよ…? 儀玄を助けてよ…」

 

「……」

 

「直哉はいつも…何でも、できたでしょ…?」

 

「……」

 

「だからぁ…儀玄を生き返らせてよ…」

 

「そんな事できるわけないやろ…」

 

「嘘…嘘よ…! 直哉にできないことなんて…!」

 

「……できんわ」

 

「嘘よ…、直哉の嘘つき…! 大嘘つき…!」

 

 僕は儀降から目を背け

 目から水がこぼれ落ちないよう

 必死に耐えた…

 

(これは…なんなんだよ…悪夢か何かなのか…)

 

 夢というには感覚がしっかりしている

 嗅覚もこんなに鋭いのはおかしい

 血の温かさや冷たさも…

 鮮明に感じる

 夢なら感じる分けがないのに…

 僕はまた目を閉じた

 

「どないしろいうねん…」

 

 僕はまた元の場所に戻っていた…

 僕はどうすればいいのか

 またあの2人の絶望に歪んだ顔を…

 見なければならないのか…

 僕が一体なにをしたっていうのだ…

 

「兄者ぁ…! 兄者…!」

 

 儀玄の僕を呼ぶ声と共に

 今度はあの2人が僕に近づいてくる

 僕が動いても動かなくても

 結局見せられるのか…

 

「……」

 

 僕は立ち上がり2人に視線を向ける

 儀玄はボロボロになりながらも

 まだ生きている

 問題は…儀玄が肩を貸している

 儀降の方だろう

 

「どけ儀玄。俺が担ぐ」

 

「兄者…」

 

 僕は儀降を背負う

 

「儀玄先行け…後から合流する」

 

「でも…!」

 

「今は1人でも生き残るべきや言うてんねん!」

 

「うぅ…わかった…」

 

 儀玄は渋々先へ行った

 儀玄の姿が見えなくなったのを確認して

 僕は一度儀降を降ろし

 傷口がないか確認する

 

「な、直哉…?」

 

「黙ってろ。傷口の手当てが先や」

 

「いつも…、迷惑ばかり掛けてごめん…」

 

「……」

 

 目立った外傷はないが…

 脚が折れている…

 これでは歩くのは厳しいだろう

 

「傷は浅いでお前の脚は使えんから俺が担いでやる」

 

「こんな時でも…直哉は、直哉だね…」

 

「黙ってろや…」

 

「…我儘言ってもいい…?」

 

「…あぁ」

 

「お姫様抱っこしてほしいな…」

 

「バカらしいわ…」

 

「へ…へへ…」

 

「…しっかり捕まっとけ」

 

「え…?」

 

「なんや? まだ我儘あるんか?」

 

「いや…ううん…ないよ」

 

 僕はそのまま儀降をホロウの外を目指して運ぶ

 

「……」

 

「直哉…、いつも本当にありがとう」

 

「なに言うてんねん」

 

「口調はいつも厳しいけど…」

 

「一言余計やわ」

 

「でも…誰よりも優しくて…」

 

「そんなもん一切してへんわ」

 

「また…そう言って…」

 

「しっかり掴まっとけや…」

 

「うん…直哉…大好き!」

 

「減らず口を…もうすぐ出口や」

 

 僕は名残惜しそうにしている儀降を降ろす

 

「直哉…一緒に行こ」

 

 彼女…儀降の笑みが僕には眩しかった

 こんなに眩しい彼女を不幸にするのは…

 僕は…嫌だなぁ…

 

 そんなふうに思っていると

 儀降の顔が焦りに染まり…

 こちらへ駆け寄ろうとする

 

(ん? なんでこっちに来るんだ?)

 

「直哉…! 後ろぁ…!」

 

 グチャ

 

「あぁ…?」

 

 僕は視界を落とすと腹が貫かれていた

 僕の腹から流れる血で染まった

 緑と黒の色の混ざった剣で…

 

「…ゴフォ」

 

 僕を貫いた剣が抜かれる

 

「直哉ぁ…!」

 

「来るな…!」

 

 僕は傷口を抑えながらも

 

 僕の腹を貫いた存在に目を向ける

 

(なんだこの異形の化物…!)

 

 目の前には大きな盾と剣を持つ

 

 大きな体に頭の部分に大きな球体が浮かんでいる

 

 化物だった…

 

「こりゃあかんわ…」

 

 僕の腹から血が溢れ出している

 臓器をやられたのだろう…

 僕はもう手遅れか…

 でも…どこか安心している自分がいる

 

(2人のあんな顔を見なくて…2人が死ぬ姿を見なくて…済んだんだから儲けもん…だよね)

 

「直哉…! 血が…! 血が…!」

 

 折れて立ち上がれない脚で必死に立とうと

 もがき続ける儀降

 僕はそんな儀降に肩を軽く起き言い放つ

 

「すまん我慢せい…」

 

「へ? …嘘! ダメ! ダメだよ直哉! ダメぇぇぇ!!!」

 

 儀降の返事を待たずに僕は最後の力を振り絞り

 儀降を出口と思われる光に投げ出した

 

 大粒の涙を流しながら

 必死にこちらに手を伸ばす…

 儀降を眺めながら

 笑顔で見送るが…

 僕の視界は反転した…

 

 

 ……… 

 

「ッ゙は…! ハァ…ハァ! ハァ! ハァ…!」

 

 僕が起きた頃には体は元の幼い姿に戻っていた

 貫かれたはずの腹に手を置くが

 傷は見当たらない

 僕の体からは大量の冷や汗が流れており…

 服も冷や汗でびっしょりだった

 あれは夢だったのだろうか…

 夢だったしてもあそこまで

 現実的な夢はあるのだろうか

 

「ハァ…! ハァ! ハァ! はぁ…はぁ…」

 

 僕は過呼吸になっていた息を整えながら

 周囲を見渡す

 ここは幼い雲嶽山の弟子達が寝る部屋

 床一面に布団が置かれいる

 外はまだ暗く…

 誰もが寝静まっていた

 僕はゆっくりとその場から抜け出し

 外にある井戸に向かい

 勢いよく水を飲み干す

 何度も…何度も…

 飲んでも飲んでも喉が潤わない

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 僕はその後も寝れず…

 僕は近くにあった木に登り

 日が昇るまで待った

 日が昇ると次々と師弟達がが起きてくる

 それを確認して僕は木から降りる

 名前すら知らないはずの雲嶽山の師弟達…

 そんな彼らの姿を見ると

 あの夢で見た悲惨な死体の1人1人と

 重なっていく…

 僕は雲嶽山の名前を聞いて…

 思い出した…

 ここが僕のやっていたゲームの世界だった事を…

 だからあの夢は…

 これから起こる…

 未来なのかもしれない…

 今笑っている人達の絶望と恐怖に歪んだ顔…

 それが何度も…何度も…

 脳裏によぎり続ける…

 それがとても気持ちが悪い…

 でも…その中でもいつも口だけで

 いつも悪態ばかり言う元老の老害達からは

 そんな悲惨な光景一切見えなかった…

 その事実だけが憎くて堪らなかった…

 

(いつも…いつも…伝統がどうとか…

 雲嶽山の名誉だのと…

 でかい態度と共に…

 他の子弟達に教鞭をたれているくせに…

 この老害共は…

 他の雲嶽山の師弟達が命懸けで戦って…

 命を散らすのにこいつらはぁ…! 

 安全な場所で名誉と伝統とほざくのかよ…! 

 伝統と名誉を守った所で人は守らないのかよ…!)

 

 憎い…憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

 

 その憎たらしい口を今すぐ塞いでやりたい…

 僕はその憎しみを血が出るまで手を握り締めた…

 その血が滴るまで僕はこの怒りを抑えられなかった

 そんな時に聞き慣れた声が僕に掛けられる

 

「兄者〜! 一緒にご飯食べよ〜」

 

「ちょっと…、儀玄転ぶわよ…!」

 

 僕の手を掴もうと手を伸ばす儀玄と…

 その後ろを追いかける儀降の姿があった

 そして僕に儀玄の手が触れそうな瞬間

 

 先ほど見た…苦しさに握り潰して

 こちらに向けてくれた…悲しい笑顔が

 フラッシュバックした

 その瞬間僕は儀玄の手を払い除けた

 僕が払い除けたせいで…

 儀玄はその場に転げ落ちてしまう

 

「儀玄!? 大丈夫…? 怪我はない…?」

 

 儀玄に心配そうに駆け寄る儀降

 でも…

 僕の目には『普通の幼い儀玄の姿がはっきり見えた』

 脳裏にこべりついていたあの悲惨な光景ではなく

 普通のまだ幼い儀玄の姿がはっきりと…

 その瞬間僕は悟った

 

(僕が近くにいるから儀玄達は不幸になるんだ…

 僕がいなければ…

 彼女達は平和に暮らすことができるんだ…)

 

 それからの僕の行動は早かった

 

「俺に近づくなや」

 

「直哉…? ど、どうしたの…? きゅ、急に…」 

 

「俺に近づくんじゃねぇって言ったんや…」

 

「直哉…?」

 

 僕は彼女達の声を無視して背を向ける

 …やっぱりだ。僕が彼女達を突き放したら

 2人の悲惨な姿が見えなくなった

 僕が異物だったんだ! 

 僕がいるせいであの2人が不幸になるんだ…! 

 そうに決まってる! 

 僕が…、僕がいなければ皆…

『幸せ』になれるんだ…

 

 それから僕は他の師弟達にも同様の態度を取った

 当然彼らからは嫌われ、いじめを受けた…

 でも…彼らの運命は変わらなかった…

 僕が救えるのはあの2人だけなのだ…

 あの2人なら救える…

 あの2人以外どうでもいい…

 2人だけでも救うんだ…

 それからの僕は早かった

 ホロウに入れるようになってからは

 ホロウ調査協会の依頼や

 ホロウレイダーの仕事を行い…

 資金を集め…投資を行い

 資金を潤沢に集めた

 そして人材を…

 

「助けて…ください! …お願い…します…」

 

 路地裏…

 その中で必死に生きようと藻掻く男女の2人

 男の方は女の方を庇いながら僕に頭を下げる

 女の方も小さい声で何度も何度も…

 

「お願いします…お願いします…お願いします…」

 

 と繰り返していた

 そして僕の脳裏には2人の未来が見えた…

 食べる物も飲み物もなく…

 2人仲良く空腹で餓死する未来が…

 そんな哀れな2人に僕は口を開く

 

「俺の元でこき使われながら…

 藻掻き苦しみながら生きるか…

 それともこのまま這いつくばって生きるか

 …選ばせたるわ

 好きな方を選べ」

 

 そして僕は2人に向かって手を伸ばした

 2人はその手を何としてでも掴み取ろうと

 両手を伸ばして必死に僕の手を掴み取った

 

「やります…! やらせてください!」

 

「お願いします…お願いします…お願いします…」

 

 こうして最初の部下を手に入れた

 その後も路地裏の中で

 どうにか明日を生きようと藻掻く者を

 部下に引き入れていった

 そんな僕は彼らに偽名を名乗る事にした

 

「俺の名前は『直人』…直人や。

 お前らをこき使って…

 使い潰す男の名前や

 しっかり覚えておけ」

 

 その後はホロウレイダー崩れや

 救いようがある荒くれ者や郊外で

 走り屋だった連中や

 掃除屋? なる組織からも何人か引き抜いた

 その後もどんどん規模がデカくなっていくと…

 

「直人様! 我々の会社名はなんなのですか?」

 

 淡々とキーボードを叩きながら

 書類を片付けていると

 1人の部下がそう言った

 

「直人様! 私達は働き続けてきましたが知りません!」

 

「直人様!」 「直人様!」

 

「……会社名か」

 

「はい!」

 

「…興味あらへん。お前らで勝手に決めや…」

 

「「えぇ〜!?」」

 

「発言者のお前…決めろ」

 

「へぇ!? 僕ですか!?」

 

「文句あるんか?」

 

「い、いえ…ありません」

 

「ならさっさと決めろ」

 

「……プ」

 

「ぁあ? 声が小さくて聞こえんわ!」

 

「『直人グループ』でいかがでしょうか!」

 

「おい…! 流石に安直すぎるというか…」

 

「雑すぎじゃ…」

 

 周囲は不評のようだ

 

「ええんやない? もう面倒やからそれでいいわ」

 

「「嘘ぉ…!?」」

 

 その後も規模を広げながらも

 僕はホロウに入りながら

 エーテリアスを狩り続け…

 腕を磨き続けた

 対人戦も学んだ

 僕が連れて来たレイダー崩れや

 荒くれ者、掃除屋? 

 の者達を使って何度も何度も…

 なんでもありの戦いを続けた

 その中で僕は学んだ

 人々はいつも視界に頼り切っている事を

 僕は閃光弾を持つようにした

 エーテリアスには効果はないが

 よく恨みをかった者達から

 命を狙われている僕にはちょうどよかった…

 群れれば…周りの者を不幸にする

 少しでも彼らを不幸にしない為に僕は…

 1人にならないといけないんだ…

 周りから加害者だと思われようと…

『被害者』を救えるのいつだって…

 同じ境遇の『被害者』なのだから

 

「いつも多額の寄付ありがとう御座います…」

 

 僕に頭を下げるのは孤児院を運営する老婆だ

 

「そんなん気にすんなや。これは俺のエゴや」

 

「それでも感謝しきれません…」

 

「しつこいわ」

 

「貴方様の企業から支援を受けれたおかげで…

 多くの子供達が学べ…、

 多くの子供達のお腹を満たす事ができました…

 感謝してもしきれません…」

 

「おじちゃん! 遊んで!」

 

「「遊んで! 遊んで〜!」」

 

「おい! 離せや! ボケかす!」

 

「「やだやだ〜!」」

 

 ……

 

 物陰の中紫の髪の女の子が1人

 その場にしゃがみ込みながら泣いていた

 僕の脳裏にも彼女の不幸が見えた…

 見てしまったら…

 見捨てる選択肢は僕にはない…

 

「グス…グス…」

 

「おいガキ…何1人で泣いてんねん」

 

「おじさんは…誰…?」

 

「直人…それだけ覚えとけガキンチョ」

 

「私…悪い子なのです…」

 

「悪い事したクソガキは1人で泣かねえぞ?」

 

「でも…私は…、人の不幸が見えてしまうのです…」

 

「そうか…それがどうした?」

 

「え…?」

 

「お前はまだガキだ。

 人の不幸だのなんだのはな〜…

 まだお前が考えなくてもいいんや」

 

「でも…」

 

「駄々をこねるなガキ…ほら」

 

 僕は彼女にポンプの小さいぬいぐるみを渡す

 

「なんなのですこれは…?」

 

「1人で寂しいやろ? ならこれで1人やないな

 俺は一緒にいてやれへんけど…

 これなら一緒にいてくれるで?」

 

「…はいなのです」

 

「お前を引き取りたいって奴はいるやろ…

 どんなガキだろうとな大人は守るもんなんや…

 わかったか? ガキ」

 

「…グス…ありがとうごさいますおじさま」

 

「…オッサンちゃうわガキ」

 

「ごめんなさいなのです…」

 

「もし…引き取りたいって奴おらんかったら

 俺のガキにしてやるわ。

 杞憂で終わるやろうがな…」

 

「…本当?」

 

「あぁ? ええで? 俺は嘘つきは嫌いやからな」

 

 すると少女は僕の脚にしがみついた

 

「ありがとうなのです…『お義父様』」

 

「気にすんなガキンチョ」

 

 そして少女の頭をポンポンと叩く

 

「また会いに来てやるわ…じゃあなガキ」

 

「はい…ありがとうなのです…お義父様」

 

 この子はまだ幼い…

 せめて成人するまでは…

 あの子を守らせてくれ…

 どうか…我儘なのは分かっています…

 お願いします…お願いします…

 

 ……

 

 僕はある施設の窓をこじ開け入った

 

「…あんたがメイフラワーか」

 

「何者だ…ここは10階だぞ…」

 

「市長様お下がりください…」

 

 僕の目の前にはメイフラワー市長と…

 メイド服を来た護衛の女性の姿があった

 

「…今言った所でなんにもならへん」

 

 僕なその場に膝を付き…

 頭を床に叩きつけた

 

「な…!?」

 

「…不法侵入してきた俺を信じれへんやろ? 

 でもなぁ…

 頼むあんたくらいにしか頼めへんのや…

 …頼む俺の話を聞いてくれ」

 

 すると市長は立ち上がり…

 護衛のメイドの警戒を解かせ…

 僕の肩にそっと手を置いた

 

「…わかった君を信じよう」

 

「すまん…すまん…ほんまにありがとう…」

 

 

 ……

 

 青溟剣を儀降から奪い…

 その力を使う為に僕は代償を払った…

 その時だ…

 僕の中で何かが壊れた気がした…

 僕の中にもう1人…僕がいた気がした

 寧ろ…僕の方が部外者で…

 この僕の中にいるもう1人の僕こそが

 …本当のこの体の持ち主なのではないのか…? 

 僕は一体どうすればいいんだ…

 僕は…僕は…

 彼にこの体を返すべきではないのか…? 

 でも…そんな事をしてしまえばあの2人が…

 死ぬかもしれない…

 それだけは嫌だ…嫌だ…嫌だ…

 お願いします…お願いします…

 どうかあの2人を救うまで…

 どうか…どうか…この体を貸してください…

 お願いします…お願いします…

 

 ……

 

 もう1人の俺があの2人を救ってから

 長い眠りに就いた…

 もう1人の俺はその壊れて行く彼の姿が…

 悲しくて仕方なかった

 どうしてあそこまで苦しんで…

 多くの人を救ったのに…

 なんでありもしない罪を押し付けるんだよ…! 

 

 あいつは…! なにも悪い事してないじゃないか! 

 

 なのに…、なんであんなに…

 不安の吐け口にするんだよ…

 おかしいだろ…! 

 あいつは報われるべきだろ…! 

 あいつが救った2人はその事を一切否定しない! 

 なんでだよ…! 

 お前らを救ったのはあいつだろ! 

 なのになんでゴミ共を自由にさせてるんだよ! 

 なんで助けないんだよ…! 

 あいつの何が悪いだよ…

 報われるべきだろ…

 …許せない。

 あいつを馬鹿にして陥れる奴が…

 あいつが何をしたんだよ…! 

 憎い…! 

 俺の父さんと母さんを殺した奴らみたいに…! 

 もう1人の俺を陥れる奴が…! 

 許せない…あいつの犠牲を…! 

 享受し…! 

 呑気に平和に暮らそうとするお前らが…! 

 …俺は絶対に許さない…! 

 その為なら…なんだってしてやるよ…

『悪魔』にだって魂を売ってやるよ…! 

 

「お前が…『サラ』だったかな…?」

 

「…どこでその名前を知ったのかしら?」

 

「そんな事どうでもいいよね…? 取引しよう」

 

「取引…?」

 

「あぁ…あのゴミ共を不幸のどん底に落とすな」

 

「…ふふ。いいわよ取引しましょう」

 

 ……

 

 無数に伸びる赤黒い黒い靄が

 一つが僕の体に食い込む

 

「…クソがぁ! 嵌めやがったな!」

 

「なにを言ってるの? 最初から決まっていたのよ」

 

「最初から計画通りだったか…」

 

「えぇ…貴方は始まりの主の器に相応しい…!」

 

「お前らの虚言者共にこの体を…

 渡すわけねぇだろうが!!!」

 

「逃げた所で結末は変わらないわ」

 

「うるせぇぇぇ〜!!!」

 

「始まりの主を再創せん…」

 

 ……

 

「クソが! クソ!」

 

『なにを迷っている…その体を我に渡せ…』

 

「渡す訳ねえよ…」

 

『忌々しい…』

 

「俺は絶対諦めないのが取り柄なんだよ…!」

 

『ぐぅぅぅ…』

 

 始まりの主の自我をなんとか抑え込んだ

 

「はぁ…はぁ…僕はもうダメかもなぁ…」

 

 俺は青溟剣を見つめる

 

「青溟剣…どうか…

 もう1人の僕が起きるまで…

 時間稼ぎを…、手伝ってくれ…

 畜生ぅ…畜生ぅ…なんて俺は馬鹿なんだ…」

 

 

 





 そろそろ終わらせに行きたいと思う…

 今日この頃です

 11日の午後5時から書いてちまちま書いてたら

 8000字まで行くとは…

 では後書き終わりです

 誤字あったらすいません…

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我、流浪のものなり。▼強さと童貞の卒業を求む。▼全身鎧の男がゼンゼロのキャラたちから狙われる話。▼ガバ設定・キャラ崩壊多めです。


総合評価:904/評価:8.29/連載:6話/更新日時:2026年04月10日(金) 20:20 小説情報

お前は部品(パーツ)だ!(おかのした!)(作者:黙々睦模目)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

▼ 前世でなんやかんやあり、死んだ陰キャで無口なオリ主…。▼ 転生した世界はゼンレスゾーンゼロの世界で…(本人は知らない)▼ いかにも…『The』軍人です!って感じの人達に同い年くらいの子供達と囲まれ…その中でも偉そうな軍人に▼ お前らは機械の部品(パーツ)だから自我を出すな!出したら殺す!▼ と言われ、機械の部品として軍人として軍用機械の一部として戦い続け…


総合評価:1012/評価:7.75/連載:6話/更新日時:2026年05月11日(月) 04:30 小説情報


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