この素晴らしい世界に滅却師の王を! 作:sk20100626
玉座の間に、佐藤継嗣の冷徹な声が響き渡った。
「――『
その瞬間、世界を覆っていた白銀の空に、無数の巨大な光の柱が降り注いだ。それは救済の光ではない。継嗣がかつて自らの魂を分かち与えた「我が子ら」から、その力と命を強制的に回収するための断罪の光であった。
王都の北側、ウィズとミツルギを相手に猛威を振るっていたバズビーは、突如として自らの身体が内側から白銀の光に焼かれるのを感じた。
「な……が、はっ!? 陛下……嘘だろ……。俺は、まだ、やれる……! まだ貴方の役に……ッ!」
バズビーの指先から炎が消え、彼の肉体は光の粒子となって霧散していく。リルトットも、菓子を口に運ぼうとした手のまま、その瞳から光を失った。 「……あは。最後は、食べられる側だったってわけね……」 彼女の冷淡な言葉と共に、その存在は影へと溶けて消えた。
巨大なジェラルドを飲み込もうとしていたバニルも、その異変を敏感に察知した。 「……フム。自らの配下を『食料』とするか。地獄の公爵たる我輩ですら、これほど冷徹な理は持ち合わせておらんぞ、佐藤継嗣よ」
ジェラルドの巨躯もまた、バニルに食われる前に、主の光によって分解されていく。彼らの魂、能力、そして命の残り香が、すべて一条の光となって天へと昇り、氷の宮殿に座す主へと収束していった。
「昇華の回廊」にて、アイリスと対峙していたハッシュヴァルト。 彼の背中に、最も太く、最も純粋な白銀の光が突き刺さった。
「……っ、が……あ……っ」
黄金の天秤が砕け散り、ハッシュヴァルトは力なく膝をついた。アイリスが最後の一撃を放とうとして止まる。目の前の強大な騎士から、命の拍動が急速に消え去っていくのが見えたからだ。
「……陛下が、聖別を御使いになられたのか。……驚いたな。カズマよ……そこまで陛下を追い詰めるとは……」
ハッシュヴァルトは血を吐きながらも、どこか満足げに、微かな笑みを浮かべた。
「……悲しくないのですか?」
アイリスが、震える声で問いかける。
「あなたは……あの騎士団の皆さんは、あれほど陛下を信じ、命を懸けて戦っていたのに。……自分が愛する主人に、道具のように裏切られて……悲しくないのですか!」
「悲しい? ……そんなわけがない」
ハッシュヴァルトは虚空を見つめ、静かに答えた。
「私たちの命など……もとより、何者でもなかった我らは、陛下に拾われ、助かったものだ。この命、この力、すべては陛下から預かった借り物に過ぎない。……だからこそ、最後に陛下のために使われるというのなら……むしろ本望というもの……」
ハッシュヴァルトの身体が、足元から白銀の灰へと変わっていく。
「……陛下……どうか、貴方の望む、美しい新世界を……」
その言葉を最期に、帝国の次席騎士はアイリスの前から完全に消滅した。残されたのは、静まり返った回廊と、ハッシュヴァルトが纏っていた白銀の外套の切れ端だけであった。
玉座の間。 各地から集まった膨大なエネルギーが、佐藤継嗣の肉体へと流れ込む。
「……感謝するぞ、星十字騎士団よ」
めぐみんの爆裂魔法によって焼き裂かれた右半身が、凄まじい速度で再生していく。欠け落ちた皮膚が、砕けた骨が、すべて元通りに、いや、それ以上に強固な霊子の結晶として再構成された。
三重の瞳孔に輝きが戻る。 アクアの封印術により、未来を意のままに書き換える「改変」の権能は依然として封じられたままだ。だが、それ以外の全ての力――身体能力、霊圧、そして「未来を予知する」眼の力は、完全な状態へと回復した。
「……ふぅ」
継嗣が静かに息を吐くと、その余波だけで宮殿が激しく揺れた。 全知全能の改変こそ使えないが、今の彼は、配下全員の力をその身に宿した「究極の個」であった。
継嗣はゆっくりと立ち上がり、カズマを見据える。 その瞳には、すでにカズマが次に繰り出す攻撃の軌跡、流す汗の一滴、そして彼らが絶望する未来が、克明に映し出されていた。
「さて、カズマ。準備運動は終わりだ」
継嗣は無傷の姿で、冷酷な微笑を浮かべた。 「改変せずとも、視えている未来の通りに私が動けば、結果は同じことだ。……貴様たちの足掻きが、何一つ届かない絶望を、今度こそ教えてやろう」
圧倒的な威圧感を持って、佐藤継嗣が再び「神」として君臨した。