『死に戻り』しまくって助けたヒロインが、記憶を引き継いでいたので全員病んだ   作:水葉わいん/わいん。

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第15話 推理のちターニングポイント

 

 

 

「……え、えっと……センパイ? それは……どういう……こと?」

 

 花恋は、動揺したように瞳を僅かに揺らしていた。

 

 ああ……やっぱり、図星だよな。

 

「花恋……袖をまくってくれないか?」

 

「ッ……え……ど、どうしてですか?」

 

 花恋は焦った様子で、俺から距離を取ろうとする。

 

 ――しかし、俺は抱きしめる力を強めて花恋を逃さない。

 

「出来ないってことは……何か、やましいことがあるのか?」

 

「そ、それはないですけど……単純に恥ずかしい、といいますか……」

 

 花恋はあたかも恥ずかしそうに目を逸らした。

 嘘だけじゃなくて、演技も上手いんだよな、花恋は。

 

「花恋、もう演技しなくてもいいよ。さっき……微かに見えたんだよ。花恋の袖の中にある腕が」

 

「ッ……」

 

 次の瞬間――花恋は、諦めたような目つきで、抵抗するのをやめた。

 

「……あはは……メイクで隠したりして、見えないようにしてくればよかったですね……」

 

 花恋からは、いつものような元気は消え失せていた。

 

 花恋の袖の中に隠されているのは、何か。

 ――それは、何度も腕を爪で引っ掻いたような傷だった。

 

 俺は、花恋を抱きしめた時に、それが微かに見えてしまったのだ。

 

「花恋……まだ俺に隠している悩み事があるだろ? それも……耐えきれなくて自傷してしまうくらいに辛い悩み事が」

 

「……ち、違いますよ。これは……センパイに隠し事をし続けていたことや、センパイに怪我を負わせてしまった罪悪感からやってしまったことです……」

 

 花恋は怪我を隠すように、自分の右腕を抱きしめた。

 

「……そっか。そうだな、その傷だけだったら……俺もそう思ったと思う」

 

 けれど。

 花恋には決定的な矛盾があるのだ。

 

 それは……俺が転生者だと明かしてからの花恋の態度についてだった。

 

「――花恋の態度は……俺から見て、あまりにも不可解すぎたんだよ」

 

「ふか……かい? な、何がですか?」

 

「……色々あるけど、一番は花恋の態度があまりにも()()()()()ことかな」

 

 あの時の花恋のセリフはまだ覚えている。

 俺が転生者だと明かした時……花恋が三人の中で一番、病んでいたし、壊れていた。

 

 だというのに……数日後には、花恋は何も無かったかのような明るい態度で俺の前に現れた。

 あどけなくて、見ているだけでこっちも笑顔になりそうな……そんな様子だった。

 

 最初は立ち直ったのかと思っていたが……俺はここ数日で、花恋に関する、とある情報を思い出したのだ。

 

『――夜桜花恋は、過去にあった事件が原因で、嘘や演技が異常なほどに上手い』

 これはゲーム内に出てきたキャラクター説明での一文だ。

 

 これに当てはめれば、最近の花恋の異常なほどに明るい態度は――

 

「演技……だったんだよな。花恋は俺の精神状態を第一に考えてくれていて、安心させようとしてくれてたんだよな」

 

 すると、花恋は目を伏せたまま答える。

 

「……はい。私が暗い顔をしていたら、センパイは気にするだろうなって思って……明るい演技をしていました」

 

 すると……花恋は不思議そうに首をかしげる。

 

「ところでセンパイ。私が演技していたことが、どうして別の悩みごとを抱えていることに繋がるんですか……?」

 

「……ううん、繋がるよ。……だって、花恋は俺の精神状態を第一に考えてくれていたんだろ?」

 

「……?」

 

「なあ、花恋。それなら……もっと、やりようがあったんじゃないのか?」

 

「ッ……」

 

「俺の精神状態を考えるなら、転生者の言いなりになって『ヒロイン全員死亡エンド』について俺には訊かないし……その後、音信不通になったりしない。メールとか電話とかで、なるべく早く説明するべきだったんじゃないのか?」

 

 それに、花恋は月乃から俺が最近、酷く悩んでいることを知っていたはず。

 なのに……俺を放置し続けた。

 

「花恋の行動には矛盾が多すぎるんだよ……だから、思ったんだ。花恋にはまだ隠していることがあるって」

 

 俺は、花恋の瞳を真っ直ぐに見つめながら言った。

 彼女は動揺したように目を逸らし、口をつぐむ。

 

 しかし、幾ばくかの沈黙の後、諦めたように花恋は口を開いた。

 

「……センパイは、鋭いですよね……本当に……」

 

 やっぱり、隠していることがあったのか……。

 

「花恋。教えてくれないか? 一体、花恋が何を考えて、何を悩んでいるのか……できる限り、協力してみせるからさ」

 

「……優しすぎますよ、センパイは」

 

 花恋は、俺の瞳をじっと見つめ返すと……儚げに目を細めた。

 

「普通なら、そこは私を怒るところですよ……なのに、協力するって……」

 

 そして、花恋は俺の胸に再び顔を埋めて

 

「ああ、もう……センパイのことはもう、頼りたくなかったのに……」

 

 震え声で呟いた。

 

「花恋……」

 

「ねえ、センパイ。私が隠している悩みは……本当に大したことがないんですよ。月乃ちゃんや雪那ちゃんであれば気に留めないくらいの……小さな悩みで望み。でも……私は……諦められなかった」

 

「ううん、もう、はっきり言いますね……?」

 

 花恋は、潤んだ瞳で俺を見つめ返して――

 

「私はセンパイから――ちゃんと裁かれたかったんです。じゃないと――好きになることすらも、許されないと思ったから」

 

 ――ゆっくりと真実を話し出した。

 

 俺が転生について告白した日から……今まで。

 彼女が何を思い、何をしてきたのか。

 

 そして――最後には、一冊のノートを取り出した。

 

『死に戻りノート』と表紙に書かれたノートを。

 

 

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