『死に戻り』しまくって助けたヒロインが、記憶を引き継いでいたので全員病んだ 作:水葉わいん/わいん。
「……おかしい」
昼休み、俺は自分の席で呟いた。
おかしい。
おかしいのだ。
いや、まだ諦めるのには早い。
俺は隣の席の女子に声をかける。
「今日からよろしくな!」
「ッ?!」
女子生徒は驚愕で目を見開くと……すぐに引きつった表情になる。
「え、えっとぉ……よ、よよよろしく……」
女子生徒は、まるで何かを怖がっているようだった。
すると彼女は、突然、席から立ち上がった。
「あー、そういえば私、図書委員の仕事があるんだった……! じゃ、じゃあね!」
「あ、ああ……」
そのまま慌てた様子で教室から出ていく女子生徒。
「……はあ」
明らかに……避けられてるよな。
いや、別に彼女が俺を嫌いなのであれば仕方がないし、甘んじて受け入れよう。
だが……
「これで……何人目だよ……」
こんな対応をされるのは、今回が初めてじゃなかった。
校内で会う生徒、ほぼ全員が、さっきの彼女と同じような反応をするのだ。
「マジで、なんでなんだよ……」
……心当たりは何もない。
けれど……きっと、何かしらの理由はあるんだろうな。
「――ユーウっ!」
すると、突然、背後から名前を呼ばれた。
この声……雪那か!
「おお、雪那……! どうしたんだ?」
「ねえユウ、一緒にお昼食べない? 私、結構いい所知ってるんだよね〜」
雪那は、そう言ってイタズラっぽく笑った。
「いいのか、雪那……! 助かるよ!」
これでボッチ飯は回避できた……!
俺が内心で喜んでいると――
「――雪那ちゃんだけなんて、ズルいじゃないですか。私も混ぜてください……!」
お弁当を持った月乃が、声をかけてきた。
「じゃあ、月乃も一緒に昼飯、食べようぜ! 人は多い方がいいからな!」
「ありがとうございます……! あとは……花恋ちゃんも誘いましょうか」
「そうだな。一旦、花恋の教室まで行くか」
そうして、花恋の教室へ向かおうとした時だった。
「――せーんぱい! 私だけハブってお昼ご飯ですかー?」
階段を駆け上がってきた花恋と、鉢合わせした。
「花恋……! 違うよ、俺たちはこれから、花恋の教室に行こうかと……」
「ふぅん……? 嘘は言ってない……みたいですねっ! なら許します!」
花恋は俺の顔を覗くと、安心したようにニッコリと微笑んだ。
――◇――◇――◇――
「ほら、ここ……! 結構、気に入ってるんだよね〜」
そうして、雪那に連れられてきたのは綺麗な空き教室だった。
この教室は最上階に位置し、窓からは街並みや校庭の様子が一望できる。
ゲーム内でも、主人公たちと一緒にここでお昼ご飯を食べるシーンはあったが……実際に来てみると、結構、いい場所だな。
俺は適当な椅子に腰をかけると、袋からコンビニで買った弁当を取り出す。
「……あれ? ユウさん、お昼ご飯は弁当だけですか?」
すると、月乃が不思議そうに訊いてきた。
「まあね。流石に自分でご飯を用意はできないから、こうするしかなくてさ……」
「ッ……そ、そうですよね……。ごめんなさい、私、気が利きませんでした……」
月乃は、俺の言葉を聞くや否や、申し訳なさそうに顔を歪めた。
「ああいや……別に俺、足が健康だったとしても、どうせ料理できないし、コンビニ弁当だったと思うぜ? だから、気にしないでくれよ」
「そう……ですか……でも、申し訳ないですね……」
月乃は一瞬、自身の弁当に目を向けると……何かに気がついたように目を見開いた。
「そうだ、ユウさん! 私のお弁当、少し分けますよ……! 手作りですから、コンビニ弁当よりも栄養価は高いはずですし……!」
「い、いいのか?」
「勿論ですよ!」
月乃はにこやかに頷くと――
「――えー、月乃ちゃんだけズルいですよ! センパイ、私のお弁当も貰ってくださいっ!」
「――そうだそうだー! あたしだって、ユウに手作りの料理、食べてもらいたいんだけど〜?」
花恋と雪那が、口を尖らせた。
「ふ、二人とも……? あれ? 二人って料理できたっけ……?」
確か……ゲーム内だと、月乃だけ料理ができて、花恋と雪那は料理は全然ダメダメだったはずじゃ……?
「センパイ、今絶対に私たちが料理できなさそうって思いましたよね?!」
「ま、まあ……」
「もう……! そんなセンパイには……はいっ!」
次の瞬間、俺の口の中に何かが放り込まれた。
「んっ?! んぐ……
卵の甘みと、少ししょっぱい味……もしかして――
「んぐっ……卵焼きか!」
「ふふん、大正解です! どうですか? 私が作った卵焼きのお味は……!」
「めちゃくちゃ美味かったよ……! これ、本当に花恋が作ったんだよな?」
「当然じゃないですか! この数ヶ月、私はセンパイを振り向かせるために月乃ちゃんに習って必死にお料理を練習したんですっ!」
花恋は「えっへん」と言いたげに胸を張った。
「そっか……俺のために……。ありがとうな、花恋……! 凄く美味しかったよ」
「えへへっ……人に作った料理を褒められるのって嬉しいですね……! どういたしまして!」
「――花恋だけズルくない? ユウ、あたしの料理も食べてー!」
今度は雪那が俺の口に何かを放り入れてきた。
雪那は……料理が苦手ってレベルじゃなかったはず。
何を作ってもダークマターになる特殊能力を持っていたはずじゃ……。
俺は恐る恐る咀嚼していくと……
「っ……あ、あれ? 美味い……! めちゃくちゃ美味いぞ、これ!」
唐揚げ……だろうか。
衣のサクサク感は冷めていても残っており、噛めば噛むほど旨味が溢れ出てくる。
出来立てのものを食べたいと思えるほど、美味しかった。
「ふふん、私、超頑張ったんだからっ!」
「雪那も、本当にありがとう……嬉しいよ、俺のために……」
本当に二人とも俺のために苦手な料理をこんなに頑張ってくれてたなんて……なんだか、嬉しいな。
俺は少し照れ臭くて、窓の外に視線を向けた。
――次の瞬間、俺は、その人物を二度見した。
だって……そこには、今、登校してきたと思しきゲーム内主人公……