『死に戻り』しまくって助けたヒロインが、記憶を引き継いでいたので全員病んだ   作:水葉わいん/わいん。

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第30話 ラブコメのち甘々

 

 

 三人の弁当を食べて幸せに浸っている時。

 

 ――次の瞬間、俺は、その人物を二度見した。

 

 だって……そこには、今、登校してきたと思しきゲーム内主人公……秋葉(あきは)の姿があったのだから。

 

「(秋葉……どうして、昼に登校してるんだ……?)」

 

 体調が悪くて病院に行った後に学校に登校してきた……とかだろうか?

 少し気がかりだった。

 

「ユウ? どうしたの?」

 

 すると雪那が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。

 

「ああ、いや、何でもないよ……! 

 

 俺は三人に視線を戻すと、誤魔化すように苦笑いを浮かべた。

 

「そ? じゃあ、ユウには私の手作り料理をもっと食べてもらおっかなぁ〜」

 

 雪那は弁当箱から再び唐揚げを箸で取ると――

 

「――あ〜ん♡」

 

 にこやかな笑みを浮かべながら、唐揚げを差し出してきた。

 

 それは、さっきみたいに突然、唐揚げを口に放り込んできたのとは全く違う。

 正真正銘の『あーん』である。

 

「っ……」

 

 最近、三人からの激しいスキンシップや好き好き攻撃である程度の耐性を得たとはいえ……俺は流石に躊躇せざるを得なかった。

 

「ん〜? どうしたの、ユウ、何か食べられない理由があるの〜?」

 

「い、いや……それは……」

 

「あっ、もしかして……恥ずかしいとか?」

 

 雪那は揶揄うような小悪魔的な笑みを浮かべていた。

 

 くっ……。

 心臓がドギマギと煩く鳴るのが自分でもわかった。

 けど……ここで引けば何だか負けた気がして嫌だ。

 

 俺は長い逡巡を挟んだ末に――

 

「んっ……」

 

 差し出された唐揚げを口に入れた。

 

 さっきと同じ唐揚げのはずなのに、少しだけ味が薄く感じたのは……恥ずかしさのせいだろうか。

 

「どう? 私があーんした唐揚げは美味しい?」

 

「う、うん……そりゃあ、さっき同じ唐揚げなわけだし……美味しいよ」

 

「あれ? ユウ、耳が真っ赤だよ?」

 

「ッ……?!」

 

 俺は慌てて耳を抑えた。

 

 自分でもわかる。

 俺の顔は今、異常なほどに熱を帯びていた。

 

 そうして雪那から散々揶揄われていると――

 

「もう……! 雪那ちゃん、センパイのことを揶揄いすぎですよ……!」

 

「花恋……!」

 

 流石に見かねたようで、花恋が助け舟を出してきた。

 

 すると、花恋は口を尖らせながら――

 

「――もう! 雪那ちゃんだけセンパイを『あーん』するなんてズルいですっ! 私も『あーん』したいです……っ!」

 

 それは助け舟なんかではなかった。

 

「ほら、センパイ! ……あーん♡」

 

 花恋は卵焼きを箸で取ると、俺の目の前に差し出してくる。

 

「い、いや……流石にちょっと……もう勘弁してほしいというか……」

 

「えー! センパイ、雪那ちゃんの『あーん』は受け入れたのに私はダメなんですか……?」

 

 花恋は潤んだ瞳で見上げてきた。

 

 くっ……なんだこの上目遣い、心がキュッと苦しくなって罪悪感がヤバい……。

 

「っ……わ、わかったよ……ただし、一回だけな?」

 

「わーい! じゃあ――あ〜ん♡」

 

 花恋は小さく、はにかむと卵焼きをさらに俺に近づけてきた。

 

 一瞬の躊躇いを挟んで、俺は思い切って卵焼きを口に入れる。

 ……うん、しょっぱくて……美味しい。

 

「……これで満足か? 花恋……」

 

 俺は花恋に視線を移すと、彼女は呆然と俺を見つめて――

 

「――センパイ、めっちゃ顔が真っ赤じゃないですか……! 可愛い〜!」

 

「っ……」

 

 こいつら……!

 散々、人のことを揶揄いやがって……!

 

「雪那、花恋」

 

 俺は少し低い声で二人の名前を呼んだ。

 

「あ〜……流石に揶揄いすぎだったかな……? もしかして、ユウのこと、怒らせちゃった……? なら、ごめん……」

 

「いや、いいよ。それよりも二人は並んで座ってくれ」

 

「……? わかったけど……」

 

 雪那と花恋は俺の前に正座で座った。

 

 よし、じゃあ――

 

「はい、二人とも口開けて……はい、あーん」

 

 俺は両手それぞれで唐揚げと卵焼きを掴んで、二人それぞれの前に差し出した。

 

 そう、仕返しである。

 

 両利きだったのが、役に立ったな。

 

「ふーん……ユウ、もしかして仕返しのつもり?」

 

 雪那は揶揄うような笑みを浮かべて、こちらを見つめてきた。

 

「センパイ、私たちは、そう簡単には照れないですよ〜?」

 

 花恋も雪那と同様の態度だ。

 

 ……口だけはな。

 

「二人とも、ちょっと耳が赤くなってるぞ?」

 

 俺は彼女たちの変化を見逃さなかった。

 

「ッ……え、いや、そんなことないし……!」

 

「せ、センパイの見間違いじゃないですか?!」

 

「そうか、そうかもな。……じゃあ、ほら……あ〜ん」

 

 俺はさらに二人に唐揚げと卵焼きを押し付ける。

 

 二人はさっきの俺みたいに……一瞬、躊躇いを挟んでから思い切った様子で食べ物を口に入れていく。

 

「ん……じ、自分で作ったし、普通に美味しいけど……」

 

「そ、そうですね……」

 

 二人は平然とした様子でいった。

 

 ――口だけは。

 

「顔、真っ赤でそんなこと言われても、説得力ないぞ? 二人とも」

 

「「ッ〜〜〜!!!」」

 

 完全に二人の顔は真っ赤だった。

 

 よし、これで仕返し完了。

 ついでに写真でも撮っておくか?

 

 俺がそう思っていると――

 

「じゃあ、ユウさん、今度は私の番ですね?」

 

 月乃が、身を乗り出しながら、そう言ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

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