『死に戻り』しまくって助けたヒロインが、記憶を引き継いでいたので全員病んだ   作:水葉わいん

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第32話 争いのち謎

 

 

 

 

 

 死に戻りの記憶を取り戻した時、俺はなんとかトラウマを克服した。

 

 しかし――1万回も死を繰り返したのだ。完全に元通り……という訳にはいかなかった。

 俺はあれ以降……

 

「(――誰も期待できない。誰かを頼るなんてどうせ無駄なんだ。結局、一人でどうにかしなきゃいけないんだ)」

 

 俺はこの世界の人間に期待が出来なくなっていた。

 

 俺は高崎を睨みつけると、高崎も睨み返す。

 場は緊迫した空気が支配し、一触即発であった。

 

 そんな時、先に動き出したのは――

 

 高崎の方だった。

 

「――いいぜ、力の差をわからせてやるよ」

 

 そう言って、高崎はずんずんと近づいていてきて――俺の胸ぐらを掴んだ。

 

「一発ぐらい、殴ってわからせてやらねえとな」

 

 高崎は拳を大きく振りかぶった。

 どうやら、怪我人に対しても容赦はないんだな。

 安心した。

 

 ――そこまでのクズであれば、躊躇わなくて済む。

 

 高崎が拳を振り下ろそうとした瞬間――俺は彼の足を松葉杖で強く踏んだ。

 すると、当然ながら高崎は体勢を崩し、その場に倒れ込んだ。

 

「痛ぇ! 何しやがる、お前……」

 

「何って……攻撃されそうだったから、攻撃しただけだ」

 

「ッ……! 卑怯なことを……!」

 

 いや、怪我人に攻撃している時点で卑怯なのはそっちだろうに……。

 すると高崎は激昂した様子で立ち上がろうとする。

 

 そこで俺は松葉杖を高崎の顔に突きつけて牽制するが――

 

「――捕まえたぜ」

 

 高崎は逆に松葉杖を掴んできた。

 しまった。

 

 そして、高崎は松葉杖を引っ張ってきて、俺はそのまま体勢を崩されてしまった。

 

 当然、俺はそのまま地面に倒れ込んだ。

 クソっ……しくじった……。

 

 怪我さえしていなければ、すぐに立ち上がって反撃することだってできる。

 けれど……松葉杖が無きゃ歩けないような今の状態じゃあ、立ち上がることすら

 

「さあ、俺に攻撃してきたツケを払ってもらおうじゃねえか」

 

 高崎は俺の胸ぐらを掴んで、無理矢理、立たせると再び拳を振りかぶった。

 ああ……クソ。

 

 俺は痛みを堪えるために目を瞑った。

 

「――はい、ストップ。何してんだ、お前ら……」

 

 その時、聞こえてきたのは高崎の声ではなく、第三者の声だった。

 

 声の方を振り向くと、そこには眼鏡をかけた若い男性教師がいた。

 

「ちょっと荒らげた声が聞こえたからトイレに来てみたら……なんだ、この状況は」

 

「いや、これは……」

 

 高崎が言い淀む。

 教師の前でその反応は悪手だろう。

 

「……ほう。何かあったんだな」

 

 教師は眉をひそめ、怪訝そうに高崎を見つめる。

 

「取り敢えず、高崎はその手を離せ」

 

「っ……はい」

 

「それから高崎。お前は放課後、職員室に来い」

 

 教師は、高崎に厳しい視線を送りながら、そう言った。

 

「ッ……な、何で……! こいつだってやり返してきましたよ!」

 

「だとしても、怪我人の胸倉を掴んだ上で殴ろうとしたんだ。例え反撃したとしても、問題になるのはお前の行動だよ」

 

「そんな……」

 

 高崎は悔しそうに下唇を噛んでいた。

 

「じゃあ、そういうことで……もう授業も始まるから、二人とも散った散った」

 

「くっ……」

 

 高崎は悔しそうにしながら、その場から去っていった。

 

 対して俺は……

 

「(どうして……?)」

 

 めちゃくちゃ困惑していた。

 

 どうして、このタイミングで?

 いや、教師が助けに入るなんて……なんでだ?

 

 普通の場合、生徒の間の喧嘩に教師が介入してくるのは当然のことだ。

 しかし――これは普通の場合じゃない。

 

 恐らくだが――これはゲーム内のイベントだ。

 

 確か、ゲームではヒロインと仲良くなった主人公が噛ませ犬である高崎に絡まれる……というイベントがあった。

 

 あれもトイレの中で、高崎に絡まれ、殴り合いの喧嘩に発展する……という展開だった。

 つまり、さっきの状況と極めて似ているのだ。

 

 恐らく……ヒロインとくっ付いたのが俺であったため、主人公ではなく、俺に対してイベントが発生したのだろう。

 

 そして、本題はここからだ。

 

 あのイベントでは主人公は高崎に口論や喧嘩で勝てば、高崎を追い払うことができ、逆に負ければ……一発、高崎に殴られるのだ。

 

 つまり、何が言いたいかというと――

 

 ――本来、ゲームのイベント通りであれば、教師が助けになんて来ないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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