オーバーロード:亡国の吸血姫と世界の歌姫   作:MTHR

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 通販で亡国の吸血姫を購入した衝動で書いてしまった本作。悟やキーノの描写をうまく書けてる自信はありませんが、少しでも楽しんでいただけると幸いです。


第1話 異聞、始動

 進めば進むほど暗闇が広がっていく洞窟の中を、二つの影が進んでいく。

 

 一人は二メートル近い体躯、もう一人は子供のように小柄な体躯をした二人組は、不気味な洞窟の暗闇など恐れる必要もないといわんばかりに躊躇いなく奥へと歩いていくと、洞窟の終わりを告げる大穴が見えた。

 

「悟!見えてきたよ!!」

 

 金髪に紅眼の少女が、表情を明るくさせて、もう一人の大柄な人物の顔を見上げる。

 

「あぁ、楽しみだな、キーノ」

 

 そこにいたのは、異形だった。

 全身を覆うローブを着込んでいる頭部から覗くのは肉も皮もない頭蓋骨。空虚な眼窩からは、血の様に赤い光が瞳の様に光っている。裾から覗く手も、指の先端が鋭く尖った骨の手だ。

 

 彼の名前は【鈴木悟】。

 西暦2138年、Dive Massively Multiplayer Online Role Playing Game──DMMO-RPG『ユグドラシル』のサービス終了と同時に、彼は自身のアバターであった死の支配者(オーバーロード)として異世界に転移した。

 

 そこで悟は、転移先であるゾンビが跋扈する都市でアンデッドの少女──【キーノ・ファスリス・インベルン】と出会い、両親や国民を救う方法を探し続けていたキーノと共に、ゾンビ化解除の方法を求めてキーノと共に旅立ち、キーノの故郷のインベリアを滅ぼした朽棺の竜王(エルダーコフィン・ドラゴンロード)・キュアイーリムを打ち倒した。

 

 そして彼は今、“新生アインズ・ウール・ゴウン”のメンバーにして自身の相棒であるキーノと共に、旅の中で発見された未知の遺跡の中を進んでいた。

 

「おぉ……!」

「わぁっ!!」

 

 洞窟を潜り抜けた先に広がっていた光景に、悟とキーノは眼を輝かせた。

 

 洞窟を抜けた先にある広大な空間には、巨大な都市が広がっていた。と言っても、そこに住人の姿は一つもなく、建物は全て風化して苔が生えている所も数えきれない程ある。しかし、その都市の規模、そして都市の中央にある王宮のような建物の造形は、悟とキーノの関心を惹き付けるには十分すぎるものだった。

 

「凄いね、悟!!」

「そうだな。さて、先ずは……あの城から行ってみようか」

 

 悟は〈全体飛行化(マス・フライ)〉の魔法を発動させ、自分とキーノを飛行状態にして、都市の中央にある城へと飛ぶ。5分もしない内に城に辿り着いた二人は、風化して半壊している扉を潜り抜けて城の中を探索する。

 

 建物の中は殆んど原型を留めておらず、中には植物が根を張っている所すらもある。しかし、その光景は2人の心を盛大に楽しませてくれた。

 

「あっ!見て、悟。何かあるよ!」

 

 キーノが指差した方に悟も眼を向ける。

 そこには、廃墟と化した王座の間らしき部屋の中央で、淡い光を放っている何かがあった。

 

 二人が近付いてそれを覗き込むと、それは羅針盤や懐中時計に似たような形状をしたアイテムだった。中に収められているのは長針短針でも指針でもなく、まるで星空のような不思議な光を放つ発光体だ。周りの風化具合に反して、そのアイテムだけはまるで造り出されたばかりとでも言わんばかりの輝きを放っている。

 

「これは……マジックアイテムか?ユグドラシルでも見たことがないな……」

 

 悟はそれを拾い上げると、〈道具上位鑑定(オール・アプレーザル・マジックアイテム)〉を使ってそのアイテムの性能を調べてみようとする。

 

「……なんだ、これ?」

 

 悟の声に困惑の色が現れる。何時もならばどんなアイテムでも性能や情報を知ることが出来る筈の魔法を行使したというのに、目の前にある羅針盤の情報は何一つ出てこなかったのだ。魔法の付与されていないただの武具であっても製作者や効果を知ることの出来る魔法だが、その魔法を行使しても何一つとして情報が出てこないのだ。

 

 その時、悟が手にしていた羅針盤が目映い光を放ったかと思うと、悟とキーノは、魔法陣で出来たドームに包まれた。

 

「ッ、キーノ!!」

「悟っ!?」

 

 超位魔法を発動させる時に似た現象に、悟は羅針盤を投げ捨てた。傍らのキーノを抱き寄せ、〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉を発動させ、この場から離脱しようとする。

 しかし、その魔法を発動する一瞬の隙に、地面に打ち付けられた羅針盤型のマジックアイテムはより一層強い光を放ち、やがてその光は、悟とキーノを呑み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目映い光が収まり、悟とキーノの目の前に広がっていたのは、果てしなく続いている大海原だった。

 

「…え?」

「悟……ここ、何処なのかな?」

 

 悟が呆けた声を上げ、キーノは辺りを見渡しながら悟に問い掛けた。

 

(この現象……まさか、あのアイテムのせいか!?しまった……まさか強制転移とは……)

 

 未知の遺跡を前に、少し受かれていたのだろうと猛省すると同時に、悟は強い危機感を抱く。ただの転移系のアイテムならば、〈道具上位鑑定(オール・アプレーザル・マジックアイテム)〉で鑑定できない筈がない。それ程のアイテムで転移した場所が、ただの港であると考える方が不自然だ。下手したら、ワールドエネミーのような相手がいても不思議ではない。

 その場合、相棒であるキーノをどうするべきか迷う。〈要塞創造(クリエイト・フォートレス)〉で要塞を作って守らせる手もあるが、この辺りを調べる中で頭脳担当のキーノの力を借りたいと言う思いもある。

 

 悟はぐるりと周囲を一瞥する。自分達が転移してきたのは何処かの港のようだ。悟達が立っている場所から数キロほど場所では都市のようなものが見える。しかし、遠目から見ても活気がなく、まるで誰もいないかのように、その都市は静かであった。

 すると、キーノが悟のローブをつかんで軽く引っ張った事で、悟はキーノを見下ろすと、紅い瞳が真っ直ぐに自分の紅い光を見ていた。

 

「……悟、私はついていくからね。悟の思ってる通り、ここは危険かもしれないけど、戦闘になったら悟が守ってくれるよね?」

「……ああ。そうだな」

 

 肉も皮もない骸骨(スケルトン)の顔には何の表情も浮かばないのに、キーノは悟の考えや気持ちをすぐに見破られてしまう。

 〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉の魔法が込められた魔封じの水晶を渡したあと、悟はユグドラシルで常備していた漆黒の豪奢なローブに身を包む。ワールドエネミークラスの敵がいることを想定して、何時でも逃げられるように最大の警戒をしつつ、二人は都市へと足を運んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから一時間。

 さほど遠くない距離にある都市に足を踏み込んだ悟とキーノは、石畳の道を通り抜けながら、都市が静まり返っていた理由を明確に悟った。

 

「……ここは、既に廃棄された都市みたいだな」

「うん、さっきまでいた遺跡と似てる感じがするね」

 

 都市が静かだったのは、その都市が既に滅んでいたからなのだ。

 かつては栄えていたと思われる建物は軒並み風化し、植物や苔に侵食されている。一部は見る影もないほどに倒壊し、あちこちで爆発や焼け焦げたような痕も見える。しかし、転移する前まで探索していた遺跡と比べると、差程経年劣化をしていないように思える。放棄されてから100年も経っていないのかもしれない。

 その時、悟とキーノの耳に、なんらかの音が聞こえてきた。

 

「……ッ!キーノ」

「悟……!」

 

 悟は周囲を警戒しながら、いつでも魔法を発動できるように準備をする。そのまま一分、二分と待っているが、何も起こらない。あるのは、耳が拾った美しい音──歌だけだ。

 

「……これ、歌かな?」

(歌が聞こえてくるだけで、さっきから何もない。この声は現地人か?いや、でもこんな荒廃した都市に人なんか住んでる筈がない……。やっぱり、罠の可能性が高いよな……よし!)

 

 キーノの呟きを聞きながら、じっくりと思案した悟は〈浮遊する視界(フローティング・アイ)〉を発動し、微かに聞こえてくる歌を便りに探索していると、悟は視界に入ったものを見て、ポツリと呟いた。

 

「……女の子?」

「えっ?」

 

 そこにいたのは、ハート型にも兎の耳のようにも見える紅白の髪を持った少女だった。




 見切り発車です。次回の投稿は何時になるのかは作者にも分かりません。

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