これからシズがどうなっていくのか?
果たして救いはあるのか?
ホシノ先輩を病院に連れて行き、治療が終わった。
静かな病室で、ホシノ先輩の寝息だけが響く。
「……ん」
「!」
僅かに呻き声を上げて目が覚めた先輩に、僕は安堵した。
――生きてる。
思わず先輩を抱きしめる。
「シズくん?」
今度は殺してしまわなくて良かった――
抱きついて肩を震わせているシズの背中を、ホシノは優しく叩いた。
「大丈夫、キミが助けてくれたから生きてるよ。」
シズの漏らす嗚咽が、ホシノの心の中にあった『叱らないと』と言う思いを消して行く。言いたい事、言わなくちゃいけないと思っていた事が沢山あったのに、シズのこの様子を見てそれらは全て無くなってしまった。
「お帰り、シズくん。」
「――――――――!」
声無き声を上げて、シズは静かに泣いた。
「それで、グールって何なの?」
ホシノ先輩はそう尋ねた。
――そうだよな。聞かれるよな。
「……そうですね。いつかはバレるとは思ってました。こんなに早いとは思いませんでしたが……。」
視線を窓の外に逸らす。
「僕は、キヴォトスの外から来ました。そして、人間では無く――喰種と呼ばれる化け物なんです。」
僕の話をホシノ先輩は沈黙したまま聞いてくれる。続けてそのまま話す。
「キヴォトスの外では、人間の姿をしているのは二種族に分かれます。それは、先ほど言った通り人間と、もう一つが喰種と呼ばれています。
人間は、野菜、穀物、肉類、魚類……様々な食品から栄養を得られます。
けれど喰種は――人間を食らう事でしか、栄養を得られないんです。」
話す前はあんなに怖がっていたのに、不思議なモノで……今、ホシノ先輩に打ち明けているのに心は酷く冷静だった。
「でも、パンとか食べてたよね。」
「そうです。食べることは出来ます。ただ…………………その…………。」
これを言ってしまえば、傷つけてしまうのでは……そう思うと、口が上手く回らない。
でも、ホシノ先輩は急かすでも無く、苛立つ様子も無く静かに聞いてくれている。
僕は、なけなしの勇気を振り絞って言葉を紡いだ。
「人間の食べ物は、喰種の味覚にはとても不味く感じるんです。具体的に言うと……魚や肉は生臭くて食えたモノじゃない。パンも粘土でも食べている様に感じられ、野菜は青臭くて飲み込めない。
そして、無理矢理食べても消化が始まる前に吐き出さなければ体調を崩してしまうんです。
それでも食べなくちゃいけない理由がありました。」
思い出すのは、最も印象深い白髪の捜査官。
「喰種を狩る組織から身を隠す為です。」
「――そうなんだ。」
ホシノ先輩は、驚いた顔になる。
「人間にとって、喰種は害獣に等しい。故に人は、共存では無く排斥を選びました。
スズメバチの巣だって、駆除するでしょう?それと一緒です。
でも、そんなの納得できる訳ないじゃないですか。
だから僕も戦いました。殺して殺して殺して殺して――――数えきれない程殺して喰らって、そうして最期は殺された……筈だったんです。
でも、気付けばキヴォトスにいた。
右も左も分からない中、アビドスの砂漠で目が覚めたんです。」
思い返せば荒んでいた。
喰種だから銃を突きつけられ、返り討ちにした。死なない程度に加減したとは言え、交通事故に会うくらいの衝撃はあった筈なのに傷一つ付かなかった。気絶してくれたのは助かったが、肉体強度に対して内臓面の防御が通常の人間と変わらないと言う何処かチグハグな印象だった。
「そこからは目まぐるしい日々でした。キヴォトスに来た当初は皆が銃を持っているのに驚いたものです。そうして此処での常識を覚えて暫くたって、セリカと出会いました。そうしてアビドス高校に入学して今に至る訳ですよ。」
「そっか――大変、だったね。」
ホシノ先輩が優しくそう言ってくれて、思わず泣きそうになる。
「食料が無い現状、僕はまたいつ誰に襲いかかるか分かりません。このままアビドス――いや、僕が存在しているだけで、周りの人に危害が及んでしまう。だから……此処で、僕は先輩たちとはお別れです。」
——だからこそ、このまま甘えてちゃいけない。
「それは——うっ!」
ホシノ先輩は僕を止めようとしてくれるが、肩の傷が深く、呻き声を上げて起き上がる事が出来ない。
「そうですよね…………先輩なら止めてくれると思ってました。でも、僕はもう決めたんです。
だから、さようなら。どうかお元気で——」
僕は足早に病室を出た。そして出口に向かって歩きながら、ポケットからある物を取り出して、そこに書いてある場所に電話をかける。
「やあ、黒服さん——前の話の件なんだけど、受けさせてくれないか?」
ホシノは自分の体を恨んだ。
シズを止めようと動いた。動こうとした。
けれど、体は血を流しすぎたせいか動かなかった。
止められなかった。
「シズくん……私は——!」
ホシノは固く決意した。必ずシズを連れ戻す事を。
「待っててね、シズくん。」
その決意が、報われるかどうか——それは、天上の神にさえ、見通す事が出来ないだろう。
因みに展開は悩みました。ですが、作者には強い味方がいるのです。
——その名はダイスロール
クトゥルフ神話trpgに習ってダイスロールで決めました。
ホシノは説得ロールでファンブル出したのでダメージを受けて貰いましたが、まあダイスの女神様の神託なのでしょうがないですね(苦笑)
作者はキャラ作成とか技能値の設定方法は分からないので1D100振って技能値決めて、もう一回振って判定してます。
6版なので5以上クリティカル95以下ファンブルですね。
結果的に良い感じの曇らせになったけれど、いかんせん作者の文章力が無いので読みづらかったかもしれません。
色々書きましたが、此処まで読んでいただきありがとうございました♪