喰種は青春の夢を見るか   作:無者

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 オリジナル展開ってあんまり書いた事が無いのでつまらなかったらすいません。
 それでも楽しんで頂けると幸いです!


憧れたモノをその手に掴む。

 沸いた湯をそっとコーヒードリッパーに注ぐ。この時、蒸らす様にゆっくりと入れる。真ん中がプクリと膨れ上がったら、のの字を書く様に回しがける。入れ方はちょっと話を聞いただけの我流だ。合っているのか間違っているのかは知らないが、これが一番美味しい気がする。

 そうしてじっくりと抽出したコーヒーの香りを楽しむ。

 この香りがするだけで、朝の憂鬱な気持ちも吹き飛び、爽やかな気分で迎えられる。

 コーヒーを嗜み終えて、身支度を整える。

 制服に着替えて、ネクタイをキュッと締める。

 それだけで、不思議と気が引き締められる思いがした。

 今日から僕も、晴れて高校生だ。

 

 時は数日前。

 バイトも終わり、セリカと共に帰っている時の事。

「え——シズさんって私と同い年なんですか!?」

「あはは……そうだよ。僕こう見えても十五歳だからねぇ。」

 十三歳くらいからだったろうか。背が急にぐんぐんと伸び出して、気付けば175cmになっていた。

「へぇ……じゃあ、何で学校に通ってないんですか?」

「まあ、家の都合でね。学校に行く事が出来なかったんだよ。

 高校からは大丈夫だけど、如何せん僕でも入れそうな高校が見つからなくてね…………。」

 そう言うと、セリカは僕にある提案をした。

「それじゃあ、私の行く学校に来ませんか!?」

「えっと……確か、アビドス高校だったっけ?」

 セリカの高校——アビドス高等学校の話は有名だ。たった3人で莫大な借金を返す為に日夜奮闘していると言う。

「良いのかなぁ……僕なんかが入って。」

「この前見学に行った時、先輩たちも歓迎してくれたし、借金の所為で大変だけどいい所なの!だから——」

 僕が渋っていると、セリカちゃんが凄い勢いで誘ってきた。その必死な様子に僕は昔の事を思い出す。

 

『お願いだから——お母さんを殺さないで!!』

 願いは聞き届けられない。この世は不条理に満ちている。

——だからせめて、僕だけは優しく生きて行きたい。

 

「…………分かったよ。僕なんかで良ければ、一緒に入学しよう?」

「え————本当に?」

「何だよ、君が誘ったんじゃないか……それとも、やっぱりダメかい?」

 そう言うと慌てて慌てて否定するセリカ。その様子に僕はクスリと笑ってしまった。

「じゃあ、これからよろしくね、セリカちゃん。」

 

 そうして今日、僕はアビドス高校一年として、新たな一歩を踏み出す。

 校門の中に入る為に一歩踏み出そうとすると、後ろから突然声を掛けられた。

「お〜!おはよう。君が新しく入ってきた男の子かな?」

 おっとりした声音で話しかけてくるピンクの髪の少女——制服を着ている事からこの学校の生徒である事が窺い知れる。それにしてもこの子——

「強い…………。」

「うへぇ〜。そんな事ないよ?」

 キヴォトスの生徒たちは、獣の耳が付いていたり、角が生えていたり等の他、体が頑丈と言う特徴があるが、それ以外は普通の人間と変わらない人が多い。と言うのも、身体能力には個人差があるからだ。

 素早い人、頑丈な人、再生能力の高い人……そして、銃弾に何らかのエネルギーを込められる人。

 喰種である自分の五感は人間以上に優れている筈なのにその五感ですら気配を感じ取れなかった。

——強い白鳩(ハト)と一緒だな。

「僕も賞金欲しさにゲヘナに行った事があるけど……そこで見た風紀委員長みたいな雰囲気だね?」

「買い被りだよぉ。おじさんがそんな強そうに見える?」

 こちらを見るオッドアイから読み取れる情報は無いが……何処か警戒されている様に感じる。

「それで——君も今日入学の生徒なのかい?」

「あぁ、違うよ——私、アビドス高校3年の小鳥遊ホシノだよ。よろしくね?」

「え——本当に!?」

 よくよく見てみると左胸につけるネームプレートの色がピンク色だった。

 確か一年は赤のネームプレート。

 2年生は緑。

——3年生はピンク。

「す…………」

「す?」

「すみませんでした……!」

 僕は深々と頭を下げた。

 

「あはは、まぁ、良くある事だから気にしないで良いよ!えっと……シズくん。」

「はい……すみませんでした。」

 校舎内を歩きながら、ホシノ先輩は入学式の行われる体育館まで案内してくれる。

「あ、シズさん!遅かったわね?」

 体育館に着くと、セリカが駆け寄ってきたので挨拶を返す。

「や、セリカちゃん。同い年なんだから“さん”は付けなくても良いのに……」

「あはは、なんか慣れなくて……でも、シズさんだってちゃん付けやめてないじゃない!私は敬語で話すのはやめたから!」

 二人で話していると、セリカの後ろから少女が現れた。

「セリカちゃん、その方が、バイト先で一緒になっていたと言う……」

「あ、そうだよ。アヤネちゃん!」

 セリカの後ろから現れたメガネの少女——アヤネと呼ばれていたが、どうやらセリカと知り合いらしい。

「初めまして、僕は神喰シズ。よろしくね。」

「あ、はい!奥空アヤネです。よろしくお願いします!」

 お互いに自己紹介を済ませると、先輩であろう二人が体育館に入ってきた。

「ん、もう集まってるね。」

「お待たせしました〜⭐︎」

 灰色の髪の先輩と、亜麻色の髪の先輩だった。

「砂狼シロコ。よろしく、みんな。」

「私は十六夜ノノミです〜!よろしくお願いします⭐︎」

 こうして、先輩方が揃った為、アビドスの入学式が始まった。

 

 入学式は終わり、記念の写真を撮る事になった。

 3人は入学式と書かれた看板の前で、花束を持ってカメラの前に立つ。

「はーい、それじゃあ撮るよー。」

 ホシノ先輩は、のほほんとシャッターを押す。写っているのは何処か固い面持ちのセリカとアヤネ、そして自然な笑みを浮かべたシズ。

 後ろでは歓迎と書かれた看板を持ったノノミと自分とセリカの身長を比べる様に手をセリカの頭上に出しているシロコの姿があった。

「それじゃあ、最後はみんなで撮りましょう⭐︎ホシノ先輩、お願いします!」

「はーい、みんな並んで並んでー?」

 ホシノはそう言ってカメラのタイマーを起動して真ん中に来ると、アヤネとセリカの腕を抱き寄せた。

 カシャリ

 カメラに写っていたのは、ニッコリと笑ったホシノ、驚いた顔をしているセリカとアヤネ。その両脇にはシロコ、ノノミ、そしてシズがカメラに視線を向けて写っている。

 その瞬間、そこに居た面々は確かに穏やかで……そして幸せなひと時を過ごしていた。

 

——運命は巡る。

 誰も自分の宿命からは逃げられない。

 神喰シズと言う喰種が巻き込まれる運命は……キヴォトスにとって、とても小さなモノだ。

 しかし、小さな蝶の羽ばたきが、時には嵐を巻き起こす。

 これから起こる波瀾がどの様な結末を迎えるのか?

 カーテンコールはまだ鳴らない。




 此処まで読んで頂き有難うございます!
 書く前も、書いた後も思いましたが、喰種って結構難しいテーマですね……
 まあ、こんな感じで衝動的に書いているので面白ければ、次回も楽しみに!
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