喰種は青春の夢を見るか   作:無者

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 衝動的に書きすぎているかもしれない。
 今回登場する少女はオリキャラです。名前はまだ無い。
 面白くなかったらすみません。
 それでも楽しんで頂けると幸いです。


静かに崩れる足下

 アビドスに来てから暫く経ち、学校での生活にも慣れてきた。

「ねぇシズくん、一緒にご飯でもどうかな?」

「すみませんホシノ先輩……ご飯はもう済ませてしまったので大丈夫です。」

 こうやって、ご飯を断っても怪しまれる事は無い。

 以前だったら、人間社会で生活する上で、多少の食事は誤魔化す必要があった。白鳩(ハト)は兎に角目敏い。そこから情報を洗われて見つかってしまった事が一回ある。

 あの白髪の捜査官……複数のクインケを手足の様に使い熟す男だった。戦闘技能も然る事乍ら、凄まじいのはその判断能力。

 逃げ場を塞ぐ様な立ち回りをしてきたが、一緒にいたもう一人の茶髪の男は比較的弱かったので、そいつを叩く事で出来た一瞬の隙を利用して何とか逃げ帰る事に成功した。

 殺された日を除けば、後にも先にも、それが僕の唯一追い詰められた事件だった。

「それじゃあ、僕はバイトがあるのでこれで失礼します。」

「今日はちょっぴり顔色が悪いみたいだから、無理しすぎないでね。」

——相変わらず、鈍いんだか鋭いんだか分からない人だ。

 だがまあ、その声音は本当にこちらを心配している響がある。そんな事を言い合える位には、彼女と打ち解けられただろうか。

「……そんな事無いですよ。それじゃあ行ってきまーす!」

 

「はぁ、全く……どうしたモノかな?」

 一度家に帰り、冷蔵庫の食料を食べる。しかし、決して満足のいく量では無い。

「最近、ブラックマーケットの方も死体が少なくなってきたし、このままじゃ不味い。バイトの都合でアビドスを離れるって言い訳をすれば遠出して探す事もできるけど……最悪の場合は…………。」

——アビドスを襲ってくるあの連中(屑共)を——

 そこまで考えて、慌てて首を横に振る。

「いや、ダメだ。それだけは、超えちゃ行けない一線だ。」

 誰にでも、超えちゃいけない一線がある。

 人の物を盗む。食べ物で遊ぶ。モノを壊す。誰彼構わず暴言を吐く。そして——人を殺す事。

 正確に言うなら、自分の持つ正義感で、自分勝手に悪人を裁く事だ。

 こいつはクズだから食っても良い。そんな曖昧な基準で殺していったら、僕はやがて怪物になる。他の喰種と同じ…………己の悦楽の為に他者を貪る獣以下の存在に成り下がる。

 だから僕は死体を喰らう。

 屍喰人(グール)と蔑まれる事になっても。

 

「さて、これで全員かな?」

 ふぅ、と軽く息を吐いて人の山の上に座り込む。

 クズだから食っても良いとは思ってないが、生活の為にこいつらには司法で裁かれて貰う。善悪の話ではなく、自分の利益——平たく言えば、金の為に彼女らにはまた捕まってもらおう。

「わ、凄いねこれ。」

「…………居たのか。」

 物陰から出てきたボロボロの制服の燻んだ白髪の少女は僕の知り合いである少女だった。

 名前は知らないし、僕自身、彼女の名前に興味もない。死体漁りの現場を見られて、一方的に僕に近付いて来ただけだ。

 だが、何をする訳でもなく、ただそっと横で見ているだけだった。

「そんなに強いのに、何処かに所属はしないの?」

「鳥籠の中の鳥になるのはごめんだ。自由に生きるのが僕の信条でね。

 そんな事より、君こそこんな所にいるなんて珍しいじゃないか。」

 そんな事を言うと、彼女は首を傾げてこう言った。

「前の寝床、追い出されちゃって…………。」

「成程……。」

 ブラックマーケットに限らず、貧民街では割とありふれた話だ。

 法と秩序によって守られた表社会と違い、弱肉強食の自然界のルールによって支配された裏社会に於いて、力こそ全て。力なき者はこの少女の様に奪われる。

 だからと言って、何の感慨も湧かないが……

「…………こいつらの換金手伝ってくれるなら、飯くらいなら奢ってやる。」

「……ありがとう、優しいね。」

……まあ、コーヒ代でしか基本的に使わないし、偶には良いだろう。

「さっさと行くぞ。」

 僕は、車のキーを取り出して鍵を開けた。

 

 キヴォトスの車の免許についての規定はだいぶ緩い。危険運転やら速度違反、ながら運転など、日本では厳しく取締られていたが、キヴォトスで同じ事をしても、厳重注意で済む。

 て言うかそもそも、免許と言う制度が存在していない。自転車に乗る様な感覚で知識のある人、運転できる人が運転している。誰がトラックを運転しようが咎める人は居ないと言う事だ。

「今日もご苦労様です。それじゃあ僕はこれで——」

「はい!いつもありがとうございます!」

 ヴァルキューレ警察学校の前で、指名手配犯を乗せたトラックを駐車する。

 いつもやっている事だが、これだけ捕まえても指名手配犯が一向に尽きないのだから不思議だ。

「……学生の内から、大型トラックなんて運転してるの貴方くらいじゃない?」

「僕なんてまだまださ。世の中にはコンピューター制御だけでヘリコプターを運転する奴だっているんだから。」

 メガネをかけた同級生を思い浮かべる。キヴォトスのAI技術が発達しているとは言え、一からプログラムを組んで作っているのは圧巻の一言に尽きた。

「運転なんて本で読んである程度理解出来たら後は実際にやって慣れていくだけだよ。ま、ある程度は人から教えてもらったけどね。」

 廃品回収のバイトで気の良い先輩にトラックの運転を教えて貰った。本で読んだ知識だけでは、実際の現場で使われている技術は分からない。そう考えると、良い経験になった。

「このまま車を置いて、何処か行くか?」

「うん、何処かお高いカフェとかが良いな?」

 上目遣いで、あざとくこちらを見つめる。顔だけは良いこの少女がやると様になっている。何処でそんな知識を得ているのか知らないが、何とも微笑ましい光景だ。

 しかし——

「あだっ。」

「調子に乗るな。」

 少女の眉間の間にデコピンを放つ。

 痛そうに額を抑えるが、気にせず歩き出す。

「ほら、好きな店で良いからさっさと行くぞ。」

「はーい!」

 なんだかんだ、好きな店を選ばせる程度には、この少女の事を気に入っていた。

 

 そうして日常は過ぎていく。

 特に問題らしい問題も起こらず、平凡に、平和な毎日をこれからも過ごしていくのだろう。

 しかし僕は考えていなかった。

 いや、考えない様にしていた。

 飢えが酷くなればなるほど、自分の本能が強くなっていく事を……

 ヒトの生き血を求める——喰種の性という物を…………。




 徐々に減っていく食料。喰種としてのシズの本能。
 果たして彼は——これからどうなっていくのか?
 カッコつけようとしたけどセンスが無いのでこれで終わります。
 ここまで読んで頂きありがとうございます!
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