私が彼に出会ったのは、3年生の頃の入学式だ。
初めて会った校舎前、彼の持つ雰囲気が後ろ暗いモノを抱えている人と一緒だった為、警戒していた。私の強さを一目で見抜いたのと、警戒の眼差しに気付いていたって言うのも拍車を掛けた。
『君も入学の生徒なのかい?』
『あぁ、違うよ――私、アビドス高校三年の小鳥遊ホシノだよ。よろしくね?』
『え――本当に!?』
驚いた顔で見つめたかと思えば、次の行動が私の警戒心を一瞬で氷解させた。
『す……………』
『す?』
『すみませんでした……!』
余りにも情け無く、そして余りにも早い土下座に、驚愕と同時に笑いが込み上げて来た。
そこから警戒するのが馬鹿らしくなり、しばらく経って、打ち解けたある日のこと。
屋上で昼寝をしてた時……
『小鳥遊先輩……また寝てたんですか?』
『いやぁ……陽射しが気持ち良くてねぇ。つい寝ちゃってたよ。良かったらシズくんも一緒に寝る?』
『結構です。僕はこれからバイトなので。それよりほら、これ使って下さい。』
そう言って、横になってた私に毛布をかけてくれた。
『春先で日が出てるからあったかいだけですよ。これから曇るんですからせめてそれくらい羽織って下さい。』
ヘルメット団の襲撃があった時……
『喰らえや!!』
多少の防げない弾丸はそのまま受け止めて各個撃破するのが何時ものスタイルなのだが……
『ギャン!!?』
不意打ちを仕掛けたヘルメット団員は、シズくんの膝蹴りで子犬みたいな悲鳴をあげて吹っ飛んで行く。
『大丈夫ですか?……まあ、余計なお世話だったかもですが。』
『そんな事ないよ~。ありがとね♪シズくん。』
手元に拳銃を持っていると言うのに、徒手空拳で次々と敵を倒す彼の姿は、下手をすれば私に迫ると感じさせた。
他の子達がバイトで、二人教室でのんびりとしていた時……
『先輩、コーヒーどうですか?』
『お~、ありがとう。頂くよ。』
一口、口に含む。苦味は当然広がるが、その奥に仄かな甘みを感じる。
鼻を抜けて行く香りも良い。なんて言うか……上品な香りだった。
『これ、美味しい。』
『ありがとうございます。』
意外な特技を見つけ、嬉しくなる。
『また淹れて欲しいな?』
『こんなので良ければいつでも良いですよ。』
シロコちゃん達が帰って来て、自然と解散になった。穏やかでホッと一息をつける1日になった。
「シズくん……!」
必死に追いかける。もう、失いたくないから。
見失ってしまったけれど――絶対見つけて見せる。
その祈りが通じたのかは分からないが、路地裏で蹲っている彼を見つけた。
「シズくん…………。」
彼に近づき、肩に手を置いた。
「帰ろう?もう夜も遅いしさ……」
彼は体を震わせている。どう見ても異常だ。何か病気の発作だろうかと心配になる。
ゆっくりと、彼は此方を振り向いた。
――――!?
その眼は、赤く、血の様な色になっていた。本来白いはずの部分も、真っ黒に染まり、明らかな異常が出ている。
「シズくん、その目――」
気がつけば、彼は私を押し倒して、肩の肉に噛みついてきていた。
——過ちは、繰り返される。
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