魔防隊の天狗さん   作:カフェ・オーレ

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 筆が乗るうちに、投稿!


無窮の鎖

 

 7番組滞在早数日。

 

 現在、これと言った任務もなく、清治は目的の無い散歩兼パトロールに出向いていた。途中、端末から緊急コールが鳴り響いたがどうやら一般人が魔都災害に巻き込まれたらしい。幸いにも、京香もパトロール中だったのであちら側で対応した……らしいのだが。

 

「『緊急につき、7番組組長と一般人男子学生が奴隷契約』、か。京香1人でも醜鬼の群れを討伐出来るけど、一般人を庇いながらだと少々荷が重いか。助けられて直ぐに奴隷にされる学生くんも不憫だな」

 

(生き延びたいが為の措置、それと現代社会への不満で何処か自然と奴隷になったかもな。俺とは別の意味で苦労しそうな感じだ。奴隷になった瞬間から茨の道だぞ、少年)

 

 京香の能力、『無窮の鎖(スレイブ)』は、奴隷にした生命体の力を引き出し使役する。その代償として奴隷に対価を支払うという曰く付きなのだ。

 他の組長の能力と比べれば、使い勝手の悪い外れの能力。今まで醜鬼だけ使役してきた為、能力無しの男では役に立たないと思ったのだろう。

 自分の悲願の為に己の身体を鍛え上げ、1人でひたすら突っ走っていく癖があるのだ。組長にまで上り詰めても仇なんて相見えたりしたら周りが見えなくなりそうだと、似たようなケースだった清治からしたら、危なっかしく見えるのも事実。

 

「……ハァ。肩幅狭そうな後輩くんに会いに行きましょうかね」

 

 そう言いつつ、学帽を押されつつ寮舎まで何処か浮き足立つような感じに見える早足で戻った。

 

 決して同性の仲間が出来たと浮き足立ったとか?少年に奴隷として使役した時の能力の代償の内容を聞きたい訳ではないのだ、ないったらないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 7番組寮舎では既に和倉優希と7番組の面子の顔合わせが終わる頃合いだった。彼の役割は奴隷兼寮の管理人。この扱いに優希は思わずガックシと頭を俯いてしまう。

 

「そうだ優希、7番組には定期的にうちに居候中の輩がいる。もうすぐ戻って来る時間だ―「いま戻ったッ。俺の後輩になる奴隷の少年は何処だ!」……言った側から本人が帰って来たな」

 

「はっ?……え!?(お、男!?しかも…魔防隊の制服!?)」

 

 京香が話している途中で、玄関から騒がしく中に入ってきた存在に優希は言葉を失う。つい先ほど、京香から『男は魔防隊員にはなれない』という言葉を貰って落ち込んでいたというのに、そんな彼の目の前には昔ながらの学帽を被った()()()()()()()()()()が佇んでいた。

 男は優希の姿を目に入れた途端、テンションが上がりっぱなしの様子で彼の双肩を掴んでくる。

 

「お前が俺の後輩かァ…。おっと、自己紹介がまだだったな。俺は鱗滝清治。これから慣れない環境に苦労すると思うが、今後ともよろしく頼むな。俺の後輩になったからにはお前は俺の弟分だ。そこのところいいな?」

 

「わ、和倉優希です!今日から京香さんの奴隷兼ここの管理人になりました!よろしくお願いします!兄貴!」

 

 先程まで落ち込んでいたのが嘘のように、力強い返事。これには清治もニッコリ。

 

「!うんうん、いい返事だ。わからないことがあれば遠慮なく聞いて―「清治お兄ちゃん!寧が優希さんの上司になったんです!寧の仕事を取ったら怒りますよ!」ありゃりゃ、寧に先に取られていたか。こりゃ参ったな、ハハハ!!」

 

(光景がもう年の離れた兄妹を見てるみたいだ……)

 

 お互いに能力持ちのイレギュラーであり、最年少隊員との和気藹々とした空間に、咳払いして京香が介入してくる。

 

「団欒は後だ。優希にはこれから管理人の責務を果たしてもらう」

 

「管理人の責務って……」

 

 京香の視線を追えば、溜められたゴミ袋に床に転がった食材と調理器具。次いでに優希が持っている京香が着ていたであろう制服。――管理人ではなく、寮母の間違いでは?

 

「お前等家事下手か!?まず、日万凛!ゴミは溜めるなと、ある程度溜まったら門先まで出しに行けと言ったよな?」

 

「……だって、ゴミ出ししてる間に醜鬼が出たら大変だし」

 

「それでゴミを寮内にそのまま溜めてたら本末転倒だ!!次に、朱々!お前はハンバーグくらい作れ!婿を貰えなくなるぞ!!少しは寧を見習え!」

 

「む、婿ッ!?そんなまだ早いっ……ていうか、流石にねいっちに料理は負けてないってば!!」

 

「…寧?寧は自分でご飯作れるよな?」

 

「えっと、簡単なものなら準備出来ますよ?ハンバーグも焼けますし」

 

「合格ッ!文句なしの花丸をあげよう」

 

「ありがとうございます!」

 

「「寧(ねいっち)だけ甘くない!?」」

 

「そんな事ないっての。男で居候中の俺でも流石にゴミ出しと簡単な炊事ぐらいは出来るわ。寧ろ、お前たちは俺と寧に家事で負けている事に危機感を覚えた方が良い」

 

「「うっ…」」

 

(兄貴スゴッ……!今の世の中女性の情勢が強いのに、兄貴はてんでモノともしていない!)

 

 清治の怒濤の説教の嵐の前に、朱々と日万凛は何も言い返せなくなっている。

 女尊男卑が訪れた今世。優希は高校で彼女である女子に媚びへつらっていた同級生を思い出し、如何に清治が異例でありながらも、女性に対しても言葉を返せる程に実力を持った魔防隊員である事に戦慄した。

 

「そこまでにしておけ、清治。優希に寮の中を案内しなければならないからな」

 

「京香、お前も洗濯ぐらい自分でしろ。他人事じゃないからな」

 

 ――プチッ

 

 耳に何か切れてはいけない音が聞こえてしまった。

 

「…予定変更だ。風呂に入る前に、もう一汗かくとするか。表に出ろ、清治。勿論私の相手はしてくれるな?ルールは一対一(タイマン)。徒手空拳だけの3分勝負だ。存分に躾けてやる」

 

「上等だ。寧、上司としての最初の仕事だ。優希を案内しろ」

 

「り、了解です!」

 

(兄貴、京香さん相手に大丈夫かな……)

 

 寧に手を引かれながら、優希は自分の主と戦う兄貴分を背中越しから聞こえる重い打撃音を耳にしながら、心配したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3分後、戻って来た2人はお互いボロボロになりながら結果は引き分けという形になったらしい……。

 

 

 

 

 優希は改めて、自分の主と兄貴分に尊敬と畏怖を覚えた。

 

 

 

 

 

 

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